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  3. H2Aさんのレビュー一覧

H2Aさんのレビュー一覧

投稿者:H2A

473 件中 91 件~ 105 件を表示

紙の本

クオ・ワディス 下

紙の本クオ・ワディス 下

2020/01/06 23:53

小説らしい小説を堪能させる

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この長い小説の中核にあって、作中で一番魅力的な人物はペトロニウスだろう。確かな審美眼は持っているがネロの側近として皮相に生きているように見えるが、政争に敗れても最後まで矜持を失わない。作者は古代ローマの高雅で爛熟した文化を、この人物に体現させている。一方でネロも、史実との矛盾はともかく、作者が歴史上の人物に材を得て、あらためて文学的に創造した狂気の皇帝像として見事。この暴君とペトロニウス、それから他の多勢の寵臣たちとの駆引きが物語を牽引する。一方で、キリスト教徒たちが濡れ衣を着せられた挙句、殉教していく姿が対照的に描かれる。ペテロ、パウロというキリスト教初期の聖人たちもその中にあるが、彼らを売ったキロンさえも教えに帰依して殉教を遂げていくように、その後ローマを支配していくための人柱となっていく。そしてウィニキウスは、捕らえられたリギアを救い出しシチリアで幸福な生活を送る。暴君のネロは狂気のうちに自害する。古代世界を現出させているようで、これだけ物語性を存分に味わえる小説を読んだのは久しぶりだった。

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紙の本

クオ・ワディス 中

紙の本クオ・ワディス 中

2019/12/31 14:07

心境の変化

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リギア奪還に失敗し深手を負ったものの、リギアたちキリスト教徒に赦されて逆に介抱を受けるウィニキウス。その心境に変化が生じ同じキリストの帰依を望むようにさえなっていく。そのさなかに起きたローマ大火で運命は大きく回り始める。ウィニキウスの心情をなぞるのに、丁寧な書きぶりだが何といっても惹き込まれるは抜群の小説作り。下巻に期待。

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紙の本

クオ・ワディス 上

紙の本クオ・ワディス 上

2019/12/23 21:47

ローマ世界が目の前にある

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悪名高い皇帝ネロの時代。爛熟を迎えたローマ社会が舞台でそこでの貴族の暮らしぶりが描かれる。貴族は大勢の奴隷に囲まれ何不自由ない暮らしをしながらも、一方で権力を追われる危惧を常に持っている。ウィニキウスという、軍人で若い貴族がけがをした滞在先でリギアという少女を見初める。彼の叔父で有力者で趣味人であるペトロニウスは甥の願望を叶えるべくネロにリギアを宮廷に召喚させ、ウィニキウスのものにさせようと画策。この陰謀はリギアと同じく勃興しつつあったキリスト教徒の力によって妨害されリギアは行方をくらましてしまう。ウィニキウスは怒り心頭し我を忘れるが、キロンという怪しげな人物に彼女を探させて遂にリギアを発見するのだが、それは秘かにローマを音売れていたキリストの使徒ペテロの説教の場でだった。
 ローマ世界に遊びつつ、次の巻へ。

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紙の本

ゴプセック・毬打つ猫の店

紙の本ゴプセック・毬打つ猫の店

2019/12/15 10:25

高利貸にも美学がある

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人間喜劇のあちこちに姿を見せるゴプセック(その娘のエステルも後期の傑作『娼婦の栄光と悲惨』で重要な役割を演じる)。この中篇はその高利貸を主人公に据えていて、意外に人間的な面を覗かせる(人間的、というのは、ひとつの高利貸という職業的な機能を体現しているだけではない、という意味で、情け深いとかいう意味ではない)。その彼にも論理があり、ある種の美学のようなものさえ持っていると感じる。そうしたことが若者の視点で描写されるものの、堕落した貴婦人の今わの際にある夫の遺産への執着は鬼神のごとくでいっそう凄まじい。金銭欲の怪物と言われた老ゴプセックが、夫の臨終の間際に演じられる修羅場の前では色褪せるほど。バルザックの面目躍如の傑作。もうひとつの『毬打つ猫の店』は既読。ちなみに水声社の訳よりもこなれているように感じた。

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電子書籍

電子書籍天空の約束(空の一族シリーズ)

2019/12/15 09:26

『雲の一族』の歴史

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歴史に見え隠れする捉えがたい『雲の一族』のたどった足跡をたどる。戦時中、周囲に忌み嫌われ迫害された一族の闇の歴史が明るみになる。戦争協力させられた親から引き離され子供たちを集め隔離監視するための学校に着任した新任の女教師の目線で、子供たちとの学校性格と、周囲の村人たちのいわれのない差別、偏見と憎悪。はしかの流行さえ子供たちのせいだと風評が広がり教師は子供たちを連れて逃避行に出る。この一篇だけでも読み応え充分。現代の一族は過去の苦い経験から身を潜めていたり、その能力をひた隠しにしているので、その子供たちには能力への自覚さえも乏しくなっている。「眠り姫」や「雲のアーチスト」として世に出るかすみ、微気候を操る建築家。みな個性的というよりむしろ没個性的で夜から隠れるように生きている。そうしたばらばらの存在が後半で次々につながって、一族としてのアインデンティティに到達する。この一族の物語をもっと読んでみたいと思ったのだが、書き込まずにあっさりしすぎているのがこの作者の欠点であり長所。他の作家なら、恋愛に発展したり内面に立ち入って行くのだろうが、川端裕人はそうした方向に行こうとしない。ただ、彼らの異能もおそらく科学の進歩とともに「無害」なものになり、一族は拡散して一般人の中に埋もれていくように予感されている。
 これは良かった。

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紙の本

わが秘密 人間の不幸,罪,救いを論じた散文の傑作

紙の本わが秘密 人間の不幸,罪,救いを論じた散文の傑作

2019/12/04 21:20

ルネサンス時代の対話篇

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ペトラルカ自身であるフランチェスコと、ペトラルカが私淑するアウグスティヌスの対話篇。アウグスティヌスと言ってもペトラルカの創作上の人物だから、歴史上の有名な教父もペトラルカの分身だ。アウグスティヌスの厳しい批判、ほんの少しの称賛もすべてペトラルカ自身の内面から出たもの。印象深いのはやはり第3日目の恋愛と名誉欲を巡って丁々発止の激しいやりとりが続く。いちおうの結論は出されるて、永遠の女性であるラウラと彼女に寄せた愛情もここで否定される。名誉欲の否定という形で、彼の詩人としてのキャリアも否定的に扱われるものの、最後の最後で、彼は目先の創作に当面没頭することを宣言するのが嬉しかった。それに全編にキケロ、セネカ、ウェルギリウスといったローマ時代の古典から多くの章句、詩句が引用されていて幻惑された。平易な日本語に訳された文章で素晴らしい読書ができたと思う。

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紙の本

10月はたそがれの国

紙の本10月はたそがれの国

2019/11/17 16:16

「ベスト」なのだけど

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ブラッドベリの前半キャリアを代表するであろう作品集。作品も粒ぞろいで傑作、佳作が多数。しかしこの短編集ではホラー色が強く、意外に生理的に嫌悪感を持たされそうになる場面がいくつかあった。そうしたことはブラッドベリ作品では初めてのこと。具体的に言うと『つぎの番』『使者』。それでもそうした嫌悪感すれすれの要素が恐怖感を煽っていて効果満点だし、他の作品にしても表現がいちいち決まっていると感じる。個人的にお勧めしたいのが『大鎌』。挿絵も相乗して素晴らしい作品だと思う。

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紙の本

日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で

紙の本日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で

2019/10/23 22:57

英語の世紀に

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英語が他を圧して「普遍語」になる世紀。著者は大変に悲観的な未来を予感している。さらにその徴候は至る所にあるという。ふだん使う「国語」は「現地語」と化し、叡智を求める者は普遍語で書き読むという言語の二重化が進んでいくと予見する。著者が奇跡だと言う日本近代文学とはそれほどすごいものなのか。そこに共感できるかどうかはこの本の評価するにあたっては大きな要素だが、それ以前に著者の指摘の多くは慄然とさせられることが多く、歴史の洞察には感心させられる。イエール大学に学び、ポール・ド・マンや、当時渡米していた柄谷行人に遭っていたという回想も普通のトリビアに見えるほど。文庫にもなっているようなので読んでみてほしい。

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紙の本

火星の笛吹き

紙の本火星の笛吹き

2019/10/23 22:35

日本語オリジナル短編集

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読んだのは徳間文庫版。それがちくま文庫から再刊される際に1篇を削り4篇を追加した。徳間文庫版を読んだのは随分昔だが今でも持っている。それはブラッドベリ初読というよりも心に焼き付いて手放すことができなかったため。内容はファンタジー、ホラー色が色濃く何といっても感性の瑞々しさが溢れているようだ。決して感傷的なばかりではない。個人的には『青い蝋燭』『草の葉』あたりがかなり気に入っている(結末は苦い)。出来不出来で云々するより、こうしたブラッドベリ初期の短編は、こうしたセレクションから漏れた落ち葉拾いのものも含めて、出来不出来があったとしても素晴らしいと思う。間違いなく唯一無二のもの。蛇足だが、ちくま文庫版で追加された4篇も、こんな作品もあったのかと感心させられた。まだ買えるうちに買うべし。

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紙の本

バビロン行きの夜行列車

紙の本バビロン行きの夜行列車

2019/09/24 22:04

独特の魅力が詰まった短編集

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どれも短い中にブラッドベリらしさが溢れている短編集。ファンタジー色はいくつか数えるほどのものにしか伺えないけれども、少し大人になってその中にある雰囲気や人物たちの言葉や心象を通じて浸される気分に酔える作品が多い。好みなのは「分れたる家」「窃盗犯」「覚えているかい?おれのこと」「目かくし運転」「いとしのサリー」「なにも変わらず」「夏の終りに」「木のてっぺんの枝」。どの作品も微妙な感情の襞を掬い取っているようで、日本語というフィルターを通してでもその文章の魔術によって独特の世界を形作っている。感傷的なところは後退しているものの、そうした観察眼や感性の鋭さは健在であったと感じた。久しぶりにブラッドベリの世界に浸ることができてかなり満足。

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紙の本

国際法

紙の本国際法

2019/09/17 23:18

国際法という弱いもの

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新書という制約上、内容にも理解しやすさに配慮しているとは言え、力の入った著作。国際法という曖昧な制度をその起源から説き始めて、そもそも「法」という確固としたものでなく、人間の生きた信念、理想が言葉として顕現され「規範」になって実際の世界に浸透していく過程を丹念に紡いでいく。もちろん明文化され強制力を持たないにせよ制度として機能していく側面もあってそこも目配りはされているものの、むしろそうでない側面に光を当てている。だから教科書的に箇条書きで教えてくれると期待していたら裏切られる。時には後退しながら、それこそカメのように少しずつしか進んでいけない現実に失望するのではなく、わずかでも以前より進歩した点も認めて肯定しようとする。諦めず、善意を信じて出来うることを模索する姿勢は現実への追従として非難できない真正さがある。結果的に遺作になったという点もあってどうにも甘くなってしまうが、立派な著作だと思う。

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紙の本

韓国人の歴史観

紙の本韓国人の歴史観

2019/08/13 17:15

好著

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この類の時事関連はいくら読んでもきりがないと感じることも多い。が、これは少し古いがよくできた好著。産経新聞ソウル支局長を長年務めて韓国事情に詳しい著者が韓国」側の理解も示しながらも、「反日」は彼らの劣等感とないまぜになった道徳的「優位」を確認するのに格好の材料だから、あちらのマスコミも右派左派問わず一致団結して取り上げ民衆に煽るのだと言う。政治家以上にマスコミこそが元凶だと指摘する。日本の降伏からちょうど50年にあたる「光復五十周年」記念でのかの国の反日ぶりは痛ましくも滑稽なほど。しかし著者の目は日本人自身が戦後抱き続けてきた贖罪史観にも向けられる。終章の『「日韓問題」は存在しない』は秀逸。韓国人は結局反日と言いながら、日本人は韓国に負い目を感じながら、それおれ自国のことしか見ていないと喝破する。これだけでも読む価値がある。この本は読めてよかった。

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紙の本

走れ!白いオオカミ

紙の本走れ!白いオオカミ

2019/08/10 23:07

動物文学の傑作

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飼い犬を殺してしまったオオカミのグレイを少年ラセットが連れて逃避行するという物語。赤ずきんちゃんなど童話で害獣のような扱いを受けていたオオカミの実際の生態が描かれている。父とラセットの関係も良い意味で放任主義で、息子にかなりの冒険をさせている。最後にラセットは自然動物保護区に辿り着き、グレイは新たな仲間に加わりラセットの元を去っていくが、その交感の場面は感動的。結局オオカミと少年は共生していくことはできないという厳しさもここにあるが、子供心にその感動が焼き付いた。

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紙の本

神々は渇く

紙の本神々は渇く

2019/03/26 01:16

恐怖政治の狂気を描く

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画家エヴァリスト・ガムラン。ある意味で純粋であった彼が革命の理想に心酔し、恐怖政治の当事者となっていく。善意からであったはずの彼の政治への奉仕は次第に狂気に染まってしまう。それを異様な迫力で描いた。無辜の人を断頭台に送り続けた挙句、最後にはロベスピエールやサンジュストらとともに断頭台に消える。その中でも彼は革命を否定せず逆に肯定さえする。
 小説としてみるとその他の登場人物、作者の分身とも思えるブロトや彼の母親、ロングマール神父など印象的な人物が多い。エヴァリストの恋人エロディは彼を狂気のさなかに甘い逸楽に導くが、最後にはエヴァリストから別の男性に愛の対象を変えてしまう。それが恋人への「裏切り」にはちがいないが、その生きるための卑怯さも含めて作者は否定せず肯定しているように見える。
 アナトール・フランスは世間で言われるように書生じみているどころか逆にしたたかな作家であり、ゆるぎない筆致で、精緻に構築されたこの小説は間違いなく傑作だ。

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紙の本

太陽からの風 新装版

紙の本太陽からの風 新装版

2019/03/22 22:27

クラークワールド

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SFの良い読み手とは言えないが、この短編集には作者の美質が詰まっていると思う。名作、佳作揃いでお勧め。どこがと言われると答えにくい。とにかくアイデアと、人間でなく世界そのものを描いているから、それに純度が高く、人間の自意識とは対極の世界があるから、ということになる。この短編集は取るに足らないものも含まれてはいるけれど、作者の美点がもっとも凝縮していると思う。

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