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よかった!よかった!
読みながら、「ツバキ文具店」のストーリーも、
「キラキラ共和国」のストーリーも、
どんどんよみがえって、さらに楽しめた。
懐かしい人たちも次々と出てきて、うれしかった。
バーバラ婦人は、やっぱり、素敵!
「恋文」の内容が、何だろうとワクワクしつつ、
「椿ノ恋文」で、先代の切ない恋、大島の椿、とわかり、
たまらなく感動。
姑の料理、免許証返納、末期がんの母親、など、相変わらず、素晴らしい代筆仕事に、あっぱれ!
依頼人と受け取る人と両方に寄り添った心遣いがすごい。まるで依頼人が憑依したかのような文章。
お隣さんに向けた子供の字、可愛かった。
古い絵葉書はリアル!
反抗期に入ったQPちゃんに向けての手紙は、読んでいてウルウルした。
QPちゃんからの手紙で、反抗期の訳がわかった時、胸がいっぱいになった。
第4作、ぜひ読みたい!
先代の若かりし日のことも、レディババの父親も知りたい。
子供達の成長もまだまだ見守りたい!
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伊豆大島には行ったことがあり、とても好きな島の一つなので親しみやすかった。最後のQPちゃんとのお話、そして手紙が好き。また何年後かに続きが読みたいな。
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私がブックカフェで読書の趣味を始めたキッカケになった 大好きなツバキ文具店 小川糸さんの新作です。
QPちゃんの反抗期、胸を痛める言葉、無視する態度。
同じく反抗期真っ盛りの我が娘と重なり、
ミツローさんの胸で涙するポッポちゃんに
涙がこぼれました。
バーバラ婦人との再会、厄介なお隣さんとのやり取りや、ミツローさんとの夫婦の言い合い
綺麗事ばかりじゃない だって人間だものって感じさせてくれるポッポちゃんが大好きです。
QPちゃんとのお手紙のやり取り
本音が聴けて良かったね。
大切な場所でQPちゃんをおんぶする姿に
また涙があふれてきました。
しっかりごめんねが伝えられたこと。
お互いが真の母娘として愛し合っていること。
私も娘が大人になろうとしていることを
受け入れられるようになりたいです。
受験を控えている娘に
親の理想、希望を押し付けてしまっていると感じます。
信じて見守ってあげられるように頑張ります。
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お母さん色の強い物語になってしまったならどうしよう…と不安に思う始まりだったけど、子の話はそこまで出てこず、これまで通り鳩子さんの物語だった点に安心した。
合間合間に登場するお手紙が相変わらずの素敵具合でうれしい。
あとは、鎌倉が舞台なのがやっぱりとてもよい。
ああ、そうそう、鎌倉ってそういう感じだよね とか、色々思いながら読めて楽しい。
登場した中で、わたしが特に好きなのは、鎌倉高校前から見る海。
駅から見る海もキレイだけど、歩道から見る海も格別なんだよね。
また見に行こう。そして珊瑚礁食べたい。
手紙の内容もどれもよかったんだけど、亡くなるお母さんからの手紙が好きだった。
なぜかというと、わたしの名前も『楓』だから。
『木のように地に足をつけて、風のように軽やかに生きてほしい、そんな願いを込めた名前』
わたしに向けられた言葉ではないけど、心が温かくなった。
あ、あと、QPちゃん反抗期かあ〜しかもクセ強め〜と思ったけど、すごく理解できる理由だった…ぽっぽちゃんが生んだわけじゃないけど、QPちゃんにとってお母さんはぽっぽちゃんなんだなあ。ジーンときた。
これからも仲良く過ごしてほしい。
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好きな作家さんです。特に「ライオンのおやつ」が良くて本もですが、ドラマも良かったです。ブログが面白くて、丁寧な生活が作品にも通ずるものがありますね。 新刊を読むのが楽しみです。
期待通りの素敵なお話しでした。登場人物が皆んな素敵ですねー。
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ツバキ文具店シリーズ第3弾。
中学生になったQPちゃんの反抗期に、先代の恋愛話。いろんな事があるけれど、時代はどんどん進んでいるんだなあ、なんてしみじみ思ってしまった。最初のぽっぽちゃんのズボラシーンは私もよくやるので親近感。小川さんのユーモアが文章から滲み出てる。
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まさか「ツバキ文具店」の第3弾が出るなんて!
「キラキラ共和国」で終わりと思っていたので、発売されると知り、思わず「えーーーっマジで!?」と叫びました(笑)
まず先の2冊を再び読んでから、準備万端で第3弾『椿ノ恋文』を手にし、読みはじめました。
ボッポちゃんが二人の子供を出産し、QPちゃんを含め3人のお母さんになっている!なんだか感慨深く、そして代書屋を再開し、悩みを抱えながらも子育てに奮闘している姿が微笑ましい。
そして代書のお仕事にもますます油がのってきているというか、深見が増し、素晴らしい手紙の内容に、ポッポちゃんの成長に感銘を受けました。
そして改めて手紙の良さを深く感じることになりました。
やっぱり手書きの文字が連なった手紙に優るものはないと思いました。
連なった字の向こうに書いた人の姿が想像でき、想いが伝わって来ますよね。
そんな素晴らしい手紙や葉書を書けるポッポちゃんに脱帽です。
また代書だけでなく、相変わらずの、また、新しい登場人物達にも楽しませてもらいました。フランスに行ったバーバラ婦人。隣の家に居なくなったのは寂しいですが、後半で登場した時はパッと花が咲いたよう。悩んでいた新しいお隣さんとの関係も片付きそうで、今後のお隣さんにも期待できそう。
そして今回、先代のただならぬ過去の恋愛にビックリ!こんなに情熱的な人だったなんて。でもだからこそなんだなと思ったりもしました。
QPちゃんの反抗期にも納得。
ポッポちゃんへの手紙は、やっぱりそういうことだったんだと胸が打たれました。
いい母娘になれましたね。
また続編出るのかなぁ・・・
出てほしいなぁ。
改めて、私は手が動かなくなるまで、年賀状を辞めないと誓いました(笑)。
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おいしい鎌倉、すてきな鎌倉、そして伊豆大島。かわいいイラストで彩られた地図だけでも小一時間は飽きずに眺めていられる。
ごはんをおいしく描ける作家さん。さすがだなと思う。ついこの間『ライオンのおやつ』を読んだばかりなので、おいしい描写と「笑顔で生きること」を大切にする姿勢、やはり同じ作者さんの本なのだなと思いつつ読んだ。
けれど、ほのぼのした鎌倉ガイドブックなのかといえば、そうではなく。
子育てに奔走し、仕事に奔走し、親子関係に悩む鳩子がそこにはいた。
私自身は去年から子育てが始まり、春には実父が亡くなり、先日は実母とけんかをしたこともあって、いつもより感情移入しながら読んでいたように思う。
私という人間は、息子からしたら母だが、実母からしたら娘である(当たり前だけれど)。そのバランスをとるのが難しいなと常々思う。
先代を亡くしている鳩子は、親孝行をしたくてもできない。QPちゃんの(まさかの)反抗期に際して、鳩子自身の反抗期を振り返りながら、先代に親孝行できなかったことを悔やんでいる。その姿を見ていて、いま実母が生きていて近くにいることのありがたさを噛みしめた。
息子にとにかく手一杯になりがちだけれど、実母のことも大切にしたい。そんな気持ちが強くなる一冊だった。
親子という関係は、近すぎるからこそうまくいかないことが多いなと思う。けれど、きちんと文字や言葉にすることが、基本的だけれど1番大事だ。できるなら直接言葉で、難しかったら文字にして手紙を投函してみるのもいいかもしれない。
もし私から手紙が届いたら実母はどんな反応をするだろうか。次にケンカしたら、手紙を出してみようかな。
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最高の時間をありがとう
すぐに購入し、もったいないのですぐに読まず大切に保管していました
いよいよ読もうと開き、世界に引き込まれて一気に読み終えました
共感、学び、感動に涙しながら
そして、前ニ作の人たちも思い出しながら
鎌倉の風景を思い出しながら
最高の読書時間でした
悩みは些細なことや視点を変えたりするだけで酷いことにもなるし解決したりする
生きる意味、考えました
これからもツバキ文具店シリーズ、繰り返し読み鎌倉にも行きます
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#読書記録 2023.11
#椿ノ恋文
#小川糸
2作目から時は流れ、3人の子育てに奮闘中の鳩子。年齢が自分に近くなって、鳩子の悩みや苛立ち、喜びにこちらも一喜一憂。明日に向かう力をもらえるよ。
続編のマンネリとは無縁、新たな魅力を得た #ツバキ文具店 。
先代とバーバラ婦人の存在感がさすが。続編だからこそ、深掘りされて厚みを増した登場人物たち。年齢を重ねた鳩子が彼らと触れ合い、自分の人生を問い直す。ラストでたどり着く境地に共感して胸がいっぱいになる。描かれる鎌倉の町の世界観がしっかり根を張って、鳩子たちの輪郭をより鮮明にしてくれた。
#読書好きな人と繋がりたい
#読了
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ポッポちゃんと初めて出会ってからもう7年も経つなんてホントにびっくりしたけれど、あのとき流した温かい涙を思い出しながら新しい物語へとさらりと流れ込んでいきました。
あんなに小さくてかわいいばっかりだったQPちゃんがなんとなんと反抗期真っただ中とは。新しい家族も2人増えてポッポちゃんの悩みは尽きない。
そりゃそうだよね、と思いながらもポッポちゃんが代筆屋を再開したことがうれしくて仕方ない。
今回も次々舞い込む「お仕事」にポッポちゃんの悩みもマシマシ。
単に「代筆」するだけじゃない。依頼者の書く文字や生み出すであろう言葉や伝えたいことにとことん寄り添って書かれる手紙の、その尊さよ。
便箋を選び、ペンを選び、インクを選び、切手を選び。生まれた思いをそっと包み込んで届けるのが「代筆屋」の仕事。
言葉では伝わらないものがあるけれど、それでも言葉でしか伝わらないことがある。
手紙を書くことで、それを受け取ることで、人は少し変わっていく。小さくて大切なその変化がこの一冊にたくさん詰まっていた。
しかし、それにしても先代の恋が飛び出すとは!ドキドキしましたよ。QPちゃんの反抗期にはハラハラしましたし。ゆったりとほんわかと優しく温かいこの世界にも「スリル」が忍び込んでいたなんて!!!
あぁ、守景家の物語とはずっと一緒に歩いていきたい。何年か後に、また出会いたい。これで終わりなんて、イヤですよ!!
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あなたは、最近『手紙』を書いたことがあるでしょうか?
1871年頃から統計が存在する引受郵便物の数は2001年の263.1億件をピークに下がり続けているようです。1990年代半ばから電子メールというものが一般化しはじめ、2000年頃からは携帯メールも登場するなど、人から人へのやりとりが紙から電子へ置き換わっていった歴史をこの数字は示していると思います。
かくいう私も『手紙』を書いたのはいつか思い出せない今を生きています。『便箋』を買って、『ペン』を取り出して、書いて、封をして、『切手』を貼って、投函するという一連の行為はイメージこそできますがそれは遠い昔の話でもあります。
また、公私問わず『手紙』を受け取ってもそれは印字されたものばかりです。それは年の始めの年賀状でも同じことでしょう。しかし、そんな中に『手書き』で書かれた一枚を見つけるどこか心が揺れ動くのを感じます。その文字の向こうにそれを書き記した人の存在が、そしてそんな人の思いが浮かび上がる瞬間、『手書き』っていいな、そんな思いは私だけではないと思います。
さてここに、依頼者になり代わって『手紙』を『代筆する』ことを生業にする主人公を描いた物語があります。江戸時代から続くとされる、由緒正しき『代書屋』を継いだ主人公が『代書』の日々を送る様を描くこの作品。そんな主人公が『代書』に込める思いを感じるこの作品。そしてそれは、『代書屋』に『課せられた使命』を深く感じる主人公が書きあげていく『代書』に魅せられる物語です。
『お世話になった皆様へ 今年も桜の季節が巡ってきました。皆様、お元気でお過ごしですか?…長らくお休みをいただいておりました代書屋は、この春からの再会に向け、ただいま準備を進めております…皆様にお会いできるのを、心から楽しみにしております。 ツバキ文具店店主 雨宮(守景)鳩子』という文章を『何度も何度も読み返し、うっかりミスや言葉遣いの間違い、文章のねじれがないかなどをチェック』するのは主人公の雨宮鳩子。ミツローと結婚した鳩子は、『QPちゃんひとりなら、まだなんとかツバキ文具店と育児の両立が可能だ』と考えていたものの、小梅、蓮太朗という二人が相次いで生まれたことで一旦育児に専念する日々を送っています。そんなある日、『ポッポちゃーん、いますかぁ?』と『幼馴染の』舞が訪ねてきました。『これ、一緒に食べようと思って、持ってきたよ』という舞は北鎌倉の駅前にできた『かわいいカヌレ屋さん』の『茶色い袋を渡してくれ』ます。そして、『ふたりで仲良くカヌレを咀嚼』する中に、『それでね』、『パンプキンプリンをね、食べたんだよ』と『本題』を語り出した舞は、『義理のお母さんが作ってくれた』『パンプキンプリン』に『髪の毛が入ってたの、しかも、その前にも同じようなことがあってさ。その時は、メンチカツの中に入ってたんだけど』と続けます。『素晴らしくおいしい』、『もう、プロ級の腕前』、だからこそ『間を置かずに二回』も『髪の毛が入っていた』ことを『どうしていいかわからなくて…』と『大きくため息を』つく舞。そんな舞に『ご主人から伝えてもらったら?』と鳩子はアドバイスしますが、『いまだにマザコンっていうか…絶対にそれは期待できないの』と返すと、『ポッポちゃん、うまくそれを伝える手紙を、代わりに書いてくれないかな?』と続ける舞。『そういう流れになることをうすうす予想はしていた』という鳩子は、『かなりハードルの高い内容に』『うーん』と『途方に暮れて腕組みし』ます。『このままだと、本人が気づかないうちに』『料理が喜ばれなくなっちゃうんじゃないかって、気の毒なのよ』と補足する舞。その後もさまざまに訴える舞に、『うまく書けるかどうかわからないけど…最善を尽くしてみます』と鳩子は『覚悟を決め』ました。そして、舞を見送り一人になった鳩子は、『内容としてはかなり難しいのは事実だけれど、私は、ミツローさんの妻でもなく、三人の子供達の母でもない、単なるひとりの人間として再び社会と関われることに、大きな喜びを感じ』ます。『代書業を再会できることが嬉しかった』という鳩子は、翌日、舞に『電話をかけ、義理のお母さんの得意料理をインタビューし』ます。そして、『数日後、いよいよ代書の時がやってきた』という瞬間の到来。『筆サインペン』と『いくつかの候補』から選んだ『ライフのライティングペーパー』を用意した鳩子は、『舞ちゃんの姿形をした着ぐるみ』をイメージし、『少しずつ舞ちゃんの体温に自分の体温を馴染ませ、呼吸を合わせ、指の感覚や目の感覚をつかんでい』きます。そして、『代書』を始めた鳩子。『大好きなゆっこママへ このところ、急に暑くなってきましたね。もうすでに、初夏の空です。もう随分前にゆっこママにレシピを教えてもらったコーヒーゼリーが、今年も大活躍しそうな予感です…ところで、今日は折に入って、ゆっこママにご報告です。このことをゆっこママにお伝えすべきかどうか、ずいぶん長い間悩みました…舞より』と書き上げた鳩子。そんな再始動のきっかけの先に『ツバキ文具店』を再会していく鳩子の日常が描かれていきます。
“2023年11月1日に刊行された小川糸さんの最新作であるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2023年8月に寺地はるなさん「私たちに翼はいらない」、9月に青山美智子さん「リカバリー・カバヒコ」、そして先月にも原田ひ香さん「喫茶おじさん」…と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを積極的に行ってきました。そんな中に、何気ない日常の一コマを穏やかにほっこりと描いていく小川糸さんの新作が出ることを知り、小説についてはほぼコンプリートしている私は、待っていました!という気持ちの中に発売日早々作品を手にしました。
そんなこの作品は、”鎌倉と小高い山のふもとで、代書屋を営む鳩子。家事と育児に奮闘中の鳩子が、いよいよ代書屋を再開します…代書屋としても、母親としても、少し成長した鳩子に会いにぜひご来店ください”と内容紹介にうたわれています。そうです。「椿ノ恋文」という書名にピン!と来る方もいらっしゃるかもしれませんが、この作品は小川糸さんの代表作でシリーズ化もされている「ツバキ文具店」の王道の続編です。「ツバキ文具店」は、鎌倉で江戸時代から続くとされる、由緒正しき『代書屋』に十一代目として生まれた鳩子が先代である祖母から家業を引き継���だところからスタートする物語です。他の人に代わって文書を書くこと = 『代書』というその家業は、筆記用具にもこだわりを見せながら、さまざまな依頼に基づいて『代書』をしていく鳩子の日常が描かれていきます。もうこの一冊だけで小川糸さんの大ファンになる他ない傑作中の傑作です。そんな作品に続いて「キラキラ共和国」という続編が登場するのはもう必然というくらいの位置付けでもありました。そして、前二作の正当なまでの続編として登場したこの作品は、本を開いて最初に登場する『ツバキ文具店』再開の案内を読んだ瞬間に一気にその作品世界に引き込まれてしまう、恐ろしいまでの魅力を放っています。
では、そんなこの作品の魅力を二つの方向から見てみたいと思います。まずは、「ツバキ文具店」と言えばお馴染み、作品の舞台となる『鎌倉』の描写です。『鎌倉』という地は間違いなく一つのブランドであり、通勤距離が伸びようとも移り住む人が後を絶たない街でもあります。数多の文豪の皆様の作品の他、青山美智子さん「鎌倉うずまき案内所」、阿部暁子さん「鎌倉香房メモリーズ」などその魅力を上手く引き出した作品は他にもあります。この小川さんの作品は『鎌倉』と『代書屋』の相性の良さも相まって絶妙な作品世界を提供してくださいます。そもそもこの作品には冒頭に『鎌倉案内図』という手書きの地図まで掲載されているなど『鎌倉』の街どっぷりな読書を堪能できます。『久しぶりに町へ出た』という鳩子。『私にとって町とは、鎌倉の、段葛(だんかずら)周辺をさす。せいぜい、島森書店までだ』と『鎌倉』どっぷりな描写が描いていく物語はまるで『鎌倉』を軽やかに散策するような気軽さを見せてくれます。『代書部門再会を知らせる手紙』を『雪ノ下郵便局から投函した』鳩子。一方で『空腹で死にそう』という鳩子の足取りをこんな風に描写します。
『八幡様を背にして二の鳥居をくぐり、くるっと向き直って八幡様にお辞儀をしてから、信号を渡って鳥森書店の前を通り過ぎ、更に海の方へ向かって歩く。通称おんめ様のお庭をチラ見し、目指すは、鎌倉市農協連即売所、レンバイである』。
実に軽やかな『鎌倉』の街歩きの様子が思い浮かびます。そして、目的を達した後に良いことを思いついた鳩子。
『子供達へのお土産にパラダイスアレイの餡パン、通称ニコニコパンを買って帰ろうというのは表向きの口実で、本音はどうしても太巻き寿司が食べたかったのだ。はなさんの、太巻き』
『パラダイスアレイのちょうどお向かいに、「はな」という名の小さな和菓子屋さんがオープンしたのはちょっと前。和菓子もおいしいのだが、そこの太巻き寿司が絶品』…というのは、リアル世界の情報そのままです。そうこの作品はリアル世界の『鎌倉』の美味しいお店や観光スポットの情報をまるでガイドブックを読むかのように盛り込みながら、『鎌倉』を自在に闊歩していく主人公・鳩子の日常が描かれていくというのが特徴なのです。三作目となるこの作品は前作までに比べても『鎌倉』のディープさが増しているようにも感じますが、それはこんな比較表現からも伺えます。
『鎌倉は、はっきり山派と海派に分かれる』、『山族と海族では、人種も明確に異なる。山���方は学者さんをはじめとするインテリっぽい人が多いのに対して、海の方はサーファーなど、サザンオールスターズに代表されるような海文化をこよなく愛する人たちが数多く暮らしている』。
確かに『鎌倉』は海にも面し、山もある両面の魅力が味わえる土地だと思います。それを山族、海族と表現する小川さんは、さらにこんな側面からも比較します。
『雨の日、鎌倉を歩く地元の人の足元は、長靴派とビーサン派の二派に分かれる』。
えっ!そうなのー?というこの記述。主人公の鳩子は以前は『長靴派だった』のが『子供を産んでからはビーサン派に鞍替えした』のだそうです。『足元がビーチサンダルだったら、いくら濡れても、たとえ水たまりに入ろうが、気にすることはない』というその割り切り。ちなみに、そのいずれでもないのが『よそから来た観光客』なのだそうです。これはもう住んでいなければわからない視点ですね。そう、この作品は兎にも角にも『鎌倉』大好き!な人にはたまらない一冊だと思います。
そしてこの作品一番の魅力が『代書』について細かく記されていくところです。”古くは右筆と呼ばれた職業で、やんごとなき身分の方やお殿様に代わって代筆を行う”仕事が起源となる『代書屋』を再会した鳩子のお仕事が描かれていきますが、『代書』をするというお仕事に行き着くまでにさまざまな選択が描かれます。例えば『便箋』です。『清潔感を全面に出した』いという思いの先にはこんな選択が待っています。
・『装飾過多になりすぎない、シンプルなもの』
→ 『かといって、罫線だけの便箋では面白みがない』
↓
・『いくつかの候補を実際に机の上に並べて、じっくりと吟味』
↓
・『ライフのライティングペーパー』を選ぶ
→ 『どんな筆記具との相性もよく、相手に威圧感を与えないデザインがいい。内容的に、くだけすぎてもかしこまりすぎてもいけない気がするけれど、ライフの便箋はそのさじ加減を見事に満たしている』。
→ 『この会社の製品を手にするたび、日本もやるもんだなぁと感心する』
『手紙』というものはその内容だけではなく、筆記具選びから始まるということがよくわかります。この作品では、他にも『ペン』、『封筒』、そして『切手』と相手が『手紙』を手にした時からストーリーがはじまるかのように、そのそれぞれの選択にこだわる鳩子が描かれます。そして、この三作目ではこんなこだわりも見せます。
『朝書くべきか夜書くべきか悩んだ末、私は夜書くことにした』。
筆記具を選んでもまだ『代書』には行きつかないというこの奥深さ。『代書』を行う時間にまでこだわります。『夜書く手紙には魔物がひそんでいるから…』というその逆をいく『夜』の選択。どうしてそのような選択が発生していくのか、気になって仕方がないというあなた、そんなあなたには一分でも早く(笑)、この作品を手にしていただければと思います。
そんなこの作品は前二作と同様に構成上の凝った作りがなされています。それこそが鳩子が『代書』したそのままの『手紙』が複数ページをまたいで掲載されているところです。上記した『便箋』の���択もこれによって読者にはっきりと伝わるだけでなく、その全てが手書きで記されていることで、読者はそんな『手紙』を実際に受け取った人たちが受ける感覚そのままに『手紙』を読むことができるのです。ここで改めて気づいたことがあります。私はこの作品を書店で単行本として購入しました。(※ ちなみに印刷ではありますが”サイン本”が存在します(印刷ですけど(笑))ので、是非本の帯の記載に注意してください。) なお、これはインターネット上で購入する場合も同様です。どういうことかというとこの作品には”電子書籍”で購入するという選択肢がないのです。作家さんによっては”電子書籍”化を敬遠されている方もいらっしゃいます。江國香織さん、宮部みゆきさん、そして有川ひろさんなど有名作家さんも多々いらっしゃいます。一方で、この作品の作者である小川糸さんはその大半の作品について”電子書籍”でも刊行されていらっしゃいます。しかし、「ツバキ文具店」、「キラキラ共和国」、そして「椿ノ恋文」というシリーズ三部作はいずれも”紙の本”しか存在しません。これは、手書きの『手紙』を活字化してしまうか、ハンドリングしづらい画像という形で妥協するかの二択を迫られるからではないかと思いました。そう、このシリーズは”電子書籍”には馴染まないと判断されたのだと思います。単行本で鳩子の手書きの書の数々を読むにつれ、この作品は”紙の本”以外ありえない、”紙の本”と”電子書籍”というものはそれぞれに得意なものが異なることを改めて感じました。
さて、そんな物語では、『代書屋』を営む鳩子の元にさまざまな依頼が持ち込まれます。そんな依頼主は性別、年齢、属性はさまざまに異なります。
『私ね、これまで娘に、手紙を書いたことがないんです。だから、せめて一通くらい、手紙を残してあげたいな、って。でももう、手術の後遺症で肩が痛くて…』
そんな依頼の先に、
『かえちゃんへ 初めて手紙を書きますね…』
という『代書』で『手紙』をしたためていく鳩子。そんな鳩子は『代書』の意味をこんな風に考えています。
『自分で自分の気持ちをきちんと言葉にして伝えられる人もいれば、そうじゃない人もいる。そうじゃない人たちのために、代書屋が存在するのだ』
そんな鳩子が『代書』へと向き合う思いは真摯という言葉に尽きます。
『茜さんから託されたお嬢さんへの思いを、少しも減らすことなく、傷つけることなく、変色させることなく家まで持ち帰って、手紙という形にする。それが、私に課せられた使命だ。私は今、そのために生きている』。
物語はどこまでも誠実に『代書屋』のお仕事に向き合っていく鳩子の日常が描かれていきます。〈紫陽花〉、〈金木犀〉、〈椿〉、〈明日葉〉、〈蓮〉という植物の名前が冠された五つの章から構成されたこの作品は『代書』の依頼を一つひとつ丁寧にこなしていく鳩子の姿を描き出していくと共に、前作までとは違う、三児の母となったが故の戸惑いも描かれていきます。中でも前作でその出会いがたっぷりと描かれていたQPちゃんとの関係性は特別です。
『QPちゃんは、私が彼女の生みの親ではないということを、はっきりと理解してい���』。
物語では、そんなQPちゃんへの思いがこめられた『手紙』も登場します。さらには、この作品の書名ともなっている『恋文』の存在があります。「椿ノ恋文」と書名にまで記される他人の書いた『恋文』を読むという展開は物語に味わい深さを醸し出していきます。また、『鎌倉』にこだわるからこそ、旅に出る場面の登場が物語に新鮮な感覚を連れてもきます。他にもこんな場合にも『代書』が登場するのか!と読者を決して飽きさせることなく描かれていく物語は、”続編もの”という言葉でひとくくりにされるイメージの先にあるものではなく、「ツバキ文具店」、「キラキラ共和国」と三部作を構成するかのように最後まで充実した内容をもって圧倒的な魅力を見せてくれるものでした。
『このお知らせが皆様の元に届く頃には、また代書のご依頼を承ることができるようになっているかと存じます』。
そんな言葉の先に『代書屋』である『ツバキ文具店』を再開させた主人公の鳩子。この作品では、『手紙』の魅力をこれでもか!と文字の力で読者に強く印象づける物語が描かれていました。『鎌倉』の街の魅力がディープに味わえるこの作品。『代書』の世界の奥深さに深く感じ入る他ないこの作品。
作品世界にどっぷり浸れる新たな傑作の誕生に、小川糸さんの物語世界にすっかり酔わせていただいた素晴らしい作品でした。
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感想
インクに溶かして。紙に残るは黒い線。気持ちを象り。あの人の手元に、胸の中に。古からの営み。絶えることなく繰り返された営み。
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3作目の発売情報を知らずになぜか直前に1, 2作目を再読していたのでタイミング良かったです。今作はかなり小川糸さんだなぁという感じで「生」「性」「死」が詰まっていました。
お話の中ではうまくいったけれど、鎌倉の山の上、高齢者の免許返納の問題は本当に難しそう。
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鎌倉にある代書屋さんが主人公の話。そういう店が本当にあるのかと思えてくる。素敵な話ばかりだ。手書きの何種類もの手紙が素晴らしい。私も何か頼みたい。