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本書は、ローマ帝国がペルシア帝国を承継したものと整理する。この帝国には分権が残っていないことから、同時代的に発生し多くの文書を残した中国王朝に注目し、「帝国の原理」を探求する。これは西欧中心主義的な歴史観を脱却した方法である。
「帝国」は統治の技術として「思想」があった。また、周辺に対しては寛容であり、互酬的な交換様式が支配的であった。このように帝国のもとでも民族的アイデンティティが尊重されていたことを考えると、帝国を解体することになった民族自決や国民国家が支配層から抑圧に対する抵抗であり、民族にとっての悲願・至上命題だという理念はものごとの一面を見たものに過ぎないと感じた。
交換様式Bを意図的に「避ける」試みとして、ゾミアの引用があった。YouTubeで紹介されていたもの(「「国民を上手に搾取する方法」が学べる本。作らせるべき穀物は○○【ゾミア1】#229」, https://youtu.be/qHLU49TApZM?si=1rCAyeeWjqbweu8G)を見たことがあったが、積極的に国家を作るまいと努力することにフロイトが言うような原父殺しを関連付けるのは驚いた。交換様式AからBへと発達的にとらえがちであるが、Aが後進的な様式だとは考えてはいけないと考えた。