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就業、政治、教育、結婚、出産など様々な事柄について格差の影響、平等後の可能性を国際的な視点から描き、規範や制度について考える
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ジェンダーによる格差のエビデンスを提示してくれた本。
エビデンスの提示とはこんなに大変なのかと改めて思う。相関関係と因果関係は違う。他の要素を排除した因果関係の証明は難しい。
私たち一般人は、さほど根拠がなくとも、簡単に統計に惑わされるのだが。
研究者たちの努力に頭が下がる。
こんな困難な検証を経て導き出されたいくつかのエビデンスを積み重ね、出てきた最小限の結論、「クオータ制が質の低い女性議員を当選させるのではなく、無能な男性議員排除に繋がる」というのは、大事にしたいし、この結論に胸がすくようだ。
男性も取れる育児休暇制度導入が男性研究者のキャリアにとってのみ有利に働いたというのも、男性が育児休暇中にいかにちゃんと育児をしていないかがわかり、なるほどとおもった。
岸田首相がリスキリングを勧めたのもこういうカラクリなのね。
お父さんたち、育児休暇中は真面目に育児に専念してねー(笑)
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書いてある内容は、ほぼほぼ納得、ジェンダーに関する議論は、ともすれば、あるべき論や心情論に陥ってしまいがちではないかと思うところ、データできちんと示しているところが本書の特徴、なのかな。
「はじめに」で中絶の論議が代表例としてあげられているように、主義や心情で議論するのではなく、中絶が非合法の地域・時期と合法化された地域・時期を比較したデータから、誰が不利益を受けて、社会にどのような影響があったのかを明らかにしたうえで、その是非を問う、という視点をもたらしてくれる。
途上国の「婚資」について、その習慣がある場合の方が、女性の教育水準が高い、とか、男性の育休が女性の昇進競争力を下げている場合がある、などについては、特に後者は制度の趣旨を外れた運用が悪い、と言ってしまえばそうなんだけど、現実にそう運用されることもあるという事実をちゃんと認識した上で、どう変えるべきか議論しないと、頭でっかちで誰も幸せにならない結論になってしまいそう。
ジェンダー格差による一方の性の不利益は解消するに越したことはないけれど、その目的は、今不利益で不幸せと感じている人がより幸せを感じられること、そのためには、このようなエビデンスを通じた議論が大切だと感じます。
(うーん、なんだか幼い学生さんが書くような結論で、少々恥ずかしい、、、でも、当たり前のことが大切。うん。)
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世界中の研究者が取り組んだ論文をもとに、ジェンダー格差を実に幅広い対象と観点から読み解く。相関関係があっても因果関係ではないこと、政策が雰囲気で決められていることなどをクールに指摘していく。ジェンダー格差と言っても、例えば男子を重んじる社会で女子の数が減るという話から、先進国内での学歴と子どもの数の違いまで、さらに人類の農耕における鋤と鍬の違いが女性の労働参加の違いと関わるという話から、北欧のこの数十年の変化の話まで、対象範囲がとても広い。物事の見方、考え方が広がり、視座が安定する。特にジェンダー問題関心ない方にもおすすめ。(葉)
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ジェンダーとは、社会文化的に意味づけされた性別、名物学的な性別はセックス。
ジェンダー格差を測る指標=世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数。日本は146国中125位。東アジアの中でも最下位。
OECD諸国のうち、4大卒以上の割合が女性より男性が高い国は日本だけ。他の国は、女性のほうが高い。STEM分野(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マス)は特に男性が高い。
政治と経済の分野でさらに順位が低い。
格差があることを好都合と思っている女性もいる。専業主婦は奢侈財で根強い人気がある。
国連開発計画のジェンダー不平等指数だと170か国中22位。
インド農村で、女性の賃金上昇があったため働く女性が増えた。その結果、家事の担い手が女の子に写って教育が減った=将来の男女差を生む原因になる。
賃金上昇は不平等解消の結果、原因ではない。相関関係はあるが因果関係はない。
ランダム化比較試験は人為的に起こすのは倫理的に難しい。外部の要因でおきた区別を利用する。
RCTの限界=倫理的に許されない場合と、介入の内容が小さなことに限られる場合。
女性の労働参加と経済成長貧困削減には正の関係があるが、因果関係とは限らない。経済が発展すると女性の労働参加が増える。
男性は力仕事に比較優位、女性は頭脳労働に比較優位がある。比較優位の言葉を誤用しないこと。
経済が成長すると、頭脳労働が成長する。教育の収益性が高いため女性の教育水準が高くなる。
インドの低カーストでは、しがらみがないため女性のほうがオペレーターなどの新しい職業に就きやすい。その結果女性のほうが教育水準が高くなった。少なくともカースト下位の中では、比較的高賃金。
家電の価格が安くなる(普及する)と女性の労働参加が増える。因果関係があるとは限らない。家庭の豊かさや先進性が第三因子である可能性がある。単に経済の発展に伴って同時に起こっていることかもしれない。
水インフラの発展が女性の労働参加を促したか。これもエビデンスはない。DID(差分の差分法)による分析。
p35
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経済学的視点とデータを駆使した的確な分析に唸るものがあった。慣習によるバイアスは男女共にあり、そのしがらみは意識的に取り払わないと抜け出せない。日本が先進国の中で立ち遅れているのは意識改革の遅れでもあるのだろう。
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出版社(中央公論新社)ページ
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2023/08/102768.html
内容
目次
序 章 ジェンダー格差の実証とは
第1章 経済発展と女性の労働参加
第2章 女性の労働参加は何をもたらすか
第3章 歴史に根づいた格差
第4章 助長する「思い込み」
第5章 女性を家庭に縛る規範とは
第6章 高学歴女性ほど結婚し出産するか
第7章 性・出産を決める権利をもつ意味
第8章 母親の育児負担
終 章 なぜ男女の所得格差が続くのか
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エンパワーメントとは、自身の人生をコントロールできること。
女性が進路、就職、結婚、出産など、人生の大きな分岐点だけでなく、日常生活のあらゆることに対して、自由に決められ、自己実現を感じられることがメントが実現した状態と言える。女性の意思決定権、自律性、行動の自由、強要からの自由などの指標を上げることができる。自律性とは、他者からの支配を受けず、自己の立てた規律に従って、意思決定・行動することを指す。
男女間の賃金格差は学歴の差だけでなく、好みの問題も入ってくるんだなー。女性は高い賃金より通勤時間が短い方を好んだり、柔軟な働き方を好んだりするんだって。
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ジェンダー格差、女性のほうが所得が低いとかエンパワーメントが低いとかの原因を探る実証経済学の事例をわかりやすく紹介する本です。
因果関係と相関関係の違いを判断するのは、自然科学の実験とは違い難しいようです。
女性のために良かれと思って実施した政策でも、結果は意図したことと逆になってしまうということも在るそうです。例えば、インドで家庭で家事をしていた主婦が仕事などで家庭の外に行くようにする政策が、結果としてその家の女児が家事をしなければならなくなり、その女児の教育水準が下がり、長期的には女性の地位が低下してしまったという事例などです。
ジェンダー格差は、根本的には、男性は仕事、女性は家事というような人々のジェンダー規範を払拭しなければなくならないようです。ただこのジェンダー規範の払拭は決して不可能なことではなくて、時間はかかるけれども可能なことだと感じました。