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歌人の東直子さんが子どもの頃から歌留多として親しんできた百人一首を今改めて全首をじっくりひもとき、現代の言葉で五七五七七の現代歌集として再構築した歌集。
私は子どもの頃、百人一首を覚えるような宿題はなかったため百人一首、全首をまとめて読んだのは初めてでした。
東直子さんの訳した歌と訳文も付いているので、とてもわかりやすくてよかったです。
その中から東直子さんの訳文の方がよかった、わかりやすかったと思った歌と本歌をいくつか載せます。
比べ読みしていただけたら嬉しいです。
○大空をふりあおいだらああ春日、三笠の山に出ていた月が
安倍仲磨
○天野原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも
○これなのか旅立つ人も帰る人も別れてはまた逢坂の関
蝉丸
○これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関
○その名前「逢坂山のさねかづら」ひっそり秘密に逢いたいのです
三条右大臣
○名にし負はば逢坂山のさねかづら人にしられでくるもよしがな
○天の光のどかにそそぐ春の日にそぞろごころに花は散りゆく
紀友則
○ひさかたの光ののどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
○約束をしたよね涙流しつつ末の松山波越すまいと
清原元輔
○契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは
○不本意なこの辛い世を生きぬけばきっと恋しいこの夜の月
三条院
○心にもあらでうき世に長らへば恋しかるべき夜半の月かな
○滝川の岩に砕けてわかれてもいつかはきっとまた逢いましょう
崇徳院
○瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
○秋風にたなびく雲の切れ目よりこぼれる月の光きよらか
左京大夫晃輔
○秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけき
○悲しめと月が言うのか(そうじゃない)月にかこつけ流れる涙
西行法師
○嘆けとて月やはるもの思わするかこち顔なるわが涙かな
○花の降る嵐の庭の花の雪ふるびゆくのは私のからだ
入道院太政大臣
○花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり