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  3. 松井高志さんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年6月)

松井高志さんのレビュー一覧

投稿者:松井高志

128 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本人生に効く!話芸のきまり文句

2005/07/09 13:30

よろしくお願いします

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本の著者です。
bk1で「書評の鉄人」に選ばれ、『熱い書評から親しむ感動の名著』にも寄稿させていただきました。お世話になっております。この本は、寄席で落語や講談を楽しむときのための、一種の「副読本」として考案したものです。話芸には、気の利いた諺やもののたとえ、歌の文句などがよく引用されますが、一度耳で聴いただけでは覚えきれず、意味もよく分からないということがよくあります。そういう「きまり文句」に注目して、読みや意味を述べつつ、それらがどんな場面で使われるかを、噺の筋や登場人物紹介を兼ねて解説してみました。欄外に「話芸に出てくる言葉豆辞典」もサービスしています。演芸ファンも日本語ファンも楽しめる、お買い得な本にしたつもりです。よろしくどうぞ!

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落語通談

2006/02/27 20:31

いつも持ち歩いている本。こちらもぜひ復刊を。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 同じ著者の「本朝話人伝」は復刊されたが、こちらの方もぜひ復刊してもらいたい中公文庫の落語本。序文は昭和18年夏、となっている。
 著者は明治21年に東京・牛込に生まれ、府立一中を家庭の事情で中退(同期の谷崎潤一郎がこれを惜しんだという)寄席芸人から「都新聞」の投稿者となり、やがて演芸ライター、落語・講談作者となる。昭和20年5月25日の空襲で、隣組の防火班長だったため、家族を避難させた後、町会長へ報告に行く途中、煙に巻かれ59歳で死去。縁の深かった長谷川伸は、その資質を惜しんだ。
 この本は、
●いろはかるた形式で落語の演目を軽妙に紹介していく「落語通談」
●サゲとクスグリについて考察した論文「落語講義録」
●「落語名題総覧」(聴いたことのないタイトルの噺が実にたくさんあるのに驚く)
●「落語国の人々」(落語の登場人物小辞典。人物一人につき記事数行なので軽い読物だが、後に安藤鶴夫の有名な著作「落語国紳士録」の発想の元になった)
からなる。
 前から後ろへお行儀よく読む本、というより、好きなとき好きなところを開いて気ままに読むと、自然に落語についての基礎が強化される、という便利な一冊。常に手元に置くための本。だから文庫本にふさわしい。戦時中の本なので、「厳粛なる時局下」等の言い回しが出てくるのであるが、それもまたひとつの味わいである。

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紙の本世界の十大小説 上

2003/03/24 12:43

世界十大文豪の生涯を味わう

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

たしかかつて岩波新書から出ていたはずの、W.S.モームによる「世界の十大小説」が’97年に文庫化されたもの。
上下二巻で、「トム・ジョーンズ」(フィールディング)、「高慢と偏見」(オースティン)、「赤と黒」(スタンダール)、「ゴリオ爺さん」(バルザック)、「デヴィッド・コパーフィールド」(ディケンズ)が上巻、「ボヴァリー夫人」(フローベール)、「モゥビー・ディック」(メルヴィル)、「嵐が丘」(エミリー・ブロンテ)、「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー)、「戦争と平和」(トルストイ)が下巻。上巻巻頭にモームの「小説とは何か」という短い文章(簡潔で面白い)、下巻巻末にはもしもこれらの作品の作者がパーティに会したら、という設定でもって「あとがき」が書かれている。
 十編の作品の単なる紹介文の羅列ではなく、主に作家の略伝から書き起こしているため、「なぜこの名作は生まれ得たのか」という回答のないような問いを、完全ではないが満足させてくれる。なんといってもそれぞれの作家の生涯が面白い(それはもちろんモームの手柄ではないが、語り口のシャープさは確かである)。つまり、これは良いレビューのタッチや構成のお手本として読めるわけだ。
 10本の「世界名作」のうち、正直な話、半分しか読んでないのが自分にとっては痛いところなのだが、読んでもいないのに読んだ気になる、というより、未読の5作を読むや読まざるや、という判断の好材料になった。
 たしかこれにならって、日本の十大小説、というのを加賀乙彦さんが選定していて、「明暗」「或る女」「夜明け前」「暗夜行路」「細雪」「迷路」「富士」「死の島」「レイテ戦記」「燃えあがる緑の木」だったと思う。こちらはちくま学芸文庫から出ていたが残念ながら入手不能の模様。

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話芸きまり文句の本・ビジネス教訓編

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

書評の達人のはずですが、さぼってばかりの不届き者・松井高志です。
「人生に効く! 話芸のきまり文句」(平凡社新書)に続く、昔ながらの教訓句の本を作りました。
 今回は、話芸でおなじみな「お約束」の言い回しのうち、江戸時代の寺子屋教科書(往来物)、心学の道話の筆記など、主に町人向けの民間教育で使われたテキストにも引用されていることば、すなわち本当に江戸時代の人々が口にしていた教訓句を採り上げ、ひょっとすると、それらがまだ現代のビジネスパーソンにも使えるんじゃないか、という視点をとっています。平凡社新書版とかぶる内容もありますが、本文は新たに書き起こしました。というわけで、いささかこじつけめいた部分もありますが、そのあたりも含めてお楽しみください。よろしく!

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よろしくどうぞ!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

【著者より】「書評の鉄人」の一人(であるはずの)ライター・松井高志です。お世話になっております。ご無沙汰ですみません。
 前著「人生に効く! 話芸のきまり文句」(平凡社新書)から約3年。久々に新しい本を出しました。またも話芸(落語・講談)と言葉にまつわる本ですが、今回は、かつての名演を記録した昔の書籍・雑誌にみられるユニークなあて字・難読語の類(例:「平生」=ふだん、「挙動」=そぶり、「鳥渡」=ちょっと、「表面」=おもてむき、等々)に注目し、数あるそれらの中から300を選んで、漢字ドリルの型式にまとめてみました。
 ドリルではありますが、設問を解いたからといって、頭が良くなる、日本語力がつく、漢字検定に強くなる、人から尊敬されるといった現世的なご利益があるものではありません。ただ昔の人が考えたあて字・難読語と戯れていただくために作りました。要するに、洒落・謎掛けの感覚で楽しんでいただければ幸いです。
 どうぞよろしくお願いします。

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お願いです。買ってください。

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 白状しようかどうかずっと迷ってましたが、このシリーズで、毎年「らん外ミニ情報」(雑学コラム)を書いています。ですから買ってください。お願いです。もはやこれは書評ではなくPRです。クレジットは「編集協力者」のぺージにあります。2003年版では150本ほどを担当。さぁここで問題です。私が書いたのはどれでしょう?

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紙の本鎧櫃の血 新装版

2006/09/14 12:12

H.G.ウェルズ「くぐり戸の中」に比すべき傑作揃い

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「半七捕物帳」、それ以前に新歌舞伎作者として「修禅寺物語」「権三と助十」「小栗栖の長兵衛」などを書いた岡本綺堂の江戸奇譚集。
 綺堂の奇譚集というと、どうしても「青蛙堂鬼談」などの方が注目されてしまい、この本に集められた「三浦老人昔話」シリーズは影が薄いのだが、私はこのシリーズが好きで、「大衆文学大系」を図書館でコピーして読んだし、この文庫本も品切れ状態だった時、古書で手に入れて繰り返し読んだ。
 全12編で、「半七」同様、ストーリーテラーの青年「わたし」が、三浦老人を訪問して、江戸(旧幕)時代の逸話を取材する、という形式の「枠組み(フレーミング)小説」である。地味なのは「半七」のような推理小説(謎解き、犯人探しのある犯罪小説)ではなく、ただ昔の江戸で起った、奇人の出てくる逸話(しかも各編はごく短い)がオチもなくただ並んでいるからであろう。
 だが、奇談というのはオチがない(近代的な解釈を拒む)からこそリアリティがあって、怖かったり面白かったりするわけである。そう思うと、ただよく分からない変った出来事が並ぶ「三浦老人」の方が、探偵の理知が働く「半七」よりも奥深いと思えたりする。この本は「三浦老人」12編ではもたない(ツカが出ない=ページ数が足りない)ので、別種の奇談を数編足して一冊の文庫にまとめている。
 要するに平凡でまっとうなはずの人に「魔が差す」話が多いのだが、芝居や戯作という、本来ならば娯楽にすぎないものが人の運命を狂わせていってしまう「権十郎の芝居」「春色梅ごよみ」が傑作である。

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紙の本大阪ハムレット 1

2006/06/19 14:57

やはり森下さん、ストーリーものが楽しい

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 森下裕美さんは毎日新聞夕刊に「ウチの場合は」を連載中で、連日愛読しているのだが、(それゆえに)そっちの単行本は買わない。彼女は普通4コマ作家だと思われているが、82年頃「週刊少年ジャンプ」にデビューしたときの作品はストーリーものだった。実は、昔出ていた「恋人のいる街」(河出書房新社・パーソナルコミックス)のようなゆるいストーリーマンガがいいのである。でもこの短編集(全6編)はゆるくない。いってみればきっちり作られた上方人情噺集である。
 余談だが、上方の女性のファッション観は首都圏のそれと違っている。「気合」の欠けているシンプルなだけの服を着てもおしゃれにはならない、毒にも薬にもならない服を着ても意味がない、という生活哲学があって、それはこの短編集の「乙女の祈り」などにはっきり表われている。青木光恵さんもそんなことを描いていたような記憶がある。そんな意味でも面白かった。
 各編で人物がリンクしているのも4コマ風の仕掛けで楽しい。

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紙の本遠野物語 新版

2006/05/09 09:15

「語り」を書き留める文芸

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 柳田国男の著作の中でもっとも著名なものであろうと思われるから、内容を要約するのさえ気恥ずかしいが、この本は岩手・遠野に伝わる民間伝承を記録したもので、当初は300部の小規模出版であったらしい(うち200部が贈呈本であったという)。そこにはこの地方の古くからの習俗、伝説、怪異にまつわる話が豊富に含まれており、近代人・現代人のイマジネーションを刺激し、これが民俗学の出発点となったわけである。
 この文庫本は、「遠野物語」と、続編にあたる「遠野物語拾遺」、さらに折口信夫による初版解説(昭和10年)をも収録している。
 著者は、佐々木鏡石という遠野の人が収集したこれらの「話」を、「一字一句を加減せず感じたるままを」筆記したと述べている。冒頭でのこの種の宣言は、小栗重吉が語った漂流記「船長日記」の筆記における池田寛親の宣言に似ている。自分はなんら作為を加えていない、ただ誠実に語られたままを書き留めたのである、と。
 佐々木という人物は、遠野の人々の語りを収集しているわけだから、間接的であるが、この「遠野物語」は話芸筆記に通じるものがあると考えてもいいと思う。
 読者は、この本を読み進むにつれ、これらの一編数行〜十数行の簡潔で、だからこそ象徴性を帯びた「語り」の群れから、どれに惹かれるか、どれをより詳しく聴きたいと思うか。それは全く各個人の趣味や嗜好でまちまちであろう。妖怪が出てくる話か、動物の生態の話か、神隠しの話か、幽霊か、侍と百姓のリアルな確執か。その人の生活史・個人史によって、「遠野物語」「拾遺」は、輝き方を変える。この多面性こそが名著たる所以なのであろう。一回読んで、「面白かった」か「つまらなかった」かのどちらかに振り分けて、「おしまい、はい次の本」、という姿勢で読むべきではない。ある本を「こう読むべきでない」というようなきめつけ方はよろしくないのだが、そういう「格」の本があってもいいのではないかと私は思うのである。

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紙の本落語と私

2006/02/18 08:46

良い聴き手となるために

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 昨年、演芸情報誌「東京かわら版」誌上で、夢月亭清麿師が「最良の落語入門書」の一冊として挙げておられた本。現在ポプラ社版が売れているが、ここでは携帯しやすい昭和61年の文春文庫版についてコメントする。
 そもそもオリジナルのは昭和50年に米朝師(当時50歳)が、中・高生向けに書いた落語入門書。だから今だったら岩波ジュニアとかちくまプリマーといった青少年向け新書のネタになるような本である。
 ではあるが、日常的に話芸に親しむファンの中にも、落語や講談や浪曲などの違い、それぞれの成り立ちについて、平明に簡潔に説明できる人はあまりいない。聴けば聴くほど、知らない人に質問される機会が増えるが、どう手際よく説明していいのか分からなくなってくる(符丁や隠語を並べ立てて適当にごまかすのは良心がとがめる)。だから、案外入門者というよりも、そうした年季の入ったファンのために役立つ本である。
 大まかにいって全四章からなる。
一 話芸としての落語
二 作品としての落語
三 寄席のながれ
四 落語史上の人びと
 なんといっても第一章の「話芸としての落語」が明快な演者からの落語論である。そして末尾に書かれた師・米団治から米朝師への「芸人になった以上、末路哀れは覚悟の前やで」は腹にこたえる。
 語りかける調子で書かれているので、一通り読むと「ああ、いいお話でした」で満足して本を置き、そのままにしてしまう可能性が高いが、それではまずい。役に立ちそうなところにはそのつど附箋を貼るとか、メモをとるとか、多少垢抜けないけれども、本への働きかけを読者から行わなければ勿体ない本である。話芸自体すでにそういうもので、えへらえへらと笑って聴くのももちろんいいが、メモをとりながら聴くとか(無許可の録音はよろしくない)、たとえ多少浅ましくとも、客の側から食らいついていく姿勢がなければ、得るものがない。ただの怠け者でうるさいだけの常連客で終わってしまう。そこから一歩前へ出ることを勧める本でもあるのである。

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真景累ケ淵

2007/02/01 18:59

ハテ恐ろしき執念ぢゃなぁ(続)

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 三遊亭圓朝の傑作怪談である。通常、落語や講談でよく抜き読み(長篇のため全編通しでは時間的制約があって上演できず、一部分を抜き出して高座にかけるが、それを講談の場合ならばこう呼ぶ)されるのは、発端部分にあたる「豊志賀の死」である。若い男弟子の新吉に執着する富本の師匠・豊志賀は、嫉妬と猜疑に苛まれて顔に腫れ物ができる奇病に罹る。新吉と豊志賀の間には、かれらの親の代からの因縁がまつわりついている。醜くなった大年増を振り捨てて逃亡する新吉を、豊志賀の怨念はどこまでも追ってくる。
 新吉は逃れる先々で、関わる人々との間に次々と惨劇を繰り広げていく。わけも分からず命を奪われていく人々はいい迷惑である。後半ではこの惨劇に巻き込まれた人々が酷薄な運命に抗して生きようとするけなげな姿が描かれる(「牡丹燈籠」のように、後半は仇討話であって怪談味は薄い。怪談としては「乳房榎」がやはり凄い)。どこかに伏線の張りっぱなしや、ほったらかしの登場人物がないだろうか、と勘ぐってみたが、そこは大圓朝だけにどうやらぬかりはないようである。近世人の人生観や倫理観を背後で支えた因果応報の世界が濃いタッチで描かれ、もとい語られる。
 笑えるものばかりが優れた落語ではない。こうした巧緻なストーリーテリングも落語の重要な意義なんである。物語自体より、ぞくぞくしながら圓朝の語りに聞き入った明治の寄席のお客たちの心理に、親近感と羨みとを感ずる。

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「不動産購入学」の参考書

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 冒頭に筆者が述べているように、人はおそらく誰でも一度は不動産契約をするのであるから、高校で「不動産学」を必修にしてもいいと言えるかも知れない(未履修に終わることなく)。少なくとも、「現代文」では、先生方のお好きな傾向の文芸作品をいつまでもありがたがってだらだら読ませるよりは、せめて契約書の正しい(賢い)読み方を教授すべきではないかとさえ、国文科出身者の自分ですら思う。
 この本は、もしそんな不動産の授業があったら、きっと優れた参考書になるであろうと思われる。基本は見開き構成で、右ページに不動産購入の基本的知識を文章で述べ、左ページに要旨をわかりやすく図示。また、そのプロセスで「賢い購入者となるための知恵=注意点、ポイント」を節々でプロの目から教えてくれるという、いわば「基礎からの不動産購入学」といった趣の本である。欲を言えば本文がスミアカの2色だったりすると「チャート式」っぽくってもっとノリがよかったのに。
 また、無駄のない実用書として緻密に構成されているが、その分、本としての愛嬌がやや欠けている(実用書にはそういう要素は不要かも知れないが、売れる本には必ず脇の甘さと引き換えに愛嬌というものがある。案外不動産物件というのもそういうものだったりして)。筆者が監修し、著者として知名度のある別キャラクターを立てる、あるいはイラストを増やして親しみやすくする、類書が多い中で目立つためには、思い切って左綴じの本文横組みという手も考えられる(日常の文書作成は概ね横書きだし、携帯のトリセツや「電車男」だって横組みだったのだから、読者には昔ほどの抵抗はないだろう。だいいち図表を入れた編集がしやすい)。そんなこんなで満点から星ひとつ引かせていただいたが、第二弾にも大いに期待します。

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小説の方法と認識の方法

2006/05/02 11:15

これで私は道を踏み外しました

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本は1970年初版で、私は78年・高3のときに、くにの駅前の書店で購入した。大学入試の準備をしないでこういう本を読んでいたのだから、今よりずっと自分は度胸があったか状況判断力がなかったのであろう。その後およそ30年にわたって、拾い読みしたり通しで読んだりしている。
 この本は平たく言えば「小説の書き方」を論じたものであって、2部に分かれている。
1.小説の方法について
 において、17世紀以降20世紀までの、海外小説の技法の歴史が具体例とともに概説される。どのように書けば、どのような効果を読者に与えるか、を、主にリアリズム小説の手法がどのようにして発達してきたかを述べることによって明らかにしている。この章は時代を追って記述され、また主要な作家達の人物像を、技法を通して知る「列伝」でもある。
2.認識の方法について
 では、言語学と哲学、心理学などから見た小説言語(表現方法)の諸要素を示すもの。こちらは小説を認識作用そのものであると規定し、前章のような「小説技法史」の体裁ではなく、立ち位置をさまざまに変えながら、どう小説の「ことば」が選ばれ使われるか=作家が世界をどう読みとるか、感じたり考えたりすることと言葉を発することとの関係が検討されていく。
 というふうな内容なのだが、大抵こういう本は外人が書いたものを翻訳で読む、と相場が決まっているところ、日本人が日本人のために欧米文学技法史を料理して講じてくれているというのが長所である。自分が小説書きになりたくて仕方がなかった10代のおしまいから20代のころは、1.ばかり繰り返し読んでいたが、編集やったりライターやったりしたあげくの今では、2.の方がずっと面白い。作家や評論家の書いた「文章作法」は、「書き方の教科書」というより要するにそれを装ったその著者のキャラクター本であったりするわけなのだが、この本はそういうものではなく、一応あくまで研究書である。だが書く者にとっては今もかなり役に立つと思う。

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日本の古典芸能 9 寄席

2006/03/25 20:08

演芸を真面目に語りたい人へ

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「藝能史研究會」による「日本の古典芸能」シリーズの第9巻。
落語・講談・浪曲といった「話芸」「寄席演芸」について、アカデミックな論文が現われたのはようやく昭和30年代になってからで、この本はそうした状況をふまえて、そうした芸を正面切って真面目に論じてみようという意図で「藝能史研究會」によって編集された初めての研究書である、と「はしがき」にある。大きく分けて「歴史と鑑賞」「芸態と環境」の二部に分かれている。
前者には、
話芸の歴史(関山和夫)
浪花節(中村幸彦)
江戸の話芸(永井啓夫)
大阪落語(肥田皓三)
寄席論(松島栄一)
後者には、
噺本(武藤禎夫)
江戸の寄席(延広真治)
上方の寄席(前田勇)
色物の世界(尾崎秀樹)
三遊亭円朝・明治期人情噺の限界(永井啓夫)
大衆文学への道・話芸と文芸の交錯(榎本滋民)
現代の寄席(加藤秀俊)
上方の芸談(桂米朝)
芸談・落語における(江国滋)
研究の手引(関山和夫・肥田皓三)
の各論文が含まれている。いずれも筆者のメンツといいタイトルといい、見逃せないようなもの揃いなのだが、個人的には榎本論文が話芸筆記の歴史、大衆小説史を知る上で役立った。「研究の手引」は、演芸ライター・コアなファンにとってきわめて有益。

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時代短編のお手本集

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 長谷川伸の40歳から63歳までの代表的短編小説を集めている。戯曲での股旅もののイメージが強いが、ここに収められた作品は武家社会を描いたものも含まれ、綿密に史料を吟味して書かれているため、森鴎外の歴史小説に似たテイストを持つものもある。
夜もすがら検校
天正殺人鬼
田舎小僧新助
入墨者の死
討たせてやらぬ敵討
敵討たれに
稲荷町中蔵
母を討つ敵討
戦国行状
三挺駕籠
笹喜三郎主従
鷹匠吉田平三郎
越路の手紙
涙痕二代
地獄の口
 「夜もすがら検校」は、時々講談として読まれる作品である。「入墨者の死」は、もっとも股旅もの戯曲に近い味わい。個人的な話になるが、「地獄の口」は、以前同じ永代橋崩落事件を扱ったものを私自身が書いたことがあり、どういう史料を使用したかがほぼ分かるので、長谷川伸の作話技法を知るのにもっとも都合がよかった。
 この事件(事故)は、一瞬で大量の犠牲者が出てしまう類のものなので、その日の模様だけを丁寧に書いても小説にはならず、むしろその後日談の方が話にしやすい。魅力的で史料も揃っているが、なかなか難しい素材である。「地獄の口」も、現代の目で見ると、サゲがあまりうまく効いていないようである。けれどもここは、これが書かれた昭和22年という時代の雰囲気を想像して読むべきであろう。

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