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書かれた順番も読んだ順番も『旅する少年』の後なので、ああ著者はあの実体験をこういうふうに小説へと昇華しているのだなあ、と感じながら読みました。著者と精神的にも肉体的にも交わり、通り過ぎていった<彼女>たち、昔の・今の妻、そして娘。SNSで見ず知らずの他人と同調し合いディスりあうのが普通の現代から、面と向かっての人間関係を振り返るとき、そこにはバッサリと割り切れないものが残る。#MeTooに対するドヌーヴのあらがいのように。
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過去の人々の飽くなき追求にわたしたちの人生は乗っかっているし、その上でわたしたちは間違っていることに声をあげつつ、また次代へバトンを繋がなければならないし。普遍的なものが変遷していく様が深く、面白かった。
70年代に始まり、現代に至るまでの「性」の扱われ方の視点を通して、それぞれの時代の「生」について考えさせられた一冊でした。
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著者の私小説的な作品と言えるだろう。四つの章からなり、それぞれ独立した短編としても読めるが、まとめて一つの長編と見るべきだろう。現在の著者の生活と青春時代の思い出が交錯する。
著者はほとんど私と同世代といえる。青春時代を京都で過ごしたその情景はちょうど、私が過ごした京都と重なる部分が多く、単純に懐かしさを感じた。
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黒川創の書くものは『鶴見俊輔伝』から入ったので、資質として良かれ悪しかれ批評家的な体質がにじみ出たものであるだろうと予測はしていた。だが、ここまで「批評」的であることを恐れない小説であろうとは思わなかった。その筆致は小説的なストーリーの起承転結の旨味を損なってでも理に落ちる地の文の語り(ナレーション)を介した解説を施すことを恐れたりしない。だから正直「しんどい」本ではある。だがこの著者の誠実でかつ円熟した筆致は、ウーマンリブやMeTooムーブメントに揺れる世界の片隅で大事なことがらを語る確かな決意を見せる