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詐欺に関するショート3作。
騙し、騙されということで、犯罪に絡むそれぞれの心理描写が見事だが、最後のオチはちょっと違和感があった。
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ジェンガって積み重ねて遊ぶゲームでしたね、嘘を積み重ねると重い物がのしかかる時には罪となるタイトルに苦笑なるほどね
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3つの嘘の話
どれもお話としては面白かった
身近にありそうな話題で読みやすい
辻村深月さんらしさが薄い気がした
個人的にショートストーリーがあまり好きではないから評価低め
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記載途中です
2020年のロマンス詐欺
これぞ辻村さんの作品…
最初のリードからの、見事な終わらせ方
ミステリ要素に加え、ロマンス詐欺の怖さやそこから抜け出せなくなってしまう追い詰められた心理描写なども面白かった。
人生は、簡単には終わらないし、変わらないということを感じた
5年目の受験詐欺
詐欺に引っかかる人は愚かだ、と思うこともあるけど、そこには誰かを幸せにしたいとか、何とかしてあげたいとかっていう善意につけ込んだものや、弱さを突いたものがほとんど。だからその人たちを責めてはいけないと思った。
また、子供は思ってる以上に大人になっていて、大人のことをよくみている。
あの人のサロン詐欺
人気漫画家の偽物としてオンラインサロンを経営…という絶対バッドエンドが見えてるテーマをこんな形で終わらせるのか、と感動さえした。
人生は終わらないし、続く…という本作全体のテーマを強く感じる話でした。
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詐欺のお話、3作。
学生が振込詐欺に巻き込まれる話、受験の裏口詐欺の話、人気漫画家のサロン詐欺の話。
どの話も、人のなかなか表には出せない、易々と人に話せない心の奥深くにある暗い感情を、とても深く言語化してあった。
辻村美月さんの本は、本当に上手く人の感情を、特に黒い部分の感情を言葉で表していると思う。
読んでると登場人物と一緒に辛くなったり悲しくなったりして、読み終わった後にはそれがある意味の教訓と化して自分の中にストンと落ちる、そんな感じの本だ。
受験の話は、親子の話でもあるので私にはグッときた。
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詐欺に加担してしまった大学生、詐欺にかかってしまった主婦、詐欺をおこなうアラサー独身女子。詐欺をテーマにした3つの短編集でした。
辻村深月さんの描く女性は作品変わってもどこか一貫して共通点がある気がします。あまり気は強くないけど芯はしっかりしてて頑固な印象。そして割と独りよがり。
読みやすいなぁ。と思うのはこの人の著作が好きだからなんだと思う。
どれも人の信じたいという心に漬け込んだ詐欺事件なんだけど、あくまでも犯罪事件モノとして事実にスポットが当たるのではなく、ヒトの気持ちや心の揺れ動きにスポットが当たってるがいい。
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小さな嘘や秘密がジェンガのように重なって、気づいたら後戻りできなくなっていた―という短編が3つ収められている。それぞれに関連性はなく、完全に独立した話。ミステリーというほどの複雑さはないため気軽に読めるし、読後感も爽やか。読み直そうとは思わないけれど、手に取ってよかったと思える一冊。
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知らない間に詐欺に加担してしまったり、詐欺の被害者や加害者になってしまったり、そういったことは自分とは全くの無関係な話だと思っていた。しかし、この本は、置かれた環境によって、誰しもが一線を超えてしまう可能性があることを暗示しているようで怖かった。
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『ロマンス詐欺』『受験詐欺』『サロン詐欺』の3篇。
騙す側と騙される側。
この本の詐欺師は皆最初は普通の人でどこかで足を踏み外してしまった。
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どの物語も本当に身近にありそうなものばかりで…
なるほどなと思う一冊でした。
でもやっぱりコロナ禍のロマンス詐欺のインパクトが1番あった気がします。とても良かった!
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嘘をつくたびにジェンガが抜かれてぐらぐらになっていく、きっとそういう危うさを描いてるんだろうなと思い手に取ってしまいました。
3つの短編はどれも、嘘をついた主人公の「緊迫とした気持ち」が生々しく表現されており、読後に疲労を感じました。
しかし最後は、嘘を受けいれた先が描かれ、希望を感じることが出来る。さすが辻村さんです。
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あなたは、人を騙したことがありますか?
なんともいきなり過激な質問ですね。こんなことを言われて、”はい!”とスラスラ答える方もなかなかいないでしょう。人を”騙す”ということは、人を”欺く”ことです。そう、”欺”という字が入ったことではっきりしますが、それは、『詐欺』行為であり、『犯罪』行為になってもしまいます。では、
あなたは、人に嘘をついたことがありますか?
こちらは、どうでしょうか。なんだか嫌な質問です。しかし、この質問には、嫌々ながらも”はい…”と答える人しか逆にいないのではないでしょうか。かくいう私も今までのXX年の人生の中で何度も嘘をついてきました。プールに入りたくなくて、先生に風邪をひきましたと言って体育を見学しました。朝、寝坊してしまって何だか面倒になって、結局、体調がすぐれず…と上司に連絡して会社を休みました。そして、こっそり○○○して、妻に…やめておきましょう。ほころびはどこから見つかるか分かりませんからね(笑)。
私たちは、その人生において大なり小なり嘘をついて生きていると思います。”嘘も方便”という言葉がある通り、人間関係を円滑に回していくためには、嘘は必ずしも悪ではなく、場面によっては嘘によってその場が円滑に回ることだってあるのだと思います。この感覚は、人生経験を積めば積むほどに見えてくる、そんな風にも思います。しかし、人に”嘘をつく”ということは、人を”騙す”と言い換えることができるもの、そして突き詰めれば、それは、『犯罪』行為に繋がってもしまうものでもあります。この辺りの線引きの難しさ、人はこの見極めを体得しながら人生を生きていると言えなくもありません。
さて、ここにそんな”嘘をつく”=”人を騙す”という行為に着目した作品があります。”騙す側”と”騙される側”、それぞれの言い分に、それぞれの立場に立った人たちの思いを感じるこの作品。『実は、谷嵜レオって、知り合い ー なんだよね』、『え?そうなの?』という『最初は、些細な始まりだった』という小さな嘘を起点に、結果『入念な嘘を吐き続け』ることになる主人公の姿を見るこの作品。そしてそれは、そんな”騙し、騙される”、それぞれの人生のその先に『ジェンガ』というスリル満点のバランスゲームの危うさを感じる物語です。
『まさか、こんな2020年の春が待っているとは』。『大学の入学式が飛』び、『新歓コンパや授業やサークル活動、バイトすら始められないキャンパスライフなんて、想像もしなかった』と思うのは主人公の加賀耀太(かが ようた)。そんな中、『今月の仕送りが半額になる』という連絡を実家から受けた耀太は実家のことに想いを巡らせます。『地元で評判のいい定食屋を営んでいる両親の元に育った耀太は、『みんなが受験するから』と考えもなく受けた入試に合格、『地元のことは嫌いじゃな』いものの『東京に行ける、という新しい予感に胸が高鳴』りました。そんな中、世界を襲ったのが『新型コロナ』。『緊急事態宣言が全国に拡大された』ことを受け、営業休止に追い込まれてしまった『父と母の定食屋』。そして、父親から『生活費はバイトして、自分でどうにかできるか?』と訊か��た耀太は、『できる』と答え、一人東京に出てきたものの、『未経験者は採用できない』等言われ、なかなか働き口を見つけることができません。『こんなキャンパスライフになるなんて』と、未来の見えない日々に苦しむ耀太。そんな時、『以外な相手から』『LINEの着信』がありました。『地元の幼馴染の、奥田甲斐斗』。『中学まで一緒で、高校以降は進路が別々になった』という甲斐斗は、『中学では、所謂遊んでいるグループの奴らとよくつるんで髪を染めたりしていたタイプ』でした。『一体何の用なのか』と、LINEを開くと、そこには、『ヨウタ、おひさ。今、ひま?オンラインでできるバイトあるけど、しない』というメッセージが書かれていました。『山形県内の私立大学の一年生になっていた』甲斐斗から、『彼の”先輩”に紹介されたこの仕事で食いつな』いでいると説明を受けた耀太。『割がいいバイトだから本当は人に教えたくなかった』という甲斐斗は、『先輩に話したら、ヨウタ、スカウトしてもいいことになった』と続けます。そして、『中古のスマホ』や『ノートパソコン』と共に『たくさんの名前とアドレス、アカウントが並ぶ表データが入ったUSBメモリ』が届きました。『表のアドレス、百件送ればだいたい一万円もらえる…』と説明する甲斐斗に、『この表は何なの?』と耀太が訊くと、『ひっかかりやすい人のリスト。これまで何回か恋愛系のサイトとかにアクセスしたことがあって…そこから結構値段するものを買ったりとかした相手…』と甲斐斗は説明します。さらに自分用の『偽の顔写真やFacebookのアカウント』の説明も受ける耀太。何か不穏な空気を感じるものの『定食屋を休んでいる』両親のことも気になる耀太は、そんな『バイト』を始めます。そして、そんな日々のその先に全く予想もしなかった未来が待ち受けていました…という最初の短編〈2020年のロマンス詐欺〉。『コロナ禍』の今の時代だからこその起点を元にページを捲る手が止まらない見事な展開を見せてくれる好編でした。
『騙す側、騙される側、それぞれの心理を巧みに描く小説集』と本の帯に紹介されるこの作品。「オール讀物」に三回に渡って連載された三つの短編をまとめた短編集となっています。短編間に繋がりはありませんが、帯の紹介から類推できるとおり、”騙し、騙される”人たちの両方の視点からそんな犯罪行為の裏側にある人の感情に絶妙に迫っていくという点が共通しています。
では、まずはそんな三つの物語の内容を簡単にご紹介しましょう。
・〈2020年のロマンス詐欺〉: 『四月になっても大学は始まらなかった』という『コロナ禍』の2020年に山形から東京のL大学に入学した加賀耀太が主人公。『緊急事態宣言』により実家の定食屋が営業できなくなり、仕送りも不安になる日々の中、『幼馴染の奥田甲斐斗』から『割がいいバイト』を紹介された耀太。男性として『大倉誠吾』、女性として『渡辺彩美』と名乗るよう指示を受けた耀太。どこか不穏な空気も感じながらも『偽の顔写真やFacebookのアカウント』も受け取り、甲斐斗に言われるがままに、『マニュアルの模範文面を参考に』渡されたリストに乗った人物に次々とメールを送り始めます。
・〈五年目の受験詐欺〉: 『お弁当は持ったのね?』等々言いながら息子��大貴を送り出す風間多佳子が主人公。そんな多佳子はある日、島村と名乗る女性から『五年ほど前に「まさこ塾」に通われていましたよね』という電話を受けました。『あれ、詐欺だったってご存知ですか』という島村は自身が『百五十万』払ったと続けます…。『手のかからない子だった』長男の誠一に対して、次男の大貴の中学受験に気を揉む日々を送っていた多佳子はかつてのママ友の後藤しず香から『まさこ塾』の話を聞きました。そして、『中学受験専門の教育コンサル』という『まさこ先生』の元に通うようになった五年前の多佳子…。
・〈あの人のサロン詐欺〉: 『こちらを見る目、目、目。今日の参加者は三十名』という面々を見る紡(つむぎ)が主人公。『谷嵜レオ創作オンラインサロン オフ会』とボードに書かれた会合は、最初は『ファンとの単なる交流イベント』で、『連載中の漫画の感想を一方的に聞くだけだった』ものの、『今では、創作の講座がメイン』になりました。『会員たちの力作を広げ』、話をする紡は、『非公式の会ですから、今お話したこと、ネットへの転載は禁止です』、『編集部にバレると、もう二度と会が開けなくな』るからと付け加えます。『年齢も性別も』非公表の『覆面作家』の『名前と作品、立場を』騙る紡は…。
三つの物語はおおよそ上記のような内容で展開します。かなり詳細に触れているように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、それぞれ肝心な展開の前で止めています。一方で、版元の文藝春秋社の内容紹介はその先にまで触れていて、いやそこまで触れてしまうと…短編なのに…という内容になっているようです。気になる方は私のレビューまでとされることをおすすめします(笑)。
そんな作品では、上記の通り”騙し、騙される”というそれぞれのシチュエーションの物語が展開します。『「詐欺」は人の願望や欲望、その人の「今」が色濃く滲む犯罪です』と語る辻村深月さん。そんな辻村さんは、『詐欺』という両者がいて初めて成り立つ『犯罪』の”被害者と加害者、どちらの側にもあなたの今があると感じていただけたなら、とても光栄です”と続けられます。
では、そのそれぞれの側について、順に見ていきたいと思います。まず、〈2020年のロマンス詐欺〉と〈あの人のサロン詐欺〉では、”騙す側”に立つ主人公が描かれますが、微妙に立ち位置が異なります。前者が”騙す”組織の末端に組み込まれて抜け出せなくなっていく大学生が描かれるのに対して、後者は自身が”騙す側”に成り上がっていく無職の女性という違いがあります。当然のことながら、人を”騙す側”の人間になんて同情の余地はないはずですが、そんな”騙す側”にもやはり当然に理由があります。積極的に”騙す側”に回るつもりなど毛頭なかったはずの主人公たち。それぞれの物語の前半を読む限りは同情を誘う物語がそこに描かれます。そこからは、決して特別な人物でもない、どこにでもいそうなごく普通の人物の姿が浮かび上がります。そんな人物たちが、”堕ちていく”様が描かれていく物語には、思わず息を呑むものがあります。いずれも描き方が巧みですが、〈2020年のロマンス詐欺〉の方は、物語冒頭に『コロナ禍でのストレス?大学生が会社員を暴行』から始まる『埼玉日報 5月25日朝刊』の記事が掲載され、この物語の結末が冒頭に提示されるという形をとった後に、その舞台裏が描かれていくという凝った手法が取られています。同様な手法は、こちらは、フィクションではなく本物のニュース記事を元にしたものですが、角田光代さん「三面記事小説」があります。これら二者において、辻村さんの作品の特徴は、フィクションとは言え、今の世の中を襲い続ける『コロナ禍』を物語の背景にしてリアル感を出しているところでしょうか。『コロナ禍』を前提にした作品も少しづつ見かけるようになってきましたが、この作品はその中でもその状況を直視したものです。『コロナ禍』で『世界の動きが止まったように見えても、見えないところに需要はある』という『コロナ禍』を狙った犯罪の存在。やがて、過去のものとなる前に、そう、ある意味で”旬のうち”にお読みになることをおすすめします(笑)。なお、補足ですが、この作品にも辻村さんの過去の作品に繋がるある人物の名前がふっと登場する辻村ファンへのサービスが用意されています。誰が登場するのか?こちらもお楽しみに!
次に、”騙される側”ですが、こちらは〈五年目の受験詐欺〉で描かれていきます。短編タイトル通りの犯罪に巻き込まれていく主人公。しかし、この作品で上手いと思うのはリアルに”騙される”瞬間ではなく、そこからタイトル通り五年が経った後の物語だという点です。”騙す側”に”堕ちていく”人がいる以上、当然に反対の立場、つまり”騙される側”になってしまう人は必ず存在します。冷静に考えることができる中には人は正常な判断ができる余地があります。しかし、そんな判断ができなくなっていく人の心境、追い詰められていく人の心境がどんなものであるか、どこに原因があるのか、辻村さんの見事な筆の力で、そこには息を呑むような主人公・多佳子の心の揺れが描かれていきます。”騙される側”は、この真ん中に置かれた一編だけですが、長編を読むような読み味が味わえもするこの作品。こちらも読み応え十分な物語が描かれていました。
言葉巧みに“騙す側”と、弱った心につけ込まれる”騙される側”、この作品ではその両者それぞれの立場から、それぞれの”側”に回った人たちのそれぞれの心の内が細やかな感情の機微の描写の中に描かれていました。『一線を越えてしまったら、もう戻れない』と”騙す側”に堕ちる危険が『切実に身近にある』ことを教えてくれるこの作品。『今の私だったら、絶対に騙されない』と”騙される側”に回ってしまった過去を冷静に見る様が描かれるこの作品。そんな”騙し、騙される”感覚を『ジェンガ』というバランスゲームの危うさに比喩するこの作品。
“騙し、騙される”という犯罪行為が描かれているにも関わらず、極めて読後感の良い結末に、辻村さんの語りの上手さを改めて感じた素晴らしい作品でした。
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気付いたら嘘をついてしまい、結果、詐欺を働いたことになる人を主人公にした短編集。「嘘つきジェンカ」って題名が、読み終わってわかる。詐欺師って、嘘を積み上げていき、騙される人はそれを真実と思い抜いていく。そのバランスが崩れた時、ジェンカは崩壊する。
最後がハッピーエンドなところがちょっと現実離れしているが、作者はそこに救いを求めたのかな。
「かがみの孤城」「傲慢と善良」は、その年のベスト10に入るくらい面白かったから、それに比べると今回は短編だけに、やはり長編読みたいなと思う。
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詐欺に纏わる物語。連作短編集ではなく、3つの短編から成る物語。
詐欺に纏わる物語なのに、どの物語もなぜか読み終わるとほっこりし、前向きにさせてくれる。
①2020年のロマンス詐欺
大学1年生の燿太は幼馴染の紹介でロマンス詐欺をすることに。やり取りをしているうちにDVをされているという人妻を助けることを決意し、家に向かうと・・・。
②五年目の受験詐欺
優秀な長男と優秀ではない次男。中学受験を控える次男に不安を抱えた母親は、裏口入学まがいの詐欺に引っかかる。5年後詐欺に引っかかった母親に息子が言った言葉は。
③あの人のサロン詐欺
36歳の紡は人気漫画家を好きなあまり、その作家がメディアに姿を現さないことをいいことに、作家になりきって非公式のサロンのオフ会を開催していく。実はそのファンの中に本物の作家が混じっていて、さらにはその作家が犯罪を犯したことにより、紡の立場も危ういものになっていく。
①のロマンス詐欺は、普通の大学生が詐欺とは知らずにいつのまにか詐欺行為をさせられていく様が恐ろしい。こういう普通の人間が引き込まれてしまうんだろうなぁ。抜けたくても気付いた時には遅い。普通の人が詐欺の片棒をかつぐ実態を見せつけられているようで不気味だった。だが、ラストは救われる。もう一捻りさせてとことん怖い物語にもできただろうが、このようなラストにしたことによって後味が全然違ってくる。
②の受験詐欺については、これも誰でも騙されてしまいそうな展開に慄く。藁にも縋りたい気持ちはわからないではないが、同時に息子を信じないことになってしまう。ただ、真実を知った息子がいい。高校生って案外大人なんだなと思わされる。
③のサロン詐欺は、嘘を隠すためにさらに嘘をついて後戻りできないパターン。これはなんとなくわかるような気もするけど、この主人公は完全にやりすぎ。本気で自分が漫画家だと信じ込み、親まで騙している。そこまではいいのだが(良くないが)、本物の漫画家が下着泥棒をしたことによってニュースになる。このピンチをどう切り抜けるかと思っていると、これもまさかのいい感じで終わる。
全ての物語をラストで救ってくれる。詐欺を題材にしているのにあくまでも読後感は爽やか。その辺はやっぱり辻村深月なんだなぁ。
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騙す時って、もうここまで追い詰められて自分では善悪の判断なんてできない状況が手に取るようにわかる。騙される時もそれは同じ。でも大切なのは騙し騙されて苦しむ自分にどう向き合うか。客観的に考えられたら、もう次に進んでいいのではないかって思う。騙された自分も騙した自分も受け入れて進めばいいんじゃないかな。