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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
捨身飼虎などの自身の身を犠牲にする菩薩本生譚が日本文化に与えた影響が述べられている。捨身飼虎などの絵画としての描写は法隆寺の玉虫厨子くらいしか類例が見られないのだが明恵の思考、近松門左衛門の浄瑠璃、宮沢賢治の文学といったところに影響を与えていることが具体的に論じられていて面白かった。
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本書にいう、未本生譚をもっと知りたいと思っての選書であったのだが、その意図を超える深く広い内容であった。なんとか読み切った。
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序章: 菩薩本生諦の起源と性格
本書は、菩薩本生諦の物語の起源、性格、及びその文化的背景に焦点を当てています。特に、自己犠牲のテーマが強調され、仏教の教えにおける菩薩の役割とその行動がどのように形成され、描かれてきたかを探求しています。
自己犠牲の物語
菩薩たちは、他者のために自らの命や身体を捨てる行為を通じて、慈悲心を示します。例として、シビ王や薩唾王子の物語が挙げられ、彼らがどのようにして他者を救うために自己を犠牲にするかが詳細に描かれています。これらの物語は、中央アジアの石窟の壁画や古代の旅行記によっても確認されており、宗教的な信念が具体的な行動に結びついている様子が示されています。
菩薩本生諦の文化的意義
本書では、菩薩本生諦が単なる物語ではなく、文化と精神性の反映であることが強調されます。自傷行為や自己犠牲は、人間の心の深層に根ざした普遍的なテーマであり、これらの物語は「反復強迫」の表象として機能することが示唆されています。
自己犠牲と文化精神医学
文化精神医学の観点から、自己犠牲の行為がどのように理解されるか、またその発生頻度がどのように異なるかについての考察が行われています。特に、仏教文化圏における自傷行為の低頻度が指摘され、これが菩薩本生諦の物語とどう関連するかが議論されています。
第一章: 身を割く王の物語
シビ王の物語は、慈悲心を試す神々の試練を通じて、王の自己犠牲の精神が描かれています。王は、鳩とその捕食者の間での選択を迫られ、自らの肉を切り取ってその命を救う決断をします。この物語は、菩薩の利他行の極限を示すと同時に、人間の道徳的選択の難しさを表現しています。
第二章: 血の色
「捨身飼虎」の物語を通じて、自己犠牲とその結果としての血の象徴性が探求されています。薩唾王子が飢えた虎に自らの身体を捧げる場面は、単に物理的な犠牲に留まらず、深い精神的な意味を持つことが示されています。この章では、物語がどのようにして人々の心に深く刻まれ、文化の中で語り継がれてきたかについても触れられています。
第三章: 明恵の捨身行
明恵の生涯における捨身行は、菩薩本生諦の理念が個人の信仰や行動にどのように影響を与えたかを示しています。彼の捨身行為は、菩薩の精神を体現するものであり、仏教の教えが個々の生活にどのように適用されるかを考察しています。
結論: 菩薩本生諦の現代的意義
本書を通じて、菩薩本生諦の物語は単なる古代の教訓ではなく、現代にも通じる深いメッセージを持つことが強調されます。自己犠牲や他者への無私の愛の精神は、今日の社会においても重要な価値観であり、これらの物語が持つ普遍的なテーマは、今なお人々に影響を与える力を持っています。
この要約を通して、本書が伝えたいことは、菩薩本生諦が自己犠牲と慈悲の精神を通じて、人間の本質や道徳を考える重要な枠組みを提供しているという点です。