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今でこそ、世界最大の日系社会があるブラジル、そこにニホンジンが足を踏み入れた最初が20世紀初頭だった。
農場労働者として搾取され、差別を受けながら、それでも一歩一歩足を踏みしめる一世。
ブラジル社会の文化的影響を受け、親世代と摩擦を味わう二世。
戦中戦後の混乱を超え、戦争を知らない世代としてまた日本にデカセギに向かう三世。
ずっと知りたかった日系ブラジル人の歴史がここにある。
嗚呼もう大河ドラマにすべきでしょうよ、コレ。
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大河小説。
日本人であって日本人ではない微妙な距離感がなんともおもしろい。心理描写などはガイコクジンの小説にはないものがあって、でも日本と日本人に対して外からみている客観的な視線もある。
かつ、日本では知られていない日本から移民していった人達の歴史を血肉をもって知ることができた。
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初めて読んだ。
初見の本という意味ではなく、ニポ・ブラジレイロが書いた本を。
戦争モノとも違う。でもその時代と空気を感じる作品。
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タイトルからして、出稼ぎのためにブラジルに移住した一族の話という、直球ストレートで優等生な作品。パンイチで風呂に駆け込む準備しながら野球中継から目が離せないうちの父親を見て「結果だけ見りゃいいじゃん?」と思っていたが、ドラマが生まれる瞬間をファンとしては見逃せなかったのだろう。話はそれましたが、もうちょい読んでておもろいエピソードないとしんどい。やっぱ気質として日本人はブラジルに生まれても(作者)じっとり陰鬱なスピリッツ持ってんだな。そこはうまく表現してある。
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成功して故郷に錦を飾ろうとブラジルに片道切符で渡った日本人移民の苦難の物語。過酷な労働で得られる僅かな収入で極貧の生活を送るイナバタ家。妻のキミエはサンパウロに降るはずもない雪を待ちながら亡くなる。
「ニホンジン」の文化とアイデンティティを守ることに固執し、日本の敗戦を信じない「勝組」の父と、敗戦を認める「負組」の長男ハルオの対立による悲劇。選択肢もなくブラジルに生まれ育ち二重のアイデンティティを抱える2世、3世の葛藤が描かれる。
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20世紀初頭、ブラジルへ渡った笠戸号、そこからブラジル移民幕開けの時代は始まった。
個人的に、石川達三「蒼茫」でしか文字では触れていない世界・・ニュースで見る移民の歴史の悲惨さは表面的にしか知らなかった。
ブラジル文学は非イベリア系が極めて珍しく、まして日系によるものは貴重、新たなスタートとも言えそうだ。
筆者ナカザト氏はアカデミックの世界で活躍され、ブラジルと日本の双方の文化を架け橋になって行くことが期待される(それでなくても日本は移民受け入れのハードルが高い)
3代に渡っての歴史が語られる~生活、身体の日常の中でアイデンティティの葛藤、差別、反発、いやがらせ等の苦労、極貧、病、死。1代目のヒデオが固執した「ニホンジン」「ヤマトダマシイ」やがてWW2でカチグミ・マケグミの対立が移住者の中で分断を進めて行く。息子ヒデオは後者に立ち、父との対立は深刻化。、そして悲劇。語り手ボクは3代目のノボルになっている。その必然性はおのづと明らかに。
祖父でも無く父でもない新た視点~「二ポ」or「ブラジレイロ」双方に折り合いをつける力を持ったノボルなればこそ、20C後半の社会、時間で2重世界の再構築をなし得た。