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juzenさんのレビュー一覧

投稿者:juzen

4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本

紙の本ノースライト

2019/04/22 16:57

ノースライトが降り注ぐ家は、家族の幸せにつながったのか?ミステリーを背景に、家族への愛に苦悩する男の物語が展開する

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

設計士青瀬稔は施主Y氏から「あなたの住みたい家を建てて下さい」という奇妙な依頼を受けた。そして信濃追分に幼少期の記憶にあった“北からの光「ノースライト」”を基本にしつつ、別れた妻が望んだはずの木造の家を完成させた。題名の「ノースライト」とは、主人公青瀬の幼少期、ダム建設の父親と住んでいた飯場のコンクリート造りの家に由来する。それは北からの光が部屋をやさしく包み込むような家だったと、青瀬は述懐する。しかしバブル期以降、得意としてきたコンクリートとガラスと鉄の建物から脱却するきっかけにしたかったはずである。物語はこの信濃追分のY邸から施主一家が忽然と姿を消し、その行方を追うミステリーをバックボーンにして進行する。青瀬は実質共同経営となる設計事務所で働き、やはり家庭崩壊の事情を抱える所長・岡嶋とともに、かつてパリで活躍した画家の生地における「藤宮春子メモワール」建設のコンペに向かって突き進む。ミステリーのもう一つの鍵は信濃追分のY氏邸に残されていた1脚の椅子だった。この椅子の作者で昭和初期に招聘されたドイツ人建築家ブルーノ・タウトを軸に、主人公青瀬稔とY氏とのつながりがラストにおいて明らかになる。作家が描きたかったのは、おそらくは家族の幸せであり、青瀬と岡嶋とY氏の3人が同じく崩壊した自らの家庭の再生と妻や子供たちへの愛情の注ぎ方への苦悩だったのだろう。家とは言うまでもなく家族を育む入れ物であり、その延長線上に最後に造られるはずのものであり、そこには夫として父としての悔恨の想いも伝わってくる。最終場面で青瀬の亡父の事故死がブルーノ・タウトを介してY氏の亡父との驚くべき接点が明らかとなり、Y氏が姿を消した理由が明らかにされるに至り、さらに驚きは広がる。青瀬の離れて暮らす娘への愛惜の情は深まる。一方、病室から転落死する岡嶋の遺児へ「尊敬すべき父親像」を何とか残してやりたいと奮闘する青瀬の友情など、この作品は建築設計の世界を題材にしてはいるものの、「家族とは何か? 崩れつつある家族の再生は可能なのか?」という命題を突きつけている。

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紙の本

紙の本マチネの終わりに

2019/04/09 16:41

運命に翻弄される大人の男女の恋愛小説。ノンフィクションか小説か?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ある種もどかしい不惑の歳の大人による恋愛小説。東京、パリ、バグダッド、ニューヨークにまたがる演奏家とジャーナリストが織りなす心の内面が丁寧に描かれています。運命の織りなす糸に操られ、流されていく状況が映像を見るように綴られています。イラク戦争という時代背景も踏まえながら別々の結婚と離婚に至ります。私たちは今まで「過去は変えられないが未来は変えられる」と教えられてきましたが主人公がかつて言った「過去は変えられる」という言葉がヒロインの心の奥に最後まで沈殿し続けていたのがこの小説の一つのテーマだったのかと思いました。運命に翻弄されながら、二人が出逢ってから5年後の再会が、まさに演奏会の「マチネの終わりに」実現したとき、それまで小説全編に流れていた数多(あまた)のクラッシックの名曲が一瞬無音になり、今終わったばかりのニューヨークのコンサート会場の外庭にたたずむ2人のツーショットが映画のストップモーションのように私には見えました。実に切なく、またしみじみとした恋愛小説です。

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紙の本

紙の本わたしだけのアイリス

2019/04/16 20:00

華やかな女性写真家が、致命的な病を抱えつつ再生する物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アイリス(Iris)──眼球の中の虹彩のこと。人気ファッションフォトグラファーでありながら、「虹彩=レンズ」に病を持ち、徐々に進行する色覚異常により生き方を変えざるを得なくなる34才の女性主人公。作者が映像関係の出身の人であることに興味を持ったのが一つと、小説の各章の題名が「色名」で建ててあることに興味をそそられて読みました。各ページにいくつもの「色名」が出てきて、おそらく全文では数百種類に及ぶ「色名」を知ることになります。本編の始めに「色温度」の話が出てきます。私もこの主人公と近い境界領域での仕事をしていたこともあり、もう25年くらい前、MacintoshのPCにモニターを接続するときに「白色」は6500K(ケルビン)に設定したことを思い出しました。物語は、フォトグラファーを諦めたヒロインが病気の進行に合わせて、確執を抱えていた母親もろともに一度は捨てた故郷・長崎へ舞い戻り、過ぎ去った日の恋心を確かめたり、新たな人生をつかむために、正にキリスト教徒のごとく長崎からフランスへ、そしてイタリアへの「巡礼の旅」をする、そして新たな人生を回復させる物語でした。映像が目に浮かぶような小説です
。作者のモチーフとなった遠藤周作の「沈黙」記念館が長崎にあり、本小説のスタート地点だったようです。

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紙の本

紙の本ある男

2019/04/09 18:00

IDをやたら求められる現代、私たちのアイデンティティーとは何か

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

一見、ミステリー小説かと思われるタイトルでしたが、限られた登場人物と物語の構成は前作「マチネの終わりに」と同様に丁寧に描かれています。過去をどうしても消したくて他人の戸籍と交換し、その後の人生を他人として生きていくという、一見、荒唐無稽な物語のように見えます。しかし、私自身も過去に弁護士に相談を持ちかけた際に「世の中に戸籍の売買なんて結構ありますよ」と聞かされて驚いたことがあります。この小説には『「別の人間として過去をもう一度生き直す」ことができれば、その人は幸せになれるのか?』というテーマがあると思います。私たちはこれまでは「過去は変えられないが、未来は変えられる」と教えられてきました。これは偶然なのか、作家自身のテーマなのか、はたまた私の読みが浅いせいなのか分かりませんが、前作「マチネの終わりに」で挙げられていた「過去は変えられるのか?」というテーマに共通する作者の意図が私には重なって見えたような気がしました
。もう一つ、両作品とも短い断り書きといった体の「序文」が付いていますが、両作品ともこれが何故必要なのか?と素人目には思ったりしたところです。私はこの2作品しか読んでいませんが、2作品に共通してラストの描写は優しさに溢れていました。

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