紙の本
懐かしい感覚。
2023/04/19 20:06
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投稿者:雨宮司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいて、どこかで覚えのある感覚だと思いながら、それが何だったのかさっぱり思い出せずにいた。ようやくつかんだ。『短歌があるじゃないか』などで新旧の短歌の美質を引っ張り出してみせる、あの時に読んだ感覚だ。もちろん、この本は短歌初心者の為の実践道場ではない。しかし、短歌の美質をできるだけ幅広く伝えたいという思いで充満している雰囲気には、間違いなく共通項がある。短歌の作者が有名・無名であることを問わずに、穂村氏自身の感覚で引っ張り出してくる点も同じ。最近は身辺の近況を記したエッセイばかり読んでいたから、本当に久々に味わう感覚だった。初心者のセンスを引っ張り出してくれるのもいいけれど、私はノンセクションの切り口で迫ってくれる、こんな本を待っていた。読んで損をしないことは、私が保証します。存分に、多彩な切り口で迫ってくる穂村氏の底力に酔いしれてください。
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穂村さんが選ぶ百人一首のような感じ。
穂村さんが惹かれた短歌を、穂村さんの解説で読みたかった。
数ある短歌集を手にしなくても、美味しいとこだけ鑑賞できるという怠け心もあった。
メリンダ・パイノさんのイラストも、カラフルで想像を邪魔しない余白があって素敵。
本を開いて早々に引き寄せられた。
『「天国に行くよ」と兄が猫に言う 無職は本当に黙ってて』 山川藍
家族ならではのムカつきと痛烈な切り捨て。
読んで笑ったあとに感じる、藍さんの現実。
仕事をしていれば充実感だけではなく、悔しさやしがらみ等、様々な葛藤と疲労がある。
そんな藍さんの横で、藍さんにも聞こえるように、兄が猫に優しく声を掛ける。
全て理解している人のように。
メリンダさんの猫視点のイラストも輪をかけて面白い。
ここでフライングして穂村さんの解説を読み、そこで紹介されている兄に関する歌でまた笑ってしまった。
山川藍さんの短歌が更に読みたくなってしまい、検索。
飾り気のない日常に、正直すぎる気持ちの吐露が笑える。
困ったぞ、こんなんじゃなかなか先に進めない。
『今日君が持ってる本を買いました。もう本当のさよならなんだ』 福島遥
余韻が凄まじい。
「ました。」と丁寧語なのは君に話しかけているからで、「なんだ」は心の中でさよならが決定的である事を思い知ったという感じが伝わる。
君のことが好きだから同じ本を買ったのに、そのことで改めてさよならを認識させられてしまう。
だって一緒に居るなら本は1冊でいいものね、貸し借りすれば良いのだから。
ここでまたもフライングほむほむする。
「これからは本も時間も空間も私ひとりのものになるのだ」(抜粋)と歌に読めてしまった。
穂村さんの、確信を突く言葉が並んでいた。
そして福島さんがフォークロックユニットのメンバーなのだと知る。
紹介されている他の短歌にもドラマを感じる。
「タケノコがプラットホームに落ちていてそれなのに君はさよならなんて」
こんな面白い事は大好きな君と一緒に笑いたいのに、その君はさよならを口にする。
「意外性のある組み合わせが思いを支えている」という穂村さんの言葉に納得。
それにしても、「思いを支えている」って言葉が素敵だ。
本書冒頭の幾つかにメリンダさんのカラーイラストが添えられていて、
その素敵なイラストを楽しんでからガチャポンのハンドルを回して欲しいと穂村さんは言っている。
とはいえ、のびのびとしたイラストがあったから少し余裕を持って読めたけれど、
その後は鳥肌が立つような短歌が次々現れて大変な1冊だった。
笑ったり、キュンとしたり、考えさせられたり、とっても贅沢なガチャポンだ。
(ガチャポンの中には、松田わこちゃんや「手紙魔まみ」こと雪舟えまさんの歌も入ってます。)
全ての歌が、穂村さんの解説で更に異次元クラスのとっておきの1首へとなっていた。
刺激的な1首が、穂村さんの言葉を添えて温かくも一層冷たくもなり、
柔らかな1首が、穂村さんの言葉により驚き���持って奥行を増す。
穂村さん上手だなぁ…。
ある意味心の内をさらけ出すことにもなりうる短歌の読み手は孤独だが、分かってくれる人(穂村さん)が居てくれる。
読み終えて、他にも幾つかご紹介しようと思ったが………選べない!!
それに当初頭をかすめた「数ある短歌集を手にしなくても、美味しいとこだけ鑑賞」という考えが覆されてしまった。
皆きちんと読みたい!
ただ、先日購入した千種創一さんの「砂丘律」が紹介されており、買って良かったと満たされた。
まだ積読だけど 笑
それにしても。
鈴木しづ子さんの俳句集に続いてこちらの短歌集を読んでしまったものだから、ぶっ飛んでしまって戻るのが大変だ。
コーヒー淹れよっ。
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2023.01.02
この国のルールを教えておいてやるふきのとうの悪口は言うな
「天国に行くよ」と兄が猫に言う 無職は本当に黙ってて
ラジオ体操の帰りにけんかしてけんかし終えてまだ8時半
本当はメロンが何かわからないけどパンなりにやったんだよね
結婚はタイミングだと言われた日 独りの部屋でおなら出し切る
三十一文字だから広がる宇宙がある
でも前後の作品や作者を知ると見えなかったつながり、文脈が見えてくる
目の前のその31音だけを味わうのではない解説を、繰り返し読んで噛み締める
共感と意外性
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図書館で借りた。著者がいいなと思った短歌を集めた本。滅茶苦茶面白かった、手元に欲しい!短歌ってこんなに自由なんだ!って常識を覆されるような本。『「天国に行くよ」と兄が猫に言う 無職は本当に黙ってて』『研究室では科学者たちが金属光を発する向日葵を組み立ててゐた』『本当はメロンが何かわからないけれどパンなりにやったんだよね』『(7×7+4÷2)÷3=17』こんなのアリなの!?短歌って呼んでいいの!?って驚いた。こんなに短い文章(というか句か)でクスッと笑えたり物語になっていたり懐かしい気持ちになれるのすごい。ある意味世界が広がったし現代短歌の本もっと読みたいと思った。著者の解説があるのも良かった。
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短歌にまだあんまり詳しくないので、いろ〜んな方の短歌を解説と一緒に楽しめるのはとてもよかった。
この本きっかけでまた他の歌集にも出会えたりしたので、自分にとっては思い出の1冊になりそう。
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約100首収録。近代から現代まで、様々なテーマの短歌が紹介されており、読んでいてとても楽しかった。
短歌といえば百人一首のように難しいイメージがあり近寄りがたかったが、この本を読んでとても親近感がわいた。
私も短歌をもっと読んで詠みたい。
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今までに読んだ短歌の本には、あとがきなどはあったのですが、ほとんど短歌についての解説がついていない本ばかりでした。
この本には穂村弘さんの解説がひとつひとつについています。
短歌の解説ってすごいですね!
意味の分からない歌が急に愛おしくなってきます。
読んでいて面白さが倍増します。
短歌を作るのも才能だけど、解説するのにも才能がいりますね。
例えばこの杉田抱僕さんの歌。
こんなの読んでも私にはさっぱり意味がわかりません。
でも、解説読むと凄い歌だってわかります。
○(7×7+4÷2)÷3=17 杉田抱僕
雑誌の投稿欄にこの数式が送られてきた時、何かの間違いかと思った。だが、数式に自分の名前を書いたりしないだろう。ということは、これは短歌なのだろうか。私は心を無にして音読してみた。「かっこなな/かけるななたす/よんわるに/かっことじわる/さんはじゅうなな」。なんと、五七五七七で読めてしまった。きちんと数式として成立していながら、同時にこれは目に見えない短歌なのだ。特に面白いのは四句目に相当する「)÷」だ。「かっことじわる」と読むらしいが、ここには数字さえ含まれていない。同じ作者から次の作品が送られてきた時、緊張した。また数式だったらどうしよう。「気まぐれにトリートメントをした姉が延々延々延々流してる」(『短歌ください双子でも片方は泣く夜もある篇』)。ほっとした。「延々」をわざと字余りにしてその長さを表現しているところがいい。だが、先の数式は一音でも字余りがあったら短歌としては成立しないだろう。短歌とは何か、という根源的な問を映し出す鏡のような短歌なのだ。
とにかく凄いなあ。作った方も、解説する方も。
こんなのもあります。
1回今橋愛さんの『O脚の脚』で読んで私のレビューに載せていますが、私が何となく思っていたことをきっちり言い切ってくれている感じがしました。
○「水菜買いにきた」
三時間高速をとばしてこのへやに
みずな
かいに。 今橋愛
不思議な歌である。でも、何度も読んでしまう。「スーパーに水菜を買いに出たんだけど、急にどうしても君に会いたくなって、気がついたら、そのまま高速に乗ってたんだ」。もしかしたら、これはそんなシーンではないか。でも、その気持ちがうまく言葉にならずに、ただ「水菜買いにきた」になってしまった。そう云われた<私>は呆然として思う。「三時間高速をとばしてこのへやに/みずな/かいに。」と。もしも、この歌が「「君に会いにきた」三時間高速をとばしてこのへやに/わたしに/あいに。」だったらどうか。嬉しいには違いないだろう。でも、きちんとそう云われるよりも「水菜」の歌は遥かに凄い。その意味不明さに衝撃を感じる。「このへや」にあるはずもない幻の「水菜」を買いに来たことで、二人の思いはメーターを振り切ってしまった。「みずな」とは愛の別名だったのか。
以下にこの本で私が他に面白いと思った歌、気になる歌を載せます。意味はわかったもの、解説を読んでわかったもの色々です。やっぱり解説があるとわ���りやすくて面白いですね。
○この国のルールを教えておいてやるふきのとうの悪口は言うな 戸田響子
○はじめからゆうがたみたいな日のおわり近づきたくてココアをいれる 本田瑞穂
○もう君の夢をみないと約束をさせられた日にみた君の夢 古賀たかえ
○今日君が持ってる本を買いました。もう本当のさよならなんだ 福島遥
○僕らには未だ見えざる五つ目の季節が窓の向こうに揺れる 山田航
○思ひがけぬやさしきことを吾に言ひし彼の人は死ぬ遠からず死ぬ 安立スハル
○誤植あり。中野駅徒歩十二年。それでいいかもしれないけれど 大松達知
○本当はメロンが何かわからないけどパンなりにやったんだよね 砂崎柊
○私には才能がある気がします それは勇気のようなものです 枡野浩一
○しゃぼん玉近づくように笑い合う「モモって呼んで」「リコって呼んで」 松田梨子
○三越のライオン見つけられなくて悲しいだった 悲しいだった 平岡直子
○ははそののははもそのこも
はるののにあそぶあそびを
ふたたびはせず 三好達治
○かたむいているような気がする国道をしんしんとひとりで歩く 早坂類
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本書は、書店でたまたま見かけて購入した。
見開きのページで、右側の一首に対し、それぞれ著者が左側で解説やコメントを述べているので、勉強になる思いがした。現代の短歌だけではなく、古典的な作品も含め、様々な時代の作品が網羅的に選出されているのも、個々の時代性を感じられて良かったと思う。本としてのデザインも素敵だった。
ただ、個人的に好きな歌にしるしをつけ、見返してみると、やはりというか、より古い時代の作品をこそ私は好んでいるのだとあらためて分かった。
現代短歌は、どうしても「現状をうまく表現した」から先に進まないように思ってしまうのかもしれない…。個人的には、耽美的とか、唯美的というか、そのような感じ方を持っているだとも思う。
また、日常的過ぎても自分には合わないなとも思う一方、独創的過ぎても、やはり理解が難しくなる。もしくは、私は単に文語の響きやリズムが好きなだけなのかもしれない。
いずれしても、プロの歌人が丁寧に解説している本はあまりないので、とても興味深く、良い作品を多く見つけることができた。
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翼なんかなくたってなんだって昇華する方法を人は持ってる
確かに、翼なんか与えられたら飛び上がって自死もするだろう
言葉って麗しいな、この世界さえ美しく見せる
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穂村さんが「いいな」と思った歌を集めた100首。
なかなか解説付きの短歌を読むことがないので、これも楽しみが倍増できて良かった。
奥深いなぁ。
素のままの我が身を晒して歌にする。
こんなふうに表現できれば気持ちいいだろうなぁ。
憧れの目で読んでいた。
このなかから特に好きな8首を厳選。
①はじめからゆうがたみたいな日のおわり近づきたくてココアをいれる 〈本田瑞穂〉
②水無月の崎のみなとの午前九時赤き切手を買ふよ旅びと 〈若山牧水〉
③今日君が持ってる本を買いました。もう本当のさよならなんだ 〈福島遥〉
④僕らは未だ見えざる五つ目の季節が窓の向こうに揺れる 〈山田航〉
⑤見えるでしょうこれが破壊というものですぽろぽろぽろぽろうるさい涙 〈干場しおり〉
⑥花もてる夏樹の上をああ「時」がじいんじいんと過ぎてゆくなり 〈香川進〉
⑦君を愛した深さがふっと消えるとき路上に美しきバスが近付く 〈田中雅子〉
⑧かたむいているような気がする国道をしんしんとひとりひとりで歩く 〈早坂類〉
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ほんとにガチャポンのように与謝野晶子から朝日歌壇、常連の松田梨子、わこ姉妹までいろんな歌人がでてきて楽しめた。
ほむほむの短歌の解説もものすごくよくて、いちいち心にしみた。
「好きだった雨、 雨だったあのころ、 あのころの日々だった君」 枡野浩一
この歌好きだわ。
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これは楽しい。
歌人・穂村弘さんが、さまざまな時代の、様々なバッググラウンドを持つ歌人たちの短歌を紹介、解釈、解説する。
右ページに一首。
左ページに歌の解釈と解説。
そのリズムが心地好く、楽しくなってしまう。
短歌という形態の不自由な中の自由さと、歌を詠む方々の発想の豊かさにワクワクする。
出典も天下の与謝野晶子さんから、新聞、雑誌掲載のものまで、幅広く、何が出てくるのか分からない。
歌を詠む方のバックグラウンドもちらりと紹介され、ちょっとドキリとする。
タクシードライバーの方もいて、映画の『パターソン』みたいじゃん!と、何故か興奮。
『パターソン』は路線バスの運転者で、詩人でもあるのです。
歌の世界を何倍にも増幅させる穂村さんの解説も相変わらず素敵。
メリンダ・パイノさんのイラストも楽しい。
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薄い本だけど、一首ごとに短歌を読み、意味を考え、穂村さんの解説?を読み、それをまた考え、とやっているととても時間がかかる
読み応えのある本だ
プロの歌人が選んだとしても必ずしもピンとくるものばかりではない
それはまあ音楽とか映画とかでもそうだろう
でも読んでいくと、すごい!と思うのがいくつかありすごい
穂村さんの解説も、エッセイばりに面白く、的確だ
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かつて短歌に興味を持ったことがあった。それは穂村さんが『短歌という爆弾』を出したころ。職場のバイト女子に勧められて手に取った。そしてハマった。自分でもやってみようと試みて、それはそれはつたなく恥ずかしく交通標語みたいなものになったけれど。
この本を読みながら、当時読んで感銘を受けた歌たちが記憶によみがえってきた。誰の歌だったかも覚えていないのがもったいない。
穂村さんが「短歌」というカテゴリの中からガチャガチャと選んでポンと出したものに解説を加えた本。
彼の解説にはいつも、彼独特の鋭さを含む憂いっていうか、アホな人には通じない忖度みたいなものを感じる。
そしてこんなにたくさんの短歌をどうやって選んだんだろうなーと小学生のごとく思った。
p38
イヴ・モンタンの枯れ葉愛して三十年妻を愛して三十五年 岩田正
この歌の解説で穂村氏は書く。
その「妻」は現代短歌の一人者の馬場あき子である。彼女の歌にこんなのがあるらしい。
猫茶わん洗ひおきしが夜更けて買えりし夫が飯を食べをり
単純にそれだけ読んでも笑えるのだけれど、氏は書く。
・夫の投げた直球に対して「妻」が返した変化球。そのずらし方にも長い時間を経た「愛」が感じられる。
うーん。すごい。
p48 掲出されている歌はこれ。
二種類の唾液が溶けたエビアンのペットボトルが朝日を通す 谷川電話
その解説に引用されたこの歌⇩にぎょっとして惹かれた。
髪の毛が遺伝子情報載せたまま湯舟の穴に吸われて消える
なんとなくきみの抜け毛を保存するなんとなくただなんとなくだけど
この2つの歌を通して
・目に見えないものに対する作者の感度の高さ
と表現している。
p104
思ひがけぬやさしきことを吾に言ひし彼(か)の人は死ぬ遠からず死ぬ 安立(あんりゅう)スハル
この解説では作家の川上未映子が「この2作が現代的で面白い」と言っているのを引用している。
「金にては幸福は齎されぬといふならばその金をここに差し出し給へ」
「こぼれくる春の落葉を寄せて燃す匿名氏より来し葉書燃す」
これに関しては、穂村氏の解説がよかったというのではなくて、安立スハル氏に興味を持った。読んでみたい。
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「舞い上がれ」のたかしくんの短歌を聞いて、短歌いいなあって思った。ちょっと興味が。
朝日歌壇などで、見かけた松田梨子さん、松田わこさんの短歌が載っていて、わぁって。