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蓬莱さんのレビュー一覧

投稿者:蓬莱

15 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本南の島に雪が降る

2004/09/14 12:33

『南の島に雪が降る』といっても異常気象の話ではない。俳優故加東大介氏の極限の戦場でのヒューマンドキュメント。よくぞ復刊してくれました。特に若い人たちに読んでほしい本。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

評者の祖父がまだ存命のころ、祖父は年に一回戦友会で出かけていた。南方(ビルマだったと聞いていた)で苦楽を共にした仲間をとても大切にしていた。戦争という極限状態で苦楽を共にした戦友はかけがえりないものだったに違いない。
『南の島に雪が降る』はもう亡くなられたが、俳優の加東大介さんの戦時中の実体験を綴ったノンフィクション。加東さんというと黒澤監督の『七人の侍』の七郎次役のあの加東大介さんである。加東さんは故沢村貞子さんの実弟であり、長門裕之、津川雅彦氏の叔父でもある。ちなみに文中に子供時代の両氏も登場している。
絶望的なニューギニアの戦いでの中で、娑婆(これも死語だが)で俳優や三味線引き、デザイナーなどをしていた人たちを中心に慰安のために芝居をするという物語だ。この市井では普通の生活をしていた人々が戦争に狩り出されるという現実が戦争の恐ろしさを浮き彫りにしている。加東さんの筆致も淡々としているし、凄惨な戦闘のシーンは出てこないが、逆に戦争の無常さが心に沁みる。戦争は残酷な現実だが、そんな状況でこんなにもヒューマンな話があるのかと思う。そのところがまた逆に派出な戦争ものよりも心に突き刺さる話である。
評者は『南の島に雪が降る』は以前加東さん自身が主演の『南の島に雪が降る』を見た。もう故人ばかりになってしまったが、有島一郎さんや伴淳三郎さんなど共演でもう涙がとまらない映画だった。なぜ南の島に『雪が降る』のかはぜひ本書を読んで欲しい。

この物語はぜひ若い世代の方々に読んでほしいと思う。薄っぺらい反戦の言葉よりも、きっと得るものがあると信じる。
地味な本だが、後世に残したい良書だと思う。評者は以前旺文社文庫のこの本を読んだ。商業的には厳しい現実があると思うが、このような良書を復刊した編集者・出版社の方々には感謝したいと思う。
(注)沢村貞子さんのエッセイ『老いの道づれ』(岩波現代文庫)も評者のお勧め本のひとつである。沢村さんは『南の島に雪が降る』の『あとがき』も書いている。

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立ち読みの人にハタキをかけるのが本屋のおやじのイメージだが。書店の裏側全部見せます。本に愛情を持つ大型書店の店長の推名誠調エッセイ

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まだ評者が中学生のころ、街の小さな本屋の店主と仲良くなった。毎日のように本屋に立ち寄るものだから、向こうから声をかけてきたのだ。本好きな少年だった私は本気で本屋になりたかった。ちょうど少女が花屋になりたいというのに似ていた。店主に大人になったら本屋さんになりたいと言ったら、『こんな力仕事やめといたほうがいいよ』と諭された思い出がある。この本屋とは別に街で一番大きな本屋にもよく行った。大きいといっても地方都市だからいまの大都会の大きな本屋からみると小さなものだった。評者にとって本屋はワンダーランドだったのだ。
そのワンダーランド、現役の大型書店の店長の高津さんのエッセイ集。リズム感溢れる文章で表題を見ないで読んだら、評者は推名誠氏のエッセイ集だと思ったであろう。
ところでBK1を利用している方々はもきっと街の本屋(リアル書店)に通っている方々に違いない。評者も週に何回かは立ち寄っている。手にとってみないと買うと買わないかを決められない本もある。リアル書店の方々には大変申し訳ないが、そこで購入を決めてBK1に注文することも多い。もちろん手にとって見なくても、BK1の書評を参考にして購入することもあるのだが。(リアル書店の方々すみません)
最近、『世界の中心で愛を叫ぶ』は書店員の手書きPOP(スーパーなどの売り場によくはる販促用の張り紙)がベストセラーになるきっかけになったと新聞記事に出ていた。評者の素朴な疑問として長い間スーパーなどでは普通にあるPOPが本屋ではあまり見かけないのだろうと思っていた。最近は大型書店などではよくみかけるようになった。ところが高津さんのエッセイを読み、書店ではいろいろな売り方の工夫をしているものだと感心した。この本を読んでリアル本屋の裏側がわかりとてもおもしろかった。本屋の裏側全部見せますという本だ。本好きの人にはたまらない内容だと思う。
立ち読みをしている人間にハタキをかけるだけが街の本屋のおやじの専売特許だが、高津さんの店長はそのイメージはない。
今勢いを増す新古書店について『うちの顧客の客注が絶版になっていて、たまたまそこの新古書店の棚に並んでいた時、悲しいと僕は思った。』というところに高津氏の本に対する深い愛情を感じた。

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子供と一緒に『就職』について悩み考える親のための本

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本年前半のノンフィクションでのベストセラー『13歳のハローワーク』ではないだろうか。就職活動についてのハウツーは評者が学生のころはリクルートブックがこの役目を果たすものだった。その後中谷彰宏氏の『面接の達人』が就職のためのバイブルになっていると聞く。
 小島さんの前著の『がんばる中高年実践就職塾』は漂流するおじさんたちへの再就職の応援歌だった。今回の『子供を就職させる本』は就職を控えた子供を持つ親への応援歌となっている。
 学校では就『社』活動のサポートはあっても、就『職』活動のサポートはない。ましてや家庭の中では就『職』活動についての会話はほとんどないのではないかと思う。また就職テクニックの書はあっても、就職を考えるための本はなかった。このような職について考える本は意外となかったと思う。評者も両親には途中経過や事後報告はしたが、自分の就職について『相談』したことはなかった。そのときに親は心配はしても一緒に考えてくれることはなかった。
 未経験のことが次々に起こる就職活動では不安とイライラが増していく。そういうときに親のアドバイスは子供にとってはきっと心強いに違いない。ただし小島さんは自分の経験を押し付けることを戒めていることも付け加えておきたい。
 この本は『一生フリーターじゃやっていけないの』『白馬の王子さまはいつまで待ってもやってこない』などのキーワードを手がかりに親子の会話のような形で話が進んでいはとても読みやすい構成になっている。この本のはじめにの見開きにある以下の言葉が小島さんの最大のメッセージだと思う。

『やりたいこと・働きたいこと』を見つけられない子供たち。迷ったり・悩んだりしている子供たちにとって一番身近にいる究極のサポーターが、親であるみなさんです。

この本の基本コンセプトは『就職活動中またはその予備軍の親』向けであるが、就職を考えている学生やフリーターが読んでも充分役に立つ内容である。わたしも早速大学3年生の甥とその母である実姉にこの本を贈りたいと思う。

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家康や信長も登場する日本人による日本人のための聖書物語

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海外旅行をして思うことは日本人の宗教心の希薄さである。評者はクリスチャンでもイスラム教徒でもないが、教会やモスクの見学時に宗教心ない日本人に出会い同朋として落胆し地元の方々に失礼ではないかとハラハラするときがある。
また遺跡や絵画を見るときに欠かせないのがキリスト教やイスラム教的教養・知識である。たとえば、映画のお陰で『十戒』くらいはなんとなくわかるとしても、『アブラハム契約』『受胎告知』や『山上の垂訓』と言われてある程度のそのバックグランドがあるのとないのとでは旅の楽しさが全く異質のものになると言ってよい。そのなかでも欧米を旅するときに聖書の知識があればと思うことがよくある。
日本では肉親にキリスト教信者がいるか、キリスト教関係の学校を卒業していない限り聖書に触れる機会はほとんどない。あるとすれば出張先のビジネスホテルの枕元にある聖書くらいである。
『日本人に贈る聖書ものがたり』は文字通り、日本人による日本人のための聖書物語である。アブラハム・イサク・ヤコブ・ヨセフと続く聖書の中の物語をそのままではなく、日本人に馴染みの深い事件や人物になぞらえたり(文中の例えには信長や家康、坂本竜馬なども登場する)してわれわれを物語のなかに引き込んでいく。評者には神の世界の話ではなく、とても人間臭い物語に思えた。評者のような聖書をほとんど知らない者ではなく、聖書の理解の深い方はこの本を読んでどう思われるのか知りたいところである。
著者の中川健一氏はテレビ通じて伝道活動を行う『ハーベストタイム』という団体を主催する牧師である。一ツ橋大学を卒業後、帝人・日本マクドナルドでのサラリーマン生活を経て神の道に入られた異色の経歴の持ち主である。ローカルテレビ局では土日の早朝などに伝道番組をいくつか放送しているが個人的には違和感のある番組も少なくない。わたしは偶然『ハーベストタイム』を見るようになったが、自分の上司から話を聞くような感じで違和感なく安心して番組を見ていられる。
『日本人に贈る聖書ものがたり』は全4巻の予定であり、11月に 第2巻『契約の民の巻』が発売になると聞く。第2巻以降も期待して待ちたい。

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紙の本がんから始まる

2004/05/07 13:02

『入院マニュアル』としても使えるがん闘病記

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東大卒でエッセイスト。美人?で独身とくると何か近寄り難い気持ちがある。でも病気は相手を選ばない。この本で一番印象に残った部分は『要するに病気というのは、なるときはなるのである』であった。
評者も数年前に2ヶ月間入院・手術(ただしがんではないが)を経験し、同じ感慨を持った。酒もたばこもやらない自分が、毎日たばこをプカプカ吸い・酒をカバガバ飲む上司や同僚より先に自分が病気になるとは自分の不養生を棚にあげても納得がいかなかった。人一倍健康に気を使っていた岸本さんも同じ感想をもったようだ。
一般にがんの闘病記というのはある種の泣き言や稲川淳二氏ばりの悲惨さを強調するものが多いものだが、岸本さんの筆致はあくまでも淡々と冷静である。がんの発見から入院、手術、退院、そしてその後とほぼ時系列に書かれている。エピソードとしては父と娘の情愛や代替医療のことが印象深い。
評者もはじめての入院から退院まで病院内でことにとまどうことが多かった。セカンドオピニオンなど言われても、点滴をしながら他の病院に行くのは難しいし、ましてやどこの病院に行けばいいのかもわからない。また医師も懇切丁寧に説明してくれるわけでもなく、まだ予備知識もほとんどなしに治療や手術などの決断を迫られる。また病院内の掟もはじめての者にはわかりにくいことが多い。この本はそのエッセイストらしい視点でそれらの掟も所々に書かれている。評者が入院前または入院中にこの本を読んでいたら入院中のとまどいももっと少なかったのではなかったかと思った。また退院後、移動経路にあるトイレの位置を確認しているなど同じ消化器系の手術をした者には思わず頷いてしまった話もあった。

岸本さんはこの本を印象的な以下の言葉で結んでいる。
『未知なるものは、ときに私を畏れさせるが、投げ出さない。未知なるものがあるからこそ、死ぬまで、人は生きるのだ』

入院・手術を経験した評者は岸本さんにとても共感を持った。『生まれ変った』岸本さんが、がん再発がなく健康に過ごされることを祈りたい。

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海外ツアー版、バカの壁

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元添乗員の未来(みく)さんの第二弾。未来さんが発行していたメルマガ『セカンドクラスの添乗員』は惜しまれつつ昨年末、不定期刊になってしまった。この本もメルマガがベースになっている。
一昔前、海外ツアーの添乗員は憧れの職業だった。『男女七人夏物語』というテレビドラマで主人公に扮する明石家さんまが添乗員(ツアコン)という設定だった。当時は最先端の職業として描かれていた。(ドラマでは添乗の場面はなかったが)
昨今では海外旅行はより身近なものになり、添乗員もいわゆる3Kと呼ばれる職業になったと言われる。
どんな職業にクレームはつきものだが、海外ツアーではクレームはつきものである。特に格安ツアーほどクレームが出やすいという。ホテルの部屋が悪い、食事の内容がよくない等々。客観的に考えればツアーの値段からこの程度ですと言いたいところであろうが、サービス業の宿命かそれとも三波春夫先生が悪いのか『お客様は神様』なのである。評者に言わせると吉野家の牛丼にふかひれが入っていないというようなクレームなのだが。
もうひとつ困るのは添乗員は何でも知っていると勘違いしているお客様が多いこと。これは先生と呼ばれる職業でもそうなのだが、何から何まで知っているわけではない。添乗員も海外の街の隅から隅まで知っているわけでもないし、歴史・地理に必ずしも精通しているわけではない。添乗員はあくまでも『旅程管理者』なのだ。
こうしたことはこある意味、ツアー版『バカの壁』とは言えないだろうか。この越えられない壁は海外ツアーの添乗員とお客様の間にも存在する。
この『ラストツアー』では前作よりも未来さんの本音が垣間見れる。未来さんのメルマガによれば『マイナス現象をプラスに見せる方法(作戦、悪知恵かも)、お客様を味方にしてしまう方法(自ら旅を楽しんでいるだけかも)など、私の姿を前作よりもリアルに書いています。』という。わたしには『バカの壁』を未来さんは楽しんでいるようにも見える。
書名は『ラストツアー』で、『元』添乗員になっている未来さんだが、紙上のツアーではなく未来さんが添乗する海外ツアーに参加してみたいと思うのはわたしだけであろうか。

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資格で人生は変わるか

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税理士試験は5科目(必修の科目がありどれでもよいというわけではない)に合格すればよい。公認会計士試験と違うところは、1科目ずつの科目合格が認められているところである。資格取得のとめの専門学校のパンフレットを見るとこの5科目取得に平均で4−5年と書いているが、実際はもっとかかっているようだ。ところが聞くところによると実際は10年近くかかることが多い。著者のそめい氏も書いているが、逆に最初に1、2科目合格する悲劇がある。オールオアナッシングの試験であれば諦めもつくが、入り口に足を踏み入れてしまうとなかなか足抜けできない。そめい氏はこれをか『入り口で合格する悲劇』と呼んでいる。税理士試験の各科目の合格率はほぼ10%だから、5科目となると0.1の5乗となり気の遠くなる数字となる。このことを税理士志望の友人の友人に伝えたら、税理士受験を諦めたそうだ。もちろん数字のトリックもあるが、税理士試験のスタート台に立つ選手のうち何人が合格というゴールに辿りついているかと考えると気が遠くなる。著者のそめい氏は税理士試験を皮切りに社会保険労務士、中小企業診断士試験に合格するという快挙を成し遂げた。受験期の友人関係など資格試験の受験経験のある人間には思わず笑ってしまう。税理士試験受験中の後輩に送ってあげようと思う。

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紙の本商売の原点

2003/11/28 07:15

セブンイレブンの成長の秘密が経営者の肉声で読める

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米国で資産運用の神様と言えばまずバフェットを挙げる人が多いのではないだろうか。最近もまんが版のバフェット本が売れている。ところがバフェット自身が書いた本はほとんどない。
同じように、経営者を取り上げた本は多いが経営者自身が書いた本は少ない。経営の秘訣は本来は秘中の秘だからではないだろうか。一般に経営本といわれるものはジャーナリストが本人へのインタビューや周辺への取材で解き明かすという図式が成り立っている。ところが本当のところは本人にしかわからない。そう言う意味で本人の肉声を読める本は貴重である。セブンイレブン(日本の)の事実上の創業者(現在会長)であり、ヨーカ堂の社長である鈴木敏文氏の経営を書いた本は多いが肉声をそのまま伝えた本は実ははじめてである。この『商売の原点』と同時で発売された『商売の創造』も厳密には著書ではない。セブンイレブン本部で毎週一回行われる『FC会議』(全国の店を指導するフィールドカウンセラー(店舗指導員)の会議)で鈴木氏が話した速記録をまとめたものである。
役員室の奥で、ジャーナリストに向かってペラペラと経営の秘訣を語っているとは到底思えない。この本の編者である緒方知行(セブンイレブン関係の本を多数出している、最近『セブン−イレブン創業の奇蹟』が出た)もあとがきで『いかに緻密な取材をし、ウオッチングやスタディを重ねたところで、されは表層的なものでしかなかったことを思い知らされたのである』
日本のコンビニエンスストアのビジネスモデルの多くはセブンイレブンの成功から学んだものと言ってよいだろう。そのビジネスモデルは鈴木氏によるところが多いと言う。おにぎりをコンビニで売っているのはわれわれは当たり前のように思うが、このアイデアも鈴木氏から出たものだと聞く。
最近でこそマスコミへの露出が多い鈴木氏だが、最近まではなかなかマスコミには登場しなかった。一説によると伊藤氏が鈴木氏のマスコミへの登場を好ましく思っていなかったという話もある。

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難しいことをわかりやすく解説するのはとても難しいことであるのだが

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日本人の9割は何らかの生命保険に加入している。ところが自分の入っている保険について理解している人は少数派ではなかろうか。また保険の仕組みについての知識の人も少数派であろう。この本はその疑問に答えてくれる。
著者の坂本氏は外資系生保でアクチュアリーとして、また経営者として活躍された方である。アクチュアリーは一般にはあまり馴染みのない職業だが、著者の坂本氏によると、『基本となるのは生命保険の確率計算、金利計算と、その考え方をベースに保険事業経営が健全に行われているかどうかを見守っている人たち』だそうである。そのアクチュアリーが書いた本となると難しい数式がいっぱい書いてそうだが、この本には数式は出てこない。
低金利のなか生命保険会社の経営危機が叫ばれて久しいが、危機を煽る本の類は多いが初心者の教科書となるべき本はなかなかお目にかかれない。「生命保険って何だろう」という正統派の項目から、「頼母子講−保険、らしきもの」というちよっと興味をひく項目までを1項目をほぼ2ページずつで解説している。後半は実際の保険証券(保険証書)を例にとりながら、その内容についての解説である。わたしも自分の保険証券を改めて取り出してみた。
難しいことをわかりやすく書くことはとても難しいことであるが、その点には著者の坂本氏はかなり苦労されたようにみえる。保険の仕組みと内容はある程度わかったのだが、わたしはどの保険にどれくらい入ればいいのか。その疑問は次作に期待したい。


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三分の一の確率の恐怖・そのとき自分はどう行動するか

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日本人の死因の約3割ががん・悪性新生物による死である。1981年より病気による死亡率のトップとなっている。つまりわたしたちの三人に一人はこの本の著者の立場に陥るかもしれない。
著者の絵門ゆう子さんはNHKの朝のニュースのキャスターだった池田裕子さんである。同じアナウンサー出身の逸見さんのがん告白・死は衝撃的だった。
絵門さんは2000年10月に乳がんの告知をうける。普通はここで体にメスを入れる手術をうけるのが普通だが、母のがん死にまつわる西洋医学への不信感から西洋医学療法を拒否して、自然療法や民間療法を彷徨う。そしてあらゆる民間療法に失望させられる。その後、旦那様の薦めもあり築地の聖路加国際病院で西洋医学の治療を受けることになる。この本には西洋医学への不信感、民間療法への疑問が切々と綴られている。でもそれにすがりつきたい患者のやるせない心情も正直に告白されている。
『がんは心のしこりが生み出すものだ』『がんって死んじゃうと思いますか』などのことばにどきりとしながらも、絵門さんの生きることへの執念・生きていることへの感謝で評者も涙が止まらなかった。評者も身近な人間ががんに罹り、手術を受けた経験を持つが、がんという現状を受け入れることに関して家族としてのとまどいを覚えざるを得なかった。
家族や自分ががんになったときにどう行動するのかを改めて考えさせられる一冊であった。

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紙の本ツーウェイ資格試験合格法

2003/04/20 00:22

士業の資格取得と独立開業の定番本になる予感

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最初にこの本の表紙を見たとき、サンプラザ中野氏の書いた「芸能本」類の本かと思ってしまった。
資格の学校のパンフレットを見ると、資格をとれば薔薇色の人生が待っているかの錯覚を受けることがある。もちろん資格を取ることも大変だが、取得後はもっと大変な世界が待っている。著者は38才で失業し、その後司法書士試験に合格、独立開業した。書名の『ツーウェイ』とは著者によれば『ツーウェイというのは、書物の字面だけ勉強する(ワンウェイ)のではなく、さらに、行間にある実社会での争いの実相を明らかにするという意味です』。本書の構成も1.札幌短期合格編 2.横浜開業実録編となっており、まさに『ツーウェイ』となっている。評者も資格取得の経験があるが、著者の山本氏は現在も司法書士受験の学校で講師をしているだけあって、資格取得の学習ノウハウがかゆいところに手が届くほど懇切丁寧に示されている。これは他の資格試験でも応用できる方法である。また、開業編ではいわゆる『士業』の独立ノウハウがかなり正直な形で書かれており、内容が濃い。資格取得編と独立開業編をそれぞれ一冊の本として出版してもよかったのかもしれない。評者にとって黒川康正氏の著書が資格取得のバイブルであったが、今後は本書もその一冊とそうなりそうである。

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紙の本ニッポン全国マヨネーズ中毒

2003/04/06 00:30

大学教授の軽妙酒脱な食文化エッセイ

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著者の伏木氏は京都大学農学研究科教授、日本栄養・食糧学会理事。この肩書きを見るとお堅い論文を想像してしまうが、文字通り『軽妙酒脱』な食べ物のエッセイである。目次には『ミノモンタ炒めは万病の薬』『回転寿司はニッポン人の対人恐怖症か』『マンハッタン立食い蕎麦屋計画』など思わず読んでみたくなるタイトルが並ぶ。評者は最初、著者のエッセイを読んで推名誠の文章かと思ってしまった程だ。ユーモアたっぷりの学者センセイのエッセイといえば土屋賢治教授をまず思い浮かべるが、伏木氏も勝るとも劣らない。ユーモアというオブラートで包んでいながら、現在の食文化への批判は鋭い。現在人の奇妙な食生活から、わが国の農政までその俎上にあげられている。ひとつひとつの食の事象から発展して文化批評や日本人論といえる分野まで切り込んでいく。なで斬り型の批判ではなく、鋭く問題の核心をついているから思わず頷いてしまう。本書のなかには星新一ばりのショートSFもあり、これもまた楽しめる内容である。伏木氏はストーリーテラーとお見受けする。象牙の塔に篭らないで、ぜひ斬新なSFをお書きいただきたいと思う。

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紙の本がんばる中高年実践就職塾

2003/04/04 08:37

『働きたいと思っているあなたに賞味期限切れなんてありません』。カリスマキャリアカウンセラーが教える読む中高年のための就職セミナー

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再就職関係の書籍は多いが、一般人の目線で書かれたものは少ない。著者の小島氏は1000人以上の再就職をサポートした、カリスマ・キャリアカウンセラー(本書の表紙より)。キャリアカウンセラーという存在はまだあまり一般にはなじみがないが、個人の企業の未来像を明確にして、個人の適性をみきわめて再就職を専門的にサポートする、いわば再就職の水先案内人のことである。政府の総合雇用対策では5年間で5万人のキャリアカウンセラーを育成すると計画している。
倒産やリストラ流行りの世の中、いつ予期せぬ再び就職活動をすることになるかもしれない。本書はそのときの強い見方である。今の自分の「棚卸し」からはじまり、職務経歴書の書き方など、企業へのアプローチの仕方を著者の豊富な経験に基づいた懇切丁寧な教科書になっている。押し付けがましさがなく、中高年と同じ高さの目線が行き届いている。著者の一緒に考えようという気持ちと中高年に対する深い愛情が感じられる。第2の人生のためのいままであるようでなかった本である。しかしながらライバルには決して教えたくない本である。評者は巻頭にある『働きたいと思っているあなたに賞味期限切れなんてありません』という言葉にとても勇気付けられた。

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紙の本旅行記でめぐる世界

2003/02/26 20:48

『太平洋ひとりぼっち』から『深夜特急』まで、戦後の日本人の海外旅行変遷史

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旅行記を読む動機は何だろうか。著者の前川氏もあとがきで『文芸作品』『旅行ガイド』『思い出確認本』などの機能をあげている。この本ではほぼ年代別、旅行形態別に旅行記が40数冊紹介されており、第二次大戦後の日本人の海外旅行変遷史になっている。
『深夜特急』や『河童が覗いたヨーロッパ』などのおなじみの本から、変わったところでは高峰秀子の『巴里ひとりある記』や堀江謙一の『太平洋ひとりぼっち』などもある。年代も昭和20年代からつい最近のものまで幅広い。また地域の拡がりも考慮されている。著者の前川氏自身、旅行ライターであり、とりあげられている本も一般的な旅行記紹介本より幅広い選択となっている。たとえば、『太平洋ひとりぼっち』は出国スタンプのない海外旅行と位置として紹介しているところはユニーク。
海外旅行はいまでこそ、週末に『温泉旅行』に行くような感覚で海外に出かけられるようにているが、ひとむかし前は外貨の割り当てから始まり、旅券・ビザの取得などは煩雑で(評者も旅券の取得に預金通帳の提出を求められた経験がある)いわば人生の一大行事だった。この本では戦後の留学としての旅から、現代の癒しとしての旅までその形態の変遷が鳥瞰できる。惜しむらくは新書版という紙幅の関係でひとつの旅行記についての記載がやや短いのが残念である。評者の世代にはなじみの深い沢木耕太郎『深夜特急』については、少々辛口の論評がなされている。

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添乗員の泣き笑い青春日記

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3万人の読者を誇る人気メールマガジン『セカンドクラスの添乗員』の単行本化。元海外ツアー添乗員の未来『みく』さんの奮戦記。いろいろな『珍』客との攻防戦やらツアー会社の手配ミスとの格闘の様子などが赤裸々に描かれている。また地元のガイドやバスの運転手の人間らしい様子と未来さんとの交流も紹介されている。これは未来さんの泣き笑いの青春日記である。本人は一流でないという意味で『セカンドクラス』の添乗員と称しているが、この本を読んでいくと本当は几帳面な『ファーストクラス』の添乗員だとわかる。身勝手な客をあしらっているのではなく、未来さんは本当は『人間が大好き』だとわかる。
身勝手な客との攻防は、旅行業界だけではなくサービス業ではよくある話であるだけに、これからツアー参加される方はもちろんだが、サービス業のサラリーマンにもぜひお勧めしたい一冊である。人間関係に効く、まさにツアー版『読むくすり』。

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