katoktさんのレビュー一覧
投稿者:katokt
2001/10/27 21:46
一年有半・続一年有半
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毎日ジャンクフードを食べてるとあごが弱っちゃうように、あまりに歯ごたえのない本ばかり読んでると、頭が弱っちゃうので。
習う漢字を少なく少なく、簡単に簡単にするのは、最近の教育の流れのようで、いろいろな理由付けはできるんだろうけども、古人がそれにふさわしく作り上げてきた表現・漢字をあっさりと削って行くその姿勢は、結局そのうち日本語廃止して英語で教育しましょうって簡単に言い出すことにもつながるような気もしないでもない。いまひとつ日本人であることに敏感になったほうがいいのではと。
まあ日本語の根本が漢語であることは、紛れもない事実なわけだし、漢語と自由思想の稀有な邂逅である本書を手にとりましょう。初出
紙の本地上 地に潜むもの
2001/10/27 21:41
宣伝文句につい手にとるが
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『栄光なき天才たち』でもとりあげられているし、その宣伝文句が秀逸でつい手にとらせる。あまりにくやしいから再録しておこう。「げに「地上」に見えたる萌芽より云えば、そこにはバルザック、フロオベルの描写が、生活否定があり、ドストイエフスキイ、トルストイの主張が、生活肯定があり、プルゼエの心理学があり、ゾラの社会学があり、そのほかのなにがあり、かもがあり、殆んどないものがないのである」
萌芽は、見る人の「見たい」って気持ちの中にあるものだからなぁ。初出
紙の本だれが「本」を殺すのか
2001/10/27 21:36
ざっと読んでおくくらいで
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ひととおり現在の本をめぐる状況や支えている人、エピソード(どうしてジュンク堂って名前がついたかとか)について知っておくにはよい本。ただどうしても作者の視点が低すぎて、それ以上にはなりえてない。
とくに電子本をめぐる状況をとっても、もっと深い考察ができそうなもんだが、結局足でしか稼げていない。まあ現場をまわって足で稼ぐのも重要ではあるんだけど、いかんせんまとまりにかけるし、方針のない現状把握で終わっちゃうんだよね。初出
紙の本鉄の踵
2001/10/27 21:27
ジャックロンドンの最高傑作
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この本をナチスの登場前に書ける眼力には、脱帽以外ない。同じ風景でも見ても、見えてる人には見えてるってやつだ。オーウェルの『1984年』や『動物農場』のきっかけにもなった本。それにしてもこのごろは、どうして政治システムに関するこういうある意味ではストレートで真摯な提言ってないのかな。本当に人に理解してもらうためには、わかりやすく共感できる形じゃないとだめなんだよなぁ。初出
紙の本神の子どもたちはみな踊る
2001/07/22 21:59
題名も表紙も
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最初のころの短編と比べるとまるで違う作家の本。いや、部分でにやりとさせられるところもあるにはあるんだけれども。
こういう方向に行くなら、それはそれで周りはなんとも言うこともないわけで、この人は特に短編では題名のつけ方にでもにやりとするようなエスプリを感じたんだけど、最近はそういう楽しみも少ないなぁ。
ロンドンの焚き火がでてくる「アイロンのある風景」は、どうみても題名は「焚き火」じゃないのかなぁ。いや確かにロンドンのTo Build a Fire は記憶に残るいい作品。
そ れと比べると晶かだけど、こういう緊張感を欠いた中途半端に重い作風には短編は向かないと思うんだよねぇ。
初出
紙の本シドニー!
2001/07/22 21:51
いかにも村上春樹のシドニーだなぁ
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スポーツ・ノンフィクションは独特のジャンルで、向き不向きがあるよなぁ。あまりに作家の枠におしこめすぎると、本来そこにあるものが見えにくくなる。小説ならそれでいいかもしれない、それはフィクションであり、作家の世界なんだから。
一つ一つのインタビューやエッセイをとると、それほど感じないのだが、全体で構成されるといかにも村上カラーが濃く出すぎていて辟易とさせられる。
それにしても最初のアトランタは「彼女」、「私」の処理がいまいちだし、その次の大人になっても子供話でまとめるところは、まだ中沢の「マルクス・エンゲルス(だっけ?)」を出来が悪く短くしたような流れで、よっぽど書くのに困ったんだろうな。
全体にもっと刈り込んで集中が必要なんじゃないだろうか? 読み返すのはつらい。
初出
紙の本メランコリア
2001/07/22 20:01
暑くてうだるなかでも読ませるテクニックはさすがなんだが...
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書き飛ばし中篇の一つなんだが、そのテクニックには感心するものがある。でもページを閉じると志の低さだけが後味として残るんだよなぁ。村上龍のできの悪い本は、どうしてこんなに嫌なコンプレックスだけを感じさせるんだろう。
それは単に欧米への強いコンプレックスをもつ世代の人たちの強い共感を得るのかもしれないが、食べたものをすぐはきだしてるみたいで、僕らには単に鼻につくだけだったりしてね。
小説的には、よけいなエピソードを切り詰めて短編にしてくださいってところでしょうか。
いやー犬の照れる話なんかのエピソードは、ちょっと受けたりするんだけどね。
初出
紙の本メイドインジャパン
2001/07/21 19:36
MADE
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どうしてメイド イン ジャパンなんだ? 全然ジャパンに関係ないではないの、なんて読み終わると思ったりする。で、あんまりインパクトないんだよなぁ、だって登場人物に感情移入もチェックも入らないんで、別に殺されようがなにされようが、ふーんって感じ。
そのあと延々と殺した理由を説明されてもねぇ。せっかく最初に合理的で理論的な人物を設定したんだから、もっと枠組みをきちんとさせればいいのにって気もする。
それにしても会話で、誰かを表記しなきゃ誰が発言したかわからないようなら、そんなに登場人物増やすことはないっす。
初出
紙の本ファスト・レーンズ
2001/07/20 21:55
なんか最近のアメリカ小説ってパターンだな。
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この小説自体は、表題作やブルームーンにはミニマリズムと青春小説の上手い結合があって、少し読ませるところもあるんだけど、その他の習作みたいなやつはどうかな、いかんせん読む気がしない。
表題作のファスト・レーンズも訳に少し疑問あり。「追越し車線」「追い越車線」(しかも表題作の単語の訳が混在)とはいかがなものでしょう。「追い越し車線、追越車線」くらいでしょうか。
初出
2001/06/30 14:04
基本を押さえないと、その上はないわけで
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テレビで時々放映されている道行く人の意見を流しているニュースをみて、絶望することはないだろうか? 明らかにかれらはその質問事項がなんであれ、前もってこれっぽっちも考えたことがないのが明らかだからだ。思いつきか新聞の内容のオウムがえし、それで意見の9割は説明できるだろう。
それを大規模に調査してなにになるんだという話もあるが、少なくとも調べ方に関する問題があることは確かなわけで、この本をしっかり読みましょう。
あと、白鳳大学 福岡教授のいいかげんさ(p54〜)、日本の社会調査のダメさ(p110〜)も含めて一読に値する。
2001/06/30 14:00
翻訳遅すぎない?
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これほど作風がかわらずに安心してよめる作家も昨今ではめずらしくて、本人が自分の資質を上手く把握しているんだろうなと思わせる。
ひとつの事故で全てが変わってしまう世界、時事問題への積極的なかかわり、60年代への言及は、この作品のなかでもアーヴィング風にいかんなく描かれる。
また太字によるセリフの処理もなかなか読ませる。
長編小説好きには欠かせない作家であり、欠かせない本であろう、それにしても翻訳するのに10年かかるとは…。
紙の本銀の匙
2001/06/30 13:54
郷愁っていうのは、思い出すものがないと
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別にたいした作品じゃないと思うけど、本棚に転がっているのをみるとつい手にとる作品でもある。たぶんこれを読んでなつかしく思える年代も限られているんだろう。小さい頃遊んだ思い出が豊富であればあるほど輝く小説。今の小さい子は、近所のみんなと遊んだりするんだろうか?
いや、テレビゲームにも思い出せるくらいの美しさがあればいいんだが…。
2001/06/30 13:51
なんともいえない視点の高さが
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「オウエンのために祈りを」で出てきたVoiceをみてこれを思い出した。単なる言葉つながりだけで、内容的に重なるところはぜんぜんないんだが、どちらもいい作品であることは間違いなし。
この作品でも、「サードガール」でも構わないんだが、恋愛の時代のなんともいえない寂しさや楽しさを、ほとんど無意識のうちに書き出す手腕には感心するほかなし。そんな心持の高さを示す引用を。
いいわ、だめなら別にかまわないの、気にしないで
他をあたってみる
会えただけでうれしかった、じゃあ
初出
紙の本話を聞かない男、地図が読めない女 男脳・女脳が「謎」を解く
2001/06/30 13:46
また「話〜地図〜」のウソなんて本が出そうだな
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人に強引に薦められなきゃ読むこともなかったんだが。
こういう本の何が嫌いっていって、売り方。男は〜、女は〜をたくさんだせば、それは当てはまるものもあるでしょう? 結局こういう話は「あとがき」をみてもわかるとおり、言い訳につかわれるだけで何ひとついい結果を生まない。いやいろんなタイプの人がいるっていう話なら、飲み会のネタ程度のレベルで楽しく読めるけど。せめて題名を「話を聞かない人、地図が読めない人」にするっていうのはどんなものでしょう。
基本となる4つの味覚のほかに、油っぽさを感じる第五の味覚があると考える日本の研究者もいる。
女の知能は男より3%ほど高い。
いやー、こういう話が羅列されている本をまじまじと書くっていうのも、それはそれでやぶれかぶれの売らんかな主義の実践としては興味深いかも。
参考文献も満足に示さず、少なくとも自分に都合のいい実験結果を抜き出してくる本は読む価値がないことは明らか。
初出
紙の本バビロンに帰る ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック 2
2001/06/30 13:40
人生は光だけを見つめて
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フィッツジェラルドの短編集。なんともいえない緊張感と弛緩のバランスがよい。張り詰めた書き出しからなにげなく筋が流れて行って、明確な結末をむかえる。最近は短編らしい短編もあまり読まないだけに、いっそう読ませるものがある。まあ村上春樹による編集・訳もその少なくない一因であることは間違いないが。
旧石器時代があり、新石器時代があり、青銅器時代があり、そして長い年月のあとにカットグラス時代がやってきた。
村上春樹のノートではないけど、シンプルだけどけっして書けない書き出しだ。どうやったらこんな書き出しを思いつけるのか才能としかいいようがない。
初出