Shinjiさんのレビュー一覧
投稿者:Shinji
紙の本
紙の本現代の賛美歌ルネサンス
2001/12/18 15:17
現代の賛美歌を考える上で意義深い書
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日本で欧米の賛美歌の潮流を積極的に紹介してきた横坂氏によるヒム・エクスプロージョン(賛美歌爆発)の紹介。T.ダドゥリー・スミス、F.P.グリーン、F.カーン、B.レンといったヒム・エクスプロージョンの中心に位置する賛美歌作家の紹介だけでなく、彼らが現代の賛美歌集編纂においてどのように受けとめられ、評価されてきたか、そして更に新しい世代にどのような影響を残したかを幅広い視野で扱っている。
「讃美歌21」にも大きな影響を与えたヒム・エクスプロージョンの流れを知る上で貴重な一冊。
紙の本
紙の本ゴスペル・サウンド 改訂版
2001/12/18 12:35
黒人文化の生きたレポート
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ゴスペル・サウンドというタイトルから簡単な音楽評論を期待すると大間違い。もちろん、あくまでも音楽が中心で著名なシンガーやグループはきっちり押さえられている。だが、ゴスペルという音楽は生活、生き様と深いところで結びついている。ゴスペルにおけるシャウトもスクリーミングも陶酔も、みんな彼らの信仰や生活と、そして彼らの歴史と切り離すことができない。本書の価値は、そのような音楽の根っこ(ルーツ)に目を向けさせてくれることであろう。そのような意味で、これはまさしくアメリカの黒人クリスチャン文化の生きたレポートである。
紙の本
紙の本愛と自由に生きる
2001/07/07 21:25
得難いキリスト教入門書
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本書は、キリスト教の中心をしっかり押さえながら、全体に目配りが行きとどき、読みやすく、分かりやすく、字が大きくて、サイズと値段は手頃な本です。
誰にでもすんなり分かることばで信仰について語ることにかけては、本田弘慈師は日本の第一人者であると言って良いでしょう。伝道者としての47年の奉仕の中で、あらゆる立場、あらゆるタイプの人に福音を語り続けてきた著者の経験が、本書にも確かに生きています。
本書は、求める心のある方なら、聖書や教会は初めてという方でも本書から信仰についての確かな手応えを得ることができるはずです。クリスチャンにとっては、自分の信仰をもう一度見直す機会になるでしょう。
紙の本
紙の本リーメンシュナイダーの世界
2001/07/07 21:15
観る者の心に迫る彫刻家
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彼はルターと同時代にドイツに生きた彫刻家です。私がリーメンシュナイダーに出会ったのは大学生の頃で土方定一先生の「ドイツルネッサンスの画家たち」という本に、20頁ほどの紹介と数枚の写真が載っていたのが最初でした。その後も、何枚かの写真や絵はがき以上の出合いはなかったのですが、それでもリーメンシュナイダーの彫刻には観る者の心に迫る何ものかがあり、消し難い印象を残すのです。まるで彼の鑿(のみ)で心が切り出され、そこに何か人間にとって本質的なものの形が浮き彫りにされるような感じ、とでも言えばよいでしょうか。
本書は二部からなり、第一部「リーメンシュナイダーとその時代」には、彼の生きた時代とその生きざまが、第二部「リーメンシュナイダー紀行」には、植田氏が30年にわたってドイツの各地を訪れ、美術館や記念館、大聖堂や修道院だけでなく、寒村の小さな教会にも足を運んでひとつひとつの作品と出会った感動が、作品についてのコメントとともに記されています。何より嬉しいのは、たくさんの彫刻の写真が載っていることです。氏のようにリーメンシュナイダー巡礼などできない者にとっては、これは最高の贈物です。
紙の本
紙の本レーナ・マリア 障害をこえて愛と希望を歌い続ける女性シンガー (小学館版学習まんがスペシャル)
2001/03/20 01:33
人の心をまっすぐにするレーナさんの伝記まんが
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誕生から結婚まで、軽快なテンポでレーナ・マリアさんの生涯を読ませてくれるすてきなマンガです。
ところで誤解されやすいのですが、レーナさんは、現代のシンデレラではありません。シンデレラにはつらい下づみ時代があって、それを通りぬけて夢をかなえることが人生のゴールになります。そうやって生きるシンデレラには彼女をねたむ人たちがつきまといます。
レーナ・マリアさんの場合には「つらい下積み時代」がありません。苦労がないわけではありません。彼女の身に起こったことを一つ一つ考えると、とても大変なことが多いのです。けれども彼女もご両親も、それを「下づみ時代」のいやな苦労とは考えないで、神さまからの賜物としてあっけらかんと受けとめています。そして、せっかくの「チャンス」や「成功」も、神さまといっしょにいるためなら、かんたんに手ばなしてしまいます。
そんなレーナさんには、まわりの人の心をまっすぐにする力があるようです。大人も子どもも、すなおな心で読んでほしいマンガです。
紙の本
紙の本マクドナルド童話全集 9 金の鍵
2001/03/14 18:31
マクドナルドのファンタジーの白眉
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もし、ジョージ・マクドナルドがいなければ、私たちは『不思議の国のアリス』や『ナルニヤ国物語』を手にすることはできなかったでしょう。ルイス・キャロルに「アリス」の出版を決心させたのはマクドナルド家の娘たちの絶賛だったし、「ナルニヤ」を書いたC.S.ルイスはマクドナルドの「ファンタスティス」に決定的な影響を受けているからです。
そんなマクドナルドのファンタジー中の白眉が本書です。二人の主人公タングルとモシーが出かけた不思議な旅。そこで出会う不思議の数々。それはまるで音楽のように読む者を包みこみ、ゆさぶります。そして二人は「影のみなもとの国」へとのぼっていくのです。
マクドナルドを尊敬してやまないC.S.ルイスは彼のアンソロジーの序文の中で言っています。マクドナルドのような作家は「読者が、それまで一度も感じたためしのない、いえ、感じうるとも思わなかった感覚を呼び覚ます」「そのショックによって私たちは、生涯知らなかった目覚めを経験するのです」。「金の鍵」の読者は、C.S.ルイスのことばの意味を体験的に知ることになるでしょう。
紙の本
紙の本マクドナルド童話全集 1 王女とゴブリン
2001/03/14 18:25
マクドナルドの冒険ファンタジー
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幼いアイリーン姫は、館の塔の上で不思議な「おばあさま」に出会います。山の底に住むゴブリンたちに襲われたアイリーン姫は、勇敢な鉱夫の少年カーディーに助けられます。ゴブリンたちの陰謀に気づいたカーディーはゴブリンのすみかを偵察中に捕らえられてしまいましたが、おばあさまの不思議な力とアイリーン姫の勇敢な行動によって助けられます。館の騎士たちと鉱夫たちは、知恵と力を合わせてゴブリンとの決戦を迎えます。
マクドナルドならではの幻想的なシーンを交えながらも読みごたえのある冒険ファンタジーです。
マクドナルドのファンタジーはどれもそうなのですが、「真理」や「正義」という古くて大切なことばを「本当に大切なことば」として伝えてくれます。
紙の本
紙の本風の谷のナウシカ(アニメージュコミックスワイド判) 7巻セット
2002/09/05 14:32
映画とは全く別の作品
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この作品は、月刊アニメージュに連載途中で映画化されたので、そちらをご覧になった方も多いと思います。映画の方は、家族で楽しめるようにきれいにまとめられていましたが、コミックの方が、スケールの大きさ、人物の深み、問題の多様性と深刻さからいって格段に優れています。ただし、小さなお子さま(笑)や、どろどろしたものが嫌いな人にはおすすめしません。
この作品では、単純な善悪二元論や安易なカテゴライズは、あらゆる場面で拒否されています。人々の生活を脅かす腐海には浄化の機能が秘められており、破壊の最終兵器である巨神兵はオーマ(無垢)と名付けられ、飽くなき権力欲に憑かれた王が最後にナウシカの命を守ります。
終盤ナウシカは、希望を否定して滅びにまかせようとする、悪を否定して人為的に善を生み出そうとする「教団」宗教をともに斥け、善と悪をともに抱えた人間のありのままの姿を肯定する道を進みます。
宮崎駿の人間観、世界観の良い意味できまじめな部分がもっともよく現れた作品ではないでしょうか。
紙の本
紙の本風の谷のナウシカ アニメージュ・コミックス・ワイド判 全7巻(分売不可)
2006/02/02 02:26
映画とは全く別の作品
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この作品は、月刊アニメージュに連載途中で映画化されたので、そちらをご覧になった方も多いと思います。映画の方は、家族で楽しめるようにきれいにまとめられていましたが、コミックの方が、スケールの大きさ、人物の深み、問題の多様性と深刻さからいって格段に優れています。ただし、小さなお子さま(笑)や、どろどろしたものが嫌いな人にはおすすめしません。
この作品では、単純な善悪二元論や安易なカテゴライズは、あらゆる場面で拒否されています。人々の生活を脅かす腐海には浄化の機能が秘められており、破壊の最終兵器である巨神兵はオーマ(無垢)と名付けられ、飽くなき権力欲に憑かれた王が最後にナウシカの命を守ります。
終盤ナウシカは、希望を否定して滅びにまかせようとする虚無と、悪を否定して人為的に善を生み出そうとする「教団」宗教をともに斥け、善と悪をともに抱えた人間のありのままの姿を肯定する道を進みます。
宮崎駿の人間観、世界観の良い意味できまじめな部分がもっともよく現れた作品ではないでしょうか。
紙の本
紙の本わたしたちと世界 人を知り国を知る
2006/02/02 01:59
若い人たちに是非読んでほしい
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
岩波ジュニア新書の一冊である本書は、難しい本ではありません。しかし、その中身は深く、読み返すたびに感動させられ、考えさせられ、教えられることがあります。
ここにはいろいろな国で、人を愛し、人のために捧げ、生きた人たちのことが書かれています。
第二次世界大戦で良心的兵役拒否を貫いたアメリカのクェーカー教徒たち、彼らを評価しつつも現実主義に立ち議論を尽くしたニーバー博士。日本人として是非とも知っておかなければならない韓国の堤岩教会事件とそれを報じた柏木義円牧師。沖縄や韓国の美を愛し、彼らのために嘆き、差別や圧制と戦った柳宗悦。自由な心をもって官憲にも接した東ドイツのハーメルさん。アイヌを愛し、伝道をしながらアイヌ語研究の扉を開いた宣教師バチェラーなど。
国や世界が戦争や憎しみ、差別や偏見という影に覆われていた時代に、彼らは、深まりゆく闇に抗して、小さくとも決して消えない光を歴史の中にともし続けてくれた人たちです。人を、国を、そして世界を考えるために、必読の書です。
紙の本
紙の本ナザレのイエスは神の子か? 「キリスト」を調べたジャーナリストの記録
2006/02/02 01:57
キリスト論の入門として最適
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
一流の学者の書いた本は、学問的価値がどれほどあるにせよ(あるいは学問的価値があればあるほど)、素人にとっては退屈きわまりないものです。しかし、一流のジャーナリストならば、読み手を飽きさせずに、一流の学者の業績を紹介することができるでしょう。そのテーマが自分の大いに関心のあるものならばなおのことそうです。
リー・ストロベルはシカゴ・トリビューン紙の敏腕記者でしたが、妻が信仰を持ったことを機にキリスト教についてその真偽を調べ始めました。そこに記者としての経験が生かされています。彼は調査に当たって、学問的にも人間的にも信頼できる一流の学者14人を選びました。本書は、敏腕記者ストロベルによる14人の学者たちへのインタビューの記録です。キリスト教の本質についての鋭い疑義が、誠実かつ学問的にも堅実な応答によって一つ一つ取り除かれていく様子には感動すら覚えます。
紙の本
紙の本喜びのおとずれ C・S・ルイス自叙伝
2006/03/22 22:59
ナルニア国物語の著者C.S.ルイスの思想的自伝
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両親の家系に始まり、幼い日の家族のこと、受けた教育のこと、若き日に友人を通して触れるた様々な思想のこと、そしてキリスト教への回心のことなど、C.S.ルイスが自らの辿った人生と思想の遍歴を記した自伝。それが、同時に20世紀前半における英国の思想的風景の優れたスケッチともなっている。
ナルニア国物語の背後にあるルイスの思想を知るには最適。
紙の本
紙の本シング・ソング童謡集 クリスティーナ・ロセッティSING−SONG A NURSERY−RHYME BOOK訳詩集
2006/02/02 02:01
古き良き時代の硬質な童謡集
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
上田敏が「英国最大の女詩人」と評したクリスティーナ・ロセッティは、ラファエル前派の中心画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの妹です。彼女は兄と違って、正統的なキリスト教信仰を持ちつつ詩人として名をあげました。
本書は、彼女が子どものために書いた詩集、つまり童謡集です。現代の私たちは、童謡集というと砂糖菓子のように甘いものを想像しがちですが、昔の童謡はマザーグースに見られるように、もっと硬質な部分を持っています。この童謡集にも古き良き時代の硬質な手触りを感じます。
本書の挿し絵を描いているのは、ジョージ・マクドナルドの挿し絵などで知られるラファエル前派の画家アーサー・ヒューズです。彼の手による素晴らしい挿し絵が各ページに載っています。
巻末には、英語の本文が掲載されています。
紙の本
紙の本北風のうしろの国 新装版
2006/02/02 01:46
中村妙子の名訳によるジョージ・マクドナルドの代表作
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ジョージ・マクドナルドの「北風のうしろの国」は、貧しい御者の息子ダイアモンドと「北風」を巡る長編ファンタジーです。
マクドナルドのファンタジー作品には珍しく、本書の舞台は、彼の同時代の英国です。そのため、時代や社会や人の生き死にについて、マクドナルドの見方が、最も率直に、最もよく現されており、それがファンタジーという形式の中に、彼ならではの手法で織り込まれています。
物語の構成や流れは決して流麗とは言えませんが、それが返ってC.S.ルイスの言う「真実なものが持つゴツゴツした手触り」を感じさせ、深い味わいになっています。
最後になりましたが、中村妙子さんの翻訳は深みのある素晴らしい訳です。マクドナルドの名作が、長らく絶版になっていた中村さんの名訳で復刊されたことを心から喜んでいます。
紙の本
紙の本ユダヤ戦記 1
2002/03/26 22:07
キリスト教研究の貴重な史料
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ユダヤ教の伝承についての博識を駆使して「ユダヤ古代誌」を書いたヨセフスが、唯一とも言える貴重な体験を駆使して書いたのが「ユダヤ戦記」である。
新約聖書の使徒たちとほぼ同時代に生きたヨセフスは「裏切り者」としてユダヤ戦争を生き抜き、それゆえにユダヤ人としてこのような貴重な記録を残すことができた。そして、本書はキリスト教誕生の背景を扱った同時代の史料として第一級の価値を持つものである。
訳者は日本に於けるヨセフス研究の第一人者である。