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灯台という閉鎖的な空間で消えた3人の男、残された妻たち。それぞれに過去や思い出や想いがあったことがゆっくりと解き明かされていくのは謎解きのようなのだが、若干食い足りなさが残るのは、比重が定かでないからかもしれない。失われゆく「灯台守」という仕立てであるのなら、もっと深い哀惜が残ってもいいように思う。
それぞれの夫婦間の物語は、それぞれに面白かった。
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1972年イギリスの岩礁に立つ灯台から灯台守の三人が姿を消した。何があったのかを20年後に作家を名乗る人物が関係者への聞き込みを始める。灯台守三人の家族の証言。もう生存を諦めてる人、まだ帰ってくると思っている人、新たな生活を始めている人。灯台守の灯台での生活の描写、会話がとても良くて三人で生活するには狭い空間が想像できそれがまた謎になりどんどん魅力が増していく。真相は明らかになるのかということはもちろんだけれど残された妻や恋人たちが20年抱えていたものが語られるやりとりがとても読み応えがある。
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灯台守という孤独で崇高な仕事。いわゆる密室の中で3人に一体何が起きたのか?
それぞれの妻たちによって明かされていく事情。
外国のミステリーにしては、登場人物が少なく物語の背景も把握しやすかった。最後まで読者に着地点が見えないようにプロットも工夫されている。
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孤島に建つ灯台で三人の男が消息不明… 家族愛と荒涼な世界感を堪能できるミステリー #光を灯す男たち
■あらすじ
20年前、孤島に建つ灯台で管理人三名が突然の行方不明になった。彼らはなぜ密室状態である灯台から消え去ってしまったのか?
ある作家が20年前の事件を小説にすべく、当時の家族たちに取材を申し込んでいく。消息不明になってしまった男たちへの想いと事件の真相を語り始めるのだった。
■レビュー
情緒的で情景豊かな気品高い文芸ミステリーです。
あらすじを見ると本格ミステリーかな?という感じもしますが、どちらかというと切ない家族ドラマを描いた文芸小説ですね。
イギリスでは有名な1900年に本当にあった話をベースにされたということで、地理、事件史、その他社会勉強のためにもぜひ読んでおきたい作品です。
本作は何といっても登場人物の心情描写がスゴイの。
正直、序盤中盤は誰も彼も本心がわかりづらく、何を読まされているんだろう… という感じなんですが、中盤以降は完全に胸アツです。
灯台守の三人と残された家族の胸に秘めたる想い。そして秘密… とても直視できない人間たちの葛藤を垣間見ることになります。
また本作は情景描写が素晴らしい。まさに装画のとおり寒々しさが作品全体から漂ってきます。青黒い海、ねずみ色の空、荒々しい岩、激しい波の音…
決して明るくない様子はストーリーとも同調しており、私も冬の海に佇んで読んでいるようでした。
最後にはこのうす暗い曇り空の世界に、灯台のひかりが差し込むのでしょうか。
■推しポイント
情緒あふれる気品あふれるミステリーでしたが、内容はなかなか胸に刺さるお話でした。
登場人物の灯台守の彼ら、家族、作家を生き方と魂… かなり強烈です。
どんな環境にいても人間性と過去は変えられず、自身のこれからの意思と行動なのだと学ばされました。
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密室から完全に三人もの男たちが消えたというミステリー。20年後の家族や恋人からの証言から、一見ありふれたように見えたカップルたちの本当の姿が現れてくる。
孤島の灯台に男3人とは異様な環境だ。荒れる冬の海と隔絶された灯台だけで、なんとも陰鬱な雰囲気が伝わる。小説は1970年代の設定だけど、実際の事件は100年以上前。一体何があったのか、想像が広がる。
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ランプライターの3人、主任アーサー・ブラックと妻ヘレン、補佐ビル・ウォーカーとジェニー、補助員ヴィンセント・ボーンと彼女のミシェル。3人が忽然と消え残された3人の女達の人間模様、哀愁感が残る。
アーサーとヘレンの子供トミーの溺死が悲しく心に残る。
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1972年クリスマス、英国の岩礁に建つ灯台から、3人の灯台守が姿を消した。嵐の中、内側からカンヌキをかけられた灯台の中で、何がおこったのか。20年後、3人の灯台守の妻と恋人の元に、ある作家がやってくる。事件を本にしたいというのだ。密室の灯台で起こった真相は分かるのか。
72年と92年を行き来きながらストーリーは進む。
灯台が自動化された現代では、生まれなかったお話。いろいろ仕掛けがあって面白かった。
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灯台守の物語は既視感がある
居なくなった灯台守の男三人と待っていた妻三人
それぞれ秘密とうそを隠しながら生きていた
ミステリでもあり中盤までは読み応えがある
ただありふれた秘密にとらわれて20年の歳月を生きた
女三人の自分語りには閉口した
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消えた3人の灯台守と3人の妻であり恋人であった女性が少しずつ心の裡を明らかにしていく。そこにある真実はいささか陳腐なものに思えるが、人間らしくもある。
誰もが悲しく荒々しく寒々しい闇を心の中に抱えていたからこそ、彼らは光を灯し、彼女たちは光を求めるのだと思った。
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産經新聞20221016掲載 評者:伊藤氏貴(明治大学教授,文藝メディア,現代文芸思潮,文芸評論家)
読売新聞20221120掲載 評者:小川さやか(立命館大学教授,文化人類学者,現代アフリカ消費文化etc)
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うーん、好きじゃない
どんなに素晴らしい表現力を持っていても、情景描写が延々と続くってのはちょっと苦手なんですよね
もういいよ!ってなります
あと自分語りも苦手
そして謎を解く!と息巻いて始まったはずなのに…
終わり方もよく分からないというか…この結びにたどり着く要素あった?
象徴的な描写が多すぎて俺が感じ取れなかっただけ?
あまりに不得意な要素が重なってしまい楽しめませんでした
当時の灯台守の仕事ぶりは分かったかな
芥川賞が苦手な人はダメかも!
ってお前の表現もたいがい抽象的だな!
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イギリス、コーンウォル地方ランズエンド岬の沖合、小さな孤島にあるメイデンロック灯台、交代要員を乗せた船が着くと灯台に3人の姿は無く、二人分の食事が用意され、二つある時計は8時45分で止まっていた・・ 島はとても小さく灯台がかろうじて立っている程度の大きさ。1972年の年末に起きたこの出来事を、20年後の1992年、冒険作家のダンが小説にしたいと残された妻たちに聞き取りをする文、1972年当時の灯台守3人と妻たちの文が交互に続く。
3人同時失踪の真相は? 最初、回想形式の文体がちょっと読みずらいかなと思ったが、最後になり失踪のその時の文になると、俄然、緊張感が増した。最後に小説家ダンの身分も明かされると、いや、でも、この書かれた真相も、真実のひとつの側面にすぎないのかも、と思った。
陸続きの灯台はともかく、孤島の灯台の仕事はきついな、というのが伝わってくる。狭い空間に3人一緒。そして残された妻たちも社宅にそろって住んでいるのだ。
3人の男たちそれぞれの事情、妻たちそれぞれの事情。それらの人生の事情があぶりだされる。
1900年に実際にあった事件に着想されて書かれた。だがそちらはもっと北のアウター・ヘブリティーズ諸島のアイリーン・モア島の灯台の事件。物語の灯台は架空だとのこと。
2022.8.25初版 図書館
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1972年。イギリス南部コーンウォールの沖合にある孤島に立つ灯台。島というより岩で、灯台以外の陸地はほとんどない。ここに3人の男が灯台守として働く。その男たちが何の痕跡も残さず、忽然と消えた。
3人のうち、誰かが海に落ち、助けようとした他の者も巻き添えになったのか。それとも、誰かが他の者たちを殺したのか。真相は結局わからなかった。
1992年。1人の作家が、この謎を解き明かそうと思い立つ。作家は男たちのかつての妻や恋人たちに取材を始める。
責任感の強い主任。まずまずのベテラン。若手の新人。
灯台守の男たちの誰もがそれぞれに秘密を抱え、それぞれに闇を抱いていた。そして妻たちも。
物語は20年前と現代(1992年)を行き来し、男たち女たちのそれぞれの秘密を少しずつあぶりだしていく。
狭い空間で3人だけの暮らし。時々補給の船が来るが、ひとたび海が荒れれば、外界とは完全に遮断される。食べ物も単調になりがちで、新鮮なものが自由に手に入るわけではない。男たちは仕事の時間以外は、ボトルシップやクロスワードなど時間つぶしの趣味に興じるか、テレビでも見るしか仕方がない。
もちろん、こうした暮らしに耐えられない者もいるのだが、実はある種、向いている者もいて、閉塞空間にこそ安らぎを見出すこともある。
とはいえ、わだかまりがある者同士がいた場合、さて何が起こるだろうか。
一方、女たちの暮らしもまた独特なものとなる。夫は遠い海の上。そう頻繁には帰ってこない。子供に何かあっても、家庭で困ったことが起きても、自力で何とかするしかない。同じ灯台守の家族同士で助け合うこともあるが、やはり心許なさはある。すれ違いが重なり、夫婦の間の隙間風が大きくなっていくこともある。
本書はフィクションだが、実際、1900年、イギリス北部の灯台で3人の男が消えたという事件がある。さまざまな説が出たが、結局のところ、真相は不明だ。
本書は時代を少し後にし、場所も移している。
物語は事件の周囲を遠巻きに回りながら、少しずつ近づいていく。
3人のうちの1人は実は前科者とわかり、彼かその仲間の仕業かとも思われる。
一方、人妻に邪心を抱いていた者もおり、また、大切なものを亡くし心に残る深い傷を抱えた者もいる。
謎の訪問者。妻が持たせてくれた少しおかしな味のチョコレート。過去からやってくる亡霊。さまざまな手がかりがありつつ、どれも事件の決定打というには弱い。
そして作家の手により、最後に事の顛末が提示される。
しかし、それは本当に真相なのだろうか。
ミステリとしてはやや弱い。それよりも「灯台」になぞらえた孤絶状態を味わうことこそが本作の主眼であるようにも思う。
縹渺と広がる海にマッチを立てたように灯台が立つ。
そこに灯る光は希望なのか、はかない生の証なのか。
波の音が幾度も耳を打つ。
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英国コーンウォールの灯台から3人の灯台守が姿を消した1972年と20年後と交互に語られていく。3人の灯台守とその妻とが語る事でそれぞれが抱えている秘密が明らかにされていく。ゴースト要素もふんだんに入っていながら、釈然としない事件後の日々を暮らしていくと言う切なさが響いた。
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舞台は英国、コーンウォール。海に向かってそそり立つ荒々しい海岸風景で有名な場所。
女性のペンになったとは思えないほど、情景描写が素晴らしい。
装丁でまずイメージする読者はどんどん、展開して行く心理のうねりに呑み込まれて行く。
英国で20Cに実際有った事件にヒントを得たとある。
舞台となった灯台も三人の男と家族たちも無論フィクション。
しかし、血が通った会話、盛り上がった肉に秘められたエネルギー、目線の動き、畳みかける会話の下に潜む言葉とは裏腹なよこしまな感情等々実感を伴って伝わってくる。
原題はランプライターズ。灯台守りの英語名は”ライトキーパー”
敢えてその名詞を用いずに、ランプライターズとした意図は消えた3人の男を巡る女たち、家族、それぞれが交互に何らかの「灯りを灯す存在であった」事を伝えんとした作者の想いからだろう。
読み終えるのに意外とかかった時間はゆっくり海を照らす灯台の灯りにも似た芒洋とした灯りを感じさせて終えたいい読書となった。