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「桜木紫乃が描くオウム事件逃亡女性犯」ということで、もっとダークでノンフィクション的な内容を勝手に予想していたが、やはりそうではなかったです。
家族の愛情に恵まれず、逃げるように出家した女性が、意図せず逃亡犯となる。他人の名前で、血のつながりや縁のつながりの細い糸を紡ぎながら生きて行く。いつも冷え冷えとした心と、時に熱く思い焦がれる無口な男の存在。
社会からこぼれ落ちてしまった人々にも、縋りつかなきゃいけない大事なものがある。
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親によって、子どもの人生が決められる。親から物理的に離れた後もずっと離れられないと思った。何も悪くないのに指名手配され、名前も捨てて逃げ続ける人生は過酷でありながらも、誰かと生活する日々は幸せそうだった。どこかに紛れてても絶対わからない、同じ場所に留まり続けなければバレなかったと思った。それでもそこから逃げなかったのは、離れられなかったからではないかとも思った。
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桜木紫乃さんの作品は初読みです。何作か読みたいものもあったけれど、この作品を図書館から借りることができたので、読んでみました。
主人公は、岡本啓美…母がバレエ教室を経営していることもあって、啓美も過大な期待のもとバレエに取り組んでいたが、それから逃れるように「光の心教団」に入信し、信者とともに共同生活を送っていた。その生活が一変するのは、1995年3月、渋谷駅で毒ガス散布事件が発生してからのこと…。教団幹部の貴島に事情も説明されまいままに連れまわされた渋谷で、犯行を実行したのは貴島だったが、貴島とともに実行犯として啓美まで指名手配されてしまい…その日から17年にも及ぶ逃亡生活について描く…。
17年…逃げていたのではなく、捕まらなかっただけだと、啓美は言います。23歳から40歳までの17年間…啓美に救われた人もいれば、逆に啓美と関わったために人生を狂わせてしまった人もいる…。なんとも波乱万丈で濃厚な人生の一部始終…!逮捕後の啓美はどうなったのか、啓美に関わった人たちはその後どうなったか…知りたくなります。17年の間に、啓美は罪を重ねてしまうけれど、啓美は愛し愛されたかっただけなのかな…と、そして啓美をキライにはなれない私がいたりします。結構ボリューミーな作品ですが、夢中になって読めました。
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新興宗教による毒ガス散布事件。女性信者啓美は、何も知らされず同行しただけだったが実行犯と共に指名手配される。無実の彼女の17年に及ぶ逃亡生活が始まる。
無実なんだからさっさと出頭して全てを話せばいいのにと思うのは他人事だからか。なぜ逃げる?という思いがあるから今ひとつ肩入れできずにいる。
それでも、名前を変え、住む場所を変え、犯さなくてもいい罪を犯し、子供を産み、その子を捨て、何から逃げているのかもわからなくなって最後に捕まることが安らぎになるという17年の彼女の人生が苦しすぎる。
根っこのところに、母親との捻れた関係が巣食っているのが辛い。
逃亡生活の中で彼女を助ける女性たちは皆、強かに生きている。
それに対して男たちの情けないこと。
桜木紫乃が描く女性は、辛い境遇の中でも逃げずにそれでも生き続ける姿を見せてくれるが、今回の流されて行くだけのヒロインはちょっといつもと違うような気がする。舞台が北海道じゃないのもらしくなかったかな(釧路、網走は旅行で出たけど)。
捕まった後どうなったのか、その顛末を知りたいような気もする。
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桜木紫乃さんの本は初読みです。
モデルとなったのは某新興宗教が起こしたテロ事件でしょうか。ただ、最初の部分がモチーフになっているだけでその先は事件に触れられる事はあまりなく、主人公が所在を転々としながら人と関わっていく物語の展開です。
逃亡を続けながら出逢う人達との関わりを通し、流されるように生きていた主人公の強さを垣間見えました。
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片時も目が離せず、指名手配犯・岡本啓美の逃亡劇を見守り続けた。
母親の抑圧から逃げ「光の心教団」の信者となった啓美。
何も知らされないまま取った行動により、1995年に渋谷駅で起きた毒ガス散布事件の実行犯と見なされ、指名手配される。
彼女こそが被害者だったはずなのに…。
最初の判断を誤った事で、積み重なっていく嘘と罪。
名前を変え他人に成りすまし、束の間の幸せな時間を過ごす彼女に安堵する気持と、一方で残虐な犯罪に手を染める底知れぬ恐ろしさに感情が揺さぶられ続けた。
波乱に満ちた17年間の逃亡劇の全てを見届けて欲しい。
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宗教団体による毒ガス散布事件。その実行犯の幹部男性に、何も知らないまま同行させられた23歳の女性信者の17年にわたる逃亡劇を描いた作品。
万一山で迷ったら尾根側に登るのが鉄則。尾根に上がれば視界が開けて現在地の確認が容易になるうえ、登山道はピークや尾根を通っていることが多いから。そして沢などに沿って山を下るのは厳禁。崖や急流に道を阻まれて動けなくなったり、滑落したりする危険性が高いから
しかし、何かあるたびに谷を選択する主人公です。滑落寸前まで行って危うく立ち直り、再び別の谷に。自らはたいして悪い事などしていないのに、何故か自分を追い詰めていく。ただ、行く先々で救いとなる人々との出会いがあり、ギリギリのところで持ちこたえる。そんな姿をこれでもかと描いて行く桜木さんの筆力。
サスペンスなのかな、今までと少し味の違う桜木作品。でもあまり好みではない。
それにしてもタイトルの「ヒロイン」はどういう意味だろう??
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渋谷駅で毒ガス散布事件が発生。実行犯として指名手配されたのは宗教団体「光の心教団」の幹部男性と、何も知らずに同行させられた信者であり、この物語の主人公、岡本啓美。長い逃亡生活で出会う人たちとの生活を描いたストーリー。
幼い頃からバレエを習い、厳しく指導していた母とは折り合いが悪く、離婚した父親を頼り、そこでだ父親の再婚相手みどりと異母姉妹のすみれと出会う。
さらに数年後には、鈴木真琴というジャーナリストと出会い、その名を借りてスナック「梅乃」の孫として生活する。中国からの技術留学生のワンウェイとの出会いが啓美の運命をさらに変えたんじゃないかと思う。
世間では犯罪者として指名手配されている啓美が、住んでいる場所や年齢も違う人たちと出会い生活していくなかで、それぞれに影響を与えていく。個人的には、父親の再婚相手みどりとその娘すみれが精神的に強くて憧れる。
まことの子はきっとバレエをやっていて、すみれの最後の舞台で花を贈呈したルナちゃんなんだろうなぁ。一見繋がりのないはずの2人が啓美を通じて知らないところで実は繋がってる。啓美を助けたはずの人が啓美にも助けられている。
啓美は逃亡中に自分の生き方を得ることができたんじゃないかと思う。
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桜木紫乃さんやっぱりおもしろい。
宗教団体の中、男性との関係、母親との確執、人との関わり、沢山の事を考えそして感情移入。あっという間に読了。
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あの事件を元にしたフィクションだけど、どうしても事実と重ねてしまい、ヒリヒリとした臨場感が伝わってくる。
著者が描く女性は、どうしてこんなに切なく強いのか。
なんだか読み進めるのが辛くもあり、女性のしたたかな怖さもリアルである。
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オウムの地下鉄サリン事件を思い出した。
ワンウェイは結局どうなったんだろう?
2人の関係がはかなくて読みながら切なくなった。
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地下鉄サリン事件を思い起こすような、ある宗教団体が起こした事件に関わった無実の女性のはなし。みつかっていない指名手配犯はこうやって日常にとけているのかもしれない、と思った。どうなるのか先が気になってどんどん読めた。
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オウム真理教のサリン事件を模した「光の心教団」の実行犯として指名手配されながら17年間の逃亡生活を続けた岡本啓美。
母との葛藤の中で信仰宗教に入り込み、知らぬまま事件に巻き込まれ逃亡犯となってしまった彼女は流される様な人生の中で、愛する人を見つけ、友を作り、子供を宿す。
普通社会の裏側で生きる人々の優しさと逞しさ。
彼女の後悔する事なく生きる力強さと周りの人への包容力。この後の彼女の幸せを祈りたい。
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星3.5
桜木紫乃の小説、とっても技巧的?で、かつエロい。普通の文体が好きな私にはちょっと難しい。え、これってどういう意味なんだろう、といちいち読み直したりして案外時間がかかってしまった。ただ、小説らしい小説を読んだという読後感はある。
世の中には、名前を変えて生きているような訳ありの人がたくさんいるのだろうか。
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ヒロインが逃げるお話し大好き。
犯罪を犯した実行犯の信者の話は
まあありがちだけど
一般の信者のその後みたいなものは
あまり読んだことなかったから興味深かった。
なにもかも手放して出家したのに
そこから放り出されたらどうなるのか…
主人公は周りの人間にまだ恵まれていて
逃避行にそれほどヒリ付くものはなかったが
両親や子供との葛藤は読み応えあった。