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【読もうと思った理由】
ブクログの他の書籍の感想欄に何度か書いたが、20代の頃にもっともハマって読んだ作家が伊坂幸太郎氏だ。それこそ、デビュー作の「オーデュボンの祈り」から「死神の浮力」ぐらいまでは、文庫化作品はすべて読んだはずだ。ただ、そこからは新作が出ても、必ず読む作家ではなくなり、少しずつ伊坂作品から遠ざかっていた。オブラートに包まない言い方をすると、伊坂作品に飽きてしまったのだ。それは、決して伊坂氏の力量が落ちたとかそんな事ではなく、たしか著名な作家も言っていたと思うが、1人の作家が生涯で本当に面白い作品を書けるのは、よく書けて6作品ぐらいだという。
伊坂作品はトータル20作品近く読んでいるので、どうしても物語の構成なども含め、ある程度は展開が読めてしまう。じゃあなぜ今回読もうと思ったのか?と言うと、「金閣寺」の雑感にも書いたが、一つは、タイトルに惹かれたからと言うことと、実はもう一つ理由がある。確か今年だったと思うが、雑誌で辻村深月氏の特集をしていて、そこで伊坂氏と対談をしていた。そのとき伊坂氏が辻村氏に自分の代表作を上げるとすると?的な質問をされての回答が「逆ソクラテス」だったはずだ。(その雑誌は立ち読みしただけなので、正確な質問の内容は思い出せないが、逆ソクラテスに対する思い入れは、かなり大きかった印象はある。)そのときにこの作品は読まないとなと思った。
確か僕の記憶が正しければ、ファンの人たちは代表作を聞かれると、初期の頃の作品(アヒルと鴨とか、重力ピエロ、ゴールデンスランバーなど)を上げるであろうが、僕は逆ソクラテスが、かなり良い出来だと思っている的な回答だったと思う。40作品ほど書いた作者が、代表作を聞かれて答えた作品は、読むべき作品だと思った。僕が本の感想の最初の項目にこの【読もう思った理由】をあげているのは、ただの慣習ではなく、プロフィールにも書いているが、本が売れなくなった現在でも、年間で約7万冊の新刊が発売されているという。何万冊の中から、次に読む本を決めるのは、皆さんもそれなりに悩んで決めているはずだ。実は僕も、それなりに考えてから決めている。僕が感想欄で重要度が高いと思っているので、【読もうと思った理由】を最初に書いています。
【伊坂幸太郎氏ってどんな作者?】
(1971年5月25日 - )
千葉県松戸市出身。東北大学法学部卒業。この時期の東北大学には、薬学研究科に瀬名秀明、文学研究科に佐藤賢一、理学部に松崎有理と円城塔など、現在小説家として活躍している人物が在学していた。大学卒業後、システムエンジニアとして働くかたわら文学賞に応募、2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。数年後に作家専業となった。宮城県仙台市在住。
2002年の『ラッシュライフ』で評論家に注目され始め、2003年の『重力ピエロ』で一般読者に広く認知されるようになった。それに続く『アヒルと鴨のコインロッカー』が第25回吉川英治文学新人賞を受賞。本屋大賞においては第1回から第4回まで連続ノミネートされた後、2008年の第5回に『ゴールデンスランバー』で受賞。同作品で第21回山本周五郎賞も受賞。な��直木賞については、2003年『重力ピエロ』、2004年『チルドレン』『グラスホッパー』、2005年『死神の精度』、2006年『砂漠』で候補となったが、2008年、同賞の影響力の高さゆえに環境が変化する可能性を憂慮し、選考対象となることを辞退している。2020年に『逆ソクラテス』で第33回柴田錬三郎賞を受賞。2020年より山本周五郎賞の選考委員を務める。
著作の多くは中国語訳、韓国語訳が出版されており、タイ、インドネシア、フランス、ドイツ、イタリア、ロシアなどでも刊行されている。英語圏では、2011年にアメリカで『ゴールデンスランバー』(英題『''Remote Control''』)、2021年にはイギリスとアメリカで『マリアビートル』(英題『''Bullet Train''』)、2022年にはイギリスとアメリカで『グラスホッパー』(英題『''Three Assassins''』)が刊行。『マリアビートル』(英題『''Bullet Train''』)は、英国推理作家協会が主催する、2022年度ダガー賞(通称:CWA賞)の翻訳小説部門(旧名称:インターナショナル・ダガー賞)にノミネートされた(日本人作家のノミネートは、横山秀夫、東野圭吾に続いて3人目)。
【あらすじ】
「敵は、先入観だよ」学力も運動もそこそこの小学6年生の僕は、転校生の安斎から、突然ある作戦を持ちかけられる。カンニングから始まったその計画は、クラスメイトや担当の先生を巻き込んで、予想外の結末を迎える。はたして逆転劇なるか?表題作ほか、「スロウではない」「非オプティマス」など、世界をひっくり返す無上の全5編を収録。最高の読後感を約束する、第33回柴田錬三郎賞受賞作。
【感想】
「デビューしてから二十年、この仕事を続けてきた一つの成果」
上記は、あとがきのインタビューの受け答えの一部抜粋だ。皆さんは伊坂幸太郎氏の印象とか作風は?と聞かれればなんと答えるだろう?例えば、まったく別の複数の物語が終盤近くになって伏線回収されていく爽快感だけでなく、別々の物語が繋がっていく構築力が好きとか。辛いストーリーでも何故か爽やかさがあるのが好きとか。はたまた、意外に座右の銘的な名言が好きとか。色々な意見があるだろう。僕はこの作品を読んで、上記に上げた全てがバランスよく詰まった作品だと感じた。そりゃ、デビューして20年以上も経つのに、日本の作家陣のトップに君臨し続けるのも、“ごもっとも“と言わざるを得ないと感じた。改めて感じたのは、伊坂氏は他の作家が羨むほどに、売れ続ける要素を、掃いて捨てるほど持っているなぁと感じた。
伊坂氏といえば、ラストに向かっての伏線回収は言うに及ばず、僕が意外に好きなのは、色々な作品で印象に残る名言が多い。
ベタではあるが、「ゴールデンスランバー」の「信頼と習慣」は、今でも僕の座右の銘の一つになっている。実は今作でも名言がある。
「僕はそうは思わない」
この言葉って、相手との関係性によって、言えるかどうかのハードルが全く違ってくる。例えば自分の部下であれば何の問題なく言えるが、クライアントや、二つ以上階層が上の上司には、途端にハードルがめちゃくちゃ上がる。そう、日本人であれば嫌でも空気を読むとか、相手の顔色を伺うなど、頼まれてもいないのに、良くも悪くもしてしまう。だけど本当は相手が誰であれ、言わな���といけない時は、堂々と言わないといけないよなぁと、今作を読んで改めて思った。
今作は伊坂氏も言っているが、小学生にこそ読んで欲しい作品と言っているが、大人が読んでも、読み方と思考の深さによっては、十分楽しめる作品だなと感じた。
作品自体は300ページほどだし、とても読みやすい。特に意識して読まなければ、数時間ですぐに読めてしまうだろう。ただ伊坂氏が、20年作家を続けてきた、一つの成果と言い切っている作品なのだから、哲学書や思想書を読むときのように、深く思考しながら読み直すのもアリだなと思った。
【雑感】
次は予定通り、「人間の建設」を読みます。というか、もう3回ぐらい読了しているのだが、自分の中で、感想がなかなか纏まらない。それほどに読み応えがあり、気づきが多い本だ。ここで「次に感想をアップします」と、宣言でもしない限り、いつまで経っても自分で考えが整理できそうにもないので、考えを纏めてから感想をアップします。
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『平凡なヒーローたちの物語』
この本では、ちょっと嫌な人とか、ちょっと間違っていることに対して、比較的平凡な子どもたちが、知恵を絞って挑んでいく
「僕はそうは思わない」とか
「約束を守る、信頼される、真面目」とか
人生で大切なことを教えてもらった気がする
たくさんの人に読んで欲しい
きっと人それぞれ何か得るものがあると思う
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小学生が語り手となる短編が5作品。どの物語も親としてハッとさせられるものだった。
特に「逆ソクラテス」の安齋くん。最大の敵は"先入観"、合言葉は"僕は、そうは思わない"。色んな人と関わって、大人になった今ならわかることでも、経験の少ない小学生には難しい。親として子どもとの接し方は参考になった気がする。出てくる子ども達の将来が楽しみだなぁ。
#逆ソクラテス
#伊坂幸太郎
#20230922 読了
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子供目線やその先生視点の短編集でした。
自分の意思が強い、一見変わり者のような子が一歩を踏み出せない子や気弱な子に影響を与えるという話が多く、短編ごとのテーマが分かりやすかったです。
先の展開や結末が予想しにくく、気になってあっという間に読んでしまいました。印象的なシーンや繰り返しの表現で記憶に残る、面白い小説でした。
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これこれっ!!
多分人生で読みたかったものの一つがこれだわ。
自分を美化する訳じゃないけど、何かと大人に反抗する小学生だったからむっちゃ刺さった…
そして、本の解説サイトとかでやっと伏線を答えを知ったけど、それでも冒頭と最後のあれは鳥肌立った。
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小学生が主人公で読みやすい短編集
一つ一つ物語が面白く、どの主人公も特別な感じがしないところが良かった
自分も磯憲みたいな大人になりたい
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『自分は何も知らない、ってことを知ってるだけ、
自分はマシだ』
「僕はそう思わない」
「ドン・コルレオーネ〜〜」「うむ、では」「消せ」
オプティマスプライム「私にいい考えがある」
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子供が主人公の短編集、と謳っているけど、魅かれるのはプロ野球やバスケの日本代表のコートに立ったり、クラスメートと結婚した友人たちの「長じて後」の姿や、二番目の緩い父親や学校の先生、ワシントンのエピソードを語りながら子供を粘着男の目前から搔っ攫う母親とか、要するに大人たちがメインでした。
子供で好きなのは「スロウではない」の高城かれんと、ゴッドファーザーごっこをしている司と悠太のコンビかな。
味わい深い一冊でした。
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逆ソクラテス/ 伊坂幸太郎
敵は先入観。世界をひっくり返せ!
自分が小学生の時、先生や周りからなんか言われる度に「いや、それは違うんじゃない?」って思う場面は沢山あった。
けどそれを言葉にする語彙力も勇気も持ってなくて毎日がモヤモヤしてたんだよなぁ。
その時の自分の気持ちを伊坂先生がそのまま書いてくれた、あの時の自分の言いたかったことを言葉にしてくれてた。
これからの自分と、あの時の自分が救われたような気持ちになった作品でした
どんな相手にも立ち向かえる魔法の言葉
「僕はそうは思いません」
これは大人になった今でこそ使っていきたい言葉
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これまでの伊坂さんの作品とは一線を画した小学生が主体のストーリー。しかも単に伊坂さんの思い出話を元に作ったものではなく、限りなく現在に近い時代が背景になっている。今の時代の小学生を描いている。(後書を読んで、伊坂さんご自身の経験を一部織り込んでおられることも分かったが。最初と最後のところはうまく繋げておられた。)
携帯電話、ネット、ゲームセンター(ゲーセンは伊坂さんが小学生時代もあったかな?)。
読んでいるときにわからない言葉が出てきた。「ミニバス」である。???となったままで読み進めていくと、なるほどそういうことか!ということが分かった。
小学生目線で書かれているので、ついつい自分の小学生時代を思い出しながら読むことができた。懐かしい思い出が蘇る。懐かしいけれど、5年生、6年生の時の担任の教師は、当時も、今から考えてみても本当に人間として最悪の教師であったので、本作を読みながら、あの教師が今の時代に先生をしていたらどうなるのだろう?と、思わず想像してしまった。
しかし今の小学校の先生は大変だと思う。とても自分には務まらない。
熱中時代で水谷豊さんが北野先生を演じていたのはもう40年以上前のことだ。まだ、小学校の先生をモチーフにした家族で楽しめるテレビ番組を作ることができた。今の小学校の先生を楽しめるドラマにするのは難しいだろう。
子供達はどうやって良いことと悪いことを学んでいくのだろう。イジメもどんどん陰湿化していく。作品の中に解決の手がかりとなる様なことも書かれているけれど、現場ではなかなかその様にはいかないのではないか。モンスターペアレントと対峙するのも難しい。
まあ、小学校だけの問題ではなく、社会全体の問題ではあるのだが。
伊坂さんのこの作品を読んで、様々な課題について考えさせられてしまった。
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伊坂幸太郎さんの「逆ソクラテス」読了です
主人公が小学生とあり、どこか懐かしいような気持ちで読み進めました。
個人的にすごく好きなのは「スロウではない」のゴッドファーザー風の会話です。
「うむ。では」「はい」「消せ」
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タイトルからして面白そう
しかも伊坂幸太郎さんだし。
どの短編集も主役は子供、
主には「弱者に寄り添う」…違うな、
こう、大人でも…生きていくうえで納得のいかないこととか
いろいろ…あるけど、なんとなくそこらへんをスッと軽くしてくれる作品ばかり。
受け入れ態勢バッチリで読み進めるから、
仮に先に私が「こういう結末かも」とか予想を立てても
「ちょっとまてその先入観」という頭が常にあって
もっと不用心のまま、素直に読みたかったかも。
あと、現在アマゾンプライムでスラムダンクのアニメにはまっているので
アンスポーツマンライクとかやばかった
ちなみに、伊坂さん
最後の家電量販店の人って
あの時のあの人なの?!!!
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子供の頃なら強い人、特に先生や親、中心的存在な同級生の意見は「そうなのかもしれない」と流されていた。心当たりがある。「僕はそうは思わない」そう言えたら、せめて心の中で思えたらよかったのに。ないがしろにされたり、馬鹿にされたり、困っていたりする同級生を何とかしてあげようと画策したりする友人関係がうらやましく思えた。磯憲先生の存在もよかった。子供に読んで欲しいな。
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読みやすくて面白かった。
どの話の小学生も頭が良すぎる。
若干どの話も絡んでるようなところは正直好きではないけど、磯憲の人間性はとても好き。
お気に入りは非オプティマスだけど、全部好きだった
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先入観をひっくりかえせ!!
主人公含む小学生達が何でもかんでも決めつける「逆ソクラテス」な教師の先入観をひっくり返すために奮闘する話。
短い話だったが目的のためにしてはいけないことを犯すドキドキ感とラストの爽快感、予想外の伏線回収に気分が高揚した。(逆ソクラテス)
子どもの頃って自分たちなら何かを変えられるって色々行動するよな〜と当時の青い自分を思い出して懐かしくなった。同時にもうあの頃には戻れないなという寂しさも感じた。
全5話の短編集でどれもラストはすっきりするし、感動する。
私は個人的に逆ソクラテス、スロウではない、アンスポーツマンライクが好みでした!
2023.07.23 読了