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「題未定」 なぜか読んでいてこれは菊池寛の作品ではないのかという錯覚に陥った。他にそれほど文学作品を読んでいるわけではないので比較の仕様もないのだが、この巧みな話の設定や文体など、どうも菊池寛を読んでいるときと同じなのだ。
「老村長の死」 巡査の息子? 何だそれは。夢の中の話と思って読み流していたが。
「天使」 なんだか一つもよく分からなかった。
「第一の手紙~第四の手紙」 他人の顔の原型か
「白い蛾」 船長の性格が変わるという話が、なんとなく良くわかった。
「悪魔ドゥベモオ」 ドゥベモオとは何か。ググっても出てこない。本文にも出てこなかったと思うが。息子が出てくるということは珍しいのではないか。妻はでてこなかったが。
「憎悪」 何かもう全然分からないのだけど、悪魔にしても憎悪にしても自分が自分に向かって喋っているように思える。
「タブー」 小説の中身より、曖気(本当は口偏に愛)を調べていたらおくびと出てきて、ゲップのことだとは分かったが、口なのか日なのかどちらでもいいのか、さらにいま「あい」で文字を出そうとすると目があって口がなくて、何がなんだか分からなくなってきた。そんなたまたま隣の部屋にいるか? 毎晩タムタムうるさくてどうしようもなくなってというのは安部公房である。
「虚妄」 砂の女の女だ。いや安部公房の女か。他人の顔の妻も結局実体がない。立ち現れない。いるようでいない。自分がない。何も無い。
「鴉沼」 どこかで大切なものを読み逃してしまったか。火事?誰が燃やした?一緒に死のうとしたのか?夢の中の話かとも思ったがそうでもない。満州での出来事だろうか。うーん、女が実体を持っていた。
「キンドル氏とねこ」 うーん、軽やかで読みやすい文章だと思ったら未完であった。カルマさんが登場している。
安部公房は文庫本になっているものについてはたぶんすべて読んでいる。複数回読んでいるのは「第四間氷期」「砂の女」「他人の顔」「方舟さくら丸」といくつかの短編、戯曲。本書を読むと、後の作品につながるテーマがいくつも登場しているように思った。と同時に若かりし頃の安部公房が、自分の書いた文章を世に出すことに対する葛藤のようなものも感じた。