マルクス・アウレリウスさんのレビュー一覧
投稿者:マルクス・アウレリウス
グノーシスの神話
2023/12/30 00:50
第一人者による素晴らしい仕事
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
グノーシス研究の第一人者が様々な文献から抜粋、紹介、解説してくれる、時代的、空間的にも幅広いグノーシスの世界をかなり手際よくまとめてくれている素晴らしい仕事と言えよう。グノーシスというのは、その名称とは裏腹に、あまり知性的とは言えず、むしろそう偽装しているためなのか、とにかく文献は難解というか、晦渋というか、素直に読んでも言いたいことがよくわからんのだが、その辺を上手く著者が解説してくれているため、何とか理解が進み、興味が持てるようになっており、流石の手腕と唸らされる。この本で少し自信が持てたら、さらに他の本や原典に当たってみよう。
グノーシス 古代キリスト教の〈異端思想〉
2023/12/30 00:31
グノーシス入門としてオススメ
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
グノーシスは非常に幅が広く、時代的にも長きに渡る思想傾向、運動であり、捉えどころがなく、どこから手を付けてよいか分からず、結局放り出してしまう、というような事になりかねないが、この本では叙述をウァレンティノス派、バシレイデース、マルキオンの3つに主に絞って紹介してくれているため、わかりやすく、入り口として申し分ない。この本で少しグノーシスに理解や興味が持てたら、勇気を持って、この思想の残した大海に漕ぎ出してみよう。きっとそう思わせてくれる力のある本だと思う。
古代ローマごくふつうの50人の歴史 無名の人々の暮らしの物語
2023/04/03 20:30
日の当たらない歴史に光を当てた本
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
タイトルにあるように古代ローマのごくふつうの人々の暮らしに光を当てた本。碑文や史料に基づきながらも平易な解説で生き生きと甦ってきて秀逸。一部にごくふつうとは言い難い人や、そもそも人でない紙や動物も含まれるが、そこはご愛嬌。一般の歴史書ではあまり取り上げられない世界を覗き見できるのが心地良い。古代ローマの生活史の本は他にもあるが、個々に取り上げられているものは少なく、知的好奇心を満足させてくれるだろう。
マルクス・アウレリウス 『自省録』のローマ帝国
2023/02/10 04:39
読みやすい
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政治や戦争に明らかに向いてないにもかかわらず、皇帝として人間として誠実に懸命に取り組み、苦闘した生き方が見えてくる。ストア哲学者としての一面を意識的に過小評価しているように感じるが、オタク的とも言える哲学への傾倒と実践は、この人物にとって決定的に重要だったことは、彼自身の「自省録」と虚心に向き合えば、否定することはできないと思う。その上で、彼を取り巻く多彩な人物や、パクス・ロマーナの繁栄に翳りが見え始める当時の時代状況など、他の歴史的要素が彼に与えた影響を考えさせてくれる。「ローマ皇帝群像」を筆頭に貧弱な史料残存状況が残念だが、それらを駆使して鮮やかに手際良く見事にまとめ上げられた1冊。
2024/07/14 21:27
深まる姉弟の対立
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いよいよ姉弟の対立がのっぴきならない所まで来た。皇帝アレクシオスがついに亡くなり、ヨハネスが皇帝即位。アンナがいかに聡明だとしても、ヨハネス後継は既定路線であり、そもそも難しい企てだったのではないかと感じてしまうが、まあ、色々な意味で規格外の人物だったのだろう。漫画もシリアスなシーンが増え、個人的にはニカイア府主教エウストラティオスの失脚に、ギリシア古典を愛する者として哀しみを感じた。
アンナ・コムネナ 1 (星海社COMICS)
2024/03/21 21:15
ビザンツの女性歴史家!
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こんなマイナーな人物がマンガになるとは!商業的に成り立つのか心配だが、フルカラーという贅沢な仕様、4コマという読みやすさ。「うたえ!エーリンナ」が素晴らしかったので心配ないかな。アンナへの愛と敬意にあふれている。普通に気楽に読めるし、史実にも目配りが細かい。続刊にも期待!
ファイティング・ファンタジー 6巻セット
2024/03/05 05:20
スティーブ・ジャクソンの新作!
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ソーサリーと新作サラモニスの秘密という豪華セット。ジャクソンのゲームブックの世界を存分に楽しめる。待望の新作にはジャクソンらしいアイデアや新機軸があり、小説を手掛けたためか文章も長く、背景世界などの厚みも感じられ、読み物としても楽しめる。続刊BOXセットも企画されているとのこと。是非未邦訳のFFシリーズの新訳を期待したい。
大ピンチずかん 1
2023/12/24 20:27
息子が大ウケ
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あるあるの大ピンチが満載。絵も絶妙に可笑しい。息子(小2)は爆笑、妹(47歳)も絶賛。老若男女楽しめる平和な時代の平和な本。
古代ローマ人は皇帝の夢を見たか アルテミドロス『夢判断の書』を読む
2023/10/12 01:48
マイナーだけど素晴らしい
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アルテミドロスという著者も、「夢判断の書」という作品もマイナーで、この本が商業的に採算取れるのか心配になるが、中身は面白い。タイトルの内容は最後に少し出てくるだけだが、サブタイトルの通り原著の副読本としては秀逸な出来だ。原著はまさに奇書、迷信のオンパレードのようで、楽しいと言えば楽しいが、読み通すには忍耐も必要だが、この本を読めば、原著のバックグラウンドとしてのローマ帝国セウェルス朝から五賢帝期の小アジアの中の上くらいの階層のギリシア人の社会、生活、文化、宗教や考え方などが生き生きと浮かび上がってくる(これもまたマイナーだが)。だがこういった小世界を掘り下げて考える事ができるのも奇跡のような素晴らしい体験ではないだろうか?プラトンやソポクレスを読むのとはまた違った読書体験ができる。
2025/04/13 04:21
楽しい読み物
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英雄伝と言えばプルタルコスのそれが有名だが、こちらの英雄伝も楽しい読み物。文章は平易で、内容は歴史的にも思想的にも文学的にも深みはないが、無条件に肩の凝らない楽しい読み物となっており、これはこれで素晴らしい。このようなマイナーな作品を、日本語で読めるのはうれしい。訳者と出版社に感謝。
2025/03/20 22:52
荒唐無稽なアレクサンドロス・ロマンス
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わずかな史実のバックボーンに、伝説や想像力に富んだファンタジーを肉付けしたというか、盛大に盛り付けた闇鍋みたいな書物。奇書と言って差し支え無かろう。明らかなアナクロニズムや史実に対する無知・無頓着・曲解・誤認が至る所に見られるが、それもご愛嬌。初めから楽しい読み物として読めば、無条件に面白い。アッリアノスやプルタルコス、クレイタルコスと読み比べるのも楽しい。アレクサンドロスのカリスマが、様々な伝説を生み、民衆に長く支持されてこのような物語を現代にまで伝えた一因であろう。
2025/01/07 03:15
トロイア戦争別伝
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こんなマイナーな伝承を、日本語で読めるのがうれしい!訳者に感謝!別の角度から見たトロイア伝承は、王道のイリアス、オデュッセイアと比べると大変興味深い。そして、トロイア伝説は、様々なバリエーションが溢れ出てくる、汲めども尽きぬ泉なのだ、とあらためて感じさせる。
2025/01/07 03:09
トロイア戦争の全貌を語る
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イリアスだけでなく、トロイア戦争前史から後日譚までを語り下ろした力作。何と多くのエピソードがあり、またそこから生まれたさまざまな文学や芸術があることか!と実感させられる。
2025/01/07 03:02
トロイア戦争についてより深く知りたくなる
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最新の研究成果も踏まえて、トロイア戦争について真摯に考察した良書。イリアスやギリシア悲劇でおなじみのトロイア戦争について、さらに色々な角度から考えたり、古代の歴史や神話にも思いを馳せることができる。
2024/09/19 00:50
ナキア王妃恐るべし
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ナキア王妃執念深いな。息子でさえも目的のためには道具として使うことに躊躇いもない。隠し子騒動なんかもあるがまだ可愛らしいとさえ感じる。