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それでも世界は回っている・第三巻
『月とコーヒー』に収録されている短編から派生した〈インク三部作〉の完結篇となっております。
亡くなった師匠・ベルダさんの愛用していたインク〈六番目のブルー〉を探し求めて旅を続ける少年・オリオとジャン叔父さん。
とある奇妙な唄の歌詞の中に、“インクの秘密”が隠されているようなのですが・・。
まるで夢の中にいるような、浮世離れした雰囲気のこの物語も本作で完結でございます。
夢の内容って、すぐに忘れてしまうのと同じ感覚で(?)、前巻までの内容をあまり覚えていなかった私なのですが(汗)、読んでいくうちにこのちょっと不思議で心地よい世界にスルっと浸されていきました。
あちこち迷いながらも、アリアドネの赤い林檎に導かれるように、とある工場に辿りつく二人・・そこで、彼らを出迎えたカナタさんが語る、〈五番目のブルー〉と〈六番目のブルー〉の話。
そして、心の中の“ココノツ”が書き写したという“件の唄”の長い歌詞の内容とは・・。
ーー心の中にある悲しさのかたまりが、ちょっとしたきっかけであふれだしてくるーー
“青”という色は、空や海といった爽やかなイメージがある一方、“悲しさ”も表していますよね。
そして“青”で表現される“悲しみ”は、美しさも内包しているように思うのです。
〈六番目のブルー〉は、固まった悲しみが溶けてあふれた色・・だから他にはない美しいものなのだろうな・・と、こんな個人的考察をしてみた次第です~。
オチとしての着地点も好きで、終盤でミランダさんがジャン叔父さんにあげた“ご褒美”には胸がいっぱいになって、幸せな気持ちになりました。
独特な世界観ではありますが、優しい読後感と心地よい余韻を味わえる、何とも素敵な物語を堪能させて頂きました。
「この世界は、喜びと悲しみを繰り返しながら、回りつづけている」
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青いインクを探すことから始まった旅は終わりを迎えて、少年は少し背が伸びた。
世界は回りつづけて、
時が流れて、悲しみも洗い流す。
大切な人は忘れず、自分の中に溶け込んでいく。
そしてまた新しい旅が始まる。
大切な人への想いや向き合い方、
結ぶ言葉が自分に染み込んでいく。
とても心地よく、あたたかなおとぎ話。
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【あらすじ】
失われた“六番目のブルー”を探して旅に出たオリオが出会ったのは“5番目のブルー”と“六番目のブルー”を作った青年カナタ。
でも、そのカナタにもどうして“六番目のブルー”を作ることが出来たのかが分からないため、“六番目のブルー”を作ることは出来ないと言われてしまう。
探し物が見つからないまま、旅を終えることになると思った矢先、“六番目のブルー”にあって“五番目のブルー”になかったものの答えが判明する。
※以下の感想にはネタバレが含まれます。ご注意ください※
【感想】
「インク三部作」がついに完結です。
失われたインクを探す少年の旅が終わりました。
“六番目のブルー”は“五番目のブルー”に涙の成分が加わってできたものでした。
人の悲しみによって作られるのが“六番目のブルー”なら、自分は“五番目のブルー”でいい。それがオリオの選んだ答え。
長い旅の中で、オリオは大事な人の死を受け入れることは、その人を失うことではないのだと気付かされます。
その人の持っていたものを引き継いで、その人の思いと自分の思いがひとつになることで、継承されていくのだ、と。
そして、新たに始まるのは「自分を探す旅」です。少年の旅はまだまだ続いていく。
希望のあるラストシーンが、せつなくて、優しくて。
読み終わってからしばらくの間、放心状態になりました。
吉田さんの作品を評するとき、私はいつも“大人のための童話”と表現しますが、このシリーズも間違いなくそんな世界観の中で繰り広げられています。
就寝前の静かな時間に読むのにぴったりな作品です。
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第六のブルーを探し求めるオリオと叔父さんの旅。またさまざまな人とそして出来事に出会ってゆく。
真っ赤な林檎を見つけたり小さいココノツ、大きいココノツに出会ったり、迷路の謎を解き明かしたり。
「哀しみ」の意味を深く知ったり。
毎回のことながら、会う人達の一風コミカルだけれどしみじみとした事情に一緒に想像の世界へ旅立てました。
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シリーズ物だが初読み。
著者らしいおとぎ話の様な世界観が広がる。
夢の中で見たような、子どもの頃に体験したようなそんな不思議な空間に包まれてお話は進む。
早速、シリーズ1,2を読んでみよう。