紙の本
ほら、聞こえてくるよ、いのちの音が
2022/11/06 08:02
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
湯本香樹実さんが文を書いて、酒井駒子さんが絵をつける。
そんな二人がつくった名作絵本といえば、『くまとやまねこ』。
海外でも高い評価を得た絵本をつくった二人が2022年9月、新しい絵本を出した。
それが『橋の上で』。
前作もそうだが、この作品も声高でなく、静かに生きる意味をみつめている。
イジメや誤解で川に飛び込んでしまいたくなった少年が橋の上にいる。
そこにやってきた、ひとりのおじさん。
けっして身ぎれいでないおじさんだが、まるで少年の心の闇を見透かすように、こういう。
「耳をぎゅうっとふさいでごらん。」
そうしたら、自分だけの湖の水の音が聞こえてくるよ。
「人は自分だけの湖を持っている」と、かつて自身もいいいじめにあって、居場所がないとまで思いつめた経験がるという、湯本さんは新聞のインタビューに応えている。
その湖は生きる泉で、自分を静かにのぞきこむ時間があると、なんとか新しい朝を迎えられた。
「そうやって、私も今日まで生きてきたんです」、湯本さんの言葉はなんて重いのだろう。
新聞の記事には、「歩き出す勇気をくれるもの、それは自分の中にあるんだよ。そう伝えたい」と続いている。
誰にだって、自身の闇が押し寄せてくる時があるものだ。
若い時にあるし、熟年になってもある。
そんな「橋の上」に立った時、この絵本が伝えようとしたことを思い出せたらいい。
耳をぎゅうっとしたら聞こえてくるのは、自分のいのちの音だ。
紙の本
考え込んでる少年の表紙
2023/01/29 18:03
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投稿者:タカミー - この投稿者のレビュー一覧を見る
酒井駒子さんの絵が好きなのと、お勧め本として落合恵子さんのひとこと感想を読んで購入しました。
話は10歳以上の子ならわかる内容だと思います。
(大人から一方的に疑われたり、クラスメートから邪険に扱われて苦しい思いをしたり、人間関係が複雑化してくる年齢。)
考え込むような事があった時もそうでない時も そばに置いて読み返してリフレッシュしたいと思います。 おじさんのような人が必ずいると思って、あるいは自分がおじさんのような存在になれたら・・・など思いながら生きていきたい。
紙の本
絵と言葉の力
2022/12/14 15:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
『くまとやまねこ』の最強コンビが久しぶりにタッグを組んで生まれた絵本。と、話題性はさておき、素晴らしい絵本だ。
橋の上にたたずむ少年。彼はおそらくいじめに遭い、大人にも誤解され、心に傷を抱えている。そこへあらわれた小汚いおじさん。おじさんは少年に言葉をかける―。
少年の心の機微を、少ない言葉で伝える文と、もの悲しさを美しく伝える絵の相乗効果で、「いのち」「生きること」について深く考えさせる。
読後に、誰かと語り合いたくなるような良作。
紙の本
エアスピネル
2024/02/19 01:27
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投稿者:イケメンつんちゃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやー
深い海に探索に行くくらい
感銘しました
直々の先輩後輩の
中日ドラゴンズの大島さん
2000本安打達成
おめでとうございます
乗りきろう
モノクロビーナス
サンタクロースなのか神なのか
おじさんの重い想い
橋と川が命の国境線を旨くあやとり
カラー2ページが
希望を旨く表しています
けんかをやめて
いじめをやめて
高校球児の丸坊主はやめて
いい人はたくさんいます
言い換えれば
中古車買取販売店のいけずな輩もいる
絶対許さないでください
在庫もあるそうなので
ぜひお買い求めくださいませ
エイモスさんがバスに乗りおくれると
だから丸善書店はおもしろいんです
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ちゃんと「分かる」ようになってるのは意外と難しい。素晴らしいです。
その文章に似合う絵と、その絵に似合う言葉の絵本でした。
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酒井駒子さんのモノクロの陰のある暗い絵.ランドセルを背負って橋の上で川を見下ろす姿が痛々しい.そしてお話の内容にピッタリはまっています.
小さな子どもが思いをためて,耳を澄まして,乗り越えていく姿,応援しながら読みました
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湯本香樹実×酒井駒子作品がまた読めて嬉しい☺️ “橋の上”で川を見ていた夕方、いつの間にかぼくの隣に立っていた雪柄のセーターを来たおじさん。私、このおじさんになりたい!と思った。
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噛み合った、文と絵。
この本が必要な人にどうやって届けたらいいだろうと、この本が必要だった僕は考える。
熱く生きる必要はない。ただ生き延びるのに、誰かの言葉が、作品が、存在が必要な時がある。
ただ、この本がこの世に生まれ、存在することに、ありがとうと言いたい。
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ある夕方、
小学生の「ぼく」は
橋の上で川を見ていました。
すると
いつのまにか
「ぼく」の隣に
ホームレスのおじさんが立っているのでした。
ページをめくっていくと、
「ぼく」が何故橋の上にいたのかがわかってきます。
「ぼく」は考えていたのです。
いま、ここから川にとびこんだら、どうなるのだろう、と。
「ぼく」にぬれぎぬをきせたあのおばさん
「ぼく」の上着をごみ箱に捨てたあいつ。。。。。
そんな「ぼく」に、おじさんは言うのでした。
みずうみを見たことある?
と。
水路の暗がりのむこうには
たった一つの
きみだけのみずうみがあると
おじさんは言います。
そして
耳をぎゅうっとふさぐ術(すべ)を教えてくれたのでした。
文章と絵が
こんなにも一つになった絵本は
そうそうあるものではないと思います。
「ぼく」が青年になってから見える
みずうみの光景は
そのページだけ彩色されていて
とても美しいです。
川にとびこまなかったからこそ会えたひとたちが
水辺にいるのです。
「ああ、生きていてくれて
本当に良かった………」
読者である私の胸には
そんな想いがさざ波のようにひろがっていきました。
それにしても
酒井駒子さんの描く子どもは、反則的なほどにいとしすぎる(涙)
横顔も
後ろ姿も。
子どもたちの苦しみを
全てなくすことはできないけれど、
でも、
全ての子どもたちに、よき出会いがあるように願いつつ、本を閉じました。
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こんなにも絵と文がピッタリ合うなんて、驚きとともに感動しかない。
何度も何度も読み返す。
私の最高の一冊となる。
川が好き?
橋が好き?とおじさんが聞く。
そして、耳をぎゅうっとふさいでごらん。と
少年と同じように耳をふさいでみた。
水の音が、きこえた。
おじさん、教えてくれてありがとうと言いたい。
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絵が素敵すぎて、圧倒された。
川にとびこんだらどうなるかな?
そこに声をかけてくるおじさん。
若い頃、つらくて死ぬことに気がいっていた時、私にも声をかけてくれたおじさんがいた。
「どっか車で連れて行ってあげるよ。あんた、今にも死にそうな顔しちょる」
相手のおじさんの顔とか、詳しいことは覚えてないけれど、その時の、声をかけられた驚きや、自分の心の中を人がわかっている驚き,色々が混ざり合って,その時の心境は鮮明に覚えている。
この少年も、おじさんのことを一生忘れないだろう。そして、人生を振り返る時、思い出すんだと思う。
死んじゃいけない、みたいな本は沢山あるけれど、この本は酒井駒子さんも味方につけ、他とは圧倒的な差をつけて輝いている。
少年の後ろ頭が、特に好きだ。
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橋の上で川を見ていた夕方。
雪柄のセーターを着たおじさんにぼくは出会います。
おじさんは「川が好き?」とぼくにききます。
ぼくはほんとうは考えていました。
いまここから川にとびこんだらと。
ぼくがぬすんでいない本をぬすんだっていった
あのおばさんは悪かったって思うだろうか。
ぼくの上着をゴミ箱にすてた
あいつはおびえるだろうか。
いまここから川にとびこんだら。
するとおじさんは
みずうみを見たことある?
といって、自分だけのみずうみの話をきかせてくれました。
そして
はやくおかえり。
といっておじさんは手をふりながら橋を
わたっていってしまいました。
いつか、たぶんおとなになってから、
きょうのことを思いだすだろう。
ぼくは、ときどき耳をふさいで、
地底の水の音をきくことがある。
いまでは、みずうみが、はっきり見える。
※ここまではベージュと黒の二色だけの色で描かれているのですが次のページだけが明るく輝くようなブルーとグリーンと白を使って描かれています。
水辺には、かならずだれかいる。
友だちや、だいじなひと。
生きているひと、もう死んでしまったひと。
※そしてまた、ベージュと黒の絵に戻ります。
あのときもし川にとびこんでいたら、
会えなかったひとばかりだ。
みんなの顔に目をこらし、声をききながら、
ぼくは眠ってしまう。
長い夜が明けるまで。
これはもう、子ども向けの絵本ではなく、中高生以上から大人に向けられた絵本ではないかと思いました。
いつかたぶん誰もが大人になってから思い出すあの日のことが描かれた絵本だと思いました。
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橋の上から川を見つめているぼくがおじさんと話した。そこに何が起こったか。心が傷ついているぼくに読んでほしい。
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絵が白黒のパステルであり、岩崎ちひろの白黒版である。橋の上から飛び込もうとした自分に話しかけてくれた人がいたことを回想しているものである。
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いまここから、川にとびこんだら-
このページだけ、橋桁が、マスキングされた直線でハードエッジに描かれている。
他のページでも下絵には定規で直線が引かれているけれど、あとで手描きでなぞられている。この橋桁は、とりわけ鋭く描かれている。
その水は、どれほど冷たかったろうか。