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えんぴつさんのレビュー一覧

投稿者:えんぴつ

38 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

バックムーン

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

7月の満月は、バックムーンBuck moonというらしい。

教授は、Buck moonとなっているだろうか。

「音楽は自由にする」の後の教授は、淡々と、己を語る。

以前は、ミュージシャンとしての側面しか知らなかったことを恥じたいほど、改めて教授を知った気がする。

言葉を以って教授を語ることなどおこがましい。

言葉によって語られた「坂本龍一」をしっかり受け止めたい。ニューヨークの自宅の庭に置かれた朽ちゆくピアノを思う。日々、そのピアノを見ていた教授が先に朽ちた・・・・のか。ピアノはそれを知っているのか。

その昔、映画「シェリタリングスカイ」を観て、ポール・ボウルズを知り、全集を買って、読んだ。

「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」と、教授はボウルズに回帰したのだろうか。

人が終わる時、人はこのように静かに己を己に引き寄せることができるのだろうか。

ナンシー・ウッドの「今日は死ぬのにもってこいの日」に触れていて、さっぱりした諦観には憧れがある・・・と言っている。

ナンシー・ウッドは「今日という日は贈り物」とも言っている。教授は、自身の贈り物の日々を終えた・・・。読後、淋しさと、そしてそれと同じくらいのあたたかさ感じた。淡々と、静かに・・・私は教授を思いたい。

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紙の本

紙の本音楽は自由にする

2023/06/26 08:50

そうか・・・

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

教授、特にファンだったわけではないけれど、やはり同世代を生きた仲間だったんだ、とあなたが逝ってしまった後、しみじみ思う。

早稲田大学在学時、新宿高校から芸大へ進み、音楽は必ずしも音大で学ぶものではないかもしれない・・・と悩み、芸大を中退し、早稲田に入りなおした同級生がいた。新宿高校は学園紛争があり、共に芸大に進んだ仲間がいて・・・云々・・・と言っていた。後から思うとそれは教授だった。

学年では二つ上になる教授は、安保法反対の国会前デモの時、実際にその場に立たなくても音声メッセージ等を寄せて、ボソボソという声が流れた。

闘病中のニュースが流れ、なかなか難しいという話が聞こえてきて、あたかも親しい仲間のことのように受け止めて「頑張れ!」と独りごちた。

神宮の自然を守ろうと呼びかけ、あたかもそれが遺言のようになって静かに目を閉じた教授は、やはり仲間だった。

あと何回、満月を見るだろう・・・淋しさがつのる。

そうか、教授は満月の時に現れるのかもしれない。

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紙の本

紙の本心は孤独な狩人

2023/12/13 10:21

愛すれど心さびしく

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

十代の頃、高校生の私は「愛すれど心さびしく」という映画を観た。多分、タイトルに惹かれて観たように思う。細かいところは覚えていないが、シンガー自死してしまうことに「何故、どうして!」と胸が苦しくなった記憶がある。

記憶の彼方に忘れていたその映画が、マッカラーズの「心は孤独な旅人」を原作とするものであったことに、50年以上経った今、気がついた。そうか・・・そうだったのか。満を持して翻訳したとされる村上版「心は孤独な旅人」を待ち望んでいた私は、ようやく読めるか、と読み進めるうちに、アッと気がついた。これは「愛すれど心さびしく」だと。

23歳でのデビュー作だというこの作品は、その深さ、清新さ、同時に時代背景を伴う重苦しさ等々、何という内包性・・・。

一気に読了とはいかなかった、いやそういう読み方はしたくなかった。ひとつひとつのエピソード、ひとりひとり心のさみしさを感じながら、じっくり読んだ。村上春樹がこの作品を大切にしてきたということがよくわかる。

それぞれの人物の心象に思いを致すことは、大きな眼を持つマッカラーズの心の孤独に思いを致すことになるのだろう。23歳でこの作品を物した彼女の苦悩を考える。

開高健は、よく「わが心はさびしき狩人」と揮毫した。わが書棚にもある。開高健は、マッカラーズに共鳴したのだろうか。知る限り、マッカラーズについて書いた開高の文章は見当たらないが、読んでいたのだろうとも思う。

語学力がないのが残念・・・原書で読んでみたいとしみじみ思った。あの時代、23歳の彼女の大きな眼は何を見ようとしたのだろう。

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紙の本

紙の本地下鉄道

2022/10/17 09:40

差別って何だ!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アメリカ社会の差別は、表向き60年代の公民権運動でほぼ改善されたというのは誤りだ。現実はなかなか変わらない。むしろヒスパニック系、アジア系への差別が顕在化して、状況はますます混沌としている。ブラック・ライブズ・マターのうねりが起きて、声を挙げやすくはなったのかもしれないが。

その昔、ビートルズが初めてのアメリカ公演を行った際、アメリカでは白人席、黒人席が分かれていて、入場口も別であること知り、この区分けをなくさなければ、公演を止めるとクレームをつけ、人種による席の区別が撤廃されたことをご存知だろうか。

地下鉄道という設定がまずユニークだし、悲しみを乗せた鉄道で逃げるという発想が、よくよく考えれば切ないではないか。

物語はスピード感を持って進む。しかし、現実はどうだ。

一気に読んだ。

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紙の本

ボールドウィンの悲しみ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

一気に・・・とはいかなかった。エディ・S・グロード・ジュニアの中のボールドウィンを慮り、そしてボールドウィンの悲しみと苦しみと、たくさんのブラックアメリカンの慟哭が聞こえてくるようで、読み進めながら、己はアメリカ社会の嘘、ホワイトアメリカンの「正常」を本当には理解していなかったのだと気づき、愕然とすることしばしばだった。

南北戦争が人種差別撤廃のための戦いではなかったことは、もはや周知の事実ではあるが、ブラックアメリカンを「アメリカン」と呼ぶことを是としないホワイトアメリカンが大勢いることの「正常」を認識できないでいることの怒りと悲しみ。

ボールドウィンを初めて読んだのは「巷に名もなく」だった。受けた衝撃を忘れることはできない。

エディ・S・グロード・ジュニアが、本作を著したこと、ブラック・ライブズ・マターのうねりが起きたこと、これはアメリカの病がまた顕在化したことの表れであるように思える。

映画「私はあなたのニグロではない」の映像が蘇り、そして、ボールドウィンの苦悩を改めて重く受け止めなければならないと感じ、本書を手にしながら過去に読んだ書物をまた取り出し・・・と行きつ戻りつしながらこの本に向き合った。

「もう一度始める」のか、「もう一度始める」ことはできるのか。

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紙の本

ブロークン・ブリテンに聞く!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ブレイディみかこの本は、読みながら、そうかそうか、そうだそうだ、そうなんだよな・・・と思う。

ブライトンから発するみかこ通信は、日本で本になると、まさに今、日本で起きてることと同じじゃん!・・・と感じることが多い。英国から一周遅れで来たー!と思う。

英国のいわゆる地べたの生活が、日本の地べたと重なる。ケン・ローチの映画で衝撃を受けたことが、今、日本の現実になっていることに愕然とする。

本音で語るみかこ通信で知る英国の現実は、明日の日本だ。ファッキンブリテン、ファッキン日本か・・・。

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紙の本

紙の本JR上野駅公園口

2022/11/22 09:48

柳 美里を見つけた

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柳 美里の作品をちゃんと読んだことがなかった。東京キッドブラザースの活動、ややエキセントリックなイメージが先行し、何となく食指が伸びなかったのである。

以前、瀬戸内寂聴さんが「柳美里、あれはいいですよ」話しているのを聞き、そうなのかな・・・と思ったものの、そのままになっていた。本作が全米図書賞翻訳部門受賞したことをきっかけに、手に取った次第である。

結果、柳美里を見つけたと思った。

今、彼女は福島県の相馬に拠点を起き、活動している。
(福島県との接点は、彼女の祖母が、戦後、新潟県との県境の会津・田子倉ダム建設に携わった多くの朝鮮半島出身者相手の店を開いていたからかと思っていたが、そうでもなかったようだ)

福島県の浜通り地方の出稼ぎ者の話である。出稼ぎ者は、好きで出稼ぎするわけではなく、地元で食えないから都会へ出るのである。方言を交え、出稼ぎに出なければならなかった人たちの苦悩を淡々と書き切ったと思う。相馬地方の人たちの多くは富山方面から移ってきた等々、柳田国男の山びと論考にも派生するかのような記述も見られ、柳氏が、丁寧に調べられていることが伺えた。

その昔、多くの「金のたまご」たち、多くの出稼ぎ者たちが、帰りたくても帰れない思いを抱え、ふるさとの訛りを懐かしみ、上野駅に集っていたという話を聞いたことがある。地方への出発点は全て上野駅であった。

すっかり様変わりしたおしゃれな上野駅の姿からは想像できない悲しみが見えた。

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紙の本

紙の本帰れない山

2022/11/04 10:20

帰ろう

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原題は「8つの山」、8つの山とは何だろう・・・とまずタイトルから惹かれた。

静かな作品である。
僕は、回想する。僕と、僕たちと僕たちの山の生活を。

新しい山岳小説と評した人がいる。しかし、山岳小説と規定してしまうことはどうだろうか。この作品は、僕や、僕の家族やブルーノの話で、山は、人とは超絶したところで、そこに在る。

須弥山と八つの山、そして海・・・・。

映画化され、日本での公開も決まっているらしい。北イタリアの山はどう描かれるのだろう。ブルーノがなりたかった山の人は、どう描かれるのだろう。

寡黙で、しかし多くを語ってくれた作品だ。

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紙の本

紙の本本を読むひと

2022/10/15 12:05

優しさ

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ジプシー、ロマの人たちへの暖かい優しさに溢れた一冊。

フランス・ロマの話で、ガトリスの映画のシーンを思い起こし、楽しく読了した。ロマの人たちへの偏見や生活の問題等々、随所に記されているが、サラリと触れられていて深刻な指摘になっていないところがむしろ心にしみる。一人ひとりの人物像がよく書き分けられていて、ロマの「家族」の姿が彷彿と見える。

「 」のない会話文は、文章の流れの中ですんなり入ってきて違和感はなかった。

この作家の作品は、他に翻訳されていないようだが、他作も読んでみたい。

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紙の本

あの日

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

50年前・・・1972年、私は早稲田大学の1年生だった。秋、サークルの合宿から帰京した翌日、キャンパスはざわついていた。「2年生の男子学生が殺された!」・・・11.8が起きた。その後、連日の革マル吊るし上げの徹夜集会等々・・・。川口君はノンセクトだった。革マルや民青の横暴に批判的な学生は多かった。声をかけられて連れて行かれたら危ない・・・私も含め、そう思っていた学生は少なくなかった。川口君は、なぜ行ったのか、悔やまれてならない。樋田氏は、諸々、忸怩たる思いを抱えてこの本を書いたのだろう。11.8は私の脳裏に深く刻まれている、決して忘れない。川口君に近かった樋田氏はなおさらのことだろう。今回、この本によって新たに知ったことも多い。あの時代、70年安保、沖縄問題、ベトナム戦争等々・・・多くの学生が抱えていた「時代」への挫折と希望・・・そんなものが一気に蘇ってきた。

連合赤軍事件以降、「総括」という言葉には嫌悪感を持つ。リンチ、吊るし上げ・・・総括。この度、この本によって、本当の意味で、私は私の学生時代を総括するのかもしれない。

川口君リンチ殺人事件というものがあったということを知らない早稲田の学生も多いと聞く。若い人達に読んでみてほしい。

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紙の本

紙の本三度目の恋

2023/10/30 09:13

川上ワールド

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「三度目の恋」は、昔の章 昔昔の章 今の章と続く。

まず、高丘さんと出会う。高丘さん・・・おや、高岳親王が出てくるの?渋沢龍彦かい?・・・とインスピレーションががはたらいた。案の定だった。

吉原遊女あり、薬子あり、在原業平あり・・・川上ワールド全開である。

川上弘美は、楽しんでいる。伊勢物語の世界に、己を重ねて。なんだか得体のしれないナーちゃんを一方の軸として自在に揺れる。

ゆらりゆらりと三度目の恋を求める今の章。その後に来るのは未来の章ですか。

待ちましょう、続編を。

これはひとつのお伽噺です。

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紙の本

紙の本母の男言葉

2024/03/23 09:21

やさしさ

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伊集院静は、最後の無頼作家、飲む打つ買うの男・・・等、何だかその巷間言われているイメージが良くはなく、長いこと著書を手にすることはなかった。ところが、ひょんなことから「母の男言葉」を読んだら言葉から滲み出るかのような「やさしさ」に打たれた。

男が惚れる男という言葉があるが、彼はまさにそういう人だったに違いない(女性にももてたようだが)。

朝鮮半島から渡ってきた父親、それを支えてきた母親の影響が強いのだろうと思う。

庭の草花、室内に生けられた花々に向ける繊細な視線に驚いた。人に対する視線もまたしかり。

遅まきながら伊集院静の小説を読んでみようと思った。もっと早く読めばよかったのか・・・と後悔。

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紙の本

紙の本少年H 上巻

2024/03/15 09:13

たくさんの少年H

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妹尾河童の「少年H」は、たくさんのH少年の物語だ。自伝ともいえるだろうが、しかし肇少年に託されたたくさんの少年の顔が見える。

子供目線で鋭く描かれたあの時代にハッとする。「公」の歴史からは見えにくい少年の「眼」が、語る。

出版当初、事実とは異なる記述があると批判する向きがあったというが、明らかな事実誤認はともかく、H少年の「あの時代」を私はズシンと受け止めた。あの時代に子供だった大人は、だんだん彼岸へ行ってしまい、そして・・・今、また、何となくきな臭い風潮が蘇っている・・・感じるところ多し。

今の少年たちは、この本をどう読むだろう。読んで欲しいと切に思う。

H少年と同世代の親を持つ私は、H少年を通して改めて両親の青春を体験した。

貴重な大切な一冊である。

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紙の本

紙の本マンチュリアン・リポート

2024/03/09 08:48

浅田次郎はロマンチストか・・・

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張作霖爆殺は、日本軍・関東軍の成せることであったことは、もはや誰しもが知っている歴史的事実である。これを「マンチュリアン・リポート」に昇華させた浅田次郎は、ある種のロマンチストであると感じる。

天皇の特命を受けて大陸へ渡り、事件の真実を探るというありえない展開、「報告書」と「鋼鉄の独白」を交互に筆を進める構成は、その発想が秀逸だと思う。鋼鉄=機関車は淡々と歴史に組み込まれ、語る・・・語る・・・。

事実と虚構を組み合わせて一つの作品にした浅田次郎は、張作霖という歴史の怪物に共感するものがあったのではないか。大陸の闇から這い上がった張作霖とちっぽけな島国日本のみみっちい陸軍・関東軍、その暴走を止められなかった政府あるいはお飾りの国家元首。

作品としては、あるいは深みに欠けるとは思うが、少しの皮肉を内蔵して、浅田次郎は歴史を語る。
佳作だ。

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紙の本

紙の本紙の月

2024/02/15 13:34

隙き間

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この作品は、特別な女性の話ではない、もしかしたらMe too・・・かもしれない。
誰の心にもふとした隙き間、落とし穴があるだろう。梅澤梨花だけでなく、彼女の周りの女性たちの誰しもが「梅澤梨花」になり得るとは思わないか。気の緩み、ポカッとあいた心の穴に、自分ではまったことに気づいた時はもう泥沼。

事件化した使い込み事象には個々の理由があるだろうが、もがき足掻く時は、もう手遅れ。何だか皆哀れだ。確たる悪意を持って事に及んだ人はいるのだろうか。
角田光代が描き出した女性たちは皆寂しい。

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