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エーミールさんのレビュー一覧

投稿者:エーミール

39 件中 1 件~ 15 件を表示

時代は1847年。場所は北アメリカの五大湖の一つスペリオル湖のモーニングワネーカニングという島です。オジブウェー族という先住民がいました。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 自分自身の先祖をたどっていったら先住民だったというのが、著者がこの本を書いた動機だとか。たどっていったらアメリカに奴隷としてつれてこられたアフリカ人だったということで書かれた『ルーツ』という大評判になった作品がかつてありましたね。
 この作品に描かれている時代は、ヨーロッパから移住してくる人々によって先住民が土地を取り上げられ追いやられ、文化や習慣や宗教の同化政策によって生活まで変えさせられようとしていたころのことです。
 主人公はオマーカヤズという7歳の女の子です。物語の冒頭にスピリット島で、たったひとり生き残っていた赤ちゃんのことがでています。この子なのでしょうか。でもオマーカヤズには、姉と弟2人がいます。父さんも母さんもいます。動物の皮をなめして細工したり、ビーズでししゅうをしたり、昔ながらののどかな生活をしているように見えて、そうではないのがだんだんわかってきます。白人の金銭による労働や生活のやりかたがはいってきているのです。そして病気までもはいってきます。
 先住民の側から描かれていて、わかりやすい文で物語として書かれているので読みやすく、この時代のことを理解してもらえるのではないかと思います。
 歴史のある部分をいろいろな立場から見たものを読むとその時代を良く理解できます。
 この作品は、全米図書賞のファイナリスト、親が選ぶ最優秀作品賞、パブリッシャーズ・ウィークリーの年間最優秀作品賞、ジェーン・アダムズ・オナー賞など13の賞を受賞しているのだそうです。
 アメリカの開拓時代のことを知りたい時、先住民の事を知りたい時には、是非読んでもらいたい本だと思います。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本星空から来た犬

2004/09/27 17:57

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの初期の傑作です。不思議な犬の話で、たっぷり楽しめます。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 星の世界のシリウス星の総督シリウスは、無実の罪で犬に姿を変えられて地球へ追放となります。それも無力な子犬の姿で。その子犬を拾ったアイルランド人の孤独な少女キャスリーンとキャスリーンを置いている家族との日常生活のおかしさがえがかれ、いっぽうで、シリウスが地球に送られたのは罪のためだけではないことがだんだんわかってきます。というわけで、やはりこの著者ならではの何層にもなったストーリーを楽しむことが出来ます。
 犬好きの人もうれしくなるような犬の話といってもいいのですが、一方で、女の子と犬の気持ちの通い合いの心の話でもあり、家族の話でもあり、もう一方で、地球も含めた星の世界の力関係の話にもなっています。
 この作品は1975年の作で、著者の若い頃のものです。その後時空を超えた複雑なタイムファンタジーが多くなってくるようですが、その筆力には圧倒されてしまいます。人物の描き方もああこういう人っているなあといつも思ってしまうし、シチュエーションもリアルで緻密だけれど架空のもので、ストーリーには何かしらしかけがあるというふうに凝っています。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本花の魔法、白のドラゴン

2004/09/14 17:28

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの最新作、長編ファンタジーがでましたよ!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この物語の主な舞台は、イギリスに似た異世界ブレストという国です。この国では、王は廷臣をつれて国中をまわる<巡り旅>というのを続けています。その廷臣の天気魔法使いを父に持つ女の子アリアンロード・ハイド通称ロディは、宮廷付「大地の魔法使い」の息子グランドを弟のように世話しています。そんなある日、ロディとグランドは、国の最高位の魔法使いであるマーリンが、グランドの母である大地の魔法使いシビルと共に恐ろしい陰謀を企てているのに気がつきます。けれども大人たちは信じてくれません。このあたりから、時空を超えて現代のイギリスから一人の少年ニックがあらわれます。少年は、夢を見ているのだと思うのですが、魔法の力は持っていて、ロディを助ける約束をします。このロディとニックが、それぞれなにかにひっぱられるようにあちこちへ移動し、わけもわからないうちに力をつけていって、ついには、その陰謀に立ち向かう大きな力となるのです。
 複雑なストーリーです。こうまでこみいったものにしなくてもいいのにと思うのですが、それがこの作者の持ち味でもあるわけで、よくこんがらがってしまわないなと感心するばかりです。最後にはいつもきれいにまとまって、わけがわかるようになっているのですから。ただ、登場人物の背景は、まだまだ広がりがあるので、続編のようなものが書かれる可能性が強いと思います。テーマからいえば、結局、いつも大人が権力欲と支配欲のために手段を選ばず動き始めることで、子ども達は迷惑をこうむるということです。これは、現実の世の中でもまったく同じで、魔法や時空を超えた異世界がでてくるものの、みっともない大人の姿はまさにこうだなと思います。現実にいそうな人物が沢山出てきて、作者の観察眼の鋭さも感じますし、いろいろな人を思い浮かべて、笑ってしまったりします。
 そんな風に、楽しめる作品です。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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明日から夏休みという日、アナはバスの中からパパを見かけました。パパは事故で死んだはずなのに。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アナがパパを見たのは、どこかの交差点でした。バスのとなりにとまったタクシーの後部座席に座っていた人が、パパにそっくりだったのです。髪型やしぐさまで。
 アナはママに話しますがなかなか信じてくれません。しかし、ママの恋人の息子オリバーはわかってくれて、ふたりはいっしょにパパの事を調べ始めます。そうするうちにタイトルにある「タンゴ」がなにか深い関わりのある謎として浮かび上がってきます。
 ミステリー調のストーリーが、読み手をひっぱっていきます。パパの謎とは何なのか。そこに家族の問題もからんできて、ストーリーにふくらみをもたせています。結構深刻なテーマなのに、そんなに重くなく、ミステリータッチなので、どうなるのかとひっぱっていって読ませるストーリーです。
 謎が解けてしまうとつまらないので、決して先に結末を読んだりしないようにしてくださいね。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本闇にひそむ海賊

2004/08/30 16:53

読みごたえのある海洋冒険ミステリー、3部作の完結編で、いよいよカリブの海賊が登場します。

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 全編なんとも不気味な空気が流れていて、ミステリーともいえるストーリー展開で、「上質の」とか「本格的な」という形容詞がついてしまうような重みのある独特の雰囲気をもつ作品です。第1巻はエドガー・アラン・ポー賞の候補にもなりました。
 19世紀、イギリスからカリブへ向かうドラゴン号では、漂流していたひとりの大柄な男をのせてから、おかしなことが起こりだします。船員たちは、その男をヨナ(船に不幸をもたらす者)だといいだします。やがて、霧の中から海賊船があらわれてたたかいがはじまります。
 海洋冒険小説は、日本では島国であるにもかかわらずあまりコレという有名な作品を思い浮かべることができません。イギリスやアメリカでは人気のあるジャンルとして『宝島』をはじめとして数多くの作品がでています。
 非常に読みでのあるものですが、しっかりとした描写でまさに本格的な海洋小説といえるものです。3冊読むと、すっかり海の男の気分に浸って、海の男になったような気分になることでしょう。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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夏休みに「美こと」と犬のジュウベエは、ママのお母さん・おばあちゃんのところへ行くことになりました。

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 ママのお母さん・おばあちゃんは、御山という小さな村にひとりで暮らしています。おじいちゃんは医者で、小さな診療所をひらいていましたが亡くなりました。そのおばあちゃんの行動が、この頃少し変だとおとうさんとおかあさんが心配して、夏休みに、娘の小学4年生の美ことちゃんを犬のジュウベエといっしょに、おばあちゃんのところに行かせることにしました。いつものように井戸で冷やしたスイカを食べさせてくれたりして、変らず元気だと思ったとき、おばあちゃんは、おじいちゃんの幽霊が来たことを話し出したのです。夏休みの間おばあちゃんとすごした美ことは、おばあちゃんのことがよくわかりました。おじいちゃんの幽霊が出た訳も……。
 おばあちゃんの不可解な行動を美こととジュウベエがだんだん解き明かしていく形式なので、ここでストーリーを書いてしまうと面白さが減ると思うので書けませんが、それが何だろう何だろうと読む側をひっぱっていくようです。犬のジュウベエの気持ちや考えがモノローグで入っているのも可愛くてユーモラスでとてもいいのです。
 読み終えて、なんとなく楽しく暖かい気持ちになるのはうれしいことです。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本呪われた首環の物語

2004/08/30 16:36

ケルトの伝説を題材にした極上のファンタジー。緑の丘にかこまれ霧にかすんだ湿原に住む三つの種族の首環をめぐる愛と憎しみの物語。

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 読み終わってしばらくは、余韻のなかに身を浸して、余韻に酔っていました。物語が創り出す神秘的ともいえる雰囲気にすっかり入り込んでしまって、もの哀しい気分にもなって読み進み、読み終わってもそこから抜け出したくなかったのです。
 物語は、昔一人の<人間>の男の子が、ドリグという水の中に住んで不思議な力をもつ種族の男の子の美しい首環を、自分の力をみせつけたいという気持ちからとりあげようとして、武器を持たないドリグの子を殺してしまうところから始まります。
 そしてそのドリグの子は死に際にその首環に呪いをかけるのです。首環には、殺した子の一族に対する呪いがかかっていたのですが、首環が他の人の手に渡っていくうちにその呪いも広がっていきます。一方でこの呪いをどうにかして解こうとするものもいました。首環をめぐる三つの種族のかかわりが次第に明らかになってきます。
 この作者の作品は、複雑なトリックのあるタイムファンタジーが多いのですが、この作品は少し印象が違っています。それは、この作品が作者の初期の頃の作品であって、師であるトールキンの『指輪物語』に捧げたオマージュでもあるからです。作品の中に『指輪物語』を意識したと思えるところがあります。呪われた首環が持ち主を変えていき、災いをもたらすものであるという設定もそうですが、呪われた首環なのに手放したくなくなるし、呪いの力が脈動して伝わってきて寒くなってくるというのもそうです。
 この物語には巨人がでてきますが、読み進むうちにあれ?と思うトリックが出てきます。この作者独特のイタズラのようなトリックです。でも見方を変えれば、それは、深い意味を持っているようにも思えます。民族や人種の差別ってこういうことなのかなとも思えるからです。ある種の思い込みから、ほかの種族や人種のことを全く良くない、違うものと考えて差別するようになるのではないかと思うからです。
 兄弟のそれぞれの気持ちも良く描かれています。「賢女アダーラの三人の子どもたちの物語──<能>に恵まれたエイナとセリの、そして自分にはとりえがないと思っていたゲイアの物語である。」と冒頭にあるように、ゲイアは特別な家に生まれたなんのとりえもない自分をみつめて悩み続けます。ゲイアの成長の物語にもなっているのです。
 現代にある様々な問題も思いおこさせつつ、霧の中の神秘的な沼地の不思議でロマンチックな雰囲気も保ちつつ、コミカルな面もチラチラ織りこみつつ、というように、圧倒的な筆力を感じさせる作品です。これが若い頃の作品なのですからもうなんといったらいいのかわかりません。


(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本バラ色の怪物

2004/08/30 16:31

中学生が起業する。朝会の時に屋上からビラをまく。こういう中学生もいるかもしれません。

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 体は大きいけれど、どっちかというとぼーっとしたかんじの中学2年生の遠藤トモユキは、先生にすすめられて内申書の点数かせぎのための校内奉仕として、裏庭の温室の世話をすることにします。
 温室で遠藤は、学校一のトラブルメーカーで奇行マニアの吉川ミチルにあいます。吉川は、屋上からビラをまいて屋上を立ち入り禁止にされて、居るところがなくなったので温室に来たらしいのです。それからというもの、遠藤は吉川のトラブルメーカーではない、いろいろな面をみることになります。
 一方遠藤の家庭の複雑な事情や金銭事情を考えて、幼なじみの友達がアルバイトを紹介してくれます。その仕事先の社長は、とある私立中学の3年生でした。遠藤は、この仕事先の社長三上と奇行マニア吉川の二人との出会いによって、それまでに考えたことのなかった様々なことを考えるようになります。そんな矢先、仕事先で事件が起こります。
 世の中にはいろいろな人がいて、それぞれいろいろに生きているのだけれど、子どもが成長して行く過程の早い時期にそれを実感するのが、はたしていいことなのかどうかはわかりません。でも、現代では、良かろうと悪かろうと、早い時期からそうした「世間」というものをみせられてしまうのでしょう。そして、それでも自分の力で生きていかなくてはならないのです。
 ちょっと苦い味もするけれど、最後には、遠藤くんは頼もしくなったし、吉川さんも素敵にみえてきたから不思議です。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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魔法大陸イルムアの悪の都ダリッチに起こる事件の数々……。といってもどこかひょうきんな物語です。

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 『襲われた魔都ダリッチ』という題がついています。何に襲われたのかというと、ネズミのようです。そしてストーリーは、ハメルンの笛吹き男の言い伝えを下敷きにして進んでいきます。でも、この先はだいぶ違った方向へ進んでいきそうです。とにかく魔法に包まれているうえに、この都をおさめてきたのがどいつもこいつも愚か者で、様々な犯罪を野放しにしたために、あらゆる種類の悪人がはびこるようになった「魔都」なのですから。
 
 イルムア大陸は、荒々しい魔力に満ちています。この魔力には、ライトとダークの2種類があります。ライトマジック、つまり光の魔力は天空のもので、ユニコーンを駆けめぐらせたり妖精の森をつくりだしたりする、夢のような魔力のことです。これはかなりの魔法使いでも使いこなすのは難しい魔法です。
 もう一つのダークマジックは、闇の魔力のこと。それは怒りの魔力でなかなかおさえのきかない力で、いつも宿主を探している寄生虫のようなものなのです。ただし宿主は誰でもいいという訳ではなく、感じ易くて影響を受け易いデリケートな心でなくてはなりません。
 そうして、今回みつけた宿主が、羊飼いで笛吹きの少年ディークだったのです。
 そのダークマジックを宿したディークが「魔都ダリッチ」へやってくるのですから、いいことがおこるわけはないのですが、どうでしょうか。 

 本という読物の形式でありながら、とても映像的な作品です。出てくるものもドワーフやバーバリアン(野蛮人種)、魔術師、穴居人種、ミニダニ族など様々です。会話や動作が細かく描かれていて、ギャグも登場人物のキャラクターと密接に表現されていて自然でありながらひねりがきいています。ストーリー展開と関係のない部分の遊びが沢山盛り込まれていて、単純な部分でも、さまざまなことが描き込まれています。しかも、ちょっとひょうきんなとらえかたで!
 会話を楽しみながら読んでいくと、面白い作品です。第2巻はいったいどういう方向に進んでいくのでしょうか。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本パーラ 下 古城の秘密

2004/08/16 18:31

言葉をとても大事にする人々の町シレンチアには詩人や語り部がいて大切にされていた。その町に異変が起きる。

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シレンチアの町に住むパーラという少女の不思議な冒険の物語です。冒険といってもそれは言葉の謎解きの冒険といったらいいでしょうか。各章の始めに、詩が載っています。それはソネットという形式の詩で、これが物語の重要な要素になっています。
 シレンチアの町の人々は言葉をとても大事にする人達で、詩人や語り部が大事にされている町でした。その町に住むパーラという少女は、語り部の老人ノンノ・ガスパーレととても仲良しです。ところがある日、そのノンノ・ガスパーレが失語症になってしまいます。顔が真っ赤にはれているから病気かもしれません。うつるかもしれないとパーラもいっしょに隔離されます。それからだんだんシレンチアの町で失語症になる人が増えてきます。この町に舞い戻ってきた金持ちで、山の上の古い城を再建しようとしている実業家ジットがなにかやっているせいだというふうにいわれだしますが、はっきりわかりません。そのうち、ジットが町の人に仕事を持ってくるようになって、シレンチアの人達の生活を変えていきます。言葉がだんだん大事にされなくなって、話し合いがまともにできなくなっていきます。パーラは、ジットに会って話をしようと城に向かいます。
 読んで行くうちに、エンデ作『モモ』みたいだなと思いました。モモは時間どろぼうと対決するのですが、パーラは言葉どろぼうと対決するのです。
ソネットという小道具をきっちりと使って緻密に構成されていて、読み終わると「お見事!」と言ってしまうくらい見事な構成です。
 単に言葉どろぼうを追いかけて言葉を大切にというだけでない、もっと深いメッセージが込められているように思います。現代社会の人と人とのつながり、家族、言葉のかけかた、話し合い、本の存在、様々なことが織り込まれていながら、パーラという一人の少女の冒険ファンタジーにもなっていて、読んでいてとても楽しめます。ソネットという形式の面白さにも注意が向く人もでてくるのではないでしょうか。
 上下2冊ですが、どんどんひきこまれて読みきってしまうことでしょう。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本パーラ 上 沈黙の町

2004/08/16 18:29

言葉をとても大事にする人々の町シレンチアには詩人や語り部がいて大切にされていた。その町に異変が起きる。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 シレンチアの町に住むパーラという少女の不思議な冒険の物語です。冒険といってもそれは言葉の謎解きの冒険といったらいいでしょうか。各章の始めに、詩が載っています。それはソネットという形式の詩で、これが物語の重要な要素になっています。
 シレンチアの町の人々は言葉をとても大事にする人達で、詩人や語り部が大事にされている町でした。その町に住むパーラという少女は、語り部の老人ノンノ・ガスパーレととても仲良しです。ところがある日、そのノンノ・ガスパーレが失語症になってしまいます。顔が真っ赤にはれているから病気かもしれません。うつるかもしれないとパーラもいっしょに隔離されます。それからだんだんシレンチアの町で失語症になる人が増えてきます。この町に舞い戻ってきた金持ちで、山の上の古い城を再建しようとしている実業家ジットがなにかやっているせいだというふうにいわれだしますが、はっきりわかりません。そのうち、ジットが町の人に仕事を持ってくるようになって、シレンチアの人達の生活を変えていきます。言葉がだんだん大事にされなくなって、話し合いがまともにできなくなっていきます。パーラは、ジットに会って話をしようと城に向かいます。
 読んで行くうちに、エンデ作『モモ』みたいだなと思いました。モモは時間どろぼうと対決するのですが、パーラは言葉どろぼうと対決するのです。
ソネットという小道具をきっちりと使って緻密に構成されていて、読み終わると「お見事!」と言ってしまうくらい見事な構成です。
 単に言葉どろぼうを追いかけて言葉を大切にというだけでない、もっと深いメッセージが込められているように思います。現代社会の人と人とのつながり、家族、言葉のかけかた、話し合い、本の存在、様々なことが織り込まれていながら、パーラという一人の少女の冒険ファンタジーにもなっていて、読んでいてとても楽しめます。ソネットという形式の面白さにも注意が向く人もでてくるのではないでしょうか。
 上下2冊ですが、どんどんひきこまれて読みきってしまうことでしょう。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本キングゆうかい大作戦

2004/08/16 18:27

オルセンの店のオルセンさんはひどく無愛想。泥棒対策に犬を飼ったけれどつなぎっぱなしでかわいがっていない。かわいそうで見ていられない。

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 イーナとイングリットとイーダはなかよし3人組。オルセンの店でよくお菓子を買います。オルセンさんはひどく無愛想です。でも品揃えはいいので、仕方なく買ってしまいます。そんなオルセンの店に泥棒が入りました。オルセンさんはおこって、泥棒対策に犬を飼いました。純血種のシェパードでキングコングという名前です。親友少女3人グループはさっそく見にいきます。こわそうに見えたけれど、すぐになれて、特に犬好きですぐそばに住んでいるイーナは、キングコングがかわいくてたまりません。毎日のようにキングコングと遊んでいるうちに、キングコングがいつもつながれっぱなしなのに気がつきます。かわいそうになって、1日だけでもいいから広い所を走らせてやりたいと思うようになります。そして、キングコングを1日だけ誘拐して遊ばせる計画をたてます。親友も協力してくれることになりました。
 子どもの力でできるかと、はらはらします。でも、読んでいるうちにこの女の子たちをつい応援してしまいます。
 犬の飼い方ということも考えさせられます。この3人も犬は飼いたいけど、自分の家では飼えないのです。同じような気持ちの子も沢山いることでしょう。
 どうなるのかなと思いながら、3人を応援しながら読み進んでいけるし、読後感もさわやかな本です。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本エンバー 失われた光の物語

2004/08/16 18:24

エンバーは近未来都市なのでしょうか。12歳の少女リーナと少年ドゥーンが希望ある未来を求めて冒険の旅に出ます。

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 近未来ものではありますが、科学の発展の成果がいかされた超近代的な都市ではなく、停電や物資不足になりかけている都市エンバーがでてきます。変だナーと思っているとそこに秘密があるのです。
 子どもには、未来を夢みる力があるということなのでしょうか。少女リーナは、いつも明るい光にあふれた別の世界がある、エンバーからの出口がきっとあると思っていました。幼なじみの少年ドゥーンも、感じ方は違っていましたが、エンバーからの出口があると思っていました。そして、仕事をしながらふたりはその出口をさがし続けるのです。
 近未来の都市がこんなだったらいやだなと思ってしまいます。多くの大人たちが疑問を持たず日常の生活や目先の欲で頭がいっぱいな中で、ふたりの子どもは、ちょっと変った子として描かれているのですが、未来をきりひらく力を持っていました。
 現実の社会でも、常識や日常の欲の中にどっぷりとつかっていると見えないだいじなことがたくさんあると思います。エンバーに住むようになった人々がその前にどんな目にあったのかは書かれていませんが、読み終わると環境や戦争のことも思わず考えてしまう、そんな物語です。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)


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紙の本美乃里の夏

2004/07/26 18:20

美乃里と実、同じ名前の女の子と男の子が夏休みの始まる頃に出会いました。不思議な出会いは、ひと夏の忘れられない思い出です。

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 子どもの気持ちは、いろいろだ。大人になっても、子どもの頃の気持ちをありありと思い出す人もいるだろう。そんな今、子どもとして生きている子どもと、子ども時代を忘れない大人にぴったりの物語だ。
 同じクラス(5年1組)の須賀くんと茜ちゃんと私(美乃里)は、交換ノートを続けていた。でも、最近須賀くんと茜ちゃんがお互いに好きなのがわかってきて、淋しくなっていた。そして夏休み。字は違うが同じ名前の実という男の子と出会う。美乃里が困っているときふっとあらわれる小柄な少年。二人は、その夏中、小さな銭湯で掃除の手伝いをする。頑固者の銭湯の主のおじいさんとも話をするようになり、その夏は、美乃里にとって、忘れられない夏になった。
 ひと夏の思い出を描いた作品は多い。この本はその中でも心に残るものとなるだろう。素敵な夏を過ごした人も、期待はずれに終わった人も、この本を読んで、夏の思い出にひたってください。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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紙の本夜明けの風

2004/07/26 18:18

サトクリフのローマン・ブリテン・シリーズの幻の傑作といわれた作品です。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ブリテンはサクソンとの最後の戦いに敗れた。その戦いに一人生き残った14歳の少年オウェインは、戦死している父と兄を見つけ、父の手にあったイルカの紋章を彫った指輪をもらって、戦場を離れた。軍犬がついてきたので、その犬と共に北へ逃れて行く。
 オウェインは、廃墟のような村で、うえてやせこけた少女レジナに出会う。たった一人で、どうにか生き延びてきたレジナ。一緒に逃げるうちにレジナは病気になる。そのレジナをどうしても見捨てることが出来ずに、レジナを助けることを条件に、オウェインは自分に残されていたたった一つのものである「自由」を売ることを決心する。そうして、二人は別れ別れになり、オウェインは奴隷として生きて行くのだが…。
 このオウェインの決心は、どうだろう。こんな男性はいるだろうか。今も昔も、なかなかいるものではないだろう。14歳という若さだから、その一途な気持ちでということもあるだろうけれど…。歴史のうねりの中で生き方を大きく変えざるを得なかった若者の、それでも誠実さを貫き通した生き方に、感動させられる人は多いことだろう。本当の男らしさや誠実さ、生きることの切なさを感じさせてくれる作品だ。

(エーミール<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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