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ゴールデンカムイファンにこそ読んで欲しい一冊
2024/05/25 00:45
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投稿者:S910 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アイヌ文化とフィクションを絶妙に融合させて描かれる漫画ゴールデンカムイ。
連載初期からゴールデンカムイのアイヌ語監修を任されているアイヌ文化研究者が、ゴールデンカムイ連載中にまとめたアイヌ入門書であった前著を引き継ぎ、連載が完結したいま改めてゴールデンカムイからアイヌ文化へ切り込んで解説する解読書。
小説でもなくこれだけ分厚い新書を読んだのははじめてだし、最後まで面白く読めてしまって驚いた。
あくまで監修を行った中川先生視点での解説なので、実際に野田先生がどこまで何を考えて作中にアイヌ描写を取り込んで描いていたのかはわからないが、これが一つの答えであると思える。
中川先生自身が監修者であると同時にゴールデンカムイの熱烈なファンだとよくわかる一冊。
中川先生以外に他の関係各者が書いたコラムも素晴らしい。
特に熊野谷先生のコラムと石川館長のコラムはファンとしての読み応えがすごい。
ゴールデンカムイ作中絵もふんだんに引用されて解説されているが、同時にアイヌ民族文化財団HPをはじめとする様々な資料への誘導もされていた。
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待ちに待ったゴールデンカムイのアイヌ語監修中川さんのゴールデンカムイ関連の続刊。
まず、分厚さに驚き。すごい分量です。
中でも触れられていた通り、前著より漫画からの絵の引用が多いとのことでより漫画からの関連で語る視点で漫画ゴールデンカムイがお好きならスラスラ読み進められると思います。
途中、樺太、ソフィアの話など道外の話になると世界史真面目に勉強しておけばよかったな〜とはなりました。
実写映画を見てゴールデンカムイ熱があがるタイミングでしたのでこのタイミングでの刊行はとても良く、アイヌについてもゴールデンカムイについても興味がより深まりもっと知りたいと思える相乗効果を生んだなと感心します。
実は、この本を読む前はアイヌ単体への興味は持てないかもしれないと大変失礼なことを思っていたのです。
自分がアイヌに興味を持てるのはゴールデンカムイの物語、キャラの魅力があるからでそれなしでのアイヌ文化は面白いと思えないかも、と。
とても失礼でしたし、わかっていなかったなと読んだ後では思えます。
どれほど野田先生が、ゴールデンカムイという作品を作り上げるためにアイヌ文化を尊敬し、調査、取材をし、綿密に作品に織り込ませ確立させたことか。
アイヌの文化あってこそ、アイヌの文化へのリスペクトがあってこそ不思議な偶然が重なり、作品にパワーがより足されたのではないか。そういうことが納得できました。
ゴールデンカムイありなしとかではなく、ゴールデンカムイはアイヌ文化なしでは語れなく、切っても切り離せないのかなと。
単行本の最後の監修、取材協力のクレジットのページを見るたびに、凄まじい量に圧倒されたものです。
週刊連載で?と信じられないほど。
実写映画を見て、原作漫画へのリスペクトと愛を大いに感じました。実写、2時間の映画として再構築して映画としても素晴らしく、漫画原作の実写としてのプロジェクトとしても素晴らしく、同時期にあった悲しい出来事とあまりにかけ離れていて、よほどこの作品に関わる人は本当に漫画原作を愛し、大事にしているのだなと思えました。
改めてこの本を読んだ時に、連載、単行本加筆修正時に監修の方々や取材協力の方々は野田先生の漫画への真摯な取り組みに賛同して協力してくれたのだろうと今更よりその協力のつながりに感動しました。
それについては野田先生がしっかり描きたい気持ちが強く取材を欠かさず真摯な姿勢で挑み続けたからこそ周りも応えたくなったのかなと想像してます。
本著の「おわりに」で触れられていた、「先人がさまざまな記録・資料として残してくれた」(P541から抜粋引用)ことがどれだけ偉大なことか。
大事なものを後世に繋いでいかなくてはと思わされました。命が尽きても、残したいものを残す努力をして、それが繋いでいく奇跡を信じると、いつか未来にそれを引き継いで大事にしてくれる人がいるなんて素敵だな。それなら、カムイも、野田先生に微笑むよなぁと思えました。
北海道に行ってみたい。
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連載が修了し、物語の最後迄が単行本化もされている、好評な漫画作品『ゴールデンカムイ』をタネに、作中世界で取上げられているアイヌ文化に纏わる話題等を供する本である。同じ著者による「前著」で言及していることと一部は重複するが、それを避けても「こんなにも多くの話題」ということで驚く面も在る。
本書は「前著」以上に、アイヌの一年の暮らしというような事柄や、独自な精神文化を背景にしていると考えられる社会の中での人々の所作や、何かの言い方というような事柄への言及が多い。それらは非常に興味深く、『ゴールデンカムイ』という漫画の描写等を例として示すことで内容が判り易くもなっている。
更に、『ゴールデンカムイ』の物語でも作中人物達が樺太へ渡り、色々な因縁が明らかになり、様々な人達との交流等が生じているというのだが、本書でも「樺太アイヌや他の諸民族、更にサハリンに在ったロシア人」というようなことに関連する事項について、各々の事項に詳しい方達のコラムが掲載され、著者がコメントも加えている。それらの内容が秀逸である。「樺太アイヌや他の諸民族、更にサハリンに在ったロシア人」というようなことは、実は余り知られていないと思う。『ゴールデンカムイ』という漫画をヒントにしながら、余り知られていないことを紹介する形になっているのは非常に好いと思う。
広い範囲でアイヌは活動していたが、人口密度は低い。それ故に「方言」というようなモノが色々と在るのだという。更に樺太と北海道となると、身近な単語というレベルで差異も生じているようで、本書にはそういう説明も在った。そういう様子でも、或る程度広い範囲で往来し、交易等をしていたのがアイヌである。
自身は『ゴールデンカムイ』に関しては、今年になって実写映画を愉しく観たという関わり方であり、作品に通じているという程ではない。が、それでもその漫画を話しの入口や材料にしながら、北海道や樺太のアイヌ等に関して語られている本書の内容は凄く興味深い。新書としてはかなり分厚いのだが、ドンドン読み進められる。興味深い内容で、頁を繰る手が停められなくなる。
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まず500ページを超えるボリュームに驚く。
漫画のシーンを元にアイヌの生活等を解説していて、あのシーンにはこんな意味が有ったのかと発見がある。
寄稿されたコラムも、その分野の専門家が書かれたものなので、読み応えがある。
文化とは伝えて行かなければ消えてしまうとつくづく感じる。
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https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01429083