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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
平然と女性にのみ課される雑務にバーストした主人公が、出来心で吐いた「妊娠した」という嘘を育てていく、不思議な観点の物語。
働く女であり妊婦である主人公の目から見た男性が譲らないプライドと、同じ女として感じ取る女性がチラつかせるプライド。自らの反抗的な嘘をエサに、他人の細やかな感情を冷静に分析し、心理学実験しているような仄暗さがとても好みだった。巧みなストーリー展開で読者を混乱させ、主人公の嘘に飲み込まれそうになる。生命誕生までの道程の、見落としてしまいがちな些細な事から、わかっていても難しいサポートの仕方などを、控えめに教えてくれる作品。
主人公のぶっ飛んだキャラに想像力が掻き立てられ、笑っちゃいけない所でも笑いそうになりました。
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このあいだ「ちくま」で読んだ短編がおもしろかったので、ちょうど文庫化された太宰治賞受賞のデビュー作を買ってみた。
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表紙に惹かれて購入。産前産後の周囲の人たちの行動や、その中で主人公の感じたことが痛いほどわかってじんわりと辛い気持になったが、自分自身に呪文をかけることにした主人公の強かさが鮮やかで、羨ましいと感じてしまった。本当に、ゼリーは冷蔵庫に入れておけばいい。
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理不尽に対して、清々しさと狂気で立ち向かえ!
「嘘」というシェルター。嘘をついてるわけではないにしろ、あえて他人には言わないでいる自分の一部、なんかはみんなあるよね。
良い小説を読んだわ。
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職場でゆっくり堆積していった不満が爆発して偽装妊娠する物語。
想像妊娠してるのかという描写もあるけれど、妊娠していない人が調べながら妊婦としての生活を実際に送ることで見えてくる社会の違いがおもしろい。
始めてしまえば、新たな不満は溜めなくていい。
タイトルは母子手帳からのもじりだろうけど、空いている部分に新しい経験が埋まっていくような感覚を楽しめた。
妊娠していなくても、想像と調査で妊婦さんと似たような生活は送れる。でも、誰も代われない。
代替できないけど、相手を慮ることはできる。思いやりは、想像力。
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図書館本
コーヒーを淹れるという名もなき仕事。
妊娠することになってしまい、妊婦として過ごし、出産し、子育てする。
ネットのなかのようだけど、それは現実。というか、むしろ現実もまた虚構のひとつ。
現実ってものは、あまりにおぼろげで、儚くて、所在無いものなんだな、、、なんてひとりでくるくると考えてしまった一冊。
松田青子解説もまたマッチしてた。
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p.171-172
「でも一方でさ、どうして人のことに干渉したがる人も多いんだろう。本当に興味がありるわけでもないのに口出して決めつけて、自分が理解できない範囲になるとおかしいだのなんだの言い出して、うるさい。すごくうるさくて、ずっとさびしくて、私は自分が誰なのか忘れそうになる」
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嘘なのか本当なのかわからなくなり、混乱し、心がざわめく。この不気味さがおもしろい。
日常の着眼点やワードセンスもおもしろくて、一作目にして早くも八木さんのファンになりました。
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どこまでが現実で何が起きているのかわからないままだったけれど、そこが良い。
妊娠中の今、読んで良かった。
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第36回太宰治賞を受賞 !
主人公視点で終始描かれている長編小説。
主人公に対して、思うところは人それぞれあるかと思います。
とにもかくにも、不思議で奇妙なストーリーにぐいぐいと引き込まれました。
嘘をついてまで、周囲にわからせようとする設定が斬新 !
ひじょうにインパクトのある作品で面白かったです。
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何だこれ、凄い面白い。
の感じから始まる。
そして途中から、ん?どういう事?となる。
バレないかな?とドキドキするけれど
電子レンジでもコーヒーでもない「私」に関連する
会社での男性陣、まだまさ世の中に多いんだろうなと思う。
けれど人は悪くないんだろうね、妊婦になった柴田さんを気遣えるのだもの。
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昔、もしかしたら嘘ついて産休いけるんじゃないか、と思ったことがある。思ったことがあるだけで、いやバレるなと当たり前だが実行できなかった。当たり前だ。この小説が14カ国で翻訳されていると知るに、ワールドワイドな感覚なのか!と驚きを覚えた。主人公か走り切る姿は痛快だが、隙間には痛みのようなものを感じた。これは映像化しない方が良い作品と思う。
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留学でお世話になった先生から久しぶりに連絡が来て、この本を紹介してもらった。
タイトルの“空芯”とはどういう意味なのだろう、と思いながら読み進める。
主人公の柴田さんは、「名前のない仕事」を押し付けてくる会社へのちょっとした抵抗のつもりで、妊婦を装うことにする。
定時帰りから始まり、マタニティビクス、アプリへの記録と着々と出産への過程を辿る彼女の姿は、活力に満ち溢れていて頼もしい。
しかし、その反面、空っぽのお腹を抱えたその姿は、どこか痛ましく、空虚にも思える。
偽装妊娠なのだから、もちろん夫も存在しない。夫無しで出産まで辿り着けてしまう──その事実に気づいた時、ある種の怖さが込み上げる。
人類誕生以来、脈々と続いてきた妊娠・出産のシステムは、どうして今も周知されず、隔離され、孤独を生んでいるのだろう。
そして、私もこれから経験するのだろうか、乗り越えられるだろうか、過去に生きた女性たちのように。
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主人公である柴田さんの実際子供がいないのにあたかもいる想定をした日々を過ごし、妊婦の悩みに耽っているその徹底した姿が面白く、聖母マリアを労う妊婦さながらの視点は特に面白かった。
職場へ不遇を改善するためがだけの偽装妊娠であったと思っていたから、中盤から後半にかけての柴田さんがマタニティビクスや産婦人科に通い初める姿は偽装の域を超えていて想像妊娠しているのかと思わされたし、妊娠の真偽があやふやになり混乱させられた。
職場の不遇への対抗手段として偽装妊娠を演じる大胆さも、終盤の想像妊娠しているかのような描写も、離婚した旦那の存在もあって子を持つことへの憧れがあったのではないかと思わされた。
結果、担保する嘘として想像の赤子を持ちその嘘を唱え続けることで、会社での女性に対する暗黙の仕事の押し付けがあった環境に変化をもたらした柴田さんの姿は、妊娠・出産・育児を押し付けられる女性をも励ますものになっただろう。
嘘でも良いから何か担保するものを持ち、それを守る自分を守る事で今とは違う環境や姿を求める方法は色んな環境において効率的に思えた。現状を望めないことが多々ある自分もそのようなバイタリティを持ちたい。
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巻末の松田青子の解説が秀逸。
私も「魔女」だったんだ笑
自分の中に嘘を持つ。物語を詰めていく。それが「形」となるところは、映画になりそう。
リアルに考えると会社のシステムはどうなんだ、とか、言い出したらキリがないが、これはそんな小説ではないのでいいのだ。