投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
★5 難病を抱えた青年が、死と直面しながらも行方不明の女性を探す探偵小説 #車椅子探偵の幸運な日々
■あらすじ
主人公ダニエルは脊髄性筋萎縮症(SMA)を患っている青年。彼は電動車椅子で生活しており、常に呼吸停止状態になってしまう危険性があった。ある朝、彼が外を眺めていると、若い女性が車に乗り込む様子を目撃する。その後、その女性は行方不明になってしまったことが判明し、彼はSNSを使って独自の調査を開始するのだった…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 いい作品を翻訳してくれました。難病に苦しむ青年の切なさを、コミカルかつ生き生きと描いた素晴らしい作品です。
脊髄性筋萎縮症(SMA)という難病、聞いたことはあっても彼らの現実を私は知らない。既に彼は身体の一部しか動かせず、話すこともできない。そして咳ができないというだけで、すぐ死に直結してしまうという… そこまでは想像がついていませんでした。もし自分なら悲壮感漂った生活しか送れないと思うのですが、主人公ダニエルは違うんです。事実をしっかり受け止めながらも、日々前向きに明るく暮らしている。
つい健常者としては、なんて可哀想なんだ…と思ってしまいがち。ただそんな同情は彼らにとって何の利益にもならないし、苦しみや不自由な気持ちをわかってあげることも、同じ立場にならないと理解できることはないんです。ダニエルの茶目っ気たっぷりの日常を見てると、いかに自分の親切心がペラペラであったか思い知らされることになる。
本作のストーリーは、難病を患っているダニエルが行方不明の女性を助け出すこと。そんなの無理だろ、常識的に考えて… などと思いながら読み進めるんですが、SNSやメールなどを活用しながら彼は解決の糸口を見つけ出してゆく。そして強い意志をもって、我々健常者でもできないようなことに挑んでいくんです。死の現実を噛み締めながらも人のために尽くそうとする姿をみていると、何もしていない自分が恥ずかしくなっちゃう。
そして彼に関わる登場人物たちが真摯に向き合っていて、ホント涙がでてくるんですよ。友人のトラヴィスは一見悪友のようにも見えるのですが、間違いなく一番の理解者。まるで飲み屋で交わされるような低俗な会話が、彼との関係性が深さを教えてくれる。介護士のマージャニも仕事の関係性とは思えないほど献身的でひた向き。きっと彼の人間性がすばらしさが、素敵な人たちを呼び寄せるんですね。
本作は人間の心の底に眠っている、孤独、挫折、死の恐怖といった、あまり直視したくない現実を描いています。しかし一番に伝わってくるのは、人との絆、優しさ、幸運といった正の感情なんですよね。
ぜひ映像でも見てみたくなるハートフルな作品でした、映画館でも泣いちゃうだろうなぁ。
■ぜっさん推しポイント
私がかつて結婚したときのこと、たくさんの友人たちが結婚式や二次会開催に協力してくれました。何度も打合せしたり、会場の準備をしたり、必要十分な手間と時間とお金をかけてくれたのです。
あまりの協力ぶりに恐縮してたのですが、友人たちは「君たちの結婚���から協力したいんだ」と言ってくれたのです。私はこの言葉を一生忘れることはありません。
もしあなたが不幸のどん底だと嘆いているのであれば、是非この本を手に取って欲しい。間違いなく明るい未来が開けてくると思いますよ。