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自分とも歳の近い気鋭の政治学者でありながら「黄昏を待ちきれなかった梟」として、2021年の衆院選で広島2区から出馬し落選した著者による現代日本政治に関する論考と衆院選の戦記。
1993年以降の日本政治を掴む認識枠組(フレームワーク)、すなわち「保守・旧革新・改革」の三極構造からなる「1993年体制」を示した現代日本政治論、2021年衆院選の候補者としての試行錯誤を記録した経験記、これからの日本政治のヴィジョンを展望した試論という3部構成となっている。
1993年体制に関する議論や、政治は「悪さ加減の選択」という言葉の再考、「革新」・アイデンティティ政治・脱成長コミュニズムという今後の日本政治のビジョンの批判的検討、いずれも納得性が高く、興味深く読んだが、とりわけ第Ⅱ部の著者の衆院選経験記が臨場感があり、めちゃくちゃ面白かった。政治家が有権者と直接接触し、肌感覚の生の声を聞くという点での「どぶ板選挙」の重要性の指摘や、「身を切る改革」を求める有権者の分厚さ、個人の支援者や連合などの支援団体との距離の取り方のたいへんさなど、興味深かった。
著者が政治に対してとても誠実な姿勢を持っていることは、本書を読んでよく伝わってきた。また、理想と現実の狭間でバランスをとり、着実に現実を改善していこうというような著者スタンスにはかなり共感するものがあった。地元の選挙区で著者が立候補していたのなら、ぜひ応援したくなりそうである。