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佐藤正午さんの「月の満ち欠け」が好きで、あのような素敵な小説を生み出せる作家さんの頭の中に興味を持ち、読んだ。
つくづく作家というのは、クリエイティビティと締切プレッシャーとのせめぎ合いの中で仕事をされているのだと感じた。
クリエイティビティは時間をかければ良いものではない。閃く時は閃くし、閃かない時は閃かない。でも、時間は均一に過ぎて行き、然るべき時に締切は来る。
だからこそ、日常生活の中でのちょっとしたら気付きや出来事に敏感に反応し、小説のネタの肥やしにする。ただ、そのように収集されたネタも、物語の中核になるものばかりでは決してなく、登場人物像を肉付けするための、ほんの数行程度の描写に消えていく。小説というのは、なんて、膨大な情報と思考に支えられた緻密な構造物なのだろうと感じた。
エッセイそのものは、何気ない日常がありのままに綴られており、佐藤正午さんの人となりが手に取るようにわかっておもしろい。
内容は星4つとしたかったが、2冊ぶっ続けで読んでいたら少し最後の方は飽きてしまったので、星3つ。
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小説家の日常を、年に4回春夏秋冬のタイミングで綴ったエッセー集。インターネットの黎明期に関する話題が興味深かった。
それなりに作品を世に送り出している作家時代のエッセーなので、必死さはあまりなくマイペースで作品を生み出している様子を知ることができる。
言葉を大切にしている職業人らしい逸話や、小説のプロットが生まれる場面も知ることできる。
佐藤さんの小説は、残念ながら読んだことがない。本書と共に手にした作品『月の満ち欠け』を早速読みたい。
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文章のシンプルさ、なめらかさ、色っぽさ、ユーモアが溢れる正午さんのエッセイは、いつ何を読んでものめり込んでしまう。憧れる。WBC決勝より憧れる。作者の意図しないところで、カッコ悪そうでいてカッコいい感じが溢れてる(受け取りがわの体制にもよるのはじゅうじゅう)。
1988年から2002年の風景。特にパソコンやインターネットが個人に普及し、もちろん正午さん宅にもやってきてからのあれこれが興味深い。2000年問題や(なつかしい)、パソコンやメールを覗くことで訪れる気持ちの一喜一憂なんかは現代にも通じ、ITの急速な発展というけども、変わってないな、人の心は、と思ったりもする。
小説の書き出しに1年間悩んだり、言葉や詩におもしろおかしくこだわっていく正午さんがほんとに大好き。