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先月(2017年6月)

中村びわ(JPIC読書アドバイザー)さんのレビュー一覧

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー)

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本もこもこもこ

2001/03/19 13:00

字が読めない子どもでも、あらゆるものを読み取れる絵本。

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 アメリカで1930年代から1960年代ぐらいに発刊された絵本を古典と呼ぶならば、日本のそれは1950年代から1970年代ぐらいに刊行されたものということになるかと思う。
 
 子どもたちに良い絵を見せてあげたいという気概ある出版姿勢のもとに、洋画壇や日本画壇の巨星たちが力を貸し、何十冊ものキラ星のような絵本が編まれた。けれども、その中でもお話が昔ばなしや世界名作ではなくて、著者によるオリジナル作品ということに限るならば、数は結構しぼられてくる。
 日本の創作絵本の歴史は意外にも浅く、まだまだこれからだという感じであるはずなのに、少子化や出版不況、活況ある他メディアに対してクリエイター不足などといった理由で、はやくもその展開は頭叩きの状況を呈している。残念なことだ。

 国際的に活躍する現代美術の奇才・元永定正氏が、言葉の錬金術師とも言うべき詩人の谷川俊太郎氏と組んで作ったこの絵本も、そんな日本のエネルギーあふれる古典時代の1冊だということができるかと思う。

 見開きに1つか2つぐらい抽象的な言葉が書かれているだけ。「しーん」とか「もこ」とか「ぱく」とか「ぷうっ」とか…。
 理や意味を求める大人ならば、この短詩のような流れが宇宙の始原を表わしているだの、生命誕生の象徴のようだのとイメージしてしまう。
 けれども、紫色の地平からもっこり立ち上がってくるモノが、黄色からだいだい色、赤へと変化していったり、そのモノから出た突起物がポロリと落ちてふくらんではじける…という絵は、何にでも見えて「本当のところは何?」と受け手が考えたり感じるより仕方ないという抽象的なものだ。

 何にでも見えて、何でもないという、言葉と絵が作り出す不思議で幻想的な世界。五感や第六感を総毛立てて感じることに集中すれば、言葉で説明して意味をさがすこと以前に存在する、語りえないものの、その存在感の大きさを知って圧倒されてしまう。
 という具合に、構えて解説することももちろんできるわけだけれど、これを読んでもらった子どもたちは、総毛立てて集中までしなくても、そのままの自分で面白さを感じとってしまうし、言葉や意味のない国の豊かな広がりにいつのまにやら身を置いて、勝手にその素晴らしさを享受している。

 日本の輝ける古典絵本期のリーダーだった福音館書店の松居直氏によれば、「絵本は子どもに与えるものではなく、大人が子どもに読んであげる本。子どもたちは、大人の語りを聞きながら、絵からたくさんのことを読んでいる」ということだ。

 だが、この本を読んでもらった子どもたちは、絵からたくさんの語り得ぬものを読み取ったあとで、ひとことふたことぐらいずつ展開していく言葉なんぞいつのまにやら覚えてしまって、「こんどは読んであげようか」と親や大人にこの本を読んでくれる。
 そして、意味や理由を求める私たちに、語り得ぬものの存在とその大切さについて教えてくれる。そんなことができる絵本なのだよということを、私は5歳になる息子から教えてもらった。

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将来に不安をいだくサラリーマン諸兄に!運命を爆発させた芸術家のしなやかな生の構え。

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 この人がテレビに出れば、何をカマしてくれるだろうという期待で目を離すことができなかった。雑誌や新聞のエッセイやインタビューも、ハッとさせられる潔い言葉がいっぱいで、見つけると何回か繰り返し読んでいたものだ。

「芸術は爆発だ!」という名言がひとり歩きして、お笑いのタレントによく物真似されたりしていたが、この本は書名でもわかる通り、読み手の中に眠っているものを揺さぶり起こしてくるような刺激ある言葉で埋め尽くされている。

 忙しくて時間に追われていたり、不安や悩みに心を占められていると、型にはまった一元的な物の見方に凝り固まり、視野が徐々に狭くなって発想の転換ができなくなってしまう。
 そんな状態にあって、本を1冊読むぐらいで簡単にブレイクスルーできるはずもないけれど、その可能性が少しでもあるとすれば、それはこの本。きっとブレイクスルーへの糸口になってくれると思う。
 話し言葉そのままに語りかけるような文体ですいすい読める。
内容は「へえ」と立ち止まってよく考えたいものであるけれど。

 さて、その言葉の数々。
「自分に対してまごころを尽くすというのは、自分にきびしく、残酷に挑むことだ」
として、安全な道をとるか危険な道をとるかの選択では、いのちを投げ出す気持ちで、危険な道をとることを勧める。そして「運命を爆発させるのだ」…と。
 この決意は、太平洋戦争前夜の日本にパリから帰国した著者が、ヨーロッパでの体験をポジティブに生かすため、日本という自分と直接いのちのつながりのある場で人生を闘うべきと考えたものなのだということだ。
「システムの中で、安全に生活することばかり考え、危険に体当たりして生きがいを貫こうとすることは稀である。自分を大切にしようとするから、逆に生きがいを失ってしまうのだ」

 ソルボンヌ大学で哲学や社会学を学び、ジョルジュ・バタイユやアンドレ・マルローとわたり合った著者の語りは、突飛な思いつきでラジカルだという表層的な印象とは異なり、広い教養と深い思考と多くの経験から練り上げられたしなやかなものである。
発言は教育問題、いじめ、恋愛と結婚、家族関係などから政治・経済にも及ぶ。

「ぼくは、プライドというのは絶対感だと思う。自分がバカであろうと、非力であろうと、それがオレだ、そういう自分全体に責任をもって、どうどうと押し出す。それがプライドだ」
として、マイナスの面があればあるほど逆にファイトを燃やして、目の前の壁と対決する−−その闘う力を、ポテンシャルだと評価する。
「一度でいいから思い切って、ぼくと同じだめになる方、マイナスの方の道を選ぼう、と決意してみるといい」

 右肩上がりに数字を上げていく将来設計が描けない今、あえて後退する勇断で逆に自分自身のパッションを盛り上げようという彼の発想こそ、この社会が転換していくべき価値観の方向性を示している気がする。元気なパワーを浴びられる1冊なのだ。


 
 

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