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定住せず辺境を巡って布教活動をしている牧師とその娘。荒野で車の整備工をしている男と、男を手伝う少年。牧師の車が故障し、嵐にあったため、四人は一昼夜を共にする。
ざっと言えばそれだけの小説なんだが、素晴らしかった。
四人それぞれの思い、牧師と整備工の過去、荒れ果てた土地の雰囲気が、巧みに語られる。
子どもが親を捨てる(乗り越えると言ったらいいか…)物語は多いが、これは親の方に重点を置いて描いている。
自分がやりたいことをやるため、あるいはやりたくないことをやらないために家族を犠牲にしてきた男たち。まだやれると思いながら年老いていく男たち。彼らを全面的に頼り、信じる時期を過ぎて間もない、未来に対する希望だけを力に生きる十代の少女と少年。その対比は鮮やかで、描き方は全く情緒的でないのに、読んでいて胸をしめつけられる感じがする。
この作家の作品は是非また読んでみたい。