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読み始めてこの登場人物たちがどのようにつながっていくのか楽しみながら読みました。むごいことをする父親、根気よく犯人をつきとめる刑事、なぜ殺人を犯してしまったのか犯人心理、いろいろな交錯をくりかえしそしてラストへの流れ。謎が謎を呼ぶてに汗にぎるスリル感だんだんとわかって行くつながり。あなたも考えてください。スリルを味わってください。
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1996年11月5日。
人気の塾の経営者、戸川勝弘54歳が教室で何者かに花瓶で殴られて殺されるという事件が起きました。
被疑者は阿久津弦35歳で戸川の教え子でした。
事件から二年間、刑事の平良正太郎は追っていますが、見つかりません。
小学六年生の橋本波留は父が母と離婚し団地に父と二人暮らし。父は波留に3歳の時からバスケットボールを教え、波留は180センチ以上ある身長をいかして、ミニバスの選手です。
父親は働かず、波留が一度車にはねられて、3百万円をせしめたのに味を占め、波留に当り屋をやるように命じ、波留は食事も満足に与えられない生活をなんとかするために父のいいなりになり、車に当たる度に転校をするという生活をしています。
ある時中学校の同級生の女性の家に匿われていた阿久津と波留が出会います。
波留は女性に隠れて食事を分けてくれる阿久津を慕うようになります。
阿久津も戸川を教師として慕っていました。
阿久津は本当に戸川を殺したのか…。
事故であるならなぜ二年間も逃げ続けるのか…。
戸川に教わっていた頃から18年もたっているのになぜこのタイミングで動いたのか…。
などの謎が出てきます。
阿久津に対する波留の思慕が痛いほど伝わってきました。
犯人ではありますが、口数の少ない阿久津の存在感がもの悲しさを感じさせる、泣かされるミステリーでした。
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とても…、とても、とても、よかった。
知っていた、でも、忘れて生きていた…自分には直接関わりがないことだから、というのは言い訳にならない。
終盤の衝撃に頬を張られた気がし、湧き上がってきたさまざまな感情に戦慄した。
1996年、横浜市内で学習支援塾を経営していて、信頼も厚く、誰からも慕われていた戸川が殺害された。
早々に被害者の元教え子、阿久津が被疑者として捜査線上に浮かぶが、事件発生から2年経った今も、被疑者の足取りはつかめていない。
阿久津は惣菜店にパート勤務している豊子の自宅の地下室に匿われている。
一方、馬の合わない上司に煙たがられ、捜査の前線から外されながら、この事件の捜査を続ける刑事、正太郎。
父親から虐待を受けている小学生の波留、その友人の桜介。
事件が起きなければ、阿久津と関わることはなかったであろう4人の視点から紡がれていく、絡み合い、思いもよらない展開を見せていく社会派ミステリー!
重いテーマを含んでいるので、万人にオススメはできないけど、今年の私のイチオシはこれで決まり!!
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2022/08/09リクエスト 2
1996年、横浜市内で塾の経営者が殺害された。
被害者の元教え子が被疑者とわかるが、事件発生から2年経っても見つけることができず。
道標(どうひょう)
元教え子が塾の先生とのエピソードを語るとき、先生の、指す方向についていけばいいのだと思った、と。
いろいろなエピソードが、いろいろな人からの視点で語られ、最初わからなかった。
一つになんとなく纏まってきてからは速い。
同級生が殺人犯だと知ってかくまう離婚した女。
上司にいびられながら地道な捜査を継続する刑事。
父親から当たり屋を要求される、少年。
その少年を心配する、恵まれた環境にいる少年。
殺人者だと追われた男は、はっきり言わないと理解ができない障害があった。それは見た目からはわからない。わからない障害を持つばかりに、母親も周りに惑わされ、その男に優生保護法的思想に染まった処置を受けさせる。
優生保護法が廃止されたのは1996年だと知り驚愕。
不幸の連鎖が、止まりますように。
波瑠と桜介が生涯の友になれることを願って。
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1996年、横浜市内で塾の経営者が殺害された。被疑者は操作線上に浮かぶものの事件発生から二年たった今も、足取りはつかめていない…
終盤は涙を拭き拭き読みました。こんな事があっていいのかと理不尽さに怒りを覚えました。実際に存在した法律だなんて信じたくない。
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ある殺人事件をきっかけに4人の視点で描かれていく物語。
どうして殺人を犯してしまうことになったのか・・・
犯人を取り巻く4人それぞれの人間関係の”曖昧さ”が歯がゆくもあり、苛立たしくも感じました。
物語はなんてことなく進んでいくのに、内容は重く、暗く、ある意味では衝撃的でした。
先が見えなくても何かにすがって生きていく他ないし、それが正しいかどうかなんてきっと誰も分からない。
どうかその先に光が見えるよう、祈りながら読み終えました。
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また一気読みしてしまった。芦沢央さん、息つく暇もない物語の展開はさすが。業が深い内容で心が痛い。良かったねえと言えるシーンもあるので救いがあって良かった。
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※
読む前に想像していた内容と全然違う物語に、
戸惑いながら読み進めました。
序盤から中盤にかけて一つの問題に視点を
絞ったストーリーかと思いましたが、
中盤から後半にかけて俄かに別の問題が
浮かび上がり、その後の展開を予想しつつも
想像通りに進んで欲しいという思いと、
どうか想像を丸ごと覆して欲しいという
思いを抱えつつ祈るように読切りました。
読後、『流浪の月』を読んだ後のような
脱力感とやるせなさを思い出し、
同時に『正欲』を読んだ時のような
何が正しいのかわからなくなる混乱と
息苦しくなるほどの戸惑いが蘇りました。
購入し手元に持ちたいと感じた一冊です。
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図書館本
登場人物達の視点で物語が進んでいき、これがどう繋がるんだろうと前半はあまり読み進められなかったけど、後半から一気に物語が進展してのめり込んで読みました。
色々と考えさせられる作品でした。時代設定が過去なのも理由があって納得しました。
芦沢作品の中でも今までとは少し違う感じで読み応えありました
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某悪しき法令がテーマなのだが、それが分かると中々なネタバレになってしまい、かといってそれについては知りたくない読みたくないというケースもあるかと思うと悩ましい限り。
複数の登場人物の視点で描かれる作風で、かなりサクサクと飽きずに読める。
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とてつもなく重い荷物を手渡された気分。
あの時代はそれが正解とされていて、現在は「あ、ごめん間違いやったわ、なしなし」ってされていること。
私にとっては強烈なワードすぎた。
物語の感想より「もし自分の子どもが…」って考えると正解がわからない。
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まず登場してくるのは小学6年生の少年2人。
そのうちの1人の少年が、2年前に起きた殺人事件の犯人と接点をもったところから話が加速し、昭和の時代から平成8年まで施行されていたある法律に行き着く。こんなおぞましい法律がまかり通っていたことを知らずに生きていたのは、1人の人間として恥ずかしいし、この本に出合えたことは本当に感謝したい。
非常にセンシティブな内容ながらストーリーとしてテンポが良く、登場人物たちにもそれぞれに共感する部分があった。
育った環境がまるで違う2人の少年のラストは、名シーンだ。これから大人へと成長していく彼らを、正しく導いていけるのか、それは大人たちの責任だ。
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子どもの頃の自分から、涙がわんわん出た。
何が正しいのか、どうすればいいのか
大人に相談できずに噤む口。
膨らむ不安。
抱えきれずに八方塞がり。
あの竦んだ足元の感覚がくっきりと思い出し
すっかり子どもに戻された。
不安定な子どもの心の揺れを見事に描き出す表現力。
一貫として見える「正しさ」も
見る角度で様々な形をしていたり
裏で別の顔をしていたり
時を経て変色したりと思うと只恐い。
「夜の道標」
このタイトルが胸に刺さって仕方ない。
この作品が指し示すものを
闇の中から見い出して
大切なものをきちんと大切にできる
そんな夜明けの道へと繋げたい。
この作品を通して
初めて知ったことがあって。
知ることができたこと
そのことについて考えることができたこと。
そのすべてが、芦沢央さんがくれた
これからの未来へと続く
大きな道標となったように思う。
この書影を見る度に
なぜか涙が込み上げてくる。
目頭が熱くなるとか、そんなんじゃなくて
胸から迫り上がってくるものがある。
この作品には、そうさせる何かがあるんです。
心に波紋が広がり、きっとずっと鳴り響いていくミステリー。
10周年記念に相応しい傑作です。
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生活が不安定な状況にある人々が、殺人事件の容疑者と関わる中で、事態が動き、収束していく様を描いたミステリー。全体的なトーンは暗く重い。
事件の発生は1996年11月5日。知的・情緒に障害を持つ子、学習障害や不登校の子を個別に指導する塾の経営者が殺される。
警察は元教え子の阿久津弦を件の容疑者として特定するが、阿久津の消息は途絶えていた。
事件を追うのは刑事の平良正太郎。彼は捜査に政治が絡むことに反対したため、上司から疎んじられ、いじめやパワハラを受けていた。
他に3人の男女が阿久津に関わる。阿久津と中学で同級生だった長尾豊子は夫に裏切られ、惣菜店で働いている。小学生の橋本波留はバスケットボールが得意だが、金のない父親に当たり屋をさせられていた。波留と同級生で同じバスケットボールチームに所属する仲村桜介は親友の波留が変わっていく姿に戸惑う。
小説の構成はこの4人の立場から語られる形になっている。
阿久津を半地下に匿う豊子、空腹感から食物を求め阿久津と出会う波留、その波留とまた話をしたいと追い続けるうちに波留と阿久津の関係を知る桜介。
旧優生保護法による強制的な優生手術と知的障害者の性、人権といった社会的問題を背景に据え、林間学校へ阿久津と波留が向かうロードムービー的な場面も盛り込まれている点は評価したい。
ただ、描かれている阿久津の言動は粗暴ではあるが、同時に物事の本質を見抜く力を示しているような気がした。現実にはこのような障害者の形態があるのかどうかという疑問がわき、表層的なミステリー小説に終わっているようにも思った。
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どんどん引き込まれ、一気に読みました。それぞれの視点から物語が進行していき、終盤に近づくにつれ、その真実に衝撃をうけました。
犯人である阿久津が、かつてされたことはとても辛いことではあったけれど、果たしてそれは間違いなのか、正しいのか、私には明確な答えがわかりません。阿久津のそれと程度の差はありますが、発達グレーゾーンをかかえた子供を持つ親の立場としては、その親の気持ちも痛いほどわかります。
我が子と重なり、辛くなるところもありました。