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「最悪よりは平凡」島本理生
顔は平凡だけど体がグラビアアイドルなみの魔美は、こんな名前をつける親に育てられたという心の傷と、しょっちゅう男性から誘いをかけられる体質。彼女にとっての幸せな恋愛は?
「深夜のスパチュラ」綿矢りさ
大学生の可那は気になっている男の子に手作りチョコ前日に思いつきあげようとするけど、料理スキルなく、買い物から四苦八苦。オチ秀逸だった。
「フェイクファー」波木銅
主に着ぐるみ作る手芸サークルに入っていた男子の回想。仲間が一人死んだという連絡入る。
「カーマンライン」一穂ミチ
私が五歳の時、母は父と死に別れたアメリカから日本に戻ってきた。双子のケントをアメリカの、父の実家に残して。もちろん、その後は疎遠。大学生になり、ケントが母を訪ねてくる。
「道具屋筋の旅立ち」遠田潤子
優美は短大を出たばかりの、綺麗な細い女性。でも、母親は優美と父に異常にご飯を食べさせる人で、高校始めまで太っていた。そんな優美が付き合っている誠が大学で大食い大会やるという。
「無事に、行きなさい」桜木紫乃
シェフの男と、インテリアデザイナーのミワと新しくオープンしたビストロに来てくれた出来るアルバイト、大人の関係。
「海鳴り遠くに」窪美澄
夫を亡くして千葉の片田舎に持っていた別荘に引きこもった女性が、隣家に絵を描きに来た女性画家と親交深めながら結婚していたときの心の傷と向き合い、新しい恋を始めていく。
最悪より平凡!丁度、久しぶりに(流石に年をとった)飲み屋で知り合っただけのおじさんから奢られ、誘われるという体験をした直後だっただけに、あー、こういう目に合う女性って一定数いるんだろうなー、と共感深く読んだ。断れないとか、怒られないとか、オーラで分かるんだろうな、きっと。
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「最悪よりは平凡」島本理生
「深夜のスパチュラ」綿矢りさ
「カーマンライン」一穂ミチ
「道具屋筋の旅立ち」遠田潤子
このあたりが特に好きだった!
色々なmatured kinds of loveで、飽きずにサクサク読めました!
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読んでみたいけど、なかなか手が伸びなかった作家さんばかりのアンソロジー。思わず買ってしまった。
『最悪よりは平凡』 島本理生
主人公の和田魔美ってどんな女性なんだろうか?会ってみたいと思った。とても魅力的らしい。読んでて、真面目でしっかりとした女性だと思うんだけど、なぜか下心がある男ばかり寄ってくる。本人はそんなつもりは全くないのに。身体が魔性の女みたいに言われてるし。最後はいい感じに終わって良かった。
『深夜のスパチュラ』 綿谷りさ
バレンタインデーは恋する女子にとっては戦いだねって改めて思った。主人公の可耶ちゃんがチョコを買いに行くところから渡すまでの奮闘が読んでて面白かった。ガトーショコラが出来た時、良かったね、よく頑張ったと声を掛けたくなった。読んでて自分の事を思い出した。チョコレートケーキを作って大失敗した事がある。お菓子作りって材料の計量をちゃんとやらないといけないのに、私はとても適当に計量して大失敗。ものすごく言い訳をしてから食べてもらった覚えがある。
『フェイクファー』 波木銅
波木銅さんはこの本で初めて知った作家さん。着ぐるみに魅せられた人たちの話。自分で作ったり、着ぐるみの写真を撮るのが好き、など好きな理由は人それぞれ。なんとなく現実逃避をしたい人達が集まっている気がした。読んでて二つほど謎があったんだけど、分からないまま終わってそこがモヤっとする。でも面白いと思った。「裁縫は暴力の逆」、「裁縫は、誰かを傷つけたりしない」、「誰にだって秘密はある」という言葉が印象に残った。
『カーマインライン』 一穂ミチ
5歳で家庭の事情で離ればなれになった双子の話。14年ぶりに再開し、2ヶ月一緒に過ごす。14年という時間は関係なく、すぐ馴染むんだけど…。一穂ミチさんの作品はこれで二つ目なんだけど、"人の想い"に何か隠されてる、そんな印象を持ちました。2人の子供の頃の思い出に、天井に星のシールを貼るっていうのがあるんだけど、このシーンが作品で重要かな。
『道具屋筋の旅立ち』 遠田潤子
ずっとイライラ、ムカムカしながら読んでた。真相が分かって同情もするけど、それにしても主人公の優美に対する態度はダメだよね。美味しいものを食べて幸せになると思ってたけど、この作品は食べ物で苦しめられる。読んでて苦しくなってしまった。でも最後は食べる事で吹っ切れたみたい。「自分の身体は自分のもの」と気付けて良かった。
『無事に、行きなさい』 桜木紫乃
大人な恋愛小説。ミワと倫彦の関係をミワが自分の作品で表現したというのが、さすがアーティストだなと思った。その作品でお互いの道を決めたって事だと思うんだけど、う〜ん大人だね。
『海鳴り遠くに』 窪美澄
主人公の中野恵美が気持ちを佐伯絹香に伝えることが出来て良かった。こんなの本当の自分ではない、でもその事は言えない。これは辛い事だと思う。
題名の『二周目の恋』って人によって捉え方が違うんだなと思いました。
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「二度目の恋」でらなく、「二周目の恋」って何? と思いながら手にとった。
恋愛小説のアンソロジー。
同じ人にもう一度恋をする、というより、過去の恋の色んなものを乗り越えて、振り出しに戻って新しい恋をスタートさせる、というイメージかな。だからといって、すべての話がそうとは決まっていない。
もうすでに「付き合ってる」ような感じだけど、明確にするために頑張る女子大生や、結婚を経験したのちに自分らしい恋愛をする女性。脱皮して一回り大きくなった人たちが出てくることは間違いない。
昔は居心地が良かったけど、新しい世界で生きていると、なんだか昔のことを違う視点から見られるようになっている、なんてことはよくある。憧れだったのか、恋をしてるふりをしていたのか、世間体を気にしていたのか。
登場人物たちは、縛られていた何かから放たれて過去を振り返らずに突き進んでいく。
一番良かったのは、一穂ミチさんの「カーマンライン」。空と宇宙の境界部分のことをカーマンラインというらしい。
時代設定が平成初期だけど、意外と良かったのが遠田潤子さんの「道具屋筋の旅立ち」。今も同じような男性はいるだろうな。どんな人もできるだけ自然な自分を出せる相手が何人かいるだけでずいぶん楽になると思う。
あとね、窪美澄さんって苦手かもって思ってたけど、ここでレズビアンの女性の話が出てきて、これが良かった。上手くどこがどう印象的だったのか分からいんだけど、幸せな気持ちになった。
目次
最悪よりは平凡 島本理生
深夜のスパチュラ 綿矢りさ
フェイクファー 波木銅
カーマンライン 一穂ミチ
道具屋筋の旅立ち 遠田潤子
無事に、行きなさい 桜木紫乃
海鳴り遠くに 窪美澄
そういえば、「フェイクファー」を読んでるとき、「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」の小説を思い出した。
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初めて読んだ
アンソロジー。
やっぱり作家さんによって文や物語の雰囲気が違くて一冊読んでる感覚がなかった!
でも素敵な方にたくさん出会えるのはいいことだね。
一つ一つ本当に色が違うから感じたこともそれぞれだけど、恋愛の形って本当に色々あるなってのが所感。
実ったものも実らないものも実らせちゃいけないものも心に秘めておくだけのものも全部恋。愛。
正しい形に囚われすぎなくたっていいんだって思わせてくれた。
お気に入りは大好き島本理生さんの作品「最悪よりは平凡」と一穂ミチさんの「カーマンライン」
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オール讀物2023年2月号に掲載された女性作家による短篇をまとめたアンソロジー。タイトルの「二周目の恋」は雰囲気で付けましたという感じかな。
お初の作家・波木銅さん「フェイクファー」は、ちょっと特殊な設定の作品で興味深く読んだ。
綿矢りささん「深夜のスパチュラ」は、4回のデートを重ね明日のバレンタインデーはどうしようかと悩む女子大生の、告ったほうが負け(?)な話で笑えた。
一穂ミチさん「カーマンライン」は、国際結婚で生まれた男女の双子が父親の死後離れ離れとなり、14年振りに再会するが……。断トツによかった。
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恋愛小説のアンソロジー。
著者ラインナップが『一穂ミチ・窪美澄・桜木紫乃・島本理生・遠田潤子・波木銅・綿矢りさ』こんなの全員海老の天ぷらじゃん。海老天しかない天丼じゃん…。
私はれんこんの天ぷらが一番好きだけど。文芸誌の恋愛特集のために書き下ろされた作品をまとめたもの。
どれもほんとーーーによかった。全部好き。
なんか恋愛ってどうしても自分の生きてきた環境から受け取った価値観がインストールされて、それがよくも悪くも作用してるよなあと読んでいて思うのだった。
あとけっきょく他人と深く向き合うことは自分と深く向き合うことでもあって、そらつらいわあ…。
ヒリヒリしてて苦しくて、でも文字からそれを体感できるところが小説のおもしろさだよなあ…!名手たちの恋愛アンソロジー超おもしろかった
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一穂ミチさん、窪美澄さんのお話が特にお気に入り。窪美澄さんのお話は「二周目の恋」というテーマに特に合ってるなぁと思った。
フェイクファーについては解説が欲しい…
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二周目の〜ということで大人の恋が多かった。
そんな中、綿矢りささんの「深夜のスパチュラ」は可愛いかったが、オチのつき方が一捻りあって綿矢さんらしい!と思いました。一穂ミチさんの「カーマンライン」は離れて育てられたミックスツインのお話。その感情がなんなのか、説明できない、そのできなさを恋という風に描けるのは(作中でははっきり言及しませんが)さすがだな〜と。
アンソロジー、いろんな作家さんが楽しめて良い。
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「誰も軽視しないから、誰からも軽視されない。」p121
波のおとをきいているような感覚の文。
繊細で力強くて身を預けてしまいたくなる
「カーマンライン」と「無事に、行きなさい」「海鳴り遠くに」がアンソロジーのテーマに合っている感じがしてよかった。