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昨年の秋、岩手を旅して遠野市立博物館を訪問してから、改めて「遠野物語」が気になっています。その後すぐNHKの「100分de名著」で折口信夫の「古代研究」が取り上げられていて日本の民俗学の系譜にも心惹かれています。そんなタイミングで朝日新聞でこの本の著者のインタビューが掲載されていて、手にした次第です。日本人が,明治以降の近代化の流れの中で「山の民」とどう関係して来たのか、そしてそれ以前から狼や猿や、河童やザシキワラシや、神々を含めた自然とどう向き合ってきたのか、柳田国男が「遠野物語」の自費出版という小さなアクションで開いたドアはこんなに大きいのか、と感じています。しかし、出版すぐには流れにならず、1975年の柳田国男生誕百年記念ちょっと前からの光のあたり方には意表を突かれました。吉本隆明や三島由紀夫の引用(著者としてはその引用に批判的な部分もありますが…)もきっかけとなっているという指摘は、時間感覚が間近に思えます。その時代の高度経済成長疲れの「ディスカバージャパン」に代表される海外ではなくて国内に目を向ける流れにもシンクロしているのかも、と思ったり。「ディスカバージャパン」のキャンペーン、「遠野物語」への注目、そして乱暴承知で言うと「水木しげる」の台頭、って全部シンクロしているような気がしました。日本人って、いったい…って考察、まだまだ深まりそうですね。全然、関係ないけど「日本語からの哲学」を読んですぐ、本書の「です・ます体」の研究書に巡り会い、びっくりしました。