紙の本
隠さず直視を
2023/04/25 21:16
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投稿者:ぴー - この投稿者のレビュー一覧を見る
高齢者の犯罪は以前からありましたが、言ってはいけないという暗黙の縛りを感じていました。団塊世代が高齢化して高齢者の犯罪も増え、隠し通せなくなった感があります。隠すのではなく、社会問題として直視し、対応を考える必要があると思います。
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女性刑務所も高齢化が進み、介護が必要な受刑者も多い。介護福祉士のリハビリがあったり、外よりも手厚い場合もある。なかなか難しい問題である。
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長い老後の生きづらさを垣間見るようでした。これまでの生い立ちにも事情があれば、生き抜くための備えがなく、何も考えずに懲罰を受けていればよい時間が必ずしも苦しみではない様子も伺え、高齢者が更生する姿を難しく感じました。
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女性ジャーナリストによる女性受刑者のルポ。
2009年に福島にある女性刑務所を訪れたのを皮切りに、2018年から2020年にかけて、全国11の女性刑務所のうち、3か所で密着取材を行った。
受刑者全体に占める女性受刑者の割合は戦後、増え続けており、現在は1割。中でも増えているのが65歳以上の高齢女性で、女性受刑者のうち2割を占めるという。男性受刑者のうちの高齢者が12%であるのに比較しても多い。
高齢受刑者の中には、認知症や身体の不具合から、刑務作業ができない者もいる。作業どころか介護が必要な者も少なくない。刑務所というより福祉施設化してしまうのである。
取材を通して、女性、さらには女性のうち高齢者の増加の背景を追う。
女性の犯罪で多いのは「窃盗」と「覚醒剤取締法違反」。このトップ2は男性とも共通するのだが、男性受刑者でこの2つを合わせた割合が6割なのに対して、女性では8割を超えるという。
窃盗の中では万引きが多い。万引きは微罪とされるが、それでも刑務所に来るということは、回数が多いということである。高齢者の中には、刑期を終えて出所したのに、何度も戻ってきてしまう者が多い。万引きを繰り返して刑に服し、出所したのにまた万引き、というケースである。
女性の窃盗犯でもう1つ目立つのは摂食障害のある者である。過食・嘔吐を繰り返す精神疾患である。摂食障害がある人がすべて犯罪に走るわけではないが、万引きを繰り返す窃盗犯の中には、この障害がある人が一定数いる。どうせ吐いてしまうものだから、お金を払うのはもったいないという心理が働くものか。刑罰の視点とともに、治療も必要だが、根治が困難である障害であり、刑務官は対処に悩まされている。
「窃盗」と並ぶ「覚醒剤」。こちらも依存症になると治療が困難である。離脱指導に努める刑務所もあり、再発防止を目指している。
薬物にはまりやすいのは、問題解決能力が低く、自尊感情が低い人という傾向がある。心が弱くなっているとき、知人・友人に誘われて薬物に「逃げ」、抜けられなくなる。依存症とも相まって、再犯が多くなる。
こちらは窃盗に比べ、若い層の受刑者が多い。
著者は取材を通し、女性が再犯に走る背景を考察していく。
刑務所では職業訓練もあり、真摯に指導してくれる刑務官も多い。1日3食採れ、規則正しく生活ができる。一方、刑期が終わり、社会に出ると前科者であり、親類縁者との関わりがなくなっている例も少なくない。そもそも最初の犯罪に走る背景に、家庭環境に恵まれなかったことが大きな要因になっているのがしばしばである。本人のやる気がないわけではなくても、スタートからハンデがある。
累犯を、現場では「負の回転扉」と呼ぶという。
就労したくても水商売しか経験がない。賃金は安い。周囲の目は冷たい。それに比べて刑務所では手厚くしてもらった、と思うのも無理はないところがある。
再犯を重ねるうちに累犯者は高齢化し、刑務官は本来の仕事ではないはずの介護に手を割かれることになる。
最終章ではこれを解決するすべがあるかを探る。提言はさまざまあり、考えさせられる。が、一朝一夕ではいかないことは確かだろう。
少し前にドラマ化もされた小説に、『一橋桐子(76)の犯罪日記』という作品があった(私はドラマの方しか見ていないのだが)。同居していた友人が病死し、主人公・桐子(76歳)は住んでいたアパートから出ざるを得なくなる。環境が急に変わり、先行きを悲観した彼女は、刑務所が至れり尽くせりの環境と知り、罪を犯して服役することを目指すことにする。お話の方は桐子が本当の犯罪に走ることはなく、うまくラストに着地するのだが、さて、現実社会ではどうだろうか。
なかなかそう甘くはない、というのが本書を読んだ感想である。
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「刑罰とケアの狭間で」とあり、まさにそう思った。刑罰よりもその人の周りの環境、心情を理解し、不足しているところに寄り添い支えることが重要である。ケアを女性に任せてきた世の中。その考えに縛られる時代から解き放たれたい。
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そうだよねえ、と同意。女性の貧困と格差のしわ寄せが終の棲家を塀の中にするおばあさんたち。偉そうなじいさんたちと対になってみえる。暴力が当たり前の育ちがあることを見てショックを受けるかどうか。いかんともしがたいものと、どうにかなりそうなものと。運だと思う。
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塀の中は知らないことだらけ、驚くことばかり。
女性の犯罪は「窃盗」と「覚醒罪取締法違反」の二つで8割以上を占める。
これらの罪を犯す受刑者は「これが三度目」「五度目」など、累犯が多い。「負の回転扉」と呼ぶ。
独りでポツンが嫌なのか、平均50代、80代の高齢者もいる。
最近まで、92歳の受刑者がいたというのも驚いた。
冤罪により半年近く拘置所に勾留された経験を持つ元厚生労働事務次官の村木厚子さんが、「現代社会の中で生きづらさを抱えた人が、自分の弱さもあって逃げ込んだ場所が刑務所ではないかた思います」と語ったそうだ。
弱さからくるものだけだとしても、そうならないようできることはなんだろうと思った。
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刑務所を見るとその社会の成熟度が分かる。
チャールズ・チャップリンはそういう観点のもと、各国の刑務所を見学して回った人なのだそうです(あとがきより)。
日本の女子刑務所。
最近テレビで特集されていたこともあり、気になったので読んでみることにしました。
まず驚いたのは、女子刑務所に服役する人の大半が「窃盗」か「覚せい剤取締法違反」であること。殺人は1割程なのだそうです。
その背景として、女性がDVや貧困に陥りやすいことが挙げられています。実際、本書に掲載されている受刑者インタビューでは意にそぐわない形で覚醒剤を体験させられ、そのまま依存してしまった女性が登場します。
ネットでは時折、「日本は犯罪者に優しい世界」と糾弾する声が聞かれますが、この本を読んでいると受刑者たちのやるせない日常が垣間見えてきて、「必ずしもネットの言説が現実ではない」と改めて感じると同時に、福祉に繋げていかなければならない受刑者を刑務所で介護する問題についても深く考えさせられました。
社会のしわ寄せは常に弱者に向いていて、その弱者から世界の隙間に零れ落ちた人たちが刑務所に流れ着く。
そんな感じがしてなりませんでした。
巻末の女性たちを取り巻く状況について述べた部分などは、一般女性である私が読んでも落ち込むようなシビアな数値が示されていて、ジェンダー平等とか差別撤廃と世間は言っているけれど、まだまだ足りないんだなということが分かります。
それほど女性として生きることが、現実問題として厳しいものなのだと感じます。
(男性も厳しいが、女性はもっと厳しいという意)
勿論、犯罪者ということは被害者がいるということも念頭に置かなければなりませんが、再犯を防ぐ取り組みを考えなければ受刑者の数もまた、遅々として減っていかない。
深く考えさせられる一冊でした。
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ウーン社会の問題はいろいろなところに歪ができますね。刑務所の中にもこんな問題が出てきます。自己責任と言ってしまえばそれまでなのですが、社会の問題として考えていかなければ大変なことになりそうです・・・。Eテレで元女性受刑者のホンネの話を面白おかしくやる番組がありましたが、笑い事ではありません。累犯が多いということは、だんだんに歳をとっていくのですから・・・。そうなります。