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【読もうと思った理由】
以前、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(下巻)」の感想で書いたが、元々村上春樹氏の苦手意識を克服した際に、今後読みいたい長編小説にラインナップしていた。ただ実は、苦手意識を克服する前からこの小説だけは読まないといけないと思っていた。なぜなら、村上氏の現在の年齢(74歳)と今までの長編小説の執筆ペースを鑑みると、今作品が生涯で最後の長編小説になる可能性はそれなりに高いと思ったからだ。
また村上氏も当然頭の良い方なので、そういう可能性は多分にあると分かった上で、執筆したはずだ。そう、作者も読者も最後の長編小説となる可能性が高いとわかった上なので、当然思い入れも強ければ、熱量(エネルギー)が圧倒的に過去作品とは比較できないほどに、溢れかえっている。何か村上氏から強烈なメッセージがあるだろうと、いや、あるはずだと。なので、誰に頼まれることなく、期待値MAXで読み始めた。
【今更ながら村上春樹氏とは?】
(1949年1月12日 - )日本の小説家、米文学翻訳家、エッセイスト。京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市に育つ。早稲田大学第一文学部演劇科卒、ジャズ喫茶の経営を経て、1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。当時のアメリカ文学から影響を受けた乾いた文体で都会生活を描いて注目を浴び、時代を代表する作家と目される。1987年発表の『ノルウェイの森』は上下430万部を売るベストセラーとなり、これをきっかけに村上春樹ブームが起き、以後は国民的支持を集めている。
その他の主な作品に『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』など。日本国外でも人気が高く、現代アメリカでも大きな影響力をもつ作家の一人だと言われている。2006年、民族文化へ貢献した作家に贈られるフランツ・カフカ賞を受賞し、以後ノーベル文学賞の有力候補と見なされている。デビュー以来、翻訳も精力的に行い、スコット・フィッツジェラルド、レイモンド・カーヴァー、トルーマン・カポーティー、レイモンド・チャンドラーほか多数の作家の作品を訳している。また、随筆・紀行文・ノンフィクション等も出版している。ビートルズや ウィルコ といった音楽を愛聴し自身の作品にモチーフとして取り入れるなどしている。
【あらすじ】
十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを――高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、そしてきみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。村上春樹が長く封印してきた「物語」の扉が、いま開かれる。
【感想】
まさか、村上氏の作品でここまで分かりやすい作品と出会えるとは、想定外だった。小説家にしては珍しく、作者本人が“あとがき“を書いているのも、僕はあまり記憶にない。あとがきを書くほどにどうしても村上氏は読者に分かって欲しく、自分の思い入れがそれだけ強い作品になったのだろう。
他の読者の方が数多くレビューをあげていらっしゃるので、未読の方���もご存じの方も多いと思うが、今作品は過去に村上氏が執筆した「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と対をなしている、ある種続編のような作品だ。なので最初、第一部を読み始めた際は、小説の概要があまりに似ているので、少し戸惑ったほどだ。そう、言ってしまえば、外的要因(環境)が遜色なくまったく一緒なのだ。「壁で閉ざされた街」も「一角獣」も、本人としゃべれる「影」も、仕事としての「夢読み」も、すべて一緒だ。何も変わらない。違うところは、いわゆるソフト部分だ、そう、登場人物がまったく違う。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と構成が、ほぼ一緒の第一部だけであれば、正直言って感動もあまり感じなかっただろう。
ただそこは世界的に著名な小説家である村上氏。第一部はただの序章にすぎなかった。物語の肝となるのは主人公が成長し、人生経験も積んだ40代になった二部からが、俄然面白さが増してくる。個人的なことで恐縮なのだが、本作の主人公、二部の年齢が現在の自分の年齢とニアリイコールなので、当然作品に対する没入感も違ってくる。生き方や物事の捉え方に共感できるところが多いし、ある意味自分を投影できる。
何かのコンテンツで読んだのだが、村上春樹氏が海外でここまで評価されているのは、「この物語は自分一人のために書かれた作品なのではないか」と、錯覚してしまうところにあるんだという。今作を読んで僕も、その錯覚に恥ずかしながら陥ってしまった。それほどに読者を自分の世界観に引き込む力が、他の作家と比較して強いのだろう。村上春樹氏をもともと好きな方は、とうぜん既に読んでいる方が多いと思うので、出来れば村上氏をあまり好きでない方に、ぜひとも読んで欲しい作品です。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を先に読んでいただければ、こんなにも理解しやすく、物語に没入できる作品も珍しいと思います。村上春樹氏に対する見方が、おそらくガラッと変わるはずです。
【本作を読んで得た気づき】
読了済の一定の割合の方に、共感いただけると思うのだが、今作は作者のメッセージ性が強い作品だ。あくまで個人的に感じた村上氏の思いとして、今作で読者に伝えたかった思いを下記のように感じた。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」も今作も、意識と無意識の間(はざま)にある、なかなか普通に生活していてはたどり着けない境地にフォーカスした作品だと思う。色々な条件が重なったときに初めて辿り着ける境地、いわゆる仏教でいうところの「悟り」であったり、中国古典思想家の老子が説いた「道(タオ)」であったり、西洋哲学でいうところのプラトンの「イデア」であったりするのだろうと。その境地に辿り着けば、多分今までとまったく違った感覚で日々の生活を送れるのであろうと。
出来れば死ぬまでにその境地に至ってみたい気持ちが最近強くなってきた。というのも仏教でいう悟りの概念は、個人的に学んできたお陰でそんなにズレることなく分かってきた認識はある。ただ概念としてわかっているだけの人と、実際に悟れた人とは雲泥の差がある。COTENの深井龍之介氏も言っていたが、概念だけを理解するのと、体感として「悟る」のは、まったく���物だ。どうすれば体感できるのか、普通に考えれば僧侶のように厳しい修行を行なっても、悟りの境地に到達できる人なんて、ほんの一握りだ。
ただようやく分かってきたことがある。本を読んでいるだけでは、おそらく一生その境地には至れないことだけは、なんとなく分かってきた。最近、海外の著名な経営者がマインドフルネス(坐禅)にハマってしまうのも、ようやく腑に落ちてきた。スティーブ・ジョブス(故人)もエヴァン・ウィリアムズ(Twitter創業者)も、彼らのようなエグゼクティブは、「実践主義には限界がある」という危機感を抱いている。論理的な思考だけでは突破できない壁があることを、知覚しているんだろう。だからこそ、自分の枠を超えるために哲学や思想を身につけなければと感じているんだろうなと。世間で役に立たないと思われている哲学や禅に興味を抱くのは、そのあたりが背景にあるのだろう。
多分いま自分で目指している方向性は、そこまでズレている感覚はないので、このまま自分のできる範囲で、読書と並行して体感する思考(瞑想のようなもの)も実施していこうと思っている。どうせ一回しかない人生、自分が本当になりたい自分を目指さないと、後で後悔するだろうから。
【雑感】
次は「ヒエログリフを解け」を読みます。この本はフォローさせていただいているKOROPPYさんの感想から知った作品です。KOROPPYさん、その節はありがとうございました!これだけ世の中に本が溢れていても、自分の興味のど真ん中の本にはそうそう巡り会えない。ただこの本は、「ロゼッタストーンに挑んだ2人の天才の究極の解読レース」という副題がついているが、当然の如く、ノンフィクションだ。歴史好きとして、こんなに興味をそそられるタイトルは滅多にない。この上なく期待して読みます!
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義理の母が村上春樹が好きで、ときどき一緒に本の話をする。ただ、根っからのハルキストというわけではなく、『羊をめぐる〜』や『世界の終わりと〜』あたりが好きだという。じつは僕も同じで、最初に読んだのが『ねじまき鳥〜』だったから、それを超える作品がまだない。『海辺のカフカ』や『1Q84』は、正直言うとちょっとガッカリした。でも、『騎士団長〜』はなかなかよかったし、本作も昔ながらの村上作品が好きな読書にはぴったりじゃないだろうか。「今度のはどう?」と義母に聞かれたので、「期待していいですよ」と答えておいた。
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この小説を「意味不明」「伏線が回収されていない」と思う人へ。
ミステリだったら犯人がわからないまま終わったらブーイングだけど、これは文学(という言い方は気に食わないかもしれないが)なので、「この人はこの後どうなったのかな」「あれはどういうことだったんだろう」というふうに、読者の空想の中で物語が閉じてゆくパターンもありだと思います。世の中にはそういう小説も結構あります。
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その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。
読み始めて10ページで本作が40年前の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」と関係しているのでは?という新聞記事の意味がわかった。珍しく本人があとがきに記しているので本作執筆の経緯は省くけれど、齢74にしてこれだけの世界を描けるのはさすがと思う。
(B)
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う〜ん、面白かったけど
なんか、いろいろ置き去りにしちゃってる感じがするのだが…
それもそれで村上春樹なんだと言えばそうなのかもしれないけど
読んだ感じ完全に「世界の終わり ハードボイルド ワンダーランド」じゃんて思った人がほとんどだったと思いますが、自分もまさにそうでした。
そして個人的にはハードボイルドワンダーランドの方が好きかな…
村上春樹の小説に出てくる女性はいつも魅力的な人が多いのですが、やはり今回もコーヒーショップの
女性は非常に魅力的でした!
個人的なイメージだと木村多江さんみたいな感じかなと思ったんですけど…笑
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しんしんと降り積もる雪のように、冷たい澱が沈殿し凝固する
傷はとても大きく、かなしみの色が濃い
反して、暖炉と温かい薬草茶(または紅茶)、子易さんの存在
澱はいつしか融解して、強固な壁から解放される
無意味な壁はなく、壁はなくなることもない
自分はどう向き合うか
自分とどう向き合うか
わたしは自分と向き合うことはしない
けど、どう思うかは考えてみる
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村上春樹の長編=私の至宝。
ハードボイルドワンダーランドに登場要素が似ているとはいえ、全くの別物でした。
作者の経験値なのか、穏やかな展開で驚いた。
今までならもっと孤独でバイオレンスで、おどろおどろしい展開をみせていたはずだけど、なんだろうな、終始温かさを感じるというか。
子易さんの存在がそう感じさせたのかな。
今作は今までの作品とは異質だったけれど、変わらぬ重厚感、確かな文体、愛らしい登場人物…
大満足です。
もちろんすべてがスッキリと理解できたわけじゃない(それは絶対にムリ)。
でも、その謎も含めて、3部までしっかりと書いてくださってありがとう!と言わざるを得ない。
やっぱり大好きな作家です。
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普段は古めの本ばかり読むのでネタバレ気にせずじゃんじゃん書くが本作は4/13発売ということもあり、一応フィルターを。
珍しくついていたあとがきには本作の立ち位置が割と丁寧に書かれていた。曰く、本作、街とその不確かな壁は世界の終わりとハードボイルドワンダーランドのもうひとつの対応であると。スピンオフではないが併立し、補完しあうものとして描いたと。
読後の感想としては辛口になってしまうかもしれないが「世界の終わり」の方が圧倒的に好みだ。まず第一に両作を読んだことがある人なら当然、指摘しなければならないのは壁の中の世界が全く同一であること。読んでいる途中に「世界の終わり」上巻の地図を持ってきたが当たり前だが全く同じ世界だった。
また、フレッシュさがないというと言い過ぎだが主人公の従事している仕事や私生活の描き方があっさりしすぎていて、600ページを超える割には「私」に入れ込めない感じがある。
その点、「世界の終わり」の主人公は計算士という耳慣れぬ専門職に就き、ただならぬプロフェッショナリズムを感じさせる。出てくる女性もところどころ欠けているが魅力的な人ばかりだ。
「世界の終わり」しかり、海辺のカフカしかり、ノルウェイの森しかり、サブキャラにこそ共感と愛着を覚えられるというのが村上作品への僕の一貫した感想だったが本作のサブキャラはあまりにもアンニュイでぼんやりしていて、好きになるとっかかりが少ない気がする、、、。
作品全体としては第一部のそれも恋人が長い長い手紙をよこしてくる前の冒頭部分が好きだ。ラブレターの書き方なんて村上春樹作品で学べることで最も実用的な事柄の一つだ。
ここら辺の雰囲気はノルウェイの森に似ている。そこから先の展開はもちろん世界の終わりとハードボイルドワンダーランドに似ている。井戸に落ちて、ただならぬことに巻き込まれるのはねじまき鳥クロニクルに似ている。図書館の位置する福島県の厳寒は羊をめぐる冒険の十二滝町を想起させるし、イエローサブマリンの少年の纏う雰囲気は海辺のカフカそのものだ。
何が言いたいかというとこの作品は過去の作品との類似点が多いからこそ好きでもあるがもっと違う展開を期待した自分もいたということ。村上春樹自身も高齢であとがきには作家が書くことのできる物語の数には限りがあると書いている。
この静謐な文体がこれまでもこれからも村上作品を支えてきたのはもちろんわかる。わかるからこそ、次作、全く異なる展開の長編を期待したい。
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かなりの長編だったけれど惹き込まれて長さを感じなかった。壁の中の世界とこちらの世界と線引きが曖昧になっていく感じが良かった。早く先が知りたくて読み進めてしまったけれど、また少し時間を置いてゆっくり読み返してみたい。
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ずっしりと分厚い読み応えのある一冊だった。「海辺のカフカ」にも出てきた図書館、羊の部屋を思わせる半地下の部屋など、村上作品に出てくる大切なメタファーを読み解くまでには時間がかかりそうだが、心の奥にしっとりと広がる世界を味わいました。あとがきもよかったな。「要するに、真実というのは、ひとつの定まった静止の中にではなく、不断の移行=移動する相の中にある。それが物語というもの真髄ではあるまいか。僕はそのように考えているのだが。」
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購入して読み始めようとしたとき、ちょうど日経新聞に「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の続編だというような記事をみた。先にそれを読み進め、読み終えたところですぐさま「街とその不確かな壁」を読んだ。村上春樹の著作を全て読んできたわけではない(例えば「ねじまき鳥クロニクル」はまだ読んでいない)。読んできたわけではないながらに、村上春樹はおそらく1つの「完成」を見たのではないかという気がする。まさか最後の長編となるとは思わないが、またしばらくは「材料集め」に入り、「いたこ」が降りるまでには相当の時間を要するのではないかと思う。なにはともあれ、まだ「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読んでいない方は、是非そちらを読んでから、「街とその不確かな壁」を読み始めることをお勧めします。
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第一部を読み終えたところで、川上未映子さんの「黄色い家」が貸し出し可能の連絡が。次の予約も入っているので、いったん断念しました。村上春樹作品益々難解になっている気がするのは私だけ?ちょっと時間をおいてチャレンジします。
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読み終えてしまった。
6年ぶりの新作で、これまでの村上春樹作品同様、あの独特の文体とメタファーに身を委ねれば心地よい読書体験を味わえるということで、約650頁の作品を読みきってしまった。
対比の構造や意味深な出来事、削ぎ落とされた会話と色気。どれもが求めていた村上ワールドだった。
しかし、おそらく自分の問題なのだが、意味を見出そうとしてしまっていた。想像力を働かせて一つひとつの出来事に意味を探ってしまった。仕事じゃないんだから、全てに意味を求める必要ないのに。
ただただ楽しめばよかったのに。
無邪気に分からないことを受け入れて、いつかまた読み返した時に少しでも分かるようになればいいだけなのに、読んでいる今、意味を見出したいと思ってしまった。
村上作品は喪失の文学であると僕は定義付けしているけれど、それ以上は言語化せずに楽しみたかった。…また読み返してみよう。
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40年前の作品を「世界の終りと・・」とは異なる形の対応で書き下ろす。
きみがぼくにその街を教えてくれた。
ぼくは一七歳で、きみはひとつ年下だった。
本物と影 壁の外に影として
本当の私(=きみ)は高い壁で囲まれた時間の概念がない街の図書館に勤めている
あなたは〈夢読み〉になる 〈古い夢〉に手を触れる 卵のような形
深い「溜まり」 街を流れる川が吞み込まれる 危険な場所 その先には別の世界
わたしは図書館に通う 影を引きはがされて
夢を一緒に見てやることで潜在熱量をなだめる
「溜まり」に飛び込んだ影と別れ、「あちらの世界」に居残ったはずが
辞職願を出し 図書館で職に就いている夢から
福島の山間の町立図書館長へ
子易さん 影の無い 死んだ人間
半地下 壁に囲まれた街の図書館とそっくりの薪ストーブの部屋
失われた心を受け入れる特別な場所
名前をもたない駅前のコーヒーショップ 女店主36歳
イエローサブマリンの少年 M**くん
封筒に地図 高いレンガの壁に囲まれた街の地図
行ったことはあるけど行き方は知らない 自分で夢を選べないように
高熱を出した夜に姿を消す イエローサブマリンのパーカーを残して
壁とは意識 水面下深くにある無意識の暗い領域
ガルシア=マルケス 生者と死者との分け隔てなし
影=抜け殻
私と彼(少年) 耳たぶを噛むことでひとつになる その後、違和感を感じ
もう一度自分の影と一緒になる 意識を心に望んで・・・
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やっと読み終えてほっとしている。ハードボイルドワンダーランドが代筆の書であったとあるから、用語や雰囲気などはたしかに似ている。しかし、第一部は恋愛小説のような、第二部からは村上節はあるものの、回りくどい感じはなく、さらっとしているようにも感じる。癖はない分、読んでいて漂う情景描写みたいのはなぜかあまり感じることができなかった。村上作品はすべて読んだわけではないが、ねじまき鳥クロニクルのような何か季節を深く感じる作品をもし次回作があるなら期待したい。
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『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と同じ世界線で色々同じなんだけど全然違う話だった。読んでていろんな記憶が蘇ってくる感じ。評判は微妙らしいけれど私はこの世界観がやはり好きだなと思う。彼が書く冬の描写が特に。