迷っている人のためのガイド
2023/09/22 20:22
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
何かを始めてみたいけれど、何をしたらいいかわからないときってありますよね。そんな人向けの語学チャレンジガイドです。楽しい。
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この春創刊した人文書の新シリーズ「あいだで考える」、文庫よりひと回り大きい判型で手触りよく軽く、「10代以上すべての人に」と銘打って、ふりがなたっぷり、イラストあり、二色刷り150ページ。巻末には芋づるの元(参考文献&おすすめリスト)。「岩波ジュニア新書」「ちくまプリマー新書」「14歳からの世渡り術」といった中高生向けノンフィクションへの呼び水として相次いで創刊した「岩波ジュニスタ」「ちくまQブックス」と同じような狙い(読みやすい仕様での本格読書へのスモールステップ)を感じる。
シリーズ3冊目は私にとっての本命(このシリーズを知るきっかけともなった)。ロシア語ロシア文学にどっぷりひたって生きてきた著者による語学指南から読書のすすめを経た翻訳入門はRPG仕立てにもなっていて、読んだ勢いであたらしい言葉に挑戦するか英語や古語などを学び直したくなること必至。
目標があってもなくても語学はできるし、「異文化と自国文化」のような雑な分断をあおる考えかたは徹底的に疑いたい。自分の感覚をとぎすまして言葉や生活を経験しながら、本の世界の魔法にかかりその体験を他の人にも伝えるべく翻訳にたずさわっている著者の流儀を知ることで、「翻訳」は言語をただ横から縦にするだけじゃない複雑な営みだということがよくわかるし、たとえば小説の映画化やアニメ化なども、仕事や教育もみな「翻訳」だなあと思った。
それにしてもスラヴ語界隈は米原万里、黒田龍之助、そして奈倉有里と、定期的にとんでもない逸材(語学力はもとより話術が巧みな個性派)がでてくるのがすごい。亀山郁夫とかヌマヌマもいるし…。
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「文化というものはそもそも、自国/他国(異国)という線引きにはなじまない。(中略)文化を学ぶことはむしろ反対に、「〇〇人としてのアイデンティティ」をほぐし、解消し、もっと広い地平に踏みだすことなのだ。」
本書は4章からなるゲーム攻略本仕立てとなっており、上に記したのは第2章「文化のえらびかた」にあり思わずメモしたところ。そのほか章ごとのコラムがあり、巻末の作品案内にはQRコードも付いていて便利。世界は広くて複雑で、だからこそ仲間を探して歩き続けないと。10代以上すべての人のための「あいだで考える」シリーズ。
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奈倉有里さんの新刊。同時に、創元社が企画する「10代以上すべての人のための人文書シリーズ」~あいだで考える刊行の一刊でもある。
遠くて近い、近くて遠いロシア。
子供のころはただ、「怖い国、人種」と言うような感覚で見ていた。
歳をとり、時間が出来てくると、世界の中に占めるスラブ民族が培ってきた文化、芸術、そのほか生活に根差した諸々に興味が出てきた。
手始めに始めたのが Eテレのロシア語講座~があえなく、瓦解。
折からのロシアによるウクライナ侵攻でフェイドアウト。
録画していたストックも見る樹、聞く気が失せ削除した。
時を同じくして関心が募ったスヴェトラーナ、フィリペンコの作品群、片っ端から読み、奈倉さんを知る。
10代で読む~個人的に言えば12,3歳のころ、春の曙時?むくむく湧いてくる知的好奇心、そして学業に物足らなさを感じ、理系?文系?あるいは学際的なジャンル?乱読乱聴時間である。
内容は分かりやすく、紐をたどるように次の場面が展開していく仕組み・・1日もあれば読める。そして指針も用意されており 愉しい。
神西さんの名前が懐かしく、その誤訳?も紹介されていたが・・明治大正昭和、まして世界中がネットで一瞬につながる現時点で(あの時)を語れないのは自明の理。よくぞ、先人はここまで歩んできたと感嘆するばかり。ツルゲーネフ、プーシキンはいまいち肌が合わなかったが、語学講座で番組内紹介でいろいろ教えられた料理,エセーニンは脳裏に焼き付いている・・出来れば彼の子興味にも足を踏み入れたかった。
奈倉さんは文字を通しての【間をつなぐ】職人・・してみると音楽、料理、手工業・・みな同類の匂いがした。
米倉さんの夭逝が哀しい。
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『夕暮れに夜明けの歌を』がとても良かった奈倉さん。
これの「あいだで考える」シリーズは「10代以上すべての人のための人文書シリーズ」となっているので、中高生が取っつきやすいようルビも振ってあるし、この本はゲームのような形で進むが、「翻訳をしたい」と考えている中高生はレアだろう。旅行で使う日常会話やメールならAIが簡単に作成してくれる。留学や移住を考えていなければ、語学学習の意欲は下がって当然。受験があるから英語はやるけど。翻訳小説を読む中高生も少ない。景気が悪くて、若い人も内向きになっているからで、もちろん若い人の責任ではないが。
だから、文学作品の翻訳をしたい人はそもそも多くない。文学の翻訳をするにあたっての心構えを体験から語るこの本が、じゃああまり意味がないかというと、そんなことは決してなく、これから翻訳家にならない私もいろいろ考えてさせられた。文学に興味のある人、つまり文学という「文化」を選んだ人にとってはとても意義深い。
この「文化」論は特に面白かった。
「原文に忠実な翻訳」についても。
翻訳するにあたって、原文を10から30回読む、というのには頭が下がる。これほどの時間と労力と熱意で翻訳しているのか、と。翻訳された作品を多くても二三回しか読まない私のような読者とじゃ理解は雲泥の差だ。それでも私のような読者のために「原文を母語とする読者が原文を読んだときの読書体験」にギリギリまで近づけたものを作り出してくれる。感謝しかない。
一つ難を言えば、一般的な中学生には少し難しいところも多いので、ゲーム仕立てでなくても良かったのではないか。ゲーム仕立てだから読めるってほど軽い本ではないと思う。
イラストも良かった。
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読了。ゲーム風の構成自体はよくも悪くもなくといった印象だけど、内容はとてもおもしろかった。おじいさんとトルストイの話なんて最高だったし、異文化という言葉に対する考え方にも深く共感した。
そしてなんといってもデザインと挿絵がとてもかわいい。中にはさまれている新聞も。同シリーズにはまだまだ気になるタイトルがいくつもあるので、今後も楽しみにしています。
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いま暮らしている国で話すのとは別の
どこか違う国のことばを学ぶ。
その楽しさと、さらに先にある
そこに生きる人々とのコミュニケーション。
作者が小さな頃
ロシア語にひかれた理由は
寒い国に憧れていたからですって。
とっかかりはなんでも。
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大切なのは体験をどのように作れるか(一緒に作っていけるか)、素直な感覚をベースに考え試行錯誤すること
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『ことばの白地図を歩く』
ロシア文学の研究者であり翻訳者である筆者が外国語の学び方を小・中学生にも分かるような優しい言葉で指南します。ジュニア向けですが大人で外国語を学びたいと思う方にも発見が多くある本ではないでしょうか。迷信のコラムやロシア語に興味を持ったエピソードが良かったです。
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著者はロシア文学研究者翻訳者であるため、ロシア語の例がほとんど。参考文献も。母語以外の言語に出会い、学び、翻訳に至るまでの大雑把な道のりを示している。自分には遅すぎる感が半端ないが、それでも楽しむことを忘れないようにしたい。
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前著『夕暮れに夜明けの歌を』は、非常によかった。
https://booklog.jp/users/yaj1102/archives/1/4781620124
その著者が、仕事して関わるロシア語、その翻訳の作業を通じて、いかに異国の言葉に親しんでいくかを、これから語学を学ぶ人向けに書いた語学学習指南書か。
RPGの体裁を採っているのか(PCゲームの類をやらないのでよくは知らないが)、ひとつひとつ課題をこなし、ステージごとに経験値を上げていくような建付けになっている。
冒頭から印刷機がしゃべったり、ファンタジーな雰囲気を醸し出し、その後もそのテイストで綴られるのかと思ったが、あとは素の著者が語っている感じで、中身としては中途半端な気がした(中身と言うより作りが、か)。
なんなら10代前半、外国語を学び始めた世代も意識してか、漢字にルビもふられてはいるが、文章そのものが少し大人向けなのも、中途半端だったなあ。
占いを味方につけると言った、体験に基づいたアドバイスは面白かった。
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中1の長女のために購入し、私も読了。長女はクエスト方式でとても読みやすかったとの感想。大人は著者のロシア語を学んだ背景を知ってから読むと、より楽しめると思う。
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23/08/17読了。
「あいだで考える」テーマのシリーズらしく、翻訳というしごとの魅力の伝わるエッセイだった。
異文化と語るときに国で区切るな、との指摘は胸に留めておきたい。
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誰かの感想で興味を持って読みたい本棚に入れたと思うんだけど、語学学習の本だとは思ってなかった。ロシア語って事で、米原万里さんの「不実な美女か貞淑な醜女か」を思い出しましたが、同時通訳者と翻訳家では立場が違うし、少女時代をロシア語学校で過ごした米原さんと、日本でロシア語学習を始めた奈倉さんもまた立場が違いますね。ただ、母国語以外を学ぶことで、母国語以外の考え方・感じ方に触れる事が出来る、今いる世界を多角的に理解するための鏡の様な物だと考えているので、他言語を扱える方のお話は楽しいです。
英語は中学からずっと、大学でドイツ語やって、卒後にちょっとNHKの語学講座見たりして、息子が大学でスペイン語を選択したのでラジオの語学講座を聞き始めて、全部モノにならずに中途半端だけど、何度でもふうん、へええ、と思えるからお得なのかな。
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翻訳の心得。クエスト形式で進んでいく読みやすい本。ただ言葉を置き換えるのではなく、背景とか、読んだ時の読書体験とか、それが読者に伝わるように訳す不断の努力を感じた。異文化の反対は自文化であって自国の文化ではなく、文化は国に属するものではなくて国民としてのアイデンティティを確立するものではむしろない、というのが印象に残った。本という文化において、異国の人ともむしろ友達になれる。純粋な文化、というのは存在しない。
あとは、「マーシャにサラファンを着せる」という『大尉の娘』の訳について。サラファンは農民の着物で、貴族の格好をしていると強奪の対象になるからあえて農民の着物を着せるという父親の判断なのだけど、それが自然と分かるようにシンプルに訳すにはどうしたらいいか、という話もよかった。サラファンは晴れ着で死装束だという訳註がついたこともあるというが、それは全く解釈違いで、権威ある翻訳のそうした間違いは影響大だなと思った。