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わざわざ言うような事でないのは、百も二百も承知なんですけども、言いたいので言わせてください。
やっぱり、この(3)も最高でした。良い漫画ってのは、令和になってから読んでも、容赦なく、漫画読みの心を揺さぶってくるものです。極端な言い方をすれば、漫画好きの老若男女の心を問答無用で揺さぶれたら、それは名作でしょう。少なくとも、私の中で、この『サンクチュアリ』は、『うしおととら』や『花の慶次~雲のかなたへ~』に負けないくらいの名作の一つです。
この(3)で、改めて感じたのは、デカい野望を追い、己の中に一本、筋が通っている、揺るがない信念を持っている漢は、仲間にも部下にも恵まれるんだな、って事です。
普通の感覚を持っている人間からしたら、バカげている、と鼻で笑うようなデカい野望だけを見据えて、野心を絶やす事なく、前へ前へ、と一歩ずつ、慎重さと大胆さの両方を兼ね備えた足取りで進む漢に、男はどうしたって惹かれるものです。
この(3)で、北条は殺し屋を差し向けられるんですが、部下の符牒のおかげで、危機を脱しました。彼の若さだったら、自分の命がヤバい状況であれば、自分を優先してしまうでしょうに、迷わず、北条に敵の存在を教える事を選択していました。これは、この人の為なら命を懸けられる、と北条が慕われている証拠です。
また、北条は、この抗争の中で、また一人、心強い味方を得ています。それが、武山連合・宮村組の組長である宮村政伸です。見た目通りのキレ者ですが、その冷徹な見た目の中には、熱い血が流れており、同時に、北条への友情も詰まっていました。自分だけじゃなく、母親の心も救ってくれたんですから、そりゃ、男として惚れちゃいますよね。
宮村に負けないくらい、北条に男として惚れている渡海さんも、沖縄を縄張りにしている中城規介と手を組み、続いて、九州へ乗り込みます。この九州には、北条が、日本の裏を制覇する為には避けて通れぬ神戸山王会と戦い、そして、ぶっ倒すために必要な強さを持っている雄・大西英二がいました。渡海と大西、中城、そして、黄、この腹に一物を抱えている面々が、どう大暴れするのか、楽しみです。
北条サイドが色々とあるように、代議士となった浅見もまた、魔物犇めく政界で、新たな戦いを始め、なおかつ、味方、仲間と言っていいか、は微妙にしろ、それでも、己に劣らぬほどの気合が入っている同志と組み、同時に、老害どものせいで上に行けず、燻っている先輩らを大きな戦いの渦に巻き込んでいきます。
実力がある故に危険視され、自分のやりたい政治を邪魔されていた事で、つまらない大人になりかけていたものの、浅見によって、再び、野心に赤い火が灯った狩谷さんが、これから、浅見の力に、どうなってくれるのか、こちらも楽しみです。
それほどまでに、北条、浅見ともに器が別格な漢が、己の信じた道を突き進んでいる訳ですから、当然、進めば進むほどに、敵も大きく、強く、危険になっていきます。そんな敵を、この二人が、普通の人間じゃ、逆立ちしたって思いつかないような、ぶっ飛びが過ぎる手段で倒し、野望に近づくのか、もう、(4)が早く読みたくて���方ありません。
この台詞を引用で選んだのは、まぁ、間違ってないな、と素直に思ったので。
正論じゃないし、今の時代じゃ、通らない理屈ではあるけど、的外れではないし、むしろ、これこそが、政治家としてあるべきスタンスではあるな、と思えます。
何も、暴力を使え、とは私も言いません。むしろ、暴力の類を使う政治家は下の下でしょうよ。
自分が持っている、信じている、日本を豊かにする手段を実行したいのなら、まずは、それを真正面から、正々堂々とぶつけてみる、それが大事なんじゃないだろうか。
ぶつけられた相手が、負けないくらい熱いモノを持っているんであれば、真正面から、力でぶつかり返してくれるはずです。
今の政界に、こういう、自分の力を信じて押し通すってスタンスのバカが飛び込んだらメチャクチャになるだろうけど、それはそれで、面白い波を起こして、停滞している色々なモノを改善させるかもな。
まぁ、日本を富ませ、民の生活を豊かにする事なんか考えず、一個人の利益だけに執着している上流国民が、それを笑って許すとは思えんけど、そういう輩をぶん殴れてこそ、本当の「力」でしょう。
「政治なんてなァな、頭でやってるから動かねぇんだ! 力で来い、力で! オレにシッポ振らせたかったら、いつでも、かかって来い! あんたもだ!」(by仙石慎一郎)
もう一つ、この(3)でインパクトがあった台詞を紹介。
これは、私がグッと来たっつーより、今の政治家で、この台詞を言われて、狩谷さんのように、悔しさで血が熱くなる者がいるのかな、と気になったってのが大きいですね。
ぶっちゃけた話、いてほしいなぁ、としか思えないですね。いる、とは断言が出来ません。
でも、もし、本当に、これを言われて、血が悔しさで熱くなる政治家がいて、その人が国のトップに立てたのなら、日本は良い方向に変われるかもしれませんよね。
「狩谷さん・・・あいつらを見て、昔の自分を思い出しませんか!?」
「えっ!?・・・」
「あんたは15年後に望月派の番頭になるのが目的で、代議士になったんですか!?」
「!」
「あんた達、団塊の世代がナマクラだったから、今の政治“システム”ができあがっちまったんだよ!!」
「うっ」
「期待していた分だけ、怒りも失望もでかいんだ・・・」(by浅見千秋、狩谷久雄)
もう一つ、グッと来た台詞を紹介。
これもまた、浅見に政治家としての、持っているべき資質が備わっているんだな、と確信できるセリフでした。
確かに、政治家は様々な脅威や問題に立ち向かって、国をデカく、強くしていくのがすべき仕事な訳ですから、綺麗な手段ばかり使っちゃいられません。
時には、自分の手を泥や血で汚してでも、国の為に働く、それが政治家です、きっと。
良心の呵責がある、なんて言っている内は、まだまだ、政治家として甘いのかもしれませんね。
国の為にデカい事をやるために、金を騙し取ったとなれば、企業の方だって、ギャアギャア言わんでしょう。
むしろ、そういう、野望を持っている政治家に、金を出せてこそ、一流の企業では?
もっとも、今、どこの企業も笑顔で金を出したくなる政治家が��ないってのが問題な訳ですが。
「ヘタな良心なんか持ち出すんじゃない!!・・・・・・狩谷さん・・・オレ達ァ、政治家なんだぜ・・・日本という国と人間の未来を担いでいるんだ・・・企業の一つや二つ騙せないで、世界を相手にできるかよ!!」(by浅見千秋)
もう一つ、グッと来た台詞を紹介。
野望を持って生きる漢は、やっぱり違いますね、言う事が。
人間、覚悟を持って戦っていれば、時には、勝てない状況にも陥ります。
普通の人間は、そこで諦めちゃうんでしょうけど、普通じゃない人間は、ここで負けても、力を蓄えて、次は負けない、と耐える選択が出来ます。
何が何でも生きる、それを決めている漢は、やっぱり、カッコいいです。
「宮村さん・・・・・・死んじまったら終わりだよ・・・人間、死んじまったら、何も残らない・・・オレは生きるぜ、宮村さん・・・自分の夢ェ果たすためなら、たとえ、てめえの手足喰ったって生きのびる!!」(by北条彰)
もう一つ、グッと来た台詞を紹介。
これ、言われて、胸が熱くならなかったら、男じゃないでしょう。
北条ほどの漢に、こんな殺し文句を言われたら、そりゃ、腹も決まりますって。
やっぱり、宮村さん、クールに見えて、熱血だわ。
「宮村さん・・・・・・オレと一緒に、新しい夢、作っちゃみませんか!?」(by北条彰)
もう一つ、グッと来た台詞を紹介。
この台詞で、改めて、渡海さんが男として北条に心底、惚れているんだなってのを実感しますよね。
極道云々は関係なく、こうやって、男として惚れられる漢に出逢える、それは、男にとって、人生で最高の幸せなんじゃないでしょうか?
残念ながら、私には、惚れた、と言える漢がいないので、余計に、そう思うのかもしれません。
「だがな、渡海・・・オレもおまえも馬鹿だ・・・・・・頭のいい人間にとっちゃ、一番、扱いやすい・・・親ァ、見誤ったら、それまでだ・・・後悔は通らねぇぜ!」
「・・・・・・それが極道だろう・・・・・・惚れちまったんだ・・・・・・仕様がねぇ・・・」
「・・・・・・渡海・・・」(by大西英二、渡海)
もう一つ、グッと来た台詞を紹介。
最近ってほどじゃないですが、ここんとこ、様々な不祥事が、各業種で明らかになり、問題視され、日本を揺らがしている理由は、もしかすると、浅見の言う、日本人としての国民性が希薄になってきているからなのかな、と感じました。
日本人としてのプライドっつーのか、こうあるべきもの、全力の努力で最高のものを作り出す美意識が欠けつつあるから、車や電化製品などでトラブルが多くなり、事故を招いているのかもしれません。
ただ、これは、現場で働いている今の人間だけが悪いんじゃなくて、彼らに、日本人としての誇りを教えられなかった世代にも非はあるな、と感じます。
仕事の喜び、目標に向かう気概、それを教えられなかったら、今の現場で働く者らは、当然、次の世代に、それを繋げられないんですから。
ここで、改めて、先に、浅見が狩谷さんにかました言葉が効いてきますね。
「おそらく、彼らに管理されている、という意識はない・・・それを当然と捉え、無意識のうちに、管理というシステムが日本人の中に溶け込でいく・・・そして、その中で、彼らは喜びや目標を見出していく!」
「・・・喜び!?」
「そうです! ビゼットさん・・・日本人というのはね、管理というものの中で、自分の喜びや目標を見い出せる民族なんですよ・・・」
「・・・・・・」
「やがて、彼らが成長し、技術者となり、労働者となって車を造る・・・ボルト一本締めるのも、違いが出てくるとは思いませんか!?」
「・・・・・・それは、労働者の質のことを言っているの!?」
「いや・・・国民性の違いを言っているのです! たとえば、自動車部品の問題についてもそうです・・・あなた方、アメリカ人のどこかには、部品100のうち、5%の不良品があるなら、最初から、110の部品を買えば良い、という考えがある・・・たしかに、数は合う・・・だが、日本人は、あくまでも、不良品0%にこだわる!」(by浅見千秋、ビゼット)
そんで、これが、この(3)で最後にグッと来た台詞。
これまでも、浅見は、漫画読みをガツンッと殴ってくる、熱い言葉を口にしているが、この台詞一つだけでも、十分に、彼の凄味が伝わってきます。
私の勝手な想像ですけど、作画を担当している池上先生、この台詞を、原作担当の史村先生が作ったネームで見た時、一番、心が奮えたんでしょうねぇ。
そして、浅見千秋って漢の生き方、戦い方を漫画で描ける事に、最高の喜びを感じたんじゃないでしょうか?
そうでなきゃ、こんなカッコよく描けませんって。
「どんな国にも、その国の文化があり、歴史があり、伝統がある・・・それぞれが、プライドを持っている・・・それが共存していかなくてはならない・・・大変なことだ・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・要は、“生きる”ということです!」
「生きる・・・・・・」
「富める国、貧しい国・・・そして、その国民達・・・国や国民が、どうやって生きていくのか・・・どうしたら、生きているという実感を得られるのか・・・このテーマの答えを見つけることができれば・・・あなたは、アメリカ合衆国の大統領になれる! もちろん、その時は、私が、日本の首相“トップ”に立っている!!」(by浅見千秋、ビゼット)