紙の本
現代の問題に直面する教師の物語
2024/02/28 20:52
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投稿者:ジャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
外国人問題・貧困・児童虐待・性暴力などの問題に直面した小学校教師のひかりの視点で、物語が進行します。藤岡さんらしい、温かみのある描き方で、やるせない感情が繊細に描かれていると思います。
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小学校教師5年目の澤木ひかり。新しく赴任した学校で受け持つ事になったのは、問題が山積みの6年2組。どうにかしたい必死な気持ちとは裏腹に、実際に出来る事には限りがあり…それでも向き合う事を諦めずに奮闘する物語。
想像以上に読んでいてとても苦しくなるお話でした。現実的には、ひかりの様な働き方をしていたら先生たち皆駄目になってしまう。けれど、ひかりの様な心を持った先生に出会えたら幸せだろうなぁ。
『子どもに限らず大人でも、心から信じられる誰かがいる人は強い。その誰かはたくさんでなくてもいい。たった一人でいい。』本当にそうだなぁと思いました。
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子どもは自分が置かれた環境を変えることができない。食べるために登校する子、高校や進学を諦めなくてはならない子、虐待…。重くて辛い環境の中で、それでも懸命に生きる姿と必死に力になろうとする先生、諦めてしまわなければ、今すぐにではなくても、いつか頑張ってよかったと思える未来がやってくるのだと信じたくなった。誰か1人でも子どもたちのSOSに気づくことができたら、そして手を差し伸べることができたら、信じることができる大人がいれば、その子はきっと変わることができるんだと思った。
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文章量の多い文庫本だな、読めきれるかな思いながらと手にとったが、吸い込まれるように読んでしまった。生徒を取り巻く社会問題が、子どもたちに重くのしかかり、少しでも良い方向にと動く担任の奮闘ぶりが素晴らしかった。最後みんなでピースしてる姿は私の中ではっきり映像として流れて、その子どもたちの笑顔は眩しいものだった。
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虐待、貧困、性暴力。子どもたちを取り巻く環境があまりにも劣悪で、読んでいてとても重苦しかった。
ひとつの学級にここまで集まるかは別として、これが事実なのだろうと思うと余計に胸が痛む。
ひとつ扉を挟むと、その箱の中で何が起きているのかなんて外からは分からない。子どもたちを救うには、家庭問題が必然のように付き纏ってくる。
そこに関与するのは、一教師ではなく然るべき機関であるはずなのだが…声が上がらないと気づけないのも事実。声を上げても、拾ってもらえないことがあるのも事実。
子どもたちが須らく幸せに過ごせるようになるには、いったいどうしたらいいのだろう。
『神様、どうか、この世に生まれたすべての子どもたちを、幸せにしてください――』
ひかりの祈りが切実に響く。
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読み進める内に、とてもつらく悲しい気持ちと、子どもたちの成長や素直を愛おしく感じる気持ちがないまぜになって、胸がいっぱいになった。
小学校の先生を目指して大学に進んだ子供にぜひ読んでもらいたい一冊。
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2024.2.17
教員をしてるので、心にうっと来る場面が多かった…
働いてから分かったことだけど、私が経験したことのない大きなものをこんなに小さい背中に抱えている子どもが多くて、子どもの力だけでは解決できないことも多い。そういう子どもたちの為に奔走していきたい。家庭の事情は介入が難しいけど…
「ケーキの切れない非行少年たち」を参考文献にしてた!
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私自身教員にはならなかったものの教育学部を卒業したため、本屋で見かけて思わず手に取ってしまった本。
読んでて児童ひとりひとりが抱える問題が重く、簡単に解決できないことばかりで、主人公の苦労に感情移入し苦しくなることもあったが、話のテンポがよくすごく読みやすくてサクサクと読み進めれた。
悩み葛藤し挑戦しながら児童に一生懸命向き合った主人公が、最後に無事報われて児童たち感謝され、全員で卒業できたところには、涙腺に来るものがあった。
実際の先生はここまでひとりひとりに向き合って家庭に赴いくことは出来ないと思うが、主人公の姿勢がとても心に刺さる良い作品だと思う。
個人的に特に印象深かったのが、貧困やDVの児童以外の''手のかからない子''について少しだが描かれたのがいいなと思った。優等生だからこそ先生が後回しにてしまい、主人公と話す時嬉しそうにした児童がおり、主人公とは別に感情移入してしまった。
またその児童自身も学びたい気持ちがあるのに大学には行けない、と親から言われてて主人公がかける言葉に悩むシーンも、心に刺さった場面だった。
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知っていることでも
知らないふりをしてしまう・・・
気づいていることでも
気づかないふりをしてしまう・・・
そして
忘れられないのに
忘れたふりをしてしまう・・・
忘れたふりをしているうちに
記憶が薄れていくことを願いながら・・・
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貧困地域の学級崩壊、不登校、ネグレクト、不法滞在、小児性愛者等ありとあらゆるトラブルを抱えて、それに正面から取り組もうとする若い女性教師の姿を描いてます。
構成が上手く物語の展開が面白いので大切なものを見落としがちですが、現実に主人公の様な先生がいたら、この展開では身も心も削られてしまい、定年まで勤める事は出来ないであろうと思います。あらためて「教師」が如何にハードな職業かと認識させられました。
どなたかの感想で、(教職者かと思われます。)
「先生の行動が美徳のようにして描かれてるのは違うと思う。これが世間の理想とする教職員の姿なのかと思うとぞっとする。」とありました。
まさにその通りです。
学校単位や特に教師個人の能力に依存したままの現在、限界は既にに迎えているはずで、国として真剣に学校教育を考えないと教育システムが崩壊するという警鐘が聞こえてきました。
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文句なく⭐︎5つ!
素晴らしい小説だった。
帯を見て新米教室が子供達に降りかかる困難に奮闘するお話…と思い手にしたが、そんな軽いものではなかった。
今や小学生の抱える問題はお友達と喧嘩しちゃった…勉強が難しい…ありきたりなものではなく不登校、ネグレクト、貧困、不法滞在、小児性愛者…そのどれもが紛れもなく社会問題である。
社会問題があどけない小学生の学校生活にまで入り込んでいる事が恐ろしい。
そしてそれらの問題から目を背ける事が当たり前のようになってしまう教師のあり方、そうせざるを得ない教師を取り巻く環境、教師ばかりではなく親の在り方、家庭環境、地域社会の子供への関わり方…波紋はどんどん広がるばかりだ。
「金の角持つ子供たち」の塾講師、加地先生も素晴らしい先生だったけれど本書の澤木先生もまた心から子供を想い、正面から向き合う先生…こんな先生が1人でも多く…と思わされる先生の象徴だ。
(クラス全体を見た時賛否両論ありそうな先生だけど…笑。問題児とされる生徒に心を奪われすぎると手の掛からない生徒や保護者の心は歪む問題も多々^^; 理解してくれる生徒や保護者ばかりではない)
小説として充実した読書時間を持てた事は確か!ただそれだけではない…小説の中の話だから…と終わらせられない大きな問題定義を掲げてくれた!
そう、こういう現実がある事をもっともっと知らなければならない。
知るところから始まると思わされた!
藤岡さんの小説、やっぱり好き。
他の小説もたくさん読んでいきたい!