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ヒトという種の未来について生物界の法則が教えてくれること みんなのレビュー
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紙の本
「自然界は危機になど瀕してはいない」。
2023/08/06 09:17
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここ数年の「温暖化」と言われている気候。実際の体感は「極端化」ではないだろうか。この夏も「猛暑日」に続いて「豪雨」、「雹」が降ることすらある。冬は暖冬でも局地的には豪雪だったり。この環境で人間はどうなっていくのだろう、というのが本書の考えていることである。2023年の夏の「危険な暑さ」の中で読むにはなかなか、の一冊であった。
著者はアメリカの生態学者。本書の日本語タイトルは長いが、原題はNatural History of the Future。「未来の自然史」というところか。
生態学や進化の法則から考えると、同じ種が密集して存在する場合やある地域に限定されてしまう場合、環境変動が大きい場合などにどのようなことが起きるのか。そのような条件での長期実験・観測データをもとに示された法則から論を進めていく。「気温が高いと心理的に不安定になる=暑いといらいらする」というような実験の話は経済・社会問題にも絡んでくる。
実際の研究事例をもとに実験材料の特徴や研究方法を説き起こしてある部分は、一般書としては少し読みづらいかもしれない。しかし著者の主張の根拠を確認するためには必要な部分でもあろう。つい結論だけ読みたくなるがそこは我慢して読みたい。
さて、環境の変動が大きくなった場合、生物はどのような生き残り方を選択してきたか、である。戦略のそれぞれにどんな特徴があるのか。終わり近く、第十一章のタイトルは「自然界の終焉にはあらず」。地球の歴史レベルでみれば、さまざまな生命が誕生・消滅して現在に至っている。ヒトが絶滅したとしても、地球上の生命の興亡は続くはず。著者は、ヒトがもし絶滅しても「自然界は危機になど瀕してはいない」とも書いている。著者は「ヒトの未来」というよりは「生き物の未来」に視点を置いてみているからだ。
確かにそうなのかもしれない。そう聞いて「そんなことはない」と反論するか。「それもよし」と諦観するか「やるだけやる」と奮起するか。読み手によってかなり反応が違うところではないだろうか。ヒトとしての存続と生き物の存続と。
白揚社のこういった関係の書籍には結構目を引くものがある。同じ著者の「家は生態系」なども面白かった。
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