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中学二年生5人がO.ヘンリーの短編「二十年後」の翻訳からいろいろなことを学ぶ五回の講座の実況風(実際に行われたものは8人の参加者がいて、彼らの発言などを男子2人女子3人の人物に編集したという)。
翻訳に必要なのは英語力もさることながら日本語というか言語の感覚、そして辞書などで調べて検討する力、簡単なルール(文法)をもとに推理する力、原文をすみずみまで読み込む力などがだいじということで、はじめは先生の訳とAI翻訳(翻訳アプリ)各種を比べてみたり、日英語の品詞のおさらいをしたりするところからスタートして、原文をていねいに読み、辞書を引きながらあれかこれか考えて伝わる翻訳を作りあげる過程を体験する。原文の表現によせるか日本語の自然さによせるか、あるいは異文化をどう表現すればいいのかなど、一対一対応の正解などどこにもない翻訳の基本的な論点もきっちり押さえている。進めるにあたって、原文を音読する他、日本語訳の音読もさせて日本語の表現で中学生にはちょっとわかにりくいところも確認しながらすすめているのがよかった。最後には中学生たちが短編の内容をじゅうぶん味わいつつそのあらすじを自力で翻訳できるようになるのがすごいと思った。
「究極の精読は翻訳」とどこかで聞いた覚えがあるが、中1の英語ぐらいはわかるけどぜんぜん得意じゃない好きじゃない人の学び直しに、こういう文学✕翻訳の語学はいいかもしれない。翻訳アプリが気軽に使えてしまう時代だからこそ、このように翻訳を比較検討する形での語学は比較的入りやすそうだし、こういう姿勢で取り組むなら、英語以外の第二第三の言語を勉強するのもそんなにたいへんじゃなさそうとも思える。