紙の本
今、これを読むことの風刺性
2023/01/18 04:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たこい - この投稿者のレビュー一覧を見る
近年の新訳含めさまざまなバージョンのある古典的作品。これは中央公論社「世界の文学53 イギリス名作集、アメリカ名作集」(1966年刊)の吉田健一訳を底本に、ヒグチユウコさんのイラストをふんだんにあしらい、ちょっと児童書っぽい凝った装丁を施した一冊。
それにしても、人間のやることはいつの世も変わらないことを痛感させられる。原著が書かれた1945年なら、モチーフは当然あの国だろうが、その国のその後70年以上を経ての現実の動きがあまりにも本書そのままで笑えない。もちろん、その国以外でのもろもろの情勢もほとんど本書に内包されている要素に思える。歴史は何度でも繰り返す…
蛇足的だが、この訳者の係累に某国の某大臣がいるというあたりが今読む場合の最大の皮肉かもしれない。
投稿元:
レビューを見る
【オンライン読書会開催!】
読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です
■2022年10月29日(土)15:00 〜 17:30
https://nekomachi-club.com/events/9c33e11aae8e
投稿元:
レビューを見る
インテリジェンスの異なる個体で構成された集団を、一部のハイインテリジェンス層が組織するときに陥りがちな独裁に関して鋭く描かれている。自分が独裁的なリーダーシップに陥りがちなので読感はよくないが、だからこそ繰り返し読み続けたい。教養を諦めて他人に任せることの愚かさも描かれている。気づかず搾取され、その責任を負おうとしない非支配者にも読んでもらいたい。
投稿元:
レビューを見る
短いお話だが、ゾッとする。
より良い生活をするために、ジョーンズ氏を追い払い、自分達で農園を切り盛りして行こうというところまではよかったが。。。
動物たちの間でもゆっくり支配者と従属するもの、派閥などが出来上がっていく。
言われたことを鵜呑みにして前よりいい生活を送っていると信じている動物たちが切ない。
自分への今宿にもなった。
投稿元:
レビューを見る
理想としていた社会主義体制が独裁政治となっていく様子が、寓話として描かれている。
学識のない動物達が、豚の口車に乗せられて搾取されて行く様子がひたすら恐ろしい。正にこのような事がある国で起こっている(いた)。事実が捻じ曲げられ洗脳され、命があまりにも軽く扱わる社会。再読したい作品。
投稿元:
レビューを見る
翻訳者が変わるとどんなに変わるのだろうか??
これは翻訳に、吉田健一を迎えた話題の1冊。
おとぎ話なのか?革命の話なのか?
人間を追い出した農園は「動物農園」と改名する。
事件や悲劇も起こり、
その顛末。
投稿元:
レビューを見る
ヒグチユウコさんの挿絵目当てで読んだ。皆が丸め込まれていき、犬が現れ、辛い労働ばかり。豚が二本足になる恐ろしさがじわじわ染みてくる。
投稿元:
レビューを見る
あたかも正論のように、ごく当たり前のことのように、恐ろしい物語がつづられてゆく。
こういう人そのへんにおるなあ、、という動物がたくさんでてくる。
投稿元:
レビューを見る
未読の名作に興味が湧き、まずは手元で積読になっていた石ノ森章太郎による劇画版を読んだところで、次に手にとったのは、やや古めの翻訳に、ヒグチユウコの描き下ろしの挿絵がぜいたくについた一冊。
邦訳初出:『世界の文学53 イギリス名作集 アメリカ名作集』(1966年、中央公論社)
投稿元:
レビューを見る
人間を追い出し、動物だけで規律を作り経営を始めた農園は初めのうちはうまくいっていたが徐々におかしくなって行く。まるであそこの国ではないか、あの指導者でないかと読みながら思う。動物に置き換えての痛烈な人間批判。
投稿元:
レビューを見る
オーウェルの「動物農場」は以前、角川文庫版を読んでいた。今回、ヒグチユウコさんの挿絵が毎ページ挿入されているということで、新たに購入したもの。イラストはとてもよいが、翻訳自体は角川文庫版のほうが「革命的」な言葉遣いで好みだった。
同書は「ソ連」を警戒し、社会主義、共産主義を風刺するものとして書かれた、ということは有名な話だろう。しかし面白いもので、読めば読むほど北朝鮮のことが書かれているような気がして仕方がないのだ。
農場の動物たちは、動物を搾取する人間の農場主を力を合わせて追い出し、自分たちで農場を運営する。もっとも頭の良い豚たちが動物たちを率いるようになるが、彼らは人間のためではなく自分達のために働くことに喜びを覚える。しかし、動物たちの生活は一向に楽にならず、むしろかつてよりも苦しくなっているようにも感じるが、もはやそれを思い出せるものはほとんどいない。豚たちは農場を支配し、人間の使っていたベッドで眠り、憎んでいたはずの人間と取り引きをして金を稼ぎ、その金で贅沢な生活をしている・・・・
しまいには2本足で歩き出した豚たちは、人間の服を着て、動物の目には人間とほとんど見分けがつかない姿へと変わっていく。
社会主義の矛盾をうまく描き出した傑作だが、以前読んだ時には気づかなかった一つの点に目が留まった。
動物たちの理想を最も最初に語った豚は、農場の動物たちに「英国の動物」という歌を教える。この歌はその後、動物たちに愛唱されるようになるのだが、この歌は「クレメンタイン」に似ているのだという。
ところで、北朝鮮では金正日が「花を売る乙女」という映画を自ら作り、その主題歌も自分で作曲をしたということになっている。この主題歌がまさに、「クレメンタイン」そっくりのメロディなのである。
金正日はこの小説を知っていたのだろうか。あるいは、社会主義を志す者たちが惹かれるメロディが「クレメンタイン」なのだろうか?
投稿元:
レビューを見る
相当面白かった!ヒグチユウコさんの挿絵がまた世界観にピタリと合っている。
直接関係ないけど働きアリと働かないアリの対比は8:2で働きアリだけにしても、やっぱり8:2で働かないアリが出現する話を思い出してしまった。
登場人物(動物)には世界的有名な独裁者をはじめとしたモデルがいるらしいけれど、人が集まるコミュニティには大なり小なり似たような事が起きてたりもする。そんな事を重ねると豚が読み書きをしたり、馬や牛が草取りをしたりするファンタジーさを通り越して、そんな事はどうでも良くなるくらいリアリティがあり怖い作品。
投稿元:
レビューを見る
岩波文庫と併読。書下ろしの挿絵が気になり読んだ。あとがきもなく、純粋に動物たちが人間から農園を奪取したが、のちに豚が支配者となり恐怖政治に変わっていく物語として読みやすいし挿絵があることで物語に没頭できた。個人的には岩波文庫の単語の選び方(食べものを入れたバケツの王者(中央)/残飯桶の主(岩波))、訳注、付録により、オーウェルの執筆背景と人生を知ることが出来てよかった。しかしなぜスノーホワイトに加担したと自白し処刑される動物が続々と出て来たんだろうか? はめられたのかな? と登場動物の一生を想像しながら読むとゾッとする。恐怖がちりばめられているのに改めて気付く。
投稿元:
レビューを見る
社会主義や全体主義を風刺したジョージ・オーウェルの名作。ソ連のスターリンを風刺したものだと言われている。
敵や悪の存在を作ることで全体主義を浸透させやすくしているところや、理想主義がどんどん独裁政治に発展していく様がこの世でも起こりうる感じでゾッとします。
7つの戒律が、独裁政治を行う豚の都合に合わせて少しずつ修正されていくのが怖いです。1番の働き者だった雄馬のボクサーが屠殺業者に連れて行かれたシーンは一番しんどかったです。
まだ『動物農場』は動物たちが登場人物になっているおかけで、少しソフトになっているのですが、『1984』では人間の世界で同じようなことが展開していくので読む前からビビってます……名作なのでそちらも早く読みたいと思います。
投稿元:
レビューを見る
本作品もテーマが著者オーウェルの代表作「1984年」の中で描かれる「ニュースピーク」に重なる。
それは「全体主義の恐怖政治」において、法(作中では7つの掟)や歴史の解釈(作中では追放された元リーダーのスノーボールが活躍した事実)がこっそり政治の中枢で改訂され、それが知識人らによって流布され、大衆が簡略化されたスローガンを連呼して全体主義が浸透していくという流れ。
資本家の象徴として描かれる元荘園主を追い出して動物による動物のための農場を作ったリーダーのナポレオンだったが、最後は隣接する農園主の人間と密会を重ねるうちに豚のナポレオンが2本足で歩くようになり、服を着るようになり、人間と見分けがつかなくなっていく。
これは労働者のリーダーのはずのスターリンが資本主義国家の英国や米国首脳と会談を重ねて彼らに同化していく様子を風刺している。
オーウェルは言う。
【現代の戦争】とは、支配集団が自国民に対して仕掛けるものであり、戦争の目的は領土の征服やその阻止ではなく『支配構造の保持』にある、と。
そして法や歴史的解釈、ニュースの真相といった政治的教養は、いかにマスコミやフェイクニュース、プラットフォームのアルゴリズムによって自在にプロパガンダに変貌しうるのかを示している。