救いがなくどんよりとした気持ちに。
2010/03/09 10:32
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
二十歳の男女が渋谷のビル屋上で自殺している所が発見された、という新聞記事から始まる本作品。少々衝撃的な始まりに動揺する。石田衣良さんの作品群には、「1ポンドの悲しみ」や「約束」等のような非常にハートウォームな作品と、「娼年」や「美丘」等の、どちらかというと厭世観を持った主人公を描いた物がある。でもどちらも通底したテーマは同じで、命の大切さや尊厳、といった事を謳っている。本作はきっと後者のタイプに含まれるのかなと読み進めたが、ちょっと最後に救いが無い。
父親は外資系巨大金融会社の日本法人社長。六本木ヒルズに住まう二十歳の主人公スミオは、満ちてはいるけど充足感も幸せも無い毎日を感じていた。ある日出来心で接続した携帯出会い系サイトで、サクラをしていた同じ二十歳のジュリアに出会う。ジュリアは逆に親の借金にあえぎ苦しみ、パン工場と出会い系サイトのサクラとして働き日々を必死に生きていた。あまりに立場の違う二人だったが、幼くして母親を亡くしたという共通点から惹かれあい、深く愛し合うようになるのだが・・・。
何か一ひねりあるかと思いきや、真っ直ぐな結末を迎えてしまった。現代の理不尽や現状を伝えようという事なのかもだけど、若い二人が大人の都合で死を選ぶという展開はやはり読んでいて辛い。どんよりと曇った主人公二人が、最後に明るさを取り戻すのが死する方法を選ぶとき、というのもどうにも救いが無くてとても切なくなってしまった。読む者が自殺をある意味肯定的に受け取ってしまう可能性を考えたら、やはりこの終り方はちょっと頂けないなと思ってしまった。
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投稿者:アナグマ - この投稿者のレビュー一覧を見る
死以外の選択肢は無かったのか。
澄雄とジュリアの真ん中にいる私は、読み終わった後もずっと考えている。
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携帯で始まる恋愛小説なんて最近、巷に溢れています。
けれど、そんなありふれたテーマも石田衣良の手にかかると魔法のように違った顔を見せてくれます。
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やっぱり石田衣良さんだなぁって思う一冊。相変わらずすごく読みやすい。内容は暗いけど、分厚い本があっという間でした。読んだ感じはあっさりしてる。章が変わる度にある表紙(挿絵)とか新鮮でよかった。
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石田衣良さんの書く文章は美しいなー。気持ちの表現、行動、風景そのすべての表現がキレイ。
主人公が大学生ということで感情移入して読んだって感じではなかったけれど、スゥーっと読めました。
中村佑介さんの挿絵もとってもステキです。
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「これから送るのは、親しい友達にも話していないことだ。暗くなるけど、いいかな?」
「わたしは……今、この瞬間全身でスミオの話をきいてるよ。全部、話して───」
六本木ヒルズに暮らす大学生の澄雄と、薄給のパン工場で働くジュリア。
携帯の出会い系サイトで知り合ったふたりのメールが空を駆けていく。
二十歳のふたりは、純粋な愛を育んだが、そこへ現実という障壁が冷酷に立ち塞がる。
無防備すぎる恋は追いつめられ、やがてふたりは最後の瞬間に向かって走り出すことに。
格差社会に否応なく歪められる恋人たちを描いた、現代版「ロミオとジュリエット」。
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今の時代の恋愛のひとつの型。
自分の存在価値を見失ったとき、どうすればいいのか。
親という立場になってしまった自分が読んだ感想と
ある意味責任のない若い自分が読んだ感想の違いは
どんなものか。興味がある。
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現代版、ロミジュリ…
ロミジュリでした。なんとも救われないような。
ある意味、救われているのかもしれないけれど。
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装丁を見てどこかで見たような絵だなと思っていたら。
森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』の装丁を描いた人の絵だとか。
各章毎に扉絵なるものがあるのがいいですね。
話は決して楽しいものではないですが、扉絵に癒されました。
親指の恋人というタイトルと装丁に惹かれて購入しました。
悪く言えば、安易なタイトルなので賛否両論かもしれないですね。
ジュリアと美丘のキャラとか言動が近いように感じたので。
どちらも魅力的な登場人物ではあるけど、少し微妙でした。
現代版ロミオとジュリエットとでも言うのかな。
あっちは格差ではなくて、家同士のしがらみでしたが。
外国ならスミオが王子で、ジュリアが農民の娘のような感じ。
ジュリアは底辺を這いずり回るけど、外見と心はきれいで。
同じような過去を背負っているからこそ分かる痛みもあって。
それでも、死を選ぶまでの過程があまり納得できなかった。
10年ほど前に読んでいたらすごく共感できていたのかも。
こんななりふり構わない恋愛はできないんだろうと痛感しました
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大きな驚きもなく、かといってガッカリはせず、
自分とは環境が違いすぎて感情移入はできず、
予想通りにコトが進んで行って、
アンハッピーエンドで終わるストーリー。
本人たちにとっては、これがハッピーエンドなのかもしれない。
2日くらいで読み終わった。
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現代版ロミオとジュリエットという触れ込みに惹かれて購入。
男も女も若く、恋に落ちたからこそ安易に死んだと思う。
リアリティはかけらもない。
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久しぶりの石田衣良作品。
池袋ウェストゲートパークに馴染みがあったからなのかもしれませんが、恋愛小説も書ける石田さんの幅広さにびっくりしました。
でもやっぱりその二つの作品でも訴えてることは同じような気がして。
世の中の格差だったり、格差の中で下のほうにいる人たちの悲痛な叫びであったり。
それを色々な人の視点や立場で書き分けることが出来ているのがすごいなぁと思います。
「親指の恋人」というタイトルも、まさにどんぴしゃ!ですし。
タイトルのネーミングに加え、この作品では表現の方法がすごく好きでした。
メールの表現とか、いちいち共感しましたね。
自分はメールがそこまで好きではないのですが、それでも作品の雰囲気と表現に「確かにそうかもなぁ」と納得させられてしまいました。
そして絵が良い!
実はこの本作者が石田衣良ということに加え、表紙がよいからという理由で買ってしまった作品ですw
なので内容はほぼ知らず買ったのですが、よかったです♪
ただの恋愛小説じゃなく、考えながら恋愛小説を読みたい人にオススメです。
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幸せってなんだ?
下がること、落ちることでしか幸せになれない?
そう思っている人、多いかもしれない。
埋まらない溝。差。
それらを愛はこえられるのか。
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二人で死ぬことが解決なのかな??
でも、死ぬことしか選べない気持ちもわかる。
恋に落ちるのは時間じゃないんだな。そして、本気で恋をできることって幸せだな。
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死に向かっていく二人。現実から逃げることになっても、確かに幸せはあったのだろうと思います。悲しいお話。