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紙の本

ケストナー没後50年記念

2024/05/28 13:28

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る

今年はエーリッヒ・ケストナというと、昔子供が小さい頃テレビで一緒に見た、アニメ『ふたりのロッテ』とか映画『点子ちゃんとアントン』の作者としては知っていた。ドイツ語を少々かじっていたので、ドイツを代表する文学者として著作を読まなければならなかったのだろうが、児童文学で知られていたので、作品を読む機会はなかった。
ナチ時代ケストナーの著作は、「焚書」の憂き目にあっている。それでも彼は亡命せずに国内にとどまり、ナチ党体制を批判的に俯瞰して見ていた。反骨の作家としての記録のような『終戦日記一九四五』(岩波文庫)が昨年出版された。ナチス第三帝国の崩壊を一民間人としての日記という形式で綴った記録で、知らない固有名詞が多くでてくるが、「不公平な平和か公平な混沌かのジレンマ、だから戦争はナンセンス」とか「大人は子どもより愚かだ」といった、ところどころ出てくる辛辣な政治・社会批判は読み応えがある。この著作が初めてのケストナーの「固い本」であった。そして今年2024年はケストナー没後50年の記念年。そこに本書が出版された。
ケストナーが痛烈な皮肉で独裁体制のメカニズムを暴く舞台劇の脚本である。台詞とわずかなト書きで構成される脚本であり、実際の舞台を観ればまた感じも違うのだろうが、読むだけではややインパクトは弱い。劇のストーリー、「替え玉」独裁体制は転覆されるが新たな「替え玉」独裁体制になる、は、大方予想がつく展開である。しかしケストナーは紹介文で「本書は脚本でありつつ、風刺にも見えるだろう。だが、本書は風刺ではなく、自身のカリカチュアになりはてた人間を誇張なく描いたものだ。このカリカチュアはその人間のポートレートにほかならない。」と言う。『終戦日記』の視点と同じである。ストーリーの軽さは気にしなくてもいいのだ。
また、ケストナーは、「脚本ではあるが、あるテーマを持っている。計画は20年越しだが、そのテーマははるかに古い。といってもあいにく古びはしない。つねに存在する時事問題というのもあるのだ。」と暗示的に言っているが、その言わんとする歴史的事実は明らかであり、現代にも通用するテーマである。「本書に登場する替え玉が、大統領になりきり、五号、六号、七号と通し番号で呼ばれるところはまさに人間がただの歯車として交換可能であり、個性を消失することを表現している。」は、最近の戦争・紛争を見れば、ケストナーのレトリックは今なお新鮮である。巻末には舞台上演の記録があるが、2010年代からは、ロシアなど権威主義体制の抬頭を反映してか、ほぼ毎年どこかで上演されている。さらにウクライナ戦争、そしてパレスチナ紛争により、今日的テーマとして再びドイツで注目されていることも理解できる。
この脚本は、戦前のナチ時代に着想し、戦後20年たって完成したもの。そのため、冒頭第一場のト書きでは、大統領の髪・髭は最近の歴史上の人物を連想させないように、としているように、当然ナチ時代を想起させることが盛り込まれている。また、大統領替玉第7号のクーデタを鎮圧したのは、首都防衛軍司令であったが、ヒトラー暗殺計画7月20日事件でクーデタ計画「ヴァルキューレ作戦」を実行部隊は、ベルリン首都防衛隊であった。そして劇中手引きをする人物の階級は「少佐」だが、意図的な言い間違えなのか、はたまた誤訳?かわからないが、大詰め第九場では、クーデタ失敗時に「大佐」と呼ばれる。ヒトラー暗殺計画の中心人物はフォン・シュタウフェンベルク「大佐」であったが、これを意識しているのか。ケストナーはナチ時代の刻印をこっそりと滑り込ませているのだろうか。

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2024/04/24 01:05

投稿元:ブクログ

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