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Amazonの紹介より
幼い娘たちとよく一緒に過ごしたショッピングセンター。喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。言葉にならない感情を呼び覚ましていく表題作「この世の喜びよ」をはじめとした作品集。
ほかに、ハウスメーカーの建売住宅にひとり体験宿泊する主婦を描く「マイホーム」、父子連れのキャンプに叔父と参加した少年が主人公の「キャンプ」を収録。
正直、感想を書くのに苦労しました。というのも、日常生活の一部分を切り取っていて、あまり心理描写がなく、行動が大半なので、それらをどう受け止めればいいのか苦労しました。
点が多くあって、それらを線で結ぶことはできても、そこから話が広がらない印象なので、まるで国語の授業を受けているようで、文章力の理解を試されているなと思いました。
約130ページという短めな量なのですが、なかなか理解しながら読むのに一苦労しました。
小説というよりは、詩のような印象がありました。
独特なリズム感ある文章で何度も読んで噛み締めないといけないなと思いました。
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芥川賞候補作品の「この世の喜びよ」は、二人称の視線が慣れていないので少し読みにくかった。喪服売り場で働く女性の「あなた」にどこまで感情移入できるかが肝かもしれない。私は作品の解釈ができずに、ふわっとした読後感となった。
「マイホーム」は、建売住宅の体験宿泊をする女性の物語。夫は家にいる時間が少ないので、家は主婦の城と思っている旦那衆は少なくない。でも主婦にとってもそれほど自分の物でもないのかもしれない。ハウスメーカーの担当者との会話を含めて、家を買うときに遭遇する場面での感情を感じた。
「キャンプ」は、父子と叔父が参加したキャンプでの物語。母親が登場しないことに何か意味があるのかと思ったが、読み取れなかった。子供の視線で進む話は、少年時代に嗅いだ森や川、動物、昆虫のにおいを思い出させる。
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本当に読みにくかった。
とにかく誰の視点で話しているのか分からない。
その上、場面の切り替わりが急で「え?あの話はどうなった?」って思うこともあった。そのシーンをイメージするのに苦労する。
それらに悩まされて内容は全然頭に入らなかった。
個人的には合わなかったけど、いつか読み直して理解できたら面白いのかもしれない。
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あなたは
という二人称から読み手が少し錯覚を覚えながら、「死者の視点なのかも」とか「手紙を書いているのかも」という、時点として未来から一緒に作品を読み進めていく手法がとられていました。
回想シーンで「わたし」になったり、現在形の喋り方となったりと、ふわふわと思い出す行為を共有している感覚が新しく、読んでいて心地良かったです。
この物語ではいくつもの年代の女性が登場します。主人公が、多感な女性たちと女性ならではの視点で、常に悩みながら、伝える事もあれば、胸に秘めたままにする気持ちを、これは普段は絶対に知ることができないですが、この作品を通してまるで一人の女性の心の中を知ることができた感覚でした。
子育てがひと段落した女性であっても、決して完璧ではなく、心の内にはどこか少女らしさが残っていて、でもやはり親であって、という複雑で揺れ動く感情は読んでいて引き込まれました。
文体も好きでした。文章量も少なめでしたので続けざまに2回読んでしまいました。
思い出す、という行為が、後悔からなのか、美化された記憶を愛でているのかは解釈があるかもしれませんが、私は、全体としてどこか美しい思い出として語っている様に感じました。
小さな小さな物語なのでどんな方にでもお勧めできる訳ではないですが、綺麗な文章を求めているような方にはお勧めです。
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7/9の夜、井戸川射子『この世の喜びよ』読了。
芥川賞受賞の表題作のほか、「マイホーム」「キャンプ」の2短編が収録。この人の小説は『ここはとても速い川』(表題作のほか同時収録は「膨張」)しか読んでなかったので、改めて向き合うことになった。
表題作の「この世の喜びよ」。
読み始めに、ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』のような、二人称「あなた」で、歩きながら頭の中をよぎることごとが描かれていてはっとする。それとともに周囲の様子が描かれていて、その、あまりにも普通な感じが逆に新鮮だった。舞台も、新型コロナ禍後を思わせる、とある地方の郊外にあるショッピングモール。そこの喪服売り場で働くパートタイマーの穂賀さんは、フードコートで勉強する15歳の少女に出会い、親交を持ったり、売り場近くのゲームセンターの店員多田さんと休憩時間をペットショップで過ごしたりする。喪服売り場の店員ということで常にモールでは喪服(家がすぐ近くなので通勤も喪服)なので、黒子的なものにも見え、フラヌール的な存在でもあるのかな、とも。まあ、ショッピングモールという日常の場では、逆にとても目立つわけでもあるのだけれど。
当たり前のことだけれど、お母さんだって、お母さんじゃない顔を持っている。途中、旅先で娘たちと温泉に入ったときに、「この人みたいにかわいかったら、って思うことって、まだお母さんでもある?」と下の娘に聞かれる場面がある。
ああ、わたしも分かるよ。若い頃って、自分の親はもう完成されている存在で、成長とか変化とか、そういったものが無いと思い込んでたりするよね。今、その親の世代になってみると、いつになっても自分は未熟で、誰かを羨んだり、自分に不足を感じたり、日常茶飯事ですよ。一生こうなんだろうな。
柴崎友香さんの作風も「カメラアイ」と称されるけれども、井戸川さんのそれもまた、近いような気がする。でも、その解像度や視線は全然違うもの、というのがやはり面白い。今を生きているわたしたちと同じ地面で生きてる、わたしのすぐ近くを歩いている、そんな感じを覚える。優れた書き手は、現実を観察し、そのまま救うように切り取るのが上手いのだなあ。
「マイホーム」は、婚家の近くに家を建てることになった女性が子供を夫に見てもらい、モデルルームに体験宿泊する一晩の話。一人で過ごすうちに、本来の目的であろう家族でここに住むイメージよりも自分が一人で生きていたときのことを考えてしまう。この、担当営業の荒川さんがまたいい。
「キャンプ」は、数家族合同のキャンプに参加することになったおじさんが自分だけ一人だからと誘われて付いていくことになる一晩の話。初対面の大人たちや子供たちの中で、唯一名前が分かるのが、車だった。「アクア、ノア、フリード、シエンタ」と出ていく順番に。
でも、別につまらなかったとかではなくて、子ども同士でちょっとした火遊びなんかもしていて、ちゃんと楽しんでいる。
この交流は一時なのかも知れないし、なにかの形で続くのかも知れない。時間をおいて別の形で出会い直すかも知れない。いろんな未来の可能性を持った、幸せな作品だなと感じた。
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ショッピングセンターの姿が描かれる表題作と、住宅展示場が描かれるマイホーム、そしておじさんと少年が出かけたキャンプの三編からなる小品集。
なんとなく、どこにでもありそうな普通の風景が切り取られ、書き写されている。
その姿から何を受け取るかは、読み手に委ねられているのだろうと思うが、私ははっきりと起承転結が書かれているストーリーの方が好き。
もっとも普通の生活にはなかなか起承転結がはっきりしていることはないんだから、本書に書かれた生活の方がリアルなんだろうけど。
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第168回芥川賞受賞
良くも悪くも芥川賞受賞作って感じ。
悪くはないんだけど…淡々としすぎて響いてこなかったなぁ。
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途中で脱落…。
これが純文学なのですね…。
物語の最初から、何についてかかれているのかわからなくて、あ、柚子が山になってるのね、と読み返して理解した。
句読点の位置が違和感あるのと、話がとりとめもなく、なんだか頭の中でぐるぐるだらだらと考えてることをずーっと何の脈絡もなく読まされてるような、下手な人のブログを読まされてるような、そんな感覚がして読みにくかった。それがねらいなのかな?
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すべて読んだわけではないので、星はつけないでおく。
『この世の喜びよ』
主人公が「あなた」と二人称で書かれているので、自分が主人公になったように読むことを強制されているように感じた。
主人公は二人の娘の子育てを終えた母親で、現在の職場での人々との関わりの中で、かつて子育てに奔走していた時期を思い出したり、遠くなった若さをたぐりよせたりしている。
子育て経験のない私にはそれを「あなた」と言われても、ピンとこない。全然感情移入ができなかった。
私にとっては退屈な話だった。
『マイホーム』
出だしで双子が一歳半と出てきて読むのをやめてしまった。
私の双子も生きていればそれくらいなので、読むのがつらいなと思った。
『キャンプ』
叔父さんが高校の同級生たちとキャンプに行く。みんな子連れなのに自分だけ子どもがいないのはバランスが悪いから、と連れてこられた小学四年生の甥が主人公。
子どもたちはそれぞれに年齢が違い、お互いに名前も認識していないけど、そのキャンプの中で共に行動する。
死骸が出てきたり、小雨が降ったり、明るい雰囲気のキャンプではないが、淡々と描かれる風景が目の前に浮かぶようだった。
特に思い出の品を燃やすシーンは印象的。
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これが純文学。これが芥川賞。何気ない日々の、何気ない行動、何気ない思考。そこにある難解な感情だったり、雑多な感情だったり、何気ない幸せだったり。
相変わらず僕には難しいジャンルだけど、少しでも、この空気を感じられたのは良かった。
(余談ですが)「あなたは」で語られる文体が混乱を呼ぶ、笑
これも文学!
わかるようになりたい。
それも文学。
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著者が詩人なだけあって、独特でつらつらとした難易度高めな文体。
表作よりも「マイホーム」「キャンプ」の方が好みだったので、短編の方が読みやすいかも?
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「あなた」=穂賀さん を見る「私」
ショッピングセンター二階 喪服売り場 仕事着で通勤 いつもバレッタをしている
向かいのゲームセンター
今は小学校教師と大学生の 娘二人が 小さいころ通った
多田さん=ゲームセンターで働く23歳 一人暮らし
二階の古いフードコート
中三の少女 ジュースこぼす 弟が一歳 サッカー辞めた 家はすぐ近く
夫は単身赴任 娘のうち、姉が家出 妹と、姉の彼氏のいる名古屋まで迎えに
娘と三人でスーパー銭湯に入る
クリスマスイブを少女と二人で過ごす
ゲームセンターのおじいさんからもらったメダルでゲームの後、
パンバイキングの店に
少女の皮膚の炎症で言い争い
フードコートで少女を見かける。 話をしたいから。
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芥川賞受賞作なので純文学なんだよね。
私にはやっぱり少し難しい。
主人公を「あなた」で書いているものは初めて読んだ。慣れるまでちょっと苦労した。
第三者の目線で書いているということ?
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ショッピングモール内の喪服売り場で働く女性の日常を描いた作品で、同じ喪服売り場で働く同僚、モール内のゲーセンで働く人や、フードコートにいつもいる中学生の女の子など、そういう人達との交流が凄く日常感を演出してました。主人公の女性の感性みたいなのが本当に繊細に丁寧に描かれていて、このくらい感性が豊かなら自分も人生もっと楽しいだろうな〜とか思いつつ、楽しく読めました。
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短編集3篇
表題作はショッピングセンターの喪服売り場で働く少しくたびれた私の語りで、日々の出来事と過去との取り止めのない心の動きを描いている。