たんぴんさんのレビュー一覧
投稿者:たんぴん
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紙の本100万回生きたねこ
2005/08/10 14:38
死と生を考える本
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この本を手にとった時、私は16才の愛猫をなくしたばかりで悲しみの中でいました。どうして死んでしまったの。どうして助けてあげられなかったのか。どうして私一人を置いていってしまったの。心の中はそればかりでした。
この本を読み、私はうれしくなりました。まるで愛猫からのメッセージのように思えたからです。百回生きて、誰も愛さずにいることよりも、愛するものがいて死んだ方がどれだけ幸せかと。
私はこの本に感謝しています。
紙の本太公望 上
2005/08/10 14:29
天下はひとりのものではありません。天下の天下です。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「天下はひとりの天下ではありません。天下の天下です(後略)」
太公望が周王に会ったとき、周王の「天下をとるには、どうしたらよいのか」と言う問いに対して、太公望がこう答えという説話があります。この言葉を見たとき、今から三千年前の中国にはなんとかっこいい賢い人たちがいたものかと驚かされます。古代中国とは今の世の中よりある意味進んでいたのではないか、そんな気持ちにさえなるエピソードや、魅力的な人たちがこの本には盛りだくさんで、それを知ることができるのも大きな楽しみの一つです。
そんな説話を楽しむだけではなく、さらに、一族を殺され復讐を誓ったけなげな少年少女たちが、なぜ当時最も巨大な力を持っていた国である「商」を滅ぼすということができたのか。後に太公望と呼ばれる人間一人がどうしてそれができのか(それを周王になさしめることができたのか)。それが当時としても今でも鮮烈な出来事であるが故に、「太公望」の名は今でも広く、長く伝えられているのでしょう。著者の清涼な精神が伝わるような文章で、読者はその歴史の劇的な場面を目の前で見ているように鮮やかに感じ取ることができるでしょう。
紙の本銀のいす 改版
2006/10/27 22:10
すべての子供の頃に「出会って」もらいたい本です
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
小学二年のとき、整理の全くなっていない汚い小学校の図書室の棚から偶然ひっぱり出した「銀のいす」。その瞬間から私は「本」というもののとりこになりました。
それまでは、昔話やイソップ童話、子供向けアニメ、つまらないとは言えないものの、心にぐっとくるような物語には出会っていませんでした。
それは「ナルニア国物語」という七冊もののシリーズの、しかも途中の巻にあたるものでしたが、そんなことさっぱりと問題にならず、ワクワク、ウキウキ、ドキドキと読み進み、その後、数十年読んでなくてもその物語は心に残り続けていました。動物たちが話し、なんだか悪い人なのに魅惑的な緑の衣の魔女や、後ろ向きなことばっかりを言いみんなをヘキヘキさせる水かき足の泥足にがえもん、人食い巨人、囚われの王子など、際立ったキャラクターや、巨人の国や地下の国への冒険を含む躍動的なストーリーの輝きは、他のナルニア国物語を読んだ今でもピカ一の出来、なんじゃないかと思います(もちろん他のお話も大好きですが・・・)。作者のちょっと説教くさいとこ、そこも私にはツボでした。
感受性の豊かな子供の頃にこの本に出会えた幸せをうれしく思えます。だから 全ての人は、子どもが生まれたらこの本を買って、本棚にそっと「隠して」おくことをオススメしたい。そして、子供がいつしか古びたその本を発見し手にとった瞬間・・・新しい出会いが始まります。
紙の本さいごの戦い 改版
2007/01/10 22:48
「宗教の違いは、争いの理由にはならない」当然なのに真理です。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
子供の頃好きだった「ナルニア国ものがたり」。はるか数十年後、大人になって読み返した全巻のうち、一番驚いたのがこの「さいごのたたかい」です。
「キリスト教」「イスラム教」など一神教の多くは、他の神を悪魔だといいます。「ナルニア国ものがたり」は明らかに「アダムの息子」「イブの娘」「りんごの木」などキリスト教の影響下にありながら、作者のルイスはこの本で、例え正しい宗教をしていても非道なことをする者は悪魔の手に落ちる、例え間違った信仰をしていても本当の信仰は正しい神に通ずるというようなことを述べています。こういう考え方を誰もが持つならば、宗教の違いで起こる世界の全ての戦争はなくなるに違いない。いや宗教の違いでは争いは起こりえないはずなのです。
「ナルニア国ものがたり」を楽しむためには、キリスト教圏にすむ人の常識みたいなものを知ってなきゃ分からないのでは、と考えた子供の私がしたことは、「旧約聖書」「千夜一夜物語」を読むことでした。それを読んでも子供の私には何もつかめませんでしたが、それをきっかけに昔の神話みたいなのを読むのにハマってしまい「バイキングの神話」とか「ケルト神話」「ギリシャ神話」とか探しては読むようになりました。
一冊の本から、別の本にどんどん興味が拡がっていく、知的な探求や思想をたぐるということを教えてくれる本といえます。大人になった今も考え続けたい深い内容を含む一冊です。
紙の本馬と少年 改版
2007/01/10 21:59
親を愛せないないことは子どもにとってはひどい苦しみなんですよ、実は。
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私は7、8歳の頃、「自分の親はどうしてこう下品なんだろう、酒飲んで暴れたり、嫌なことばっかり言う人たちなんだろう」と、自分の親について日々疎ましく思っていました。けれども親に対してそんな思いを抱くのは自分が悪いのだ、だって周りの子たちはみんな親が好きみたいだもん・・と、自分を責めて私がおかしいんだと悩んでいました。
後から知ったことですが、小さな子というものはどんなに親がひどい親でも、親が自分にあたるのは自分が悪いと思うものらしいのです。例え虐待されてても他の人に言わなかったり、お母さんは悪くないなどと言うのもそのためです。もう少し大きくなれば、誰でも嫌いだとかあっちいけとか平気で言えるようになるのですが・・・
「馬と少年」は、そんな子供の私には一つの衝撃でした。「馬と少年」の主人公の少年もまた、親を愛そうとつとめてもどうしても好きになれなくて、気がとがめていたというのです。
「ああ、私と同じだなあと、別に親が嫌いでもいいんだな」と、心のどこかが軽くなったのを覚えています。「いつか私にも優しい上品なお父さんとお母さんが・・・」と夢見つつ、「残念ながら、これが本当の親だろうな、はあ」と冷静に見られるようになって大層楽になったものです。
作者のルイスがそういうことまで考えてこういう設定にしたのかどうかは知りませんが、きっとこの人なら考えてやったと思われます。ここまでのファンタジーを描ける人は、子供の小さな傷つきやすい心を忘れない人であったのでしょう。
本自体のストーリーにはほとんど関係ないこんなささいな一文に人の心は救われることもある。こういうことも「本の魅力」の一つですが、私にそれを教えてくれたのは多分この「馬と少年」でしょう。
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