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千代が女中として目の見えない初衣の元で働き出した冒頭。どうやら千代は初衣のことを知っていて慕っているようなのに、なぜか自分の正体を明かさない。
読んでいる間ずっと心が温まるような、気持ちの良い読書だった。
千代も初衣も気持ちの良い人間だし、風呂場での2人のやり取りは笑ってしまう。千代の持つ「もの」は名器だったということでよろしいか。笑
主人(の嫁)と女中という関係上、女中が一方的に従うという様子が思い浮かぶが、やれやれ、面倒みてあげましょか、という態度の初衣とのんびりした千代には主従関係みたいなものは当てはまらない。かと言って千代を軽んじることもなく、女中としての矜恃を持っている初衣の振る舞いは見ていて格好良い。
一番好きなシーンは、初衣が千代の夫の子を産んだ女(不倫相手という点を除けば自分の立場を弁えた物分りの良すぎる女)のことを「いやな女ですねぇ」と言ったところ。なんだかスッキリする。
立場が変わって千代が女中となっても、2人の関係は何も変わらないだろう。なんて素敵な物語。
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戦前から戦後にかけての東京を舞台にして、若奥様と女中という関係で始まったある二人の女性同士の絆を描いた作品である。
全体的なストーリー展開にそれほど真新しさは感じられず、オーソドックスなバディものに留まっていると印象だけど、主人公の千代に関わる「ある秘密」についてのインパクトは中々のものだった。秘密の中身はもちろんここでは書けないけど、よくこれだけ開き直って書いたなあと。色々な意味で感心した。
この手の話は扱いを間違えると果てしなく下品になっていくんだけど、本作に関しては不思議といやらしさは感じない。とはいうものの、アマゾンのレビューで朝ドラに期待、みたいなことを誰か書いていたけど、この原作小説を忠実に映像化するのは少なくともNHKでは無理なんじゃないですかね。
幸田文や有吉佐和子の流れをくむ作品とのことだが、どちらの著作も読んだことが無いのでその妥当性については判断できず。
個人的にはもう少し続きがあってもいいのでは、と思った。
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面白かった。気が合うというのは、こういうことなんか、と思った。
千代のフィジカルな問題の設定がこういう文学系でもあまり取り上げられないので、目新しい。そして、お初の過去もものすんごくドロドロさのない描かれ方で、ちょっと驚くほどサラッと読める。
かなり色々と問題も盛り込んでいて、ただの人情ものというのでもない。
タケや千代(主人公)の母など、一部、どうも嫌な人(主観)も出てくるが、こういうキャラクターもいないと、というのも理解。ただ、とことん嫌な人の出番が多いというのでもなく、さっと出てきて、とっとといなくなるので心の負担は少ない。
結構重い話だが、主人公の千代とサブのお初があっさり目なので、いろいろあっさりしていて
まあ、ええんちゃうか、、と
内容の重さに比べて、この文章の軽さ、、
こんなんだったらええんやけどねぇ、、と
思わんでもないのだった。
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大正に製罐工場を経営する山田家に嫁いだ千代とその山田家の女中であるお初が駆け抜けた大正→戦時中→終戦後の彼女達の生活を描いた作品です。
舞台がその時代なので、男尊女卑が凄いですが、女性の仕事は跡取りを産むという、今では考えられない時代ですが、そういう時代に生きた2人の女性を通じて、当時の女性の扱われ方や、SNSやネットなどもなく、情報源は新聞、ラジオ、お隣さんの噂話だった時代の生活が見えてくる作品でもあります。
じゃあ、ただの大正、昭和を舞台にした話なのか?というと決してそうではなく、今に通じる話なのではいか?と思いました。
今、結婚はしたい人がするし、恋愛もめんどくさくてしたくない、結婚するならデートとかなしで結婚したい若者が増えていると聞きます。
なんでも、結婚したら生活が面倒くさいとか、子供ができたら子育てがとか、1人の時の生活のほうがお金を自由に使えるし、気楽だとか。
おそらく、結婚生活のあり方などもいろいろかわっているんでしょうし、お見合い等で結婚を親に世話してもらうような時代でもない。
結婚するのが当たり前という本作品の時代とは全く異なる今なのに、本作品に今を感じるのは、登場人物の女性の生活が困難でも楽しそうだからではないかと思いました。
同性愛とかそういうのではなく、友達と楽しくずっと共同生活をしている感じの雰囲気が羨ましいなと思ったり、異性のパートナーがいなくてもこういう風に楽しく生活することもできるのかと感じたりします。
性別に囚われず、固定観念に囚われず、どんなに辛い時代でも誰かと一緒にいることの楽しさや誰かを心の拠り所にするということの羨ましさなどなど、本作品からは楽しく生きるためのエッセンスが詰まっているように感じました。
どんなに辛くても生き抜くこと、私達はそんな生き抜いた人たちから生まれたんですからきっと生きていけるというメッセージを受け取ったとともに、生きるならどんな状況でも楽しい方が良い。
そんな気がした作品です。
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問題をひとつひとつみつめると、ドロドロ展開まっしぐらなはずなのに。そんな雰囲気をまったくださずサッパリと読めました。
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戦前から戦後の時期を描いた千代とお初さんの物語。
戦争も含み重い空気が流れる中、とても軽やかに物語が進んでいく。それは千代とお初さんが醸し出す空気感からではないかと思う。
この二人は、最強の二人。
出てくる人は悪い人ではないけれど、夫婦や女同士の悲喜こもごもも描かれていて、やるせない部分もある。
けれど、千代とお初さんが、時には笑い合い、悲しみ合い、楽しく過ごす姿に励まされる。
人生でこんなかけがえのない人に出会えることが羨ましい。主人と女中の関係だとしても。
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考えようによっちゃあ(よらなくても)この時代にあって千代さんはものすごく幸せというか、運のいい女性だよ。母親はいかがなものかと思うけど、婚家の山田家に送ってくれたことはありがたい。裕福で姑はおらず、舅は優しい。旦那は何とも熱量のない白けた男なれど、沈香も焚かず屁もひらず。ほかに女つくっても、財と自由はきっちり与えてくれる。理想だよ。でもってお初さんに学び、いつしか自分を高めていく。すべてを失ってもお芳ちゃんに救われ、最後は再びお初さんと共に自立して生きていく。いいなあ。秋山さんはこの際どうでもいいでしょ。
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千代にお初さんがいてよかった。
お初さんに千代がいてよかった。
第二章以降の話を読むと、第一章と最終章で2人が一緒にいるところが尊すぎて。2人とも色々あったね。乗り切ったね、乗り越えたね。千代は人に覚えられない平凡な顔と自分を揶揄するけど、しっかり生きたよ。これからもお初さんと仲良くね!!!
直木賞候補作、流石でした。
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おもしろかったー。
千代とお初さんの間に何かある、というの仄めかしをもう少し後までじりじり引っ張ってもいいかなーと感じたけれど。
関東大震災から戦後まで、女性たちの生き様のようなものを軽やかに描いている。合間に、千代の身体的な特徴についてのエピソードなんかがさしはさまれるのは意外だった。
新鮮。
そしてお料理がおいしそう。
女同士っていいよね。
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直木賞候補作
ほとんど無名の著者だが、かねてから評判を聞き、直木賞候補にもなったので読んでみる。
大正、昭和初期を舞台にした、丁寧に書き込まれた作品で、まさしく私の好み。言葉の選び方も好きなところが多かった。他の作者だと下品になりそうな内容も、お初さんと千代のさっぱりしているが、自分をわきまえている性格のせいか、さらっと読めてしまう。
ただ、表紙の絵が、お初さんと千代が逆なような。あえて?
次はぜひ直木賞を取ってもらいたいものだ。
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大正末期から戦後までの、日本の社会が大きく変わった時代を生きた二人の女性。
女が自分一人の力で生きていく選択肢なんて、そうたくさんなかった時代の物語。
若いうちにいい婚家先を見つけて嫁ぎ、子を産み育て、夫や親に仕え内を守っていくこと。それが当たり前の、普通の女の人生。その「当たり前」や、「普通」から外れてしまったとき、女はどうやって生きていくのだろう、いや、そもそも生きていけるのか、という時代。
平凡で地味で存在感が薄くおとなしい千代が嫁いだ裕福な家、そこにいたのは大柄でエラのはった女中頭の初衣。奥様と女中、主と従、その時代であればそこには越えられないはずの一線があるはず。でもおっとりとして少々ぼんやりとした千代と、しゃきしゃきとした初衣の間にあったのはそんな通り一遍の関係ではない,一種の同志のようなつながりがあった。
それぞれにそれぞれの想いを抱えて、ともに生きていた時間の長さと濃さよ。
この小説は女が一人で生きていくことの困難さと同時に、丁寧に、きちんと生きていく尊さも教えてくれる。
誰かのために食事を作ること、限られた中で工夫を凝らし、少しでもおいしく食べてもらうこと。
生きることってそういうことから始まるのだな、と改めて思った。
千代が抱える困難と、初衣が抱える問題は全く別のようで、その根幹は同じところから始まっているのだろう。相手を励ますために、「そんなこと気にしなくても大丈夫」と言うことがある。でも、その悩みと苦しみは、当人にしてみれば何年もの時間が経ってもくすぶり続け、決して消えるものではない。
ただ、消えることはなくても無くすことはできるのかもしれない。
それぞれに身体と心に秘密と傷を抱えた二人にとって、ともに、あるいは離れて生きた時間は、そのために必要な、長い長い時だったような気もする。
二人の出会いと別れ、そして運命の再会。その時間のすべてが二人の、これからの人生の、大切な序章だったのだろう。
これは、嶋津輝が高らかに歌いあげる千代と初衣が、そして私やどこかにいる誰かが自分自身の人生を生きていくための人生賛歌だ。
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料理と食べることが好きな
女たちの友情の物語を
のほほーんと読んでいたら
中盤から閨にまつわる
思いがけない展開になり
どぎまぎしてしまった…
家庭に恵まれず
幸せをあきらめていた女が
ちゃんと恋というものを知り
涙する姿にほろり。
そして、やっばり
女たちの友情は熱く力強かった。
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昭和24年、千代は仕事を探していたところ、住み込みの女中の職を斡旋される。雇主は空襲の中で生き別れた初衣。空襲の火で目が見えなくなった初衣はかつて千代の嫁ぎ先の女中だった。初衣に気を使わせないよう空襲で声を潰した千代は身元を隠して女中として働き始める。
初衣との友情を織り交ぜた、大正から昭和25年までの千代の半生時代の物語です。
自分の身体的特徴を気にする千代。それに対する夫や母の態度は残酷です。
夫の自分勝手さや母親の薄情さに翻弄されながらも生きていく千代は、弱そうで結局のところしなやかな強さの女性なのかな、と思います。
優しい人も、嫌な人も、嫌なのにいい人もいます。千代が執念深い性格でないので大きな山がないけれども、ずっとジャブで読み手を攻撃してくるような感じの読み心地です。それをあちらこちらに出てくるお料理が癒してくれました。5時間半で読了。じんわりと余韻が残ります。
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第170回直木賞候補作品。
裕福な家に嫁いだどこかのほほんとした娘・千代と、元向島の芸者・初衣。若奥様と女中として出会った二人の女性が共に暮らした日々を大正から戦後を舞台に描く物語。
時代とはいえ、茂一郎の諸々の行動に不満をぶつけない千代の鈍さやトロさ加減には少々イラついたものの、考え方を変えれば、元々好きで結婚したわけでもないから不自由なく暮らせる現状を維持することは悪くない選択だったのかも。
悩み多き日々を初衣という存在に支えられた千代は幸せだったと思う。
戦後はあのような形での再会だったが、二人の生活が以前にも増して明るく賑やかなことが嬉しい。
人の生きようは心の持ちようで随分と変わってくるのだということ、投げやりにならず、手を抜かず、そして良き友と出会うことで人生は彩り深く豊かなものになるとしみじみ思った。
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面白くてあっという間。のんびり屋さんの千代さん、粋なお初さん。大正から昭和へ。いろんなことがあったけど、生きることや人との繋がりの素晴らしさにじんわり感じ入った。