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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校の担任の葬儀で8年ぶりに再会した、3年6組の元級友たち。プチ同窓会になり盛り上がる青春の懐古談。記憶の齟齬が揺り起こす、過去の罪と痛みに向き合い、ゆっくりと再起をかける青春群像劇3部作の終結。
白麗高校を舞台にした3部作ではあるが、3作とも独立した作品として引っ掛かる所なく、どの作品からでも楽しめる。他作を読んでいる場合は、小さな繋がりに「おっ」と気持ちが昂ること間違いなし。
年齢と共に妥協を重ねた者、過去に重ねた妥協が決壊した者、何を重ねようと他人事を貫く傍観者―――それぞれの欲望が入り交じり、無機質な過去が脚色されていく。自分の物差しだけで判断する事の愚かさ、軌道修正の邪魔をするくだらない自尊心、わかっていても簡単には変えられないエゴを痛切に感じた。
「自分以外に矛先が向くくらいなら、それを苦に感じていない自分が引き受ける」という赤羽の考え方にとても惹かれた。さらっとそういう事を言えちゃう人への嫉妬心と同時に、そう言えるようになるまでの赤羽の人生を想った。見えているものだけが全てではないと、繰り返し教えられた。
二人のその後をまた読みたい
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船守よかったね!!!
一木、不器用だけどいいやつかよ!
思ちゃん、すごく賢いんだろうな。「大人ってなんですか?どういう振る舞いをするのが大人だと、先生は思いますか?」という言葉、刺さったよ。
華、高校生に見透かされてるよ。
優菜、言えてよかったね。
言語化するまでには至らない小ささかもしれない、でも確実にその人は傷ついている、そんな微妙な人の心情をリアルに描く・言語化するのがこの小説の面白くてすごいところ。
ただ、それだけじゃなくて、おおー。そこにそんな繋がりが!といったストーリーの面白さもあった。
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学生時代のイジメなどの嫌な思い出、当事者は何年経ってもふとした拍子に思い出してしまうのには共感した。
恩師の同窓会で思いがけず再会したいじめた側の華の態度に、苛立つのは大人げないと取り繕っているけど、いやいや大人になってもイラつくでしょ。
大人になっても感じが悪いままで、こっちまで腹立たしい気持ちになった。
そして、水野先生はなんで苛立ちを一人の生徒にあそこまでぶつけちゃったのか謎。
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Amazonの紹介より
卒業後7年ぶりに再会した、北海道立白麗高校3年6組の元クラスメートたち。それは同窓会ではなく、クラス担任だった水野先生の葬儀だった。思いがけず再会した皆は、高校時代の思い出話に花を咲かせる。そして水野が授業中におこした〝事件〟が切っ掛けで不登校になったクラスメートがいたことを思い出す――。かつて高校生だったものたちを睨む〝過去〟。大人になるとはなにか、そして生き直すことは出来るのか。誰もが自分に問いかけた思いを描く、青春群像劇の傑作。
先生の葬儀をきっかけに甦ってくる昔の思い出。大人になってわかる真実に他人を理解することの難しさを感じました。
いつの時代も、その時は何気ない言葉だったのが、本人にとってみれば、深く心に突き刺さり、時として刃と化します。
気をつけなければいけませんが、それでも難しいと思うので、まずは相手の立場に立つことが大事かなと思いました。
「白麗高校」シリーズということですが、別作品とはあまり接点というものはなかった印象だったので、単独として全然楽しめました。
言葉によって傷つけられる描写があったので、何度も心を抉られましたが「答え合わせ」をすることで、何か引っ掛かるような心のささくれが取れたように感じました。
ただ、気になったのは、なぜ水野先生が生徒にキレたのか?ということです。一応、キレた理由がわかるのですが、個人的には、もっと深い真相が待ち受けているのでは?と期待していたので、ちょっと拍子抜けしてしまいました。
さらに先生側の視点がないので、本当にそれが真実なのか?わからず、帯での宣伝で前面に紹介されていたこともあって、もっと深堀りして欲しかったなと思いました。
なので、一番の読みどころは、水野先生に関する出来事の真相ではなく、成長した高校生達が葬儀をきっかけに、昔と向き合っていく物語になっていきます。
それが、良いネタなのか、それとも真剣に向き合い、「今」を成長させていくのか、それぞれの解釈が垣間見えます。
群像劇になっていて、それぞれの登場人物がどう思っているのか、どう思っていたのか。登場人物の視点が変わるごとに色んな発見があるので、面白かったです。
他人を犠牲にしてまで、注目されたいのか?
「今」ならではの暴露による炎上騒ぎもあったので、どこか他人事ではないような親近感もあって、ある意味、リアルだなと思ってしまいました。
今更、過去を振り返っても・・と思ってしまう時もありましたが、自分と向き合う良いチャンスなのかもしれません。
良い「大人」になるとはどういうことか?見えない出口を彷徨っている感はありましたが、良いベクトルへ進めることを望みたいです。
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高校時代の担任の葬儀で再会した元3年6組のクラスメートたち。
懐かしさ、うれしさ、そして未だ癒えない心の傷。
卒業してから7年。大人になったつもりでいた。けれど……。
現在の自分を見つめ直し、これからの自分を作っていく。そんな若者たちの姿を描く群像劇。
◇
8月11日午後0時。
カナダのトロントに住むある女性のスマホに着信があった。発信者は不明だが表示された番号は、その女性には心当たりがある。
存在すら忘れていた相手。もう自分に電話をしてくることなどないと思っていた相手の顔が思い浮かんだ。( 第1章「八月十一日 正午 カナダ トロント」) ※全16章。
* * * * *
いくつもの人生が絡み合う、読んでいて胸が痛くなるような物語でした。また、群像劇ではあるのですが、物語の中心になるのは2人です。
1人は、柏崎優菜。
優しく自己主張の強くない女性で、本好きでもあった優菜は現在、母校の白麗高校で司書教諭をしています。
優菜は高校1年の時、ある女生徒のグループからイジメを受けていました。仲間外れ。陰口。イヤミに皮肉。思ったことを言い返せない優菜にとって、心に深い傷を負った苦しい1年間でした。
2年でクラスが分かれたものの3年で再びイジメグループの急先鋒だった北別府華と一緒のクラスになります。ただし1人になった華の方も仕掛けてくることはなかったのですが、悪かったと思っている様子もなく図々しく接してくる華を見ると、優菜の心の傷は疼くのでした。
高校を卒業後、華の顔を見ることなく7年が経過し、ようやく心の傷も癒えたと思った矢先のこと。急死した水野先生の葬儀で華と再会した優菜の心には、また苦しさが蘇ります。傷は癒えてなかったのです。
もう1人は、船守大和。
高校3年のある日、機嫌の悪かった水野から授業でパワハラめいた扱いを執拗に受け、不登校になった男子生徒です。大和は以後も復学することもなく7年経った今、ある決心をして1人で風冷尻山に登ってきました。
実は大和は家庭でも問題を抱えており、登場人物の中でもっとも苦しい人生を送っていたのです。
それについては物語の重要部分なので直接お読みください。
この2人を軸に、イジメっ゙子の華、アロマンティックと思われる一木来良 ( 男子です ) 、恐らく同性愛者の碓氷彩海、高校時代は明るく人気者で目立ちたがりだった望月凛 ( 男子です ) が、それぞれの人生を見つめ直していきます。
自分の黒歴史のケリをつけるのはかなり難しい。ましてや主原因が自分にない黒歴史ならなおのことです。
終章を読んだとき、ようやくタイトルの本当の意味がわかります。
乾ルカさんの『白麗高校』シリーズの中ではもっとも心に重くのしかかってくる、それでいて雲の切れ間から覗く陽光を見たような気持ちにさせてくれる作品でした。
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胸の中に未来の希望を描く。
そんなラストに自らの救済と再生を感じました。
過去に流した涙は再び巡り、
魂に虹を架ける。
抱えて生きてきた苦しみを
恵みの雨に変える優しさと
希望の光を注ぐ強さを
この物語は持っています。
過去を葬り、生き直す。
葬式というものは
残された者が残された時間を生きていくための一歩を
踏み出す儀式なのかもしれない。
同じように歪んでしまった心を持つ同窓生へ
どうか届いてほしい。
そう強く願ってやまない、
生きていく力を与えてくれる救いの物語です。
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白麗高校三部作、最終巻。
高校生たちの、いじめやスクールカーストをもとにそこ生きる彼らの痛みや苦しみを描いてきたシリーズのラストは大人になった元同窓生たちの物語。
授業中に起こったある「事件」で不登校になった男子生徒。その事件を起こした教師の葬儀の場で再会した元クラスメイトたち。7年経ち大人になった彼らそれぞれが抱える問題が、かつての「事件」と共に描かれていく。
なぜ教師はそんなことをしたのか。クラスメイトたちは今、それぞれになぜ傷を抱えているのか。
いくつも描かれる今を生きる者たちに共感を呼ぶ苦悩。
「死」が身近にならなければたどり着けないこともある。
いじめた側はすぐに忘れる。でもいじめられた側はいつまでたってももやもやとした苦しみを抱き続ける。
いつかどこかで決着をつけなければ終わらない、そんな「青春」もあるのだ。
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なんで自分がこの小説を読んでいるんだろうと思うくらい、読んでいて嫌な気持ちになる本だった。ほぼほぼ最後まで。登場人物の誰もが、どこか独善的に描かれていて、容易に感情移入を許さない。それぞれがみな自分の嫌なところを自覚しているか、あるいは逆にそれを自分で押し隠そうとして、かえって自分の薄っぺらさを周りにさらしているかどちらか。
だけれど、本当に最後の最後になって、主要登場人物たちがもう一度一緒に会い、相手に対する嫌悪の気持ちをさらけ出し、とにもかくにも自分の気持ちに一区切りをつける段になって、なんとか折り合いをつけられる。そういう小説だった。
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ルカさんは雪下まゆさんの表紙が好きなのかな?印象的で目を引く。
同窓会ではなく、急死した恩師の葬式で、3年6組の同級生が8年ぶりに集まり、同窓会のような感じになったので、葬式同窓会。
母校の司書をしている優菜のモヤモヤは、ずっと心の中に残っていた。
大人になってからの話と、高校時代の話。
作家をしている華のような、人を見下す感じを表現するのが、ルカさんは上手いと思う。
青春はキラキラだけじゃないかも。
最後の伏線回収はお見事。
明るい気持ちで終わって良かった。
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かつて高校生だったものたちを睨む?過去?。大人になるとはなにか、そして生き直すことは出来るのか。青春群像劇の傑作。
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しんど。しんどい話だった。かつての担任の葬式で再会した元白麗高校3年6組。仲の良いクラスと見られていたが各々の心境は当時から複雑だった。仲間外れにされたり、自己顕示欲が強すぎたり、透明人間のような扱いをされたり...卒業後8年経っても引きずるものは大きい。「そういえば担任が激怒した授業があったっけ」という振り返りから物語は動き出す。暗い展開のわりにラストは希望を感じさせるがそこに行きつくまでの説得力が薄くカタルシスは得られなかった。ただ嫌ぁな人物の描き方が秀逸でクライマックスの修羅場には息を飲んだ。
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白麗高校を卒業した8年後、当時の担任教師の訃報を知って集まった同級生たちはかつての事件を思い出す。突然豹変した担任と、それがきっかけで不登校になったクラスメイト。あの時何があったのか、そして自分たちはどうするべきだったのか。
正しい意味ではこれぞ「青春小説!」かもしれません。苦いし痛いし、後悔だらけ。傷つけられ傷ついて、だけれどそれを若気の至りだったと笑い飛ばして終わりにはできなくて、終わりにしたいのにこだわってしまう。青春の大半はそんなもので、甘くて爽やかなのは一部の思い出を大事に美化したものでしかないのかも。だからこそ彼らの物語には、楽しくないのにぐっと引き込まれました。
キャラクターとしては華が印象的だけれど、嫌でした。敵に回したくないし、友達にもしたくないし。配信のシーンなんて最悪。だけれど彼女の立場になって見れば可哀想な面もあるのかも。プライドにすがって生きるのってしんどいよなあ……と思えば、あまり嫌う気にもなれませんでした。これがきっかけで彼女も少しは変われると良いのですが。
痛々しいばかりの物語に見えましたが、ラストは存外にすっきりとして救われます。不穏に思えたこのタイトルにも納得。
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題名からして、年寄りの話かなって思ったけど、そんな事は全然なかった。
そうだよね、表紙のイラストからして若いもんな。
一木さんと船守さん、ガンバレ!
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「色々あったかもしれないけど今となってはいい思い出だよね」
いじめ加害者が放ったこの一言には怒りを通り越し呆れ果てた。
高校時代の担任・水野が亡くなり葬儀に参列した元クラスメート達。
その後、斎場近くの居酒屋へ流れ学生時代の思い出を語り始める。
温厚だった水野が起こした衝撃的な行動、それが原因で不登校になった男子生徒。
それだけでも不穏だが、過去のいじめ、承認欲求と物語は刺々しさを増していく。
自己顕示欲の塊のような望月と華の動画配信は最悪。
他人を貶める事で得られる成功など意味がない。
道徳的想像力の大切さを痛感する。
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学生時代の良い思い出、悪い思い出。
大人になってから、あの時なんであんなことと後悔することもあったりします。
だからこそ、今の学生さんにはやりたい事をやったり、言いたいことを言ったり、そして失敗も経験して成長して欲しいと思います。
誰かの失敗を目の当たりしたときには、支えあって見て見ぬふりをしない人であって欲しいとも感じます。
それが後にかけがえのない財産になるはずだと信じて…。