夜よりほかに聴くものもなし〈サスペンス篇〉
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あんたら,これを読まずに死ぬつもりか,可哀想に(笑)
2007/04/27 18:42
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
冒頭「鬼さんこちら」から早速ぶっとぶ。ある雨の日,会社員の男が帰宅すると共働きの妻の会社の男が2人。今日の午後,社員の給料230万円(昭和30年代の小説だからね)を銀行におろしにいったまま,奥さんが戻ってこない,と告げられる。妻は持ち逃げの犯人なのか,はたまた誰かに襲われたのか? 翌朝,川原で妻の遺留品が発見されるが死体はあがらず,事件は迷宮入り。ところが夫はその後,妻かも知れぬ死体が発見されるたびにその確認に狩り出される羽目になる。しかもそれがことごとく彼のめでたい日に重なるのだ。新しい恋人とのデートの日,新婚旅行の日,自宅の新築祝いの日,そして新妻の出産の日。現実にはなかろうが確率的にあり得ないとは言えぬこの偶然。そしてついに夫の精神の均衡が崩れる……。
ね,面白そうでしょ? こんな……解説で辻真先が言う通り,まさに「底なし井戸を覗き込むような人生の不気味さ」溢れる風太郎ワールド。なかでも出色は掉尾を飾る表題作「夜よりほかに聴くものもなし」。老境にさしかかった刑事が遭遇した「奇妙な事件簿」といった風情の連作だが,特に第9話「敵討ち」なんて「これがほんまに昭和37年の作品かいな」と思うほど,まるで2006年のニッポンの戯画である。大傑作,ミステリファンならずとも一読の価値はあります。つうか,あんたら,これ読まずに死ぬつもりか,可哀想に(笑)。