がんりょさんのレビュー一覧
投稿者:がんりょ
紙の本蛇を踏む
2001/01/20 15:01
聖書のような語り口で描く流される女たち
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夢の中にいるようなぼんやりとした世界。
そんな中で日常の雑多なことを忘れさせてくれる作品である。
ぼんやりとしていて一見取り止めがないように思えるが
なぜか不思議な摂理で一貫されていてひきつけられる。
本書に収められた3編はいづれも一人の女性が主人公であるが
彼女たちの周りにさまざまな不条理な出来事がおきる。
たとえば、家に蛇の化けた女が住み着いたり
壷がはなしたり、自分のクローンがつくられたり…
これに対して、彼女たちは
まるで夢を見ているように淡々とした反応をみせる。
これらの出来事を自然に受け入れ流されていく。
この淡白な感覚は、最初に聖書を読んだときの
感じたものに近かった。
2002/02/12 13:55
いわくつきの割には期待はずれ
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本書は,書店による販売は自粛してオンライン書店のみの販売だそうだ.これは,立ち読みされたら買ってもらえなくなるということから出てきた販売戦略なのではないか,とかんぐりたくなるほど本書はインパクトが弱い.もうすでにどこかで聞いたような悪口に終始して,作者独自の視点からの批判が見当たらなかった.ナンシー関のように,何となく感じていて言葉にならなかったことをスパッと切ってくれるような悪口を期待したい.
紙の本吉行エイスケ作品集
2001/10/17 09:50
「大阪万華鏡」は裏あぐりだ
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本作品集のうち「大阪万華鏡」を読んだ。
独特の文体で語られるNHK朝ドラ「あぐり」の時代の上流社交界の自堕落な生活は、朝ドラで描かれている奥さんの苦労に支えられて旦那はこんな生活をしていたのかと想像させられる。
「あぐり」を堪能した人はそのサイドストーリとして楽しむことができるだろう。
2001/08/30 18:43
サイコの雰囲気を味わえる
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精神医学関係の質問に答える形式になっているのだけど、質問者の悩みを解決しているものは1つもない。でもまあ,精神医学の雰囲気を知るにはよいかも。
2001/07/04 12:41
森マニアにはたまらない作品
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西之園,犀川,小鳥遊など森ワールドのキャラクタが総出演ということで楽しみに読んだ.
5つの短編で構成されているがメインのトリックはすぐに分かるものばかりであるが,各編はちょっとした謎を残して終わっていて,全部読み終わっても解決されない(私が分からなかっただけ?).続編で解決されるのか?
評者はミステリ色の強い犀川,西之園シリーズの初期の作品が好きなのだが,小鳥遊シリーズが好きな人には楽しめる作品だろう.
紙の本砂のクロニクル
2001/05/07 17:44
2人の日本人が中東で見たものとは
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イランの都市マハバード,クルド人の聖地として知られるこの町に2人の日本人が登場する.一人は武器商人,一人は元活動家.彼らが内乱,クーデターが渦巻く中で見たものは…。
作者は,海外の日本人を書きつづけている作家だが,今回は,2人の日本人以外にも,ゲリラの指導者,元女性活動家,革命軍の若き将校など,いろんな人の視点でストーリが展開する.そのため,焦点がぼやけて消化不良になった嫌いはあるが,きな臭い中東の雰囲気の片鱗を味わうことができる作品である.
紙の本三たびの海峡
2002/06/22 10:08
この重い問題を勧善懲悪にして良いのか
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戦中の朝鮮の方の強制労働をテーマにした作品.
日本人である作者がこの重いテーマに取り組んだことは評価できる.しかし,ストーリを炭坑の幹部個人個人が悪いと言うトーンで進められることに違和感を感じた.確かに,彼等に全く責任がないとは言えない.しかし,当時日本が置かれている状況で逆らうことが出来たか,また,逆らったところで排除されてまた別の人間がそれにあたるだけではなかったか? 戦時中こんな悪い人達がいたという話ではなく,日本人の責任として当時の社会のゆがみまで掘り下げて書いてほしかった.
紙の本乳房
2002/07/16 16:25
独特の作風がイイ感じ
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伊集院静の小説は初めて読んだ。
西原恵理子とのエッセイでとんでもないギャンブラであるというイメージがあり、いったいどんな小説を書くのだろうと興味をもって読んでみた。
読んでみると、「きっとここで競馬にいったな」とか「飲みにいっちゃったか」というようなスパッとトーンが変わる個所が随所に見られる。しかし、これが必ずしもマイナスではなく、独特の作風としてイイ感じになっているところが、凄い。単なるギャンブル好きの酒飲みじゃなかったと見なおした。
紙の本隣家全焼
2002/07/13 09:25
惜しい人を
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月並みな言葉だけれども,「惜しい人をなくした」
ナンシー関氏は,日本に唯一といってもよい冷静に悪口を語れるコラムニストだ。
悪口と言うのは普通,感情のおもむくままに語られることが多い。
往々にしてそう言う悪口には個人的な思いこみや私憤が含まれて独善的になっている。
ナンシー関氏の悪口は,表面上は個人的なコメントを装っているが
全く独善を感じさせない。まさしくプロの仕事である。
本作は,放送作家町山広美との対談集であるが,上記の意味での両者の対比が顕著に表れて面白い。
紙の本猛スピードで母は
2002/06/02 11:51
母の女の部分を子供は見たくない
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母親・息子の2人の家庭の日常と波瀾を描いた作品。
奔放に生きている母親の,女の部分を息子は見たくないと思いながらもあきらめている。しかし,好きなようになっている母の足枷に自分がなっているかも知れないと考えはじめたとき,母子の関係が微妙に変わっていく。
芥川賞受賞作品でもある。
紙の本六枚のとんかつ
2002/05/25 16:22
この手の分野の成熟を期待させてくれる
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賛否両論あるこの作品だが,ミステリのパスティーシュと捉えればそんなにヒドイ作品ではない。
ただ傑作と呼べるような域には達しているとは言えないのが残念だ。私としてはこういう方向は大好きなので,この作品を先駆として,この分野が成熟していくと嬉しいと思う。
紙の本R62号の発明 鉛の卵
2002/05/25 16:14
SFホラーの元祖がここにある
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安部公房の作品を初めて読んだ。
飛んだ設定や,不気味さの漂うストーリ展開など,今のSFホラーのような雰囲気で,この時代にすでにこんな作品を書いていた人がいたのかと驚いた。
短編の一つ一つがそれぞれ長編映画になりそうな広がりや深みを持っている,贅沢な一冊だ。
紙の本探偵ガリレオ
2002/04/03 21:01
正統派理系ミステリ
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超常現象的な殺人事件を科学の力で解明して、犯人まで当ててしまうミステリ。たとえば、道端で騒いでいる若者の頭が突然燃え上がったり、海水浴中に突然爆発したり、という不思議な出来事を物理学の教授である探偵役が物理的に現象を解明していく。これぞまさしく正統派理系ミステリといえるだろう。
紙の本水辺のゆりかご
2002/03/05 18:41
不快だがグングン読める
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全編暗い話がこれでもかと続く作品である.
これが作者の自伝であるなら,よく今まで生きてこられたと感心してしまう.複雑な家庭環境,学校でのいじめ,性的虐待など考えられる不幸はほとんど登場する.それで,主人公(作者?)がまたかわいくないんだ.いかにもいじめたり,虐待したりされそうな性格をしている.絶対に友達にはしたくないタイプ(だからといってやられて当然だとは思わないが…).
これだけ,暗くていやな要素がてんこもりだと,途中で読むのがいやになりそうなのだが,不思議とグングン読み進められてしまう.これは作者の力量といえよう.
2002/03/04 18:44
死体のリレー
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大阪−名古屋、名古屋−厚木、厚木−東京。死体を3人でリレーすることで、お互いのアリバイを確保して完全犯罪を行おうとした3人の男。しかし、リレーされてきた死体は意外な人物で、ビックリ。もともと殺そうとした人はピンピンしてるし、いったいどうなってる?
いつもながら、作者の着眼点が面白い。